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高発泡の泡消火設備は部屋のどこまで泡で満たすのか|全域放出方式で決まる冠泡体積と膨脹比の区分を解説

高発泡の泡消火設備が設けられた倉庫の天井と積み上げられた荷の写真

古紙や段ボールを大量に積む倉庫では、天井から泡を出して部屋ごと満たす消火設備が使われることがあります。
このときの泡は高発泡と呼ばれ、水をかけて消すのではなく泡の体積で覆って消す考え方に立っています。
消防法施行規則第18条は、その泡をどこまで満たすのかを冠泡体積という言葉で決めています。
荷を高く積み増すと満たすべき体積そのものが変わります

倉庫の天井に大きな箱のような機械が並んでいます。
スプリンクラーとは違って泡を出すものだと聞きました。

高発泡用泡放出口といって、部屋を泡で満たすための設備です。
消防法施行規則第18条が膨脹比で泡の種別を分けています。

部屋を満たすということは、天井まで泡だらけになるのでしょうか。
どこまで入れる決まりなのか気になります。

天井までではなく、守るものの最高位より少し高いところまでです。
その体積のことを冠泡体積と呼びます。

この記事の結論
  • 高発泡とは膨脹比が80以上1000未満の泡のことで泡ヘッドではなく高発泡用泡放出口を使います。根拠は消防法施行規則第18条第1項第一号です。
  • 防護対象物のうち床面からの高さが5メートルを超える場所に高発泡用泡放出口を設けるものは全域放出方式にすることとされています。
  • 冠泡体積とは床面から防護対象物の最高位より0.5メートル高い位置までの体積です。天井までの体積ではありません。
  • 泡放出口は一の防護区画の床面積500平方メートルごとに1個以上を設け、防護対象物の最高位より上部の位置となる箇所に設けます。
  • 全域放出方式は防護区画であることと開口部の自動閉鎖装置が前提で、漏れる量以上を追加放出できる設備のときは自動閉鎖装置を設けないことができます。

高発泡の泡消火設備で膨脹比と区画された部分と冠泡体積と放出口の数を順に確かめる流れを示した図解

高発泡の泡とはどれくらいふくらんだ泡なのか

小さな容器の泡水溶液から大きくふくらんだ泡ができるようすを並べたイラスト
泡消火設備の泡は、どれも同じものではありません。
消防法施行規則第18条第1項第一号は、ふくらみ方の違いで泡放出口の種別を分けています。
消防法施行規則第18条第1項第一号 泡放出口は、次の表の上欄に掲げる膨脹比(発生した泡の体積を泡を発生するに要する泡水溶液(泡消火薬剤と水との混合液をいう。以下この条において同じ。)の体積で除した値をいう。以下この条において同じ。)による泡の種別に応じ、同表下欄に掲げるものとすること。/同号の表 膨脹比が二十以下の泡(以下この条において「低発泡」という。)=泡ヘッド 膨脹比が八十以上千未満の泡(以下この条において「高発泡」という。)=高発泡用泡放出口
膨脹比とはふくらみ方の倍率です
条文は、できあがった泡の体積を、その泡をつくるのに使った泡水溶液の体積で割った値と定義しています。
この値が20以下なら低発泡で、天井に付けるのは泡ヘッドになります。
80以上1000未満なら高発泡で、使うのは高発泡用泡放出口です。
同じ泡消火設備という名前でも、この一行で設備の姿がまったく変わります。

