簡易宿泊所の火災が、川崎市で起きました。
死者5名・負傷者19名。消防庁はその翌日、防火対策の更なる徹底を求める通知を全国に出しました。
通知が求めたのは、法令違反の是正だけではありません。
通知が示したのは違反の有無に関わらず講じるべき対策があるという線引きです。
うちも簡易宿所を運営していて、川崎市の火災のニュースは他人事に思えません。
消防法令の違反さえなければ大丈夫ですよね。
実はそうとも言い切れません。
この通知は違反が無い施設にも対策の徹底を求めているんです。
具体的に何をすればいいのか、正直つかめていません。
順番に見ていきましょう。
通知の言葉をそのまま確認しながら、3つの柱を見ていきます。
- 川崎市の簡易宿泊所火災を受け、消防庁が全国の簡易宿所に防火対策の更なる徹底を求めました
- 対象は消防法施行令別表第一(5)項イの旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するものに含まれる簡易宿所です
- 求められているのは夜間の応急体制の確保・消防法令違反の是正・火災予防対策の推進の3本柱です
- 消防法令違反が無い施設にも、夜間想定の訓練や寝具の防炎化など追加の対策が求められます
- 明日からは夜間想定訓練の実施記録と寝具・布張り家具の防炎化状況を確認します
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目次
簡易宿所の防火対策はなぜ急いで出されたのか

消防庁はその翌日には、全国の消防機関へ向けて通知を発出しています。
消防庁は消防法第35条の3の2に基づき消防庁長官の火災原因調査を進める一方で、原因の確定を待たずに再発防止の呼びかけに踏み切っています。
背景にあるのは、死者5名・負傷者19名という被害の大きさです。
同種の施設で同じ被害が繰り返されることを避けるため、当面の措置として全国の簡易宿所に対策の徹底を求めました。
まずはこの通知が、事故のあとすぐに出されたものだと押さえておきます。
原因がまだ分かっていない段階で、もう対策を求められるんですね。
そうです。
原因確定を待たずに動くのが、この通知の特徴です。
簡易宿所とはどんな施設を指すのか

消防法上は、旅館やホテルと同じ枠組みで扱われています。
消防法施行令別表第一(5)項イは、旅館・ホテル・宿泊所その他これらに類するものを一つの区分にまとめています。
規模が小さく、住宅を改装した施設であっても、宿泊料を受けて人を宿泊させる実態があれば、この区分に含まれます。
通知はさらに建築部局や衛生部局との情報共有にも触れており、消防だけで完結する話ではないことを示しています。
自分の施設がどの部局からどんな許可を受けているか、あらためて確認しておく価値があります。
うちは民家を改装しただけですが、それでも旅館やホテルと同じ扱いになるんですね。
宿泊料を取って人を泊める以上は、そうなります。
建築や衛生の窓口とも情報を共有しておいてください。
通知はどんな対策を求めているのか

まずは、夜間に火災が起きたときの体制から見ていきます。
簡易宿所は昼間の店舗と違い、利用者の多くが就寝中に被災します。
起こしてから避難させるまでの時間がかかるぶん、従業員の避難誘導と通報を確実にする訓練が要る、という理屈です。
通知はほかにも、消防法令違反の是正と、放火防止・火気管理・避難経路の管理・寝具の防炎化など5つの事項からなる火災予防対策の推進を挙げています。
3つの取り組みのうち、まず自施設の訓練記録に夜間想定の項目があるかを確認してください。
昼間の避難訓練しかやったことがありません。
それでは通知の想定から外れます。
就寝中の想定を1回加えるだけでも変わります。
法令違反が無ければ対策は不要なのか

では、違反が無い施設は何もしなくてよいのでしょうか。
2番目の柱は、あくまで違反がある施設への是正指導を指します。
一方で3番目の柱の火災予防対策は、違反の有無を問わず全ての簡易宿所に向けたものです。
なかでも寝具や布張り家具の防炎性能は使用の推進という言い回しにとどまり、罰則を伴う義務ではありません。
点検で違反無しとされていても、寝具の防炎化までは対象外のことがあるので、あわせて確認しておく必要があります。
点検で違反無しと言われたので、安心していました。
点検の合否と、寝具の防炎化は別物です。
ソファーや布団のタグも見ておいてください。
明日から何を確認すればよいのか

どれも今日から始められる点検です。
建物の周囲に段ボールや燃えやすい物を放置していないか、まず外から確認します。
次に喫煙場所と厨房まわりの火気管理、そして階段や通路の防火戸・防火区画が普段どおり機能しているかを見ます。
最後に寝具や布張り家具が防炎性能を持つ製品に置き換わっているかを確認してください。
夜間想定の訓練とあわせて、これらを一覧にしておけば、次の立入検査にもそのまま使えます。
外周・火気・避難経路・寝具の4点をチェックすればいいんですね。
はい。
その4点と夜間訓練の記録をあわせて一覧にしておきましょう。
よくある質問
まとめ
違反の有無で線引きしないという意味が分かりました。
今日から確認します。
夜間の訓練、火気と避難経路の管理、寝具の防炎化。
この3つを一覧にしておけば大きく外しません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 簡易宿所に係る防火対策の更なる徹底について(平成27年5月18日 消防予第201号 消防庁予防課長)
- 消防法第35条の3の2
- 消防法施行令別表第一(5)項イ
- 消防実務六法 通達編
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





