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自家発電設備は非常電源としてどこまで柔軟に扱えるか|常用使用や点検周期の実例も解説

自家発電設備を非常電源にする場合の設置と点検の柔軟な扱いを解説するアイキャッチ画像

停電すると建物の中で真っ先に動くのが、非常電源としての自家発電設備です。
ところが実務ではもっと細かい判断を迫られます。常時電気を送っている発電設備を非常用と同じに扱っていいのか、都市ガスを使う発電機を常用にしていいのか、点検で潤滑油を交換しただけで済ませていいのか。
消防実務六法の質疑応答は、こうした現場の迷いに一つずつ答えを出しています。
質疑応答が示したのは自家発電設備は設置も点検も条件次第で柔軟に扱えるという線引きです。

うちの非常用発電機は停電時もずっと動かしていると聞きました。
それでも切り替えにかかる時間の基準を守らないといけませんか。

常時電力を供給しているタイプなら、その切替時間の基準そのものが要らなくなります。
ただし停止と始動を繰り返す運用は対象になりません

点検で潤滑油とか冷却水を新しいものに交換したら、それだけで点検した扱いになりますか。

交換だけでは足りません。
抜き取った油や水を分析して異常がないか確認するところまでが点検です。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 電力を常時供給する自家発電設備は、停電時の切替所要時間の基準を満たす必要がないとされました
  • 都市ガスとデュアルフューエルエンジンを使う自家発電設備でも、条件を満たせば常用使用が認められます
  • 潤滑油や冷却水の交換だけでは、内部観察等の点検を行ったことにはなりません
  • 改正前に自主的に行ったオーバーホールでも、記録が確認できれば内部観察等の点検が実施されたものとみなせます
  • 火災時の想定負荷が定格の30%を下回ると分かっている場合は、その負荷相当で負荷運転の点検を行えば足ります

常時電力供給の自家発電設備は切替時間の基準をどう扱うか

自家発電設備が電源盤に直結し常時電力を供給していることを示したイメージ
常時電源を送るタイプの自家発電設備は、停電が起きても既に動いています。
では、告示で決まっている切替所要時間の基準はどう扱えばよいのか。
問7(平成19年9月3日消防予第317号) 1号告示第2、1(3)で常用電源が停電してから電圧確立及び投入までの所要時間は40秒以内であることとされているが、電力を常時供給する自家発電設備においては、停電時においても既に電圧確立状態となっているため、この場合は告示で定める所要時間(切替所要時間)は必要ないものと解釈してよいか
答7 お見込みのとおり。なお、電力を常時供給する自家発電設備は、常に電圧確立状態が維持されているため、停電(始動)から電圧確立までの時間(始動時間)を要しないものであり、常用・非常用兼用であっても、点検時以外で始動と停止を繰り返している自家発電設備はこれに含まれないものである。
常時運転なら時間の基準自体が外れます
40秒以内という切替所要時間は、停電してから電圧が立ち上がるまでの始動時間を測る基準です。
最初から電圧確立状態を維持している発電設備には、そもそも始動という工程がありません。
ただし範囲には注意が必要です。常用・非常用を兼ねていても、点検以外の理由で普段は止まっている発電設備はこの扱いに含まれません
自分の建物の発電設備がどちらの運転方式なのか、まずは委託している点検業者に確認しておくとよいでしょう。