天井の箱が大きいのは、泡をたくさんつくるからということでしょうか。

もとになる泡水溶液の何十倍もの体積の泡をつくる仕組みだからです。
だから機械そのものが大きくなります。

どの高発泡の設備を全域放出方式にしなければならないのか

扉と天井の泡放出口を備えた区画された部屋のイラスト
高発泡用泡放出口の設け方には、部屋を泡で満たす全域放出方式と、守るもののまわりだけを覆う局所放出方式があります。
どちらを選んでもよいわけではありません。
消防法施行規則第18条第4項第二号 防護対象物のうち床面からの高さが五メートルを超える場所に設ける高発泡用泡放出口を用いる泡消火設備は、全域放出方式のものとすること
高いところは全域放出方式に限られます
防護対象物のうち床面からの高さが5メートルを超える場所に高発泡用泡放出口を設けるものは、全域放出方式にすることとされています。
天井の高い倉庫で荷を高く積み上げている場合が、ちょうどこれに当たります。
全域放出方式は部屋を区画して泡で満たす方式なので、泡の量だけでなく部屋そのものの造りが条件に入ってきます。
自分の建物の設備がどちらの方式なのかは、設置時の図面や消防用設備等点検結果報告書で確かめられます。

うちの倉庫は天井が高いので、そうすると全域放出方式になるのでしょうか。

天井の高さではなく防護対象物の高さで決まります。
床面から5メートルを超える場所に放出口を設けるなら全域放出方式です。

冠泡体積はどこまでの体積を数えるのか

荷の山とその上まで泡で満たされた体積を並べたイラスト
全域放出方式で決めなければならないのは、泡水溶液をどれだけ出すかです。
その基準になるのが冠泡体積という体積です。
消防法施行規則第18条第1項第三号イ(イ) 泡放出口(泡発生機を内蔵しないものにあつては当該泡発生機を含む。以下同じ。)の泡水溶液放出量は、次の表の上欄及び中欄に掲げる防火対象物又はその部分の区分及び泡放出口の膨脹比による種別に応じ、当該防護区画の冠泡体積(当該床面から防護対象物の最高位より〇・五メートル高い位置までの体積をいう。以下同じ。)一立方メートルにつき、同表下欄に掲げる量の割合で計算した量の泡水溶液を放出できるように設けること。
数えるのは天井までの体積ではありません
床面から、守るものの最高位より0.5メートル高い位置までを積み上げた体積が冠泡体積です。
放出量はこの体積1立方メートルあたりで決められていて、膨脹比の種別ごとに数値が分かれています。
同号の表は、膨脹比が80以上250未満のものを第一種、250以上500未満のものを第二種、500以上1000未満のものを第三種としています。
同じ部屋でも荷をどこまで高く積むかで冠泡体積が変わるので、必要な泡の量もそこで変わります。

つまり荷を高く積むほど、必要な泡の量も増えるということですね。

そのとおりです。
設置したときの最高位を超えて積み上げると計算の前提が崩れます。

泡放出口の数と高さはどこで足りなくなるのか

天井を区画ごとに分けて泡放出口を配置したイラスト
冠泡体積が決まっても、放出口をどこにいくつ付けるかは別に定められています。
数と位置の両方に決まりがあります。
消防法施行規則第18条第1項第三号イ(ロ) 泡放出口は、一の防護区画の床面積五百平方メートルごとに一個以上を当該区画に泡を有効に放出できるように設けること。/同号イ(ハ) 泡放出口は、防護対象物の最高位より上部の位置となる箇所に設けること。ただし、泡を押し上げる能力を有するものにあつては防護対象物に応じた高さとすることができる。
数は床面積で決まり位置は荷の高さで決まります
一の防護区画の床面積500平方メートルごとに1個以上という数え方なので、区画を広く取ればそのぶん放出口が要ります。
位置のほうは、防護対象物の最高位より上部となる箇所と定められています。
ただし泡を押し上げる能力を有するものについては、防護対象物に応じた高さとすることができるとされています。
実務で崩れやすいのはこの高さのほうで、設置後に棚を足したり荷を積み増したりすると放出口が荷より低くなります。

