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特定建築物の定期報告はなぜ指定を受けて初めて義務になるのか|建築基準法施行令が定める無条件対象と個別指定の違いを解説

特定建築物の定期報告はなぜ指定が要るのかを解説する記事のアイキャッチ画像

防災管理対象物では、消防用設備等点検や防災管理点検など、消防法にもとづく点検報告をいくつも済ませているはずです。
ところが建物によっては、それとは別に建築基準法第12条にもとづく報告が同時に求められることがあります。
しかもこの報告はすべての建物に一律にかかるわけではなく、法令が定める型に当てはまるかどうかで対象になるかが分かれます。
条文をたどると、報告の対象になるかどうかは建物ごとに二段階で決まる仕組みが見えてきます

消防設備の点検はもう済ませているのに、また別の報告の話が出てきました。
これも同じ点検を二重に求められているのでしょうか。

別の制度です。
建築基準法の報告と消防法の報告は、そもそも法律が違います

うちの建物はどちらの型になるのか、正直分かっていません。

対象になるかどうかは、条文が定める建物の型で決まります。
2つの区分を一つずつ確認していきましょう。

この記事の結論
  • 建物の点検報告には消防法とは別に建築基準法第12条の定期報告があります
  • 施行令第16条第1項は4つの型を挙げ、当てはまる建物は無条件で報告義務を負います
  • 4つの型に当てはまらなくても、特定行政庁が個別に指定すれば同じ報告義務が生まれます
  • 昇降機や防火設備は特定建築設備等として、建物本体とは別枠・別周期で検査報告が必要です
  • 報告の周期は建物本体がおおむね6か月から3年、設備側がおおむね6か月から1年です

特定建築物の指定で報告義務が変わる4つの手順を示した図解

防災管理対象物の点検報告になぜ建築基準法まで出てくるのか

消防設備の点検担当者と建築図面を持つ担当者が並んで建物を見上げているイメージ
消防用設備等点検や防災管理点検は、消防法にもとづく点検です。
これとは別に、建築基準法にも建物を定期的に調査させる制度があります。
建築基準法第十二条第一項 (略)特定建築物(略)で特定行政庁が指定するもの(略)の所有者(略)は、これらの建築物の敷地、構造及び建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けている者にその状況の調査(略)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない
点検義務は消防法だけでなく建築基準法にも別に置かれています
建築基準法第12条第1項は、建物の敷地・構造・建築設備を定期的に調査し、その結果を特定行政庁に報告するよう求めています。
報告先は消防長や消防署長ではなく特定行政庁で、消防法の点検とは窓口も条文もまったく別です。
つまり消防法側の点検をすべて終えていても、建築基準法側の報告義務が消えるわけではありません。

消防の点検を毎年きちんと受けているので、それで十分だと思っていました。

建築基準法側はまた別の制度です。
自分の建物がどちらの対象になるかを、次に確認していきましょう。

報告の対象になる建物はどうやって決まるのか

劇場のような建物と事務所ビルが並んでいるイメージ
すべての建物が同じように対象になるわけではありません。
条文は、対象になる建物の型をいくつか具体的に挙げています。
建築基準法施行令第十六条第一項 法第十二条第一項の安全上、防火上又は衛生上特に重要であるものとして政令で定める建築物は、次に掲げるもの(略)とする。
一 地階又は三階以上の階を法別表第一(い)欄(一)項に掲げる用途に供する建築物及び当該用途に供する部分(客席の部分に限る。)の床面積の合計が百平方メートル以上の建築物(略)
四 三階以上の階を法別表第一(い)欄(三)項に掲げる用途に供する建築物及び当該用途に供する部分の床面積の合計が二千平方メートル以上の建築物
施行令第16条第1項が挙げる4つの型に当てはまれば、無条件で報告義務を負います
劇場や映画館のように客席のある建物、病院や共同住宅、学校のように人が集まる建物が中心に挙げられています。
床面積や階数の下限が型ごとに決まっており、小規模なら対象外になる型もあります。
まずは自分の建物がこの4つの型のどれかに当てはまるかを、床面積と階数から確認します。

うちは事務所ビルなので、この4つのどれにも当てはまらない気がします。

4つの型に入らない建物にも、報告義務が生まれることがあります
その指定の仕組みを次で見ていきましょう。

特定建築設備等に含まれる昇降機と防火設備はどう扱われるのか

エレベーターと防火シャッターがそれぞれ点検されているイメージ
建物本体だけでなく、昇降機や防火設備にも別の報告義務があります。
これらは条文上、特定建築設備等と呼ばれています。
建築基準法施行令第十六条第三項 法第十二条第三項の政令で定める特定建築設備等は、次に掲げるものとする。
一 (略)昇降機(使用頻度が低く劣化が生じにくいこと(略)を除く。)
二 防火設備のうち、法第六条第一項第一号に掲げる建築物で第一項各号に掲げるものに設けるもの(略)
昇降機と防火設備は、建物本体とは別枠で検査・報告の対象になります
エレベーターなどの昇降機と、防火戸や防火シャッターなどの防火設備が特定建築設備等です。
報告の周期も建物本体とは違い、建物本体はおおむね6か月から3年ごと、設備側はおおむね6か月から1年ごとです(施行規則第5条・第6条)。
同じ建物でも、敷地・構造の調査と設備の検査は別のタイミングで動くと考えておく必要があります。

