建築基準法は、車庫や避難階段、共同住宅の廊下といった建物の構造そのものに防火・避難の基準を課しています。
消防法とは別の法律ですが、防火管理者が点検や立入検査で建物を見るときには避けて通れない領域です。
車庫の開口部やボーリング場の区画、避難階段の中のエレベーター室など、判断に迷う場面は少なくありません。
建築基準法の質疑応答が示したのは、用途や構造の実態に沿って一つずつ当てはめて読む考え方です。
うちのビル、屋根だけで壁が無い駐車場があるんですけど、防火戸が要るって言われて驚きました。
壁が無くても外壁の開口部として扱われます。
避難階段のそばにエレベーターがあるのも気になっていて。
そこも含めて5つの実務Q&Aを見ていきます。
- 開放型の自動車車庫でも延焼のおそれのある開口部には防火設備が必要とされ誘導車路など通行専用の部分だけが除かれます
- ボーリング場や屋内プールの主たる用途部分は防火区画の対象外になりますが附属の飲食店部分は区画が必要です
- 避難階段は他の部分との耐火構造の区画を保てばエレベーター室を設けても差し支えありません
- 階段室型共同住宅は容易に破壊できる隔板を設けたバルコニー経由なら隣接する直通階段も同じ建築物内として使えます
- 敷地に高低差があり消防車の進入が難しくても非常用進入口の設置義務はなくなりません
▼
目次
開放型の自動車車庫に防火戸は要るか

それでも延焼のおそれがある部分をどう扱うかが、最初の判定になります。
開放型の車庫は壁がないため規制の対象外に見えますが、延焼のおそれのある開口部という扱いは変わりません。
建築基準法第2条第9号の2にいう防火設備(当時の通知では防火戸と呼ばれていました)を、車が止まる面には設ける必要があります。
ただし誘導車路のように通行専用で車両を駐留させない部分は、この義務から外れます。
点検で車庫を見るときは、車が止まる面と通行だけの面を分けて確認してください。
屋根だけで壁が無い車庫でも、防火戸が要るんですね。
車が止まる面には要ります。
通行専用の面とは分けて考えてください。
ボーリング場や屋内プールは防火区画の対象外か

主たる用途の部分と、そこに併設される部分とで扱いが分かれます。
ボーリング場や屋内プールのように大空間を使う運動施設は、令第112条の防火区画から外れる部分として扱われます。
大空間を仕切ると施設として機能しなくなるという理由で、体育館などと同じ考え方が採られています。
一方で附属の飲食店や喫茶店は主たる用途と別に扱われ、区画の対象に戻ります。
ボーリング場や屋内プールに食堂や売店が併設されているなら、区画の有無を用途ごとに分けて確認してください。
レーンのフロアだけじゃなく、中の喫茶店も同じ扱いになるんですか。
いいえ、附属の飲食店部分は区画の対象に戻ります。
避難階段の中にエレベーター室を設けてよいか

区画の状態がどうなっているかが判断の軸になります。
避難階段は他の部分と耐火構造で区画することが条件で、区画さえ保たれていれば階段室部分にエレベーター室を置くことも認められます。
当時の回答は「甲種防火戸」という語を使っていますが、現在は特定防火設備という呼び方に変わっています。他の部分と切り離す遮炎性能を持たせる考え方そのものは変わっていません。
区画が甲種防火戸相当の性能を保っているかどうかが、認められるかどうかの分かれ目になります。
避難階段にエレベーターが接している建物では、区画の壁や戸がどの範囲を囲っているかを図面で確認してください。
避難階段のすぐそばにエレベーターがあるうちのビル、大丈夫でしょうか。
区画がきちんと囲われているかを図面で確認しましょう。
共同住宅でバルコニー経由の隣の階段を使ってよいか

この隣の階段を、自分の住戸の避難経路として数えてよいのかが問題になります。
バルコニーに容易に破壊できる隔板を設けて隣戸側に避難できる作りなら、面している直通階段だけでなく隣接する直通階段も避難経路として数えられます。
これは建築基準法施行令第117条第2項に基づく取り扱いで、階段室型共同住宅の避難経路を実際の使われ方に合わせて読む考え方です。
隔板が壊せる構造になっていることが前提なので、施錠された固定の壁では成り立ちません。
バルコニーで隣戸とつながる共同住宅では、隔板が実際に容易に壊せる材質かどうかを確認してください。
バルコニーの隔て板を壊して隣の階段まで逃げる、あの作りですよね。
はい、その隔板が壊せる前提で認められています。
消防車が進入できない敷地でも非常用進入口は要るか

進入口を設けても実際には使えないのではないかという疑問が、そのまま質疑になっています。
消防車が進入口の直前まで近づけない敷地であっても、非常用進入口の設置義務そのものは変わらないという回答です。
公共消防の側では、そうした個別の敷地条件に応じて消防戦闘方法をあらかじめ検討していると付け加えられています。
また、このような場合は進入口の代わりに非常用エレベーターを設ける方が望ましいという行政指導の方向も示されています。
敷地に高低差がある建物では、進入口の位置と消防車の実際の到達範囲を消防署に確認しておくと話が早くなります。
山側の斜面に建っているので、消防車が近づけないんです。
それでも進入口は必要です。
一度、消防署にもご相談ください。
よくある質問
まとめ
車庫もボーリング場も、思っていたより細かく判定基準があるんですね。
うちの建物も一度見てもらいます。
用途と区画と経路を順に
図面と現地で確かめてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 建築基準法の疑点(防火区画)について(昭和46年12月4日 住指発第905号 建設省住宅局建築指導課長から大阪府建築士会あて回答)
- 建築基準法の疑点(非常用進入口)について(昭和46年12月4日 住指発第905号 建設省住宅局建築指導課長から大阪府建築士会あて回答)
- 開放自動車車庫の開放部の取扱いについて(昭和48年2月28日 住指発第110号 建設省住宅局建築指導課長から愛知県建築部長あて回答)
- 避難階段内のエレベーター室の位置について(昭和26年9月18日 住指第478号 建設省住宅局建築指導課長から愛知県建築部長あて回答)
- 階段室型共同住宅に対する建築基準法施行令第117条第2項の解釈について(昭和54年1月24日 住指発第1号 建設省住宅局住宅建設課長から)
- 建築基準法第2条・建築基準法施行令第112条・第117条・第123条・第126条の6
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答はそれぞれの発出当時のもので、通知番号や機関の名称、条文番号等は当時のものです。その後の改正により運用や条文番号が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の特定行政庁または消防署にご確認ください。