常に動いているタイプかどうかで、扱いがまったく変わるんですね。

そうです。
まず自分の発電設備の運転方式を確認するところから始めてください

都市ガス使用のデュアルフューエル発電設備は常用使用できるか

自家発電設備が都市ガスの配管と液体燃料タンクの両方につながっていることを示したイメージ
非常用の自家発電設備を、普段から使う常用電源として動かしたいという相談もあります。
都市ガスを使うタイプでも、この常用使用は認められるのか。
問(昭和58年10月25日消防予第201号) 非常電源として設置する自家発電設備の常用使用及び気体燃料の使用について申請があり、下記の条件を講じた場合は消防法施行令第32条の規定を適用し、これを認めて支障ないと思料されるが貴職の見解を伺いたい。商用電源の停電時に消防用設備等へ優先的に電力供給する回路方式であること、都市ガスの供給が断たれた場合に速やかに液体燃料へ切り換えられるデュアルフューエルエンジンであること、当該自家発電設備の構造及び性能は都市ガス使用に伴う付加部分を除き自家発電設備の基準に適合すること(略)。
答 設問の場合は、そのように取り扱ってさしつかえない。なお、ガスを使用することにより通常の自家発電設備に付加されることとなる設備についても、自家発電設備の一部として消防法第17条の3の3の点検及び報告が必要である。
条件を満たせば常用使用も認められます
ポイントは停電時に優先して消防用設備等へ電力を送る回路になっているかどうかです。
都市ガスが止まった場合に備えて、液体燃料へ自動で切り換わるデュアルフューエルエンジンであることも条件に含まれます。
ガス配管などの付加設備も自家発電設備の一部として扱われるため、点検や報告の対象からも外れません
常用使用への切り替えを検討するときは、この回路方式と燃料切換えの条件を保守業者と一緒に確認してください。

都市ガスを使っていても、いざというときは液体燃料に切り換わる仕組みなんですね。

そのとおりです。
切換えが正常に働くかどうかも点検で確認してもらってください

潤滑油や冷却水を交換するだけで点検を行ったことになるか

自家発電設備の点検口の横に潤滑油の缶と冷却水の容器が置かれていることを示したイメージ
自家発電設備の内部観察等の点検では、潤滑油や冷却水を抜き取って確認する方法が定められています。
現場では、これを交換作業と同じものと考えてよいのか迷う場面があります。
問1(平成30年6月1日消防予第373号) 内部観察等による点検方法として「オイルパン等から潤滑油を必要量抜き取り、潤滑油の成分に異常のないことを確認する」「冷却水ドレインコック等から冷却水を必要量抜き取り、冷却水の成分に異常のないことを確認する」と定められているが、潤滑油や冷却水の交換を行えば内部観察等による点検を行ったこととして取り扱ってよいか
答1 潤滑油及び冷却水の成分を分析することにより自家発電設備内部の異常を確認することを目的としているため、交換を行うだけでは当該点検を行ったことにはならない
交換と点検は別の作業です
この点検の目的は、抜き取った潤滑油や冷却水の成分を分析して発電設備内部に異常がないかを確認することにあります。
新しい油や水に入れ替えただけでは、内部の状態を確認したことにはなりません。
つまり分析結果の記録が残っていなければ、点検を実施したとは言えないということです。
委託している業者の報告書に、成分分析の結果が記載されているかを確認しておいてください。

うちは定期的に油を交換しているから大丈夫だと思っていました。

そこが誤解されやすい点です。
交換の記録だけでなく分析結果まで報告書に残っているか確認してください

施行前に行ったオーバーホールは点検の実施とみなせるか

自家発電設備の点検記録の書類が積まれていることを示したイメージ
点検基準が改正される前から、自主的にオーバーホールをしていた建物もあります。
その記録が残っていれば、改正後の内部観察等の点検を済ませたものとみなせるのか。
問2(平成30年6月1日消防予第373号) 改正告示の施行日以前に自主的に自家発電設備のオーバーホール等を実施しており、内部観察等による点検の基準に適合した確認をしていることが過去の記録等により確認できる場合は、当該点検が実施されているとみなしてよいか。また、この場合において、当該オーバーホール等の実施以降に運転性能の維持に係る予防的な保全策が講じられていたことが確認できる場合は、オーバーホール等を実施してから6年を経過するまでの間は運転性能に係る点検を実施しないこととしてよいか
答2 前段、後段とも差し支えない
過去の記録が残っていれば代わりになります
改正後の基準そのものに合わせて実施した記録でなくても、同じ内容を満たしていたことが確認できれば点検済みと扱われます。
そのうえで、以降の保全策も記録できていれば、オーバーホールから6年を経過するまで新たな点検を先送りできます。
逆に言えば、記録が残っていなければこの取扱いは使えません
古い工事記録や整備報告書を捨てずに保管しておくことが、そのまま点検周期の柔軟さにつながります。

