立入検査のあと、消防署から防火対象物の使用停止を命じる命令書が届いたら、多くの管理権原者は戸惑います。
命令の内容に納得できないとき、防火管理者や管理権原者はどう動けばよいのでしょうか。
消防法は、命令を争うための期限と、命令が誤りだったときの補償の仕組みを、実は条文レベルで用意しています。
この記事では、消防法第6条が定める争い方の期限と損失補償の仕組みを、実際の条文にもとづいて解説します。
立入検査で指摘された箇所を直したつもりだったのに、急に使用停止命令が届きました。
落ち着いてください。
命令の内容に納得できないなら、争う方法が消防法にちゃんと用意されています。
争うと言っても、もう手遅れなんじゃないでしょうか。
実は期限は30日しかありませんが、期限内なら審査請求や訴訟で争えますし、命令が誤りだったときの補償の仕組みもあります。
- 命令に不服があるときは審査請求または取消訴訟で争うことができます
- 争うための期限は命令を受けた日から30日で、一般の行政処分よりも大幅に短くなっています
- 期限を過ぎても正当な理由があれば例外が認められる場合があります
- 命令が誤りだったときは時価で損失が補償されます
- 補償にかかる費用は命令を出した市町村が負担します
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目次
消防の命令に不服があるときはどう争えばよいのか

命令の内容に納得できないとき、消防法は争うための手段をあらかじめ用意しています。
審査請求は消防長や都道府県知事など上級の行政機関に見直しを求める手続きで、取消訴訟は裁判所に命令そのものの取り消しを求める手続きです。
どちらを選ぶかは状況次第ですが、条文が想定しているのはこの2つです。
命令を受けた側が黙っていれば、命令はそのまま確定してしまいます。
まずは命令の内容と受け取った日付を正確に記録することが出発点になります。
命令書を受け取ったら、まず何をすればいいんですか。
命令の内容と受け取った日付を書き留めてください。
争うかどうかを決める期限が、そこから動き出します。
争うにはどれくらいの期限があるのか

消防法が定める期限は、一般の行政処分よりもかなり短めです。
一般の行政処分を争う取消訴訟は行政事件訴訟法により6か月の猶予がありますが、消防法上の命令はその5分の1以下です。
これは火災予防にかかわる命令を早期に確定させ、防火対象物を速やかに安全な状態にするためと考えられます。
期限は命令を受けた日、または審査請求の裁決を受けた日のうち、争う対象になるほうを基準に数えます。
ただし正当な理由があれば例外が認められることもあるので、期限を過ぎたからと即座にあきらめる必要はありません。
たった30日しかないんですか。
はい、一般の行政処分よりずっと短いです。
命令を受けたらすぐに、争うかどうかを判断してください。
命令が誤りだったとき損失はどう補償されるのか

消防法は、命令によって生じた損失そのものを補償する仕組みも用意しています。
訴訟で命令が取り消された場合はもちろん、取り消されなくても、実際には防火対象物が法令に違反していなかったと分かれば同じように補償の対象になります。
補償の対象は命令によって生じた具体的な損失で、金額は時価で算定されます。
つまり、命令を争って勝つかどうかにかかわらず、違反がなかったという事実そのものが補償の根拠になり得るということです。
補償を受けるには、命令当時の防火対象物の状態を裏づける記録が重要になります。
裁判で負けても、補償してもらえることがあるんですか。
はい。
命令のあと実際には違反していなかったと分かれば、判決の結果にかかわらず時価で補償されます。
実務で見落としやすいのはどこか

実務で見落としやすい点を整理します。
命令を出したのが消防長や消防署長であっても、費用を負担するのは当該市町村と条文で決まっています。
また、補償されるのはあくまで命令によって生じた損失であり、命令とは無関係な営業損失まで自動的に埋め合わされるわけではありません。
30日の期限を過ぎてしまうと、命令そのものを争う道は原則として閉ざされます。
争うかどうかを決める前に、命令の根拠になった立入検査の記録を確認しておくことが、実務上の落とし穴を避ける近道です。
補償はどこに請求すればいいんですか。
命令を出した消防本部がある市町村です。
あわせて立入検査の記録も確認しておきましょう。
明日からなにをすればよいのか

最後に、明日からできる具体的な手順を整理します。
命令書は受け取った日付ごと保管し、内容を写真や写しで残しておきます。
納得できない点があれば、30日以内に審査請求と取消訴訟のどちらで争うかを決めます。
判断に迷うときは、早い段階で所轄消防署や弁護士に相談するのが確実です。
命令の前提になった立入検査の指摘事項を防火管理者側でも記録しておくと、争うときにも補償を求めるときにも役立ちます。
分かりました、まず命令書をきちんと保管します。
迷ったときは一人で抱え込まず、早めに専門家に相談することが安全につながります。
よくある質問
まとめ
命令には期限があること、忘れずに覚えておきます。
命令書が届いたときは、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第6条(訴の提起及び損失補償)
- 消防法第5条(防火対象物の火災予防措置命令)・第5条の2(防火対象物の使用禁止、停止又は制限の命令)
- 行政事件訴訟法第14条(出訴期間)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。




