地域防災計画があるなら、消防計画は要らないのではないか。
昭和38年に県が最初の地域防災計画を作ったとき、実際にそういう指導が行われた県がありました。
回答は、両計画が部分的に重複することを認めたうえで、それでも消防計画は必要だとしています。
分かれ目はどこまで細かく書くかにあります。
地域防災計画の中に消防計画を入れてしまえば、1本で済むのではないですか。
回答は、両計画が部分的に重複することを認めたうえで、消防計画では防災計画よりさらに具体的かつ細目的に定めておく必要があるとしています。
防災会議を共同設置したので、地域防災計画も1本にまとめてよいですか。
共同設置は事務処理の効率化が目的であり、構成市町村は個々に地域防災計画を作成する必要があるとされました。
この記事の結論
- 両計画は部分的に重複しますが、消防計画では防災計画よりさらに具体的かつ細目的に定めておく必要があります
- 地域防災計画は詳しく盛り込めばよいのではなく、基準だけで足りる事項と具体的に定めるべき事項があります
- 防災関係機関の事務または業務の大綱は、別項目として掲げて関連づけを明確にさせておくべきものとされました
- 防災会議を共同設置しても、構成市町村は個々に地域防災計画を作成する必要があります
- 防災計画そのものが住民を縛るのではなく、それぞれの法令に基づいて法的義務を負うものとされています
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目次
消防計画と地域防災計画はどう違うか

消防計画は防災計画とは別個に作成するものとして指導されていた。ところが県が最初の地域防災計画を作るときには、防災計画の中の消防計画だから中に入れるべきだと指導した。作成要領にもそう明示してある。
この2つの指導は矛盾していないのか、という問いです。
問 消防計画と地域防災計画との関連について
消防計画は、防災計画とは別個に作成するものとして指導がなされているが、昭和38年県が最初に地域防災計画を作成する際は、防災計画の中の消防計画であるので、防災計画の中に入れるべきであると指導している(作成要領にも明示してある)が、この点に矛盾はないか。
消防計画は、防災計画とは別個に作成するものとして指導がなされているが、昭和38年県が最初に地域防災計画を作成する際は、防災計画の中の消防計画であるので、防災計画の中に入れるべきであると指導している(作成要領にも明示してある)が、この点に矛盾はないか。
答 地域防災計画は、地域ならびに地域住民の生命身体および財産を災害から保護するため、防災に関して必要な組織体制およびこれを構成する関係諸機関の行なうべき活動等を定めた総合的な計画であり消防機関もその行なうべき活動分野が定められている。消防機関は上の責務を十分果たすためには、消防機関自身の活動計画を定めておく必要があると思われる。
この場合、両計画は部分的に重複するが、消防計画では防災計画よりさらに具体的かつ細目的に定めておく必要がある。
この場合、両計画は部分的に重複するが、消防計画では防災計画よりさらに具体的かつ細目的に定めておく必要がある。
回答は矛盾を否定していません。重複することを認めたうえで、それでも別に作る理由を示しています。
地域防災計画は総合的な計画です。組織体制を決め、関係諸機関それぞれの活動分野を定めます。消防機関の活動分野もそこに書かれます。
ただし、書かれているのは分野です。その責務を実際に果たすには、消防機関自身の活動計画がいる。それが消防計画です。
2つの計画の関係は、上下でも代替でもありません。粒度が違うだけです。同じ事柄について、地域防災計画は誰が何をするかまでを書き、消防計画はそれをどう実行するかまで書きます。
建物ごとの消防計画も考え方は同じです。市町村の地域防災計画に消防機関の活動が書かれていても、事業所が自分の建物でどう動くかは自分で決めるほかありません。
地域防災計画はどこまで詳しく書くか