建物の調査と、エレベーターの検査は同じタイミングで済むと思っていました。

周期が違うので同時に済むとは限りません
それぞれの検査済証の交付日を、別々に管理してください。

実務で見落としやすいのはどこか

建物の前で担当者が壁の小さな表示板を見上げているイメージ
4つの型に当てはまらなければ、それで終わりではありません。
特定行政庁が個別に指定する建物が、もう一段控えています。
建築基準法施行令第十四条の二 法第十条第一項の政令で定める建築物は、次に掲げるものとする。
一 法別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物のうち階数が三以上でその用途に供する部分の床面積の合計が百平方メートルを超え二百平方メートル以下のもの
二 事務所その他これに類する用途に供する建築物(法第六条第一項第一号に掲げる建築物を除く。)のうち階数が三以上で延べ面積が二百平方メートルを超えるもの
この型に当てはまる建物は、特定行政庁が指定して初めて報告義務を負います
3階以上で延べ面積が200平方メートルを超える事務所ビルなどが、この指定の対象になり得ます。
指定を受けていなければ義務は生じませんが、指定されているかどうかを自分で確認していない建物は少なくありません。
「4つの型に入らないから対象外」と思い込むと、指定の有無を確かめないまま放置してしまいます。

事務所ビルなので対象外だと思い込んでいました。

思い込まずに、指定の有無を確認してください
特定行政庁に問い合わせれば分かります。

明日からなにをすればよいのか

担当者が窓口で書類を確認してもらっているイメージ
自分の建物がどちらの立場にあるかを整理しておくと、報告漏れを防げます。
実務ではこの3つを確認します。
建築基準法施行規則第五条第一項 法第十二条第一項の規定による報告の時期は、建築物の用途、構造、延べ面積等に応じて、おおむね六月から三年までの間隔をおいて特定行政庁が定める時期(次のいずれかに該当する場合においては、その直後の時期を除く。)とする。
一 (略)建築主が(略)検査済証(新築又は改築(一部の改築を除く。)に係るものに限る。)の交付を受けた場合
報告の時期は特定行政庁が個別に定め、新築直後の一回目は除かれます
まず自分の建物が施行令第16条第1項の4つの型に当てはまるかを、床面積と階数から確認します。
当てはまらない場合は、特定行政庁に指定を受けているかどうかを問い合わせます。
昇降機・防火設備は検査済証の交付日を控え、報告の起点をそこから管理します。

特定行政庁にまず確認すればよいのですね。

そのとおりです。
4つの型と指定の有無を確認すれば、報告漏れを防げます。

よくある質問

Q消防用設備等点検を毎年受けていれば、建築基準法の報告は不要ですか?
Aいいえ、不要にはなりません。消防法と建築基準法は別の法律で、それぞれ別に報告義務を課しています。
Q事務所ビルは必ず特定建築物になりますか?
Aなりません。階数が3階以上で延べ面積が200平方メートルを超える事務所ビルなどは指定の対象になり得ますが、実際に義務が生じるのは特定行政庁が指定した場合だけです。
Q新築したばかりの建物でも、すぐに定期報告が必要ですか?
A必要ありません。検査済証の交付を受けた直後の報告時期は除かれるため、最初の報告は次の時期からになります。
Q昇降機の検査と建物本体の調査は同じ書類で済みますか?
A済みません。昇降機・建築設備・防火設備はそれぞれ別の様式で報告するよう定められています。

まとめ

建物の点検報告には消防法だけでなく建築基準法第12条の定期報告があります
施行令第16条第1項が挙げる4つの型に当てはまれば、無条件で報告義務を負います
劇場や病院、共同住宅、一定規模以上の学校などが、この4つの型の中心です
4つの型に入らなくても、特定行政庁が個別に指定すれば報告義務が生まれます
昇降機・防火設備は特定建築設備等として、建物本体とは別枠で検査・報告されます
報告の周期は建物本体がおおむね6か月から3年、設備側がおおむね6か月から1年です
新築直後の一回目は報告時期から除かれるため、次の報告時期がいつになるかを特定行政庁に確認しておく必要があります

建築基準法の報告まで確認しないといけないとは、思ってもいませんでした!

特定行政庁への確認まで含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 建築基準法第12条(昭和25年法律第201号)
  • 建築基準法施行令第14条の2・第16条(昭和25年政令第338号)
  • 建築基準法施行規則第5条・第6条(昭和25年建設省令第40号)
  • 消防法第36条第1項において準用する同法第8条の2の2 ほか消防法にもとづく点検報告制度

※本記事は建築基準法・同施行令・同施行規則にもとづき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。個別の建物が特定建築物・特定建築設備等の指定を受けているかどうかは、所轄の特定行政庁(建築指導課等)にご確認ください。

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