棚を足したことがありますが、そのとき設備のことは考えていませんでした。
いま確かめたほうがよいでしょうか。

早いほうがよいです。
放出口より高い荷があると条文が前提にしている位置関係から外れます。

明日からなにを確かめればよいのか

クリップボードを持った人と荷と扉と泡放出口を並べたイラスト
全域放出方式は、部屋が区画されていることを前提にした方式です。
まず見るのは泡の量ではなく部屋の造りのほうです。
消防法施行規則第18条第1項第三号イ 全域放出方式の高発泡用泡放出口は、令第十六条第一号の区画された部分(以下「防護区画」という。)で開口部に自動閉鎖装置(防火戸又は不燃材料で造つた戸で泡水溶液が放出される直前に開口部を自動的に閉鎖する装置をいう。)が設けられているものに設けるものとし、次に定めるところによること。ただし、当該防護区画から外部に漏れる量以上の量の泡水溶液を有効に追加して放出することができる設備であるときは、当該開口部の自動閉鎖装置を設けないことができる。
泡は閉じた部屋でなければたまりません
条文は防護区画であることと、開口部に自動閉鎖装置が設けられていることを求めています。
だから明日やることは、区画の扉がきちんと閉まるかを見て、扉のまわりに物を置いていないかを見ることです。
そのうえで、放出口の下や周りに荷を積み上げていないかと、荷の最高位が設置時から上がっていないかを確かめます。
区画を仕切り直したり用途を変えたりするときは、工事に入る前に所轄消防署へ相談しておくと手戻りがありません。

扉が閉まるかどうかなら、今日のうちに見に行けます。

そこが出発点です。
閉まらない扉があれば、まずそのから直してください。

よくある質問

Q高発泡の泡消火設備の水源の水量はどうやって決まりますか?
A消防法施行規則第18条第2項第三号イが、全域放出方式のものは床面積が最大となる防護区画の冠泡体積1立方メートルにつき泡放出口の種別に応じた量とすると定めています。同号の表では第一種が0.040立方メートル、第二種が0.013立方メートル、第三種が0.008立方メートルです。開口部に自動閉鎖装置を設けない場合は、外部に漏れる量以上の量を有効に追加して放出できる量を加えた量になります。
Q局所放出方式のときはなにを基準に量を決めますか?
A同項第三号ロにより、床面積が最大となる放出区域に所定の泡水溶液放出量で20分間放出することができる量とされています。その放出量は防護面積1平方メートルあたりで決められ、防護面積は防護対象物を最高位の高さの3倍の数値か1メートルのうち大きいほうの線で包囲した部分の面積とされています。
Q低発泡と高発泡で使う泡放出口は入れ替えられますか?
A消防法施行規則第18条第1項第一号が膨脹比による泡の種別ごとに泡放出口の種別を定めているので、任意に入れ替えることはできません。低発泡は泡ヘッド、高発泡は高発泡用泡放出口と対応しています。設備の変更に当たる工事は所轄消防署への手続が必要になりますので、事前にご相談ください。
Q開口部に自動閉鎖装置がない部屋でも全域放出方式にできますか?
A消防法施行規則第18条第1項第三号イのただし書が、防護区画から外部に漏れる量以上の量の泡水溶液を有効に追加して放出することができる設備であるときは、開口部の自動閉鎖装置を設けないことができるとしています。漏れる量以上を追加できることが条件になりますので、設計上の裏づけが要ります。

まとめ

膨脹比とは泡の体積をもとの泡水溶液の体積で割った値のことです
膨脹比が20以下なら低発泡で泡ヘッド、80以上1000未満なら高発泡で高発泡用泡放出口です。
防護対象物のうち床面からの高さが5メートルを超える場所に設けるものは全域放出方式とすることとされています。
冠泡体積は床面から防護対象物の最高位より0.5メートル高い位置までの体積です
泡水溶液の放出量は冠泡体積1立方メートルあたりで、膨脹比により第一種から第三種に分かれます。
泡放出口は一の防護区画の床面積500平方メートルごとに1個以上を設け、防護対象物の最高位より上部の位置となる箇所に設けます。
全域放出方式は防護区画であることと開口部の自動閉鎖装置が前提になります。

まずは区画の扉と、荷の積み方を見に行きます。

区画や積み方が変わっていれば設計の見直しが要ることもあります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第15条
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第16条第一号
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第18条第1項第一号・第三号
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第18条第2項第三号
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第18条第4項第二号
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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