避難口の点検というと、扉に鍵がかかっていないかだけを見て終わりにしがちです。
ところが建築基準法施行令は、避難階の屋外への出口について歩行距離と幅と施錠装置の三つを別々に決めています。
どれか一つでも外れていると、いざというときに人が建物の外へ出られません。
この記事では建築基準法施行令第125条と同令第125条の2を条文から読み解き、自分の建物のどの扉を確かめればよいかまで落とし込みます。
避難口の点検といっても、鍵がかかっていないかを見るくらいしかしていません。
ほかにも決まりがあるのでしょうか。
建築基準法施行令は歩行距離と幅と施錠装置の三つを別々に決めています。
どれも避難階の屋外への出口が対象です。
屋外への出口というのは、正面玄関とは違うものなのですか。
うちのビルだとどの扉が当たるのか分かりません。
避難階から外へ出るための出口のことなので、正面玄関がこれに当たることも多いです。
まず避難階がどの階かを押さえるところからです。
- 避難階の屋外への出口には歩行距離と幅と施錠装置の三つの決まりがあります。前の二つが建築基準法施行令第125条、最後の一つが同令第125条の2です
- 階段から出口までの歩行距離は直通階段と同じ数値以下、居室の各部分から出口まではその二倍以下です
- 屋外への出口の幅の合計を計算するのは物品販売業を営む店舗だけで、床面積が最大の階の100平方メートルにつき60センチメートルで求めます
- 施錠装置は屋内からかぎを用いることなく解錠できるものにし、解錠方法を扉の近くに表示します
- 出口の前に物を放置しない管理は建築基準法ではなく消防法第8条の2の4が管理権原者に求めています
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目次
避難階の屋外への出口とはどの扉のことなのか

建築基準法施行令は避難階を条文の中でこう定義しています。
避難階とは直接地上へ通ずる出入口のある階のことなので、多くの建物では一階がこれに当たります。
その階から外へ出るための扉が屋外への出口で、正面玄関がそのまま該当することも珍しくありません。
条文が避難施設等として並べているとおり、屋外への出口は直通階段や屋上広場と同じ列に置かれた避難のための施設です。
どの階が避難階かは建物によって違うので、図面で地上へ直接出られる出入口のある階を先に確かめてください。
直接地上へ通じる出入口のある階が避難階なのですね。
うちだと一階が該当しそうです。
その一階にある外へ出るための扉が第125条の対象になります。
図面で出口の位置に印を付けておいてください。
屋外への出口までの歩行距離はどこまで認められるのか

条文は二つの起点を分けて書いています。
階段からの分は直通階段のときと同じ数値がそのまま上限になり、居室の各部分からの分はその二倍まで認められます。
参照先の第120条の表は、窓のない居室と百貨店やマーケットなど法別表第一(い)欄(四)項の用途に供する特殊建築物の主たる用途に供する居室が構造にかかわらず30メートル、病院や共同住宅など同表(い)欄(二)項の用途に供する居室が主要構造部を準耐火構造などとした場合に50メートルでその他の場合は30メートル、それ以外の居室が同じく50メートルと40メートルという並びです。
第120条第2項と第3項は表の数値そのものを読み替える書き方なので、内装を準不燃材料でした場合の加算や15階以上の階の減算も、避難階の歩行距離を見るときに一緒に効いてきます。
つまり上階の歩行距離を調べた資料があれば、その数値を避難階でも使い回せるということです。
歩行距離は直通階段のときと同じ数字を使ってよいのですね。
覚え直さなくてよいのは助かります。
階段からの分は同じ数値で、居室からの分だけ二倍になります。
起点が二つあることだけ押さえておいてください。
屋外への出口の幅はどう計算するのか

ただし対象になる用途はかなり絞られています。
しかもここでいう物品販売業を営む店舗は、第121条第1項第二号の括弧書きが床面積の合計が1,500平方メートルを超えるものに限ると定めており、その括弧書きは第125条第3項にも及ぶと条文に明記されています。
計算の分母になるのは建物の延べ面積ではなく床面積が最大の階の床面積で、その階が2,000平方メートルなら20を60センチメートルに掛けて1,200センチメートル、つまり12メートルが避難階の屋外への出口の幅の合計の下限になります。
第4項が第124条第3項を準用しているので、床面積が最大の階を選ぶときは屋上広場も階として数えます。
売場のある建物を管理している方は、避難階の外へ出る扉の有効幅を全部足した数値を一度出しておいてください。
売場のある建物だと幅の計算まで出てくるのですね。
うちは事務所なので関係がなさそうです。
幅の合計の計算は物品販売業を営む店舗だけの決まりです。
ご自身の建物の用途を確かめておきましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

そこを受け持っているのが次の条文です。
条文が求めているのは、屋内からかぎを使わずに解錠できる構造にすることと、解錠方法を戸の近くの見やすい場所に表示することの二つです。
第三号が普段は鎖錠している出口をわざわざ拾っているとおり、常時閉め切っている裏口でも避難の用に供すべきものならこの条文が働きます。
施錠装置の構造と表示の基準は同条第2項で国土交通大臣が定めることとされており、第125条第2項の内開き禁止のほうは劇場や集会場などの客用の出口に対象が限られています。
なお外へ出たあとの敷地内の通路は第128条が別に幅員を決めているので、扉を開けた先で行き止まりになっていないかも一緒に見てください。
防犯のために裏口へ鍵をかけているのですが、まずいでしょうか。
夜間だけのつもりでした。
屋内からかぎを用いることなく解錠できる構造かどうかが分かれ目になります。
戸の近くに解錠方法の表示があるかも見てください。
明日からなにを確認すればよいのか

建築基準法の決まりと並んで、消防法にも管理権原者への求めがあります。
はじめに避難階がどの階かを図面で確かめ、その階にある外へ出るための扉に印を付けます。
次に階段からその扉まで、そして居室の各部分からその扉までの動線をたどり、上階の歩行距離を調べた資料の数値と突き合わせます。
そのうえで扉ごとに、屋内からかぎを使わずに開けられるかと、解錠方法の表示が近くにあるかを一枚ずつ確かめてください。
最後に扉の前と扉を開けた先に物が置かれていないかを見れば、建築基準法側と消防法側の両方を一度の巡回で押さえられます。
図面と現場を突き合わせればよいのですね。
今週の巡回でやってみます。
扉の前に物が置かれていないかも一緒に見てください。
そちらは消防法が管理権原者に求めているところです。
よくある質問
まとめ
見るところがはっきりしたので、今週の巡回から屋外への出口を重点的に確かめます。
図面と現場が合わないときは早めに確かめておくのが安全です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第35条
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第13条・第117条・第120条・第121条・第124条・第125条・第125条の2・第128条
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の2の4
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。