各県の地域防災計画を見ると、災害救助策の事務手続きから仮設住宅の設計まで書き込んでいるものがある。ここまでやるのが望ましいのか。
県の計画は、各防災関係機関の手順が位置づけられていればよいのではないか、という照会でした。
問 地域防災計画策定の方向について
各県の実例を見るに極めて詳細にわたつている。詳細であることには異論はないが、たとえば、災害救助策の事務手続き面あるいは仮設住宅の設計策まで作成しているが、このようなスタイルが望ましいものかどうか。
各県の実例を見るに極めて詳細にわたつている。詳細であることには異論はないが、たとえば、災害救助策の事務手続き面あるいは仮設住宅の設計策まで作成しているが、このようなスタイルが望ましいものかどうか。
答 地域防災計画を実践的なものとして具体的に作成すべきであることは異論ないと思う。このことは、質問のように詳細に盛込むこととは少々意味が異なる。
県の計画は、掲げる事項によつて基準だけでも足りるものもあれば、具体的に定めておくべきものもあると思う。たとえば、県の計画は、次のような三つの場合が考えられるからである。
(1) 県自体が応急措置を直接末端まで実施する場合。
(2) 県の計画を受けて市町村が実施する場合。
(3) 市町村が計画し実施する場合で県では基準だけを定めておくもの。
県の計画は、掲げる事項によつて基準だけでも足りるものもあれば、具体的に定めておくべきものもあると思う。たとえば、県の計画は、次のような三つの場合が考えられるからである。
(1) 県自体が応急措置を直接末端まで実施する場合。
(2) 県の計画を受けて市町村が実施する場合。
(3) 市町村が計画し実施する場合で県では基準だけを定めておくもの。
この2語の使い分けが回答の中心です。具体的に作るべきなのは異論がない。ただしそれは、細部まで盛り込むこととは意味が違う。
基準になるのは、誰が実施するかです。県が直接末端まで実施する事項なら、県の計画に手順まで書く必要があります。市町村が計画し実施する事項なら、県は基準だけを定めておけばよい。その中間もあります。
つまり実施主体との距離で粒度が決まります。自分でやることは細かく、他が受けてやることは基準だけ。
この考え方は消防計画にもそのまま使えます。自衛消防隊が自分で動く部分は手順まで、消防隊の到着後に引き継ぐ部分は基準と役割まで。全部を同じ濃さで書こうとすると、使えない分厚い計画ができあがります。
事務または業務の大綱は冒頭に並べるか

各県の計画も指導要領も、これを列挙する方式をとっていました。
しかし、計画の中で総合的有機的に位置づけられていれば足りるのであって、わざわざ冒頭に並べる必要はないのではないか。青森県からの照会です。
問 災害対策基本法第40条第2項第1号について
……事務または業務の大要については、解説にあるとおり個別的に、羅列することでなく——勿論このことは列挙することとは意味が異なるとは思うが——計画の中で総合的有機的にそれぞれが位置づけられておれば足りるものであり、あえて計画書の冒頭に列挙することはないと思うがどうか。
……事務または業務の大要については、解説にあるとおり個別的に、羅列することでなく——勿論このことは列挙することとは意味が異なるとは思うが——計画の中で総合的有機的にそれぞれが位置づけられておれば足りるものであり、あえて計画書の冒頭に列挙することはないと思うがどうか。
答 災害対策基本法第40条第2項第1号の事務または業務の大綱については、別項目として掲げることにより、各防災関係機関の関連づけ(つながり)を明確にさせておくべきものであり、もちろん同第2項第2号の各事項の計画のなかで総合的、有機的に折り込むべきものであることは当然である。
問いは、冒頭に並べるか本文に溶かし込むかの二択で立てられました。回答はその二択に乗っていません。
別項目として掲げる。そのうえで各事項の計画のなかにも折り込む。両方やるべきだという答えです。
別項目にする理由がはっきり書かれています。各防災関係機関の関連づけ、つまりつながりを明確にさせておくためです。誰がどこを担うのかを一覧で押さえられなければ、抜けや重なりに気づけません。
一方で、一覧を置いただけでは動きません。だから各事項の計画のなかに織り込むことも当然だとされています。
消防計画で役割分担表を作ってから各活動の手順に落とすのと、まったく同じ構造です。
共同設置でも計画は市町村ごとに作る

