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自家発電設備はなぜ復旧後すぐに止めるのか|豪雨等災害に備えた消防用設備の管理を解説

豪雨で浸水した街を背景に、屋外に設置された自家発電設備と電気設備収納庫のアイキャッチ画像

平成30年7月豪雨や令和元年東日本台風、令和2年7月豪雨など、近年は豪雨等による被害が相次いでいます。
消防庁は令和5年、豪雨等災害の発生時における防火安全上の留意事項を通知でまとめました。
危険物施設への対応だけでなく、長時間停電への備えも柱の一つになっています。
この記事では非常用の自家発電設備をなぜ停電復旧後すぐに止めるのか、実務で見落としやすい点を解説します。

うちのビルにも自家発電設備がありますが、停電が直ったらすぐ止めていいものなんでしょうか。

実は直ちに運転を停止することが通知で求められています。
まずは通知が出た経緯から見ていきましょう。

豪雨で浸水するようなことがないうちのビルには関係ない話だと思っていました。

実は長時間停電への備えは浸水しない建物にも関わってきます。
順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • この通知は令和5年5月24日 消防予第310号・消防危第147号で消防庁予防課長・消防庁危険物保安室長から発出された
  • 非常用の自家発電設備は常用電源復旧後、直ちに運転を停止しなければならない(自動停止するものを除く)
  • 避難経路上に電気錠付きの扉があると、停電で通行不能になるおそれがある
  • 危険物施設の復旧に伴う変更許可等の審査は、できる限り迅速に対応される
  • 危険物取扱者講習や消防設備士講習は、被災による受講期限の延長が認められる場合がある

豪雨等災害への備えとして非常電源の点検・避難経路・通報体制を示した図解

豪雨等災害の通知はなぜ出されたのか

豪雨で浸水した街並みと建物のイラスト
近年、記録的な豪雨や台風による被害が各地で相次いでいます。
消防庁は、これから梅雨期や台風期を迎えるに当たり、防火安全上の留意事項を通知でまとめました。
例年、梅雨期や台風期などにおいて局地的大雨や集中豪雨等が観測され、とりわけ近年は、平成30年7月豪雨、令和元年東日本台風、令和2年7月豪雨、令和3年7月に発生した静岡県熱海市の土石流災害などにより、多大な被害が発生しています。今般、これから梅雨期や台風期などを迎えるに当たり、豪雨等災害の発生時における防火安全上の留意事項について、下記のとおりとりまとめました。(豪雨等災害の発生時における防火安全上の留意事項について 令和5年5月24日 消防予第310号・消防危第147号 消防庁予防課長・消防庁危険物保安室長)
相次ぐ豪雨災害が、この通知が出るきっかけになりました
平成30年の西日本豪雨や令和元年の東日本台風、令和3年の熱海市土石流災害など、大規模な風水害が短い間隔で発生してきました。
こうした災害のたびに、危険物施設の被災対応や、消防用設備等が動かなくなる停電被害が課題になっています。
この通知は消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出されたもので、法律そのものではなく実務の目安という位置づけです。
次は、この通知が誰のどんな備えを求めているのかを見ていきます。

うちの地域は内陸で川からも離れているんですが、この通知は関係あるんでしょうか。

実は停電への備えは浸水しない建物にも関わってきます。
まずは対象になる範囲から見ていきましょう。

通知は誰のどんな備えを求めているのか

防火対象物の建物と屋外の非常用設備収納庫、消火栓、火災報知機のイラスト
対象は危険物施設の関係者だけではありません。
消防用設備等を持つ事業所や住民も、長時間停電への備えを求められています。
各都道府県消防防災主管部長におかれましては、貴都道府県内の市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む。)に対しても、この旨周知されるようお願いいたします。なお、本通知は消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条の規定に基づく助言として発出するものであることを申し添えます。(略)3 豪雨等災害に伴う長時間停電に備え、必要に応じ、事業所の関係者や住民等に対し、次の事項について周知を図られたいこと。(豪雨等災害の発生時における防火安全上の留意事項について 記3柱書)
対象は危険物施設に限られません
通知は大きく分けて、危険物施設の関係者への周知(記1・記2)と、事業所の関係者や住民等への周知(記3・記4)の2本立てで構成されています。
つまり、危険物を扱っていない一般の防火対象物であっても、長時間停電への備えという形でこの通知の対象になります。
立入検査の機会を捉えて周知を図ることが想定されているため、消防機関から説明を受ける場面も増えると考えられます。
次は、非常用の自家発電設備をめぐる具体的な留意事項を見ていきます。

