二酸化炭素消火設備を見ていると、一つの部屋に置かれた赤いボンベの列から、配管が何本も別々の部屋へ伸びているのに気づくことがあります。
実は消防法施行規則は、一つの貯蔵容器を複数の防護区画で共用することを想定しており、そのために選択弁という部品の設置基準を細かく定めています。
さらに選択弁を実際に動かすための起動用ガス容器にも、独立した技術基準があります。
この記事では、一つの貯蔵容器がどうやって複数の部屋を安全に守るのかを、消防法施行規則の条文から解説します
うちの二酸化炭素消火設備、ボンベは一か所にまとまっているのに配管だけ複数の部屋に伸びているんです。
あれで大丈夫なんでしょうか。
それはおそらく貯蔵容器を複数の防護区画で共用するタイプの設備ですね。
条文にも共用するときの基準が定められています。
共用しているのに、火事が起きた部屋だけに消火剤を送れるものなんですか。
はい。
選択弁という部品が、火災が起きた区画だけに配管を切り替える役目を持っています。
- 二酸化炭素消火設備は一つの貯蔵容器を複数の防護区画で共用できる
- 共用するときは防護区画又は防護対象物ごとに選択弁を設けなければならない
- 選択弁は防護区画以外の場所に設け、どの区画のものかを表示しなければならない
- 貯蔵容器と選択弁の間には安全装置又は破壊板を設ける必要がある
- 選択弁を動かす起動用ガス容器にも独立した耐圧・容量の基準がある
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目次
二酸化炭素消火設備はなぜ一つの貯蔵容器で複数の部屋を守れるのか

条文は、一つの貯蔵容器を複数の防護区画で共用する場合の基準を定めています。
たとえば同じ階に二つの防護区画があり、貯蔵容器を一組しか持たない設備でも、条文上はこの共用が認められています。
その代わり、火災が起きた区画だけに消火剤が向かうよう、区画ごとに専用の選択弁を設けることが義務づけられています。
選択弁が無ければ、共用している全部の区画に一度に消火剤が放出されてしまい、放出されなかった区画の在庫が失われるだけでなく、無関係な区画にも消火剤が回ってしまいます。
設備図面で貯蔵容器が何区画ぶんを兼ねているかを確認しておくと、選択弁の数とも整合が取れます。
うちの設備、貯蔵容器室が一つしかないんですが、これも共用にあたるんでしょうか。
その貯蔵容器から複数の部屋へ配管が伸びていれば共用にあたります。
設備図面で選択弁の数を確認してみましょう。
選択弁はどこにどう設けなければならないのか

イだけでなく、ロからニにも設置基準が続きます。
防護区画の中に選択弁を置いてしまうと、いざ操作しようとしたときに区画内に立ち入れず点検や操作ができなくなるおそれがあるための基準です。
表示が無いと、複数ある選択弁のうちどれがどの部屋の系統かが現場で分からなくなり、誤った区画へ消火剤を送る危険にもつながります。
選択弁そのものも消防庁長官が定める基準に適合した製品であることが求められており、代用品への交換はできません。
点検の際は、設置場所が区画の外であること、表示板の文字が読み取れる状態であることをまず確認します。
表示板の文字が薄くなって読みにくいんですが、それも問題になりますか。
表示が読み取れない状態は望ましくありませんので、点検業者に相談して表示板の補修や交換を検討してください。
起動用ガス容器はどんな基準を満たさなければならないのか

これが起動用ガス容器で、条文は寸法や耐圧まで数値で定めています。
設置が義務づけられるのは全域放出方式で二酸化炭素を放射する不活性ガス消火設備に限られ、耐圧は24.5メガパスカル以上と定められています。
内容積は1リットル以上、中に貯める二酸化炭素の量は0.6キログラム以上、充てん比は1.5以上という、貯蔵容器とは別の独立した数値基準です。
容器本体にも消防庁長官が定める基準に適合する安全装置と容器弁を備えなければなりません。
主役の貯蔵容器に目が向きがちですが、この小さな容器が働かなければ選択弁は開きません。
あの小さいボンベにそんな細かい基準があるとは知りませんでした。
小さくても選択弁を動かす要の部品ですので、点検では見落とさないようにしています。
貯蔵容器と選択弁の間の安全装置を見落としていないか

貯蔵容器と選択弁の間の配管そのものを守る装置です。
共用する貯蔵容器の配管は本数が多くなりがちで、点検のときも貯蔵容器側の安全装置だけを確認して終わりにしてしまいやすい部分です。
しかしこの第十二号は、貯蔵容器そのものではなく、貯蔵容器と選択弁の間の配管区間を対象にした別枠の基準です。
複数の選択弁を共用する配管では、弁を閉じた瞬間に区間内の圧力が逃げ場を失って高まることがあり、その圧力を安全に逃がすための装置になります。
点検表に貯蔵容器本体の安全装置しか記載が無い場合は、配管区間側の装置も条文どおりに設けられているかを点検業者に確認します。
容器についてる破壊板と、配管の途中にあるものは別物なんですね。
はい。
条文上も別の号で定められている、それぞれ役割が違う安全装置です。
共用設備の点検では明日からなにを確認すればよいのか

条文の基準に沿って、点検の観点を整理します。
- 選択弁が防護区画の外に設置され、どの区画の弁かが表示で分かるか
- 選択弁の表示板の文字が読み取れる状態を保っているか
- 貯蔵容器と選択弁の間の配管に安全装置又は破壊板が設けられているか
- 起動用ガス容器の耐圧・内容積・充てん比が基準どおりに保たれているか
- 設備図面上の防護区画数と、現地の選択弁の数が一致しているか
選択弁の表示は日常の巡視でも目視できる部分なので、防火管理者自身でも確認しやすいところです。
起動用ガス容器の耐圧や貯蔵容器との間の安全装置は専門的な判断が必要なため、消防用設備等の点検の際に点検資格者へ確認します。
設備図面と現地の選択弁の数が食い違っている場合は、増改築で防護区画が変わった可能性があるため、点検業者に相談します。
複数の区画を一つの設備で守る仕組みだからこそ、どこかの部品が欠けると設備全体の信頼性に関わります。
選択弁の表示なら、次の巡視のときに自分でも確認できそうです。
はい。
表示が読み取れるかを見ていただくだけでも、日常点検としては十分な確認になります。
よくある質問
まとめ
選択弁と起動用ガス容器、両方とも次の巡視でしっかり見てみます!
選択弁や起動用ガス容器の点検でご不明な点があれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第十九条第五項第十一号・第十二号・第十三号(不活性ガス消火設備の技術上の基準)
- 消防法施行令第十二条(消火設備に関する基準)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。




