避難・消火困難な物品販売店舗において講ずべき防火安全対策について(平成17年8月9日 消防予第190号・消防安第178号)は、独立陳列棚の商品が天井に迫る売場を対象にした防火安全対策の通知です。
きっかけは平成16年12月13日に発生したドン・キホーテ浦和花月店火災で、消防庁は専門家による検討会を設けて火災実験まで行いました。
対象になると避難通路や監視カメラ、初期消火訓練など具体的な対策が求められますが、実態調査では対策を全て満たした店舗は半数にとどまっていました。
この記事では区分の基準と実際に求められる対策、いまも残る課題を確認します
うちの店も陳列棚が天井近くまで商品でいっぱいです。
実はそれ、防火上の特別な区分に当たることがあります。
ドン・キホーテの火災がきっかけだったんですね。
はい、その経緯から見ていきましょう。
- 避難・消火困難な物品販売店舗の区分は平成17年8月9日 消防予第190号・消防安第178号で示されました
- きっかけは平成16年12月13日に発生したドン・キホーテ浦和花月店火災です
- 該当するのは独立陳列棚の商品の上端が天井から80cm以内にある物品販売店舗です
- 求められるのは放火防止・初期消火・避難通路(7m以下または100㎡以下)の3本柱の対策です
- 平成17年の実態調査では対象512件のうち避難対策を全て満たしたのは257件(50.2%)にとどまりました
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目次
なぜ物品販売店舗に新しい防火の区分ができたのか

その区分がどうやって生まれたのかを確認します。
平成16年12月13日に発生したドン・キホーテ浦和花月店火災を受けて、消防庁は「避難・消火困難な物品販売店舗における防火安全対策検討会」を設置しました。
委員長は独立行政法人消防研究所理事長の室崎益輝氏で、量販店等の実態把握や火災実験まで行って検討を進めました。
その結果をまとめたのが平成17年8月9日付けの消防予第190号・消防安第178号通知です。
量販店特有の陳列方法に着目した、それまでにない切り口の通知でした。
1件の火災からここまで調査するんですね。
はい、火災実験までして原因を突き止めました。
どんな売場が避難消火困難店舗にあたるのか

判定の目安を確認します。
独立陳列棚に積まれた石油系のクッション家具や化繊衣類は、燃え広がる速さが一般的な売場の2倍、事務所用途と比べると4倍から8倍にもなります。
さらに商品の上端と天井との距離が80cm以内だと、短時間で隣の陳列棚に燃え移り裏面まで高温になりやすいとされています。
建物の用途区分そのものは消防法施行令別表第一(4)項の物品販売店舗のままで、変わるのは追加でかかる防火安全対策です。
陳列棚どうしの間隔よりも、天井までの高さのほうが延焼のスピードを左右します。
うちの陳列棚は天井までぎっしりです、対象になりますか。
80cmの隙間があるかどうかがまず目安になります。
該当した売場は何を求められるのか

柱になる3つの対策を確認します。
放火対策としては死角になりやすい場所への放火監視センサーや監視カメラの設置、従業員による巡回の強化が求められます。
消火対策は消火器や屋内消火栓設備の使用方法を全ての従業員が習熟しておくことが柱です。
避難対策では売場のあらゆる場所から歩行距離7m以下、または売場面積を100㎡以下にする措置が求められます。
避難階に売場を置く場合は、直通階段を防火設備で区画し、階段近くの陳列棚を通路から4m以内には置かないことも必要です。
求められる対策はやっぱり工事が必要なんですか。
多くは避難通路の確保や監視カメラといった運用面です。
対策を講じても見落としやすいのはどこか

実際のデータから見落としがちな点を確認します。
190号通知自身が認めているとおり、天井近くまで商品が並ぶ売場では有効な消火が期待できないことも想定されており、専用の自動消火設備はまだ開発段階にとどまっています。
実態調査でも対象512件のうち避難対策を全て満たした店舗は257件(50.2%)にとどまり、約半数は何らかの対策が抜けていました。
特に避難階に売場がある店舗では、必要な措置がとられていないものが227店舗のうち67.5%にのぼりました。
「対策済み」と思い込まず、抜け漏れがないか個別に確認する姿勢が欠かせません。
対策をしても万全とは言えないんですね。
実は自動で消す設備の開発はまだこれからなんです。
明日から売場の何を確認すればよいのか

具体的な確認事項を整理します。
まずは独立陳列棚の商品の上端と天井との距離を測り、80cm以内になっていないか確認します。
該当しそうな売場があれば、避難通路までの歩行距離や売場面積、監視カメラの設置状況もあわせて点検します。
立入検査の機会には所轄消防署に190号通知の内容を確認し、指導内容を消防計画に反映させてください。
従業員には消火器や屋内消火栓設備の使い方を定期的に訓練しておくことも忘れないようにします。
まずは陳列棚と天井の隙間を測ってみます。
はい、そこから今日の売場点検を始めましょう。
よくある質問
まとめ
売場の陳列棚、さっそく見直してみます!
そのひと工夫が被害の広がり方を変えます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 避難・消火困難な物品販売店舗において講ずべき防火安全対策について(平成17年8月9日 消防予第190号・消防安第178号)
- 避難・消火困難な物品販売店舗における実態調査の結果及び防火安全対策の推進について(平成17年12月5日 消防予第369号)
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一(4)項・(16)項イ
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