危険物を扱っていないビルなんですが、それでも関係あるんですね。

はい。長時間停電への備えという形で関わってきます。
次は自家発電設備の扱いを見ていきましょう。

非常用の自家発電設備はなぜ停電復旧後すぐに止めるのか

キュービクル式の自家発電設備とスイッチ盤を操作する担当者のイラスト
非常用の自家発電設備は、停電中はもちろん頼りになる存在です。
ところが、停電が復旧した後の扱いには、見落としやすい注意点があります。
消防用設備等の非常電源として自家発電設備を用いている場合にあっては、自家発電設備について、必要な燃料の確保に努めるとともに、常用電源復旧後、直ちに運転を停止(常用電源復旧時、自動的に運転を停止するものを除く。)し、燃料の補給等により、火災時の機能に支障のないように措置すること。特に、燃料が空となった後に燃料を補給した場合に再び適切に作動するためには、当該自家発電設備のエンジン部分の空気抜きが必要なものがあることから、留意すること。(豪雨等災害の発生時における防火安全上の留意事項について 記3(1)ア)
動かしっぱなしにしないことが、次の火災時の備えになります
常用電源が復旧したら、自動停止する機種を除いて直ちに運転を停止することが求められます。
燃料を使い切った状態で放置すると、いざというときに再始動できない事態にもつながりかねません。
特に燃料を使い切った後に補給した場合は、エンジン部分の空気抜きをしないと正常に作動しないことがある機種があります。
自家発電設備の取扱説明書で、自機が自動停止型か手動停止型か、空気抜きの要否を確認しておくことが実務の第一歩です。

止め忘れて燃料切れになったら、次の火災のときに動かないってことですよね。

そのとおりです。機種ごとの停止方法を確認しておいてください。
次は停電で見落としやすい落とし穴を見ていきます。

停電で見落としやすい落とし穴はどこか

停電で通行不能になった電気錠付きの扉に禁止マークを付けたイラスト
停電というと照明や空調のことばかり気になりますが、実は避難経路にも影響が出ます。
電気に頼った設備ほど、動かなくなったときの想定が抜けやすくなります。
関係者等による避難誘導体制及び避難経路を確認すること。なお、避難経路上に電気錠が設けられた扉及び自動ドア等がある場合、停電により、機能を失って通行不能となるおそれがあることから、通行ができるよう対策を講じること。またエレベーターは、停電が発生する可能性が高い場合にはあらかじめ使用を制限すること。(豪雨等災害の発生時における防火安全上の留意事項について 記3(1)ウ(ウ))
電気に頼った出入口ほど、停電時の抜け道が要ります
避難経路上に電気錠付きの扉や自動ドアがあると、停電で解錠できず通行不能になるおそれがあります。
エレベーターも停電の可能性が高いときはあらかじめ使用を制限するなど、事前の判断が必要です。
このほか、自動火災報知設備は長時間停電で予備電源の容量が低下すると異常警報を発するものがあり、警報音の停止方法や復電時の点検方法をあらかじめ点検事業者へ確認しておくことも欠かせません。
IP電話やFAX機能付き電話機の一部は停電で使用できなくなるため、119番通報の代替手段も見落とせないポイントです。