会議を1つにまとめたのだから、そこで作る計画も1本になるのではないか。
問 災害対策基本法第16条第2項の規定により市町村が共同して市町村防災会議を設置したときは、地域防災計画も共同して作成することになるのか。
答 市町村防災会議の共同設置は、防災会議の共同運営により事務処理の効率化を目的としたものであり、構成市町村は個々に地域防災計画を作成する必要がある。
共同設置の目的が事務処理の効率化だと明示されています。会議体の運営を効率よくするための仕組みであって、計画の主体まで1つにするものではありません。
前の記事で見た災害対策本部の話と、線の引き方が同じです。本部も共同設置はできませんでした。理由は災害応急対策の実施責任が個々の執行機関に課せられているからです。
計画も本部も、実行する責任が市町村ごとに分かれている以上まとめられない。まとめられるのは、会議のように調整を担う場だけです。
共同設置を導入するときは、効率化できる範囲を最初に切り分けておくと迷いません。
防災計画は住民を直接縛るか

では計画に書いてあれば、それだけで住民に義務が生じるのか。
問 防災計画は個々の住民に対して法的規範力を有するか。
答 それぞれの法令に基づいて法的義務を負うものである。
一行の回答ですが、計画というものの位置づけを示しています。
住民が義務を負うのは、計画に書かれているからではありません。それぞれの法令に基づいて負う。計画は、その法令に基づく活動を組み立てて並べたものです。
裏を返せば、法令に根拠のないことを計画に書いても、それだけで住民を縛ることはできません。計画を作る側から見れば、書けば動かせるわけではないということです。
消防計画も同じ構造です。消防計画の届出義務は消防法第8条に、その内容は施行規則第3条にあります。計画に書いたから義務が生まれるのではなく、法令上の義務を果たすために計画を書きます。
この順番を取り違えると、計画が実態と離れていきます。
よくある質問
Q地域防災計画があれば消防計画は不要ですか?
A回答は、地域防災計画には消防機関の行なうべき活動分野が定められているが、消防機関は上の責務を十分果たすためには消防機関自身の活動計画を定めておく必要があるとしています。両計画は部分的に重複するが、消防計画では防災計画よりさらに具体的かつ細目的に定めておく必要があるとされました。
Q計画は詳しければ詳しいほどよいのですか?
A回答は、具体的に作成すべきであることは異論ないが、それは詳細に盛込むこととは少々意味が異なるとしています。掲げる事項によつて基準だけでも足りるものもあれば、具体的に定めておくべきものもあるとされ、誰が実施するかで書き分ける考え方が示されています。
Q防災会議を共同設置したら計画も1本になりますか?
A回答は、市町村防災会議の共同設置は防災会議の共同運営により事務処理の効率化を目的としたものであり、構成市町村は個々に地域防災計画を作成する必要があるとしています。会議はまとめられますが、計画の主体はまとまりません。
Q計画に書けば住民に義務を課せますか?
A回答は、それぞれの法令に基づいて法的義務を負うものであるとしています。義務の根拠は計画そのものではなく法令の側にあります。法令に根拠のないことを計画に書いても、それだけで住民を縛ることはできません。
まとめ
- 地域防災計画は組織体制と関係諸機関の活動等を定めた総合的な計画です
- 消防機関が責務を果たすには消防機関自身の活動計画が必要とされました
- 両計画は部分的に重複しますが、消防計画はさらに具体的かつ細目的に定めます
- 具体的に作ることと詳細に盛込むことは意味が異なります
- 事務または業務の大綱は別項目として掲げて関連づけを明確にし、各事項の計画にも折り込みます
- 防災会議を共同設置しても計画は市町村ごとに作成します
- 住民の義務はそれぞれの法令に基づくもので、計画そのものが規範力を持つのではありません
細かく書けばいいわけではない、というのは消防計画でも同じですね。
自分で動く部分は手順まで、引き継ぐ部分は役割まで。この切り分けが要ります。消防計画の作成は㈱防災屋でも承っています。
参考・出典
- 消防計画と地域防災計画との関係について(鹿児島県あて回答)
- 地域防災計画策定の方向について(昭和41年6月9日 自消丙発第132号 青森県あて回答)
- 市町村地域防災計画作成の指導要領等について(昭和41年6月9日 自消丙発第132号 青森県あて回答)
- 地域防災計画の共同作成について
- 防災計画の法的規範力について
- 災害対策基本法第16条第2項・第40条第2項
- 消防法第8条
- 消防法施行規則第3条
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答には昭和40年代のものが含まれ、条番号や機関の名称等は当時のものです。個別の事案についての適用は、所轄消防署または自治体にご確認ください。