昔の工事記録を捨てずに残しておいてよかったです。

まさにそれが役に立ちます。
次の更新工事のときも記録一式をそのまま引き継いでください

想定される負荷が定格の30%未満のとき負荷運転はどの程度でよいか

自家発電設備が負荷試験装置につながれていることを示したイメージ
負荷運転の点検は、通常定格出力の30%以上の負荷をかけて行うよう指導されています。
ただし建物によっては、火災時に想定される負荷がそれより小さいこともあります。
問3(平成30年6月1日消防予第373号) 負荷運転の点検方法として「擬似負荷装置、実負荷等により定格回転速度及び定格出力の30%以上の負荷で必要な時間連続運転を行い確認する」と定められているが、負荷運転はどの程度の時間行えばよいか。また、火災が発生した場合に設計上想定されている負荷が30%を下回ることが確認できる場合は、当該負荷相当で負荷運転の点検を実施すれば足りるものとして取り扱ってよいか
答3 前段については、負荷運転を実施して点検基準に定める事項を確認することが目的であるため、負荷運転はこれらの確認に要する時間行えば足りる。後段については、差し支えない。これは、一般的に設置される自家発電設備が、加圧送水装置等の始動時に定常運転の約3倍の電力を必要とすることを踏まえ、火災時に想定される負荷により異常の有無等を確認できるように求めているものであることを踏まえているからである。
目的は時間ではなく確認できることです
負荷運転の時間そのものに決まった長さはなく、点検基準に定める事項を確認できる時間であれば足ります。
そして想定される火災時の負荷が30%を下回ると設計上確認できるなら、その実際の負荷相当で負荷運転を行えば十分とされました。
ここで問われているのは、常に30%以上を掛け続けることそのものではなく、火災時に必要な電力を確認できるかどうかです。
自分の建物でどの負荷を想定して設計されているかは、設備図面や設計計算書に残っています。点検業者に見せられるように保管しておいてください。

30%にこだわらなくていいなら、うちの設計条件を先に確認しないといけませんね。

そのとおりです。
設計時に想定した負荷を確認してから点検内容を業者と相談してください

よくある質問

Q常時電力を供給する自家発電設備なら点検も簡単になりますか?
A回答は、切替所要時間の基準そのものが不要になるとしているだけで、点検が不要になるわけではありません。常時供給タイプであっても運転性能に係る点検は別に必要です。
Q都市ガスを使う自家発電設備は必ず常用使用にできますか?
A回答は、停電時に優先して電力供給する回路方式やデュアルフューエルエンジンであることなど複数の条件を講じた場合に限って消防法施行令第32条を適用して認められるとしています。条件を満たさない設備には当てはまりません。
Q潤滑油や冷却水を交換していれば内部観察等の点検は不要ですか?
A回答は、交換を行うだけでは点検を行ったことにはならず、抜き取った油や水の成分分析まで行って初めて点検になるとしています。
Q負荷運転はどんな建物でも同じ時間や負荷で行えばよいですか?
A回答は、負荷運転の時間は点検基準の確認に必要な時間で足り、火災時に想定される負荷が30%を下回ると分かっている場合はその負荷相当で足りるとしています。想定負荷は建物ごとに異なります。

まとめ

電力を常時供給する自家発電設備は、切替所要時間の基準そのものが不要です
常用・非常用兼用でも普段止まっている発電設備はこの扱いに含まれません
都市ガスとデュアルフューエルエンジンの発電設備も、条件を満たせば常用使用が認められます
潤滑油や冷却水は交換だけでなく成分分析まで行って点検になります
施行前の自主的なオーバーホールも、記録が確認できれば点検実施とみなせます
記録があれば、オーバーホールから6年を経過するまで新たな点検を先送りできます
想定負荷が30%を下回るなら、その負荷相当で負荷運転の点検を行えば足ります

発電設備1つでも、置き方や使い方でずいぶん扱いが変わるんですね。
よく分かりました。

運転方式と燃料、そして点検の記録の3つを押さえておいてください。
それだけで見積書の見方が変わります
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 消防用設備等に係る執務資料の送付について(平成19年9月3日 消防予第317号)
  • 非常電源として設置する自家発電設備の常用使用等について(昭和58年10月25日 消防予第201号)
  • 「373号通知」消防用設備等の点検要領一部改正について(平成30年6月1日 消防予第373号)
  • 自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示第1号)
  • 消防法施行令第32条
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は各通達が発出された当時のもので、告示番号等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。

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