停電したらエレベーターは動かないと思っていましたが、電気錠の扉まで開かなくなるとは知りませんでした。

はい。避難経路の電気錠・自動ドアは要注意です。
次は明日から確認する手順を整理します。

明日からなにを確認すればよいのか

クリップボードを持ち壁掛け電話を点検する人物のイラスト
最後に、豪雨等災害に備えて確認しておきたい手順を整理します。
危険物施設を持つ事業所は、被災後の手続きの弾力運用もあわせて押さえておきましょう。
豪雨等災害により危険物施設に破損等の被害が生じ、施設の再稼働に向けた復旧作業に伴う変更許可等の手続きが必要となる場合は、当該変更許可申請に係る審査等については、できる限り迅速に対応されたいこと。(略)軽微な補修等にあっては「製造所等において行われる変更工事に係る取扱いについて」(平成14年3月29日付け消防危第49号)による取扱いが可能であること。(豪雨等災害の発生時における防火安全上の留意事項について 記2(1))
点検すべきは、非常電源・避難経路・通報体制の3点です。
①非常用の自家発電設備は、自動停止型か手動停止型かを確認し、常用電源復旧後の運転停止手順を周知する。
②避難経路上の電気錠付き扉・自動ドア・エレベーターの停電時対応をあらかじめ決めておく。
③IP電話やFAX機能付き電話機に代わる119番通報の手段を用意する。
④危険物施設を持つ場合は、被災後の変更許可申請や仮貯蔵・仮取扱いの手続きが弾力的に扱われることを覚えておく。
⑤危険物取扱者講習・消防設備士講習は、被災による受講期限の延長が認められる場合があるため、期限が近い場合は所轄消防署に相談する。

非常電源・避難経路・通報体制の3つを確認するだけでも、だいぶ準備が変わりそうです。

はい。3点の点検から始めてみてください。
次はよくある質問もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q豪雨等災害の発生時における防火安全上の留意事項についてはいつ出された通知ですか?
A令和5年5月24日付けで、消防庁予防課長と消防庁危険物保安室長の連名により、消防予第310号・消防危第147号として各都道府県消防防災主管部長等へ発出されました。
Q非常用の自家発電設備は停電中ずっと動かしておいてよいですか?
Aいいえ。常用電源が復旧したら直ちに運転を停止することとされています(自動的に停止する機種を除く)。燃料を使い切った後に補給した場合は、再始動のためにエンジン部分の空気抜きが必要になることがあります。
Q避難経路に電気錠付きの扉がある場合、どんな対策が必要ですか?
A停電により電気錠付きの扉や自動ドアが機能を失い通行不能になるおそれがあるため、あらかじめ通行できるような対策を講じることが求められています。
Q豪雨で被災した危険物施設の変更許可はどう扱われますか?
A復旧作業に伴う変更許可等の申請については、できる限り迅速に審査へ対応することとされています。軽微な補修であれば、既存の変更工事の取扱いに関する通知に基づく扱いも可能です。

まとめ

この通知は令和5年5月24日 消防予第310号・消防危第147号で発出された
平成30年7月豪雨や令和3年7月の熱海市土石流など近年の豪雨災害を踏まえた通知である
非常用の自家発電設備は常用電源復旧後、直ちに運転を停止する(自動停止を除く)
燃料が空になった後に補給した場合はエンジン部分の空気抜きが必要なことがある
電気錠付きの扉や自動ドアは停電で通行不能になるおそれがあるため事前の対策が必要
危険物施設の復旧に伴う変更許可等の審査はできる限り迅速に対応される
危険物取扱者講習・消防設備士講習は被災による受講期限の延長が認められる場合がある

記事全体を通して、豪雨等災害への備えがだいぶ整理できました。
さっそく自家発電設備の停止方法を確認してみます。

お役に立てて何よりです。非常電源・避難経路・通報体制の3点を確認してみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 豪雨等災害の発生時における防火安全上の留意事項について(令和5年5月24日 消防予第310号・消防危第147号 消防庁予防課長・消防庁危険物保安室長)
  • 製造所等において行われる変更工事に係る取扱いについて(平成14年3月29日付け消防危第49号)
  • 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第10条第4項・第17条の10
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第33条の17

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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