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未届の無料低額宿泊所はなぜ消防に把握されにくいのか|福祉・消防・建築3部局の連携体制を解説

未届の無料低額宿泊所はなぜ消防に把握されにくいのか|福祉・消防・建築3部局の連携体制を解説

生活保護を受けている方が暮らす住まいの中には、消防にも建築にも把握されていない「無届」の施設が紛れていることがあります。
平成30年1月31日深夜に札幌市で発生した火災を受け、消防庁・厚生労働省・国土交通省は連名で通知を出し、こうした施設への対策を求めました。
通知が示したのは、無届施設を福祉・消防・建築の3部局がどう見つけ、どう連携して防火点検につなげるかという仕組みです。
この記事では、対象となる施設の見分け方と、3部局連携の具体的な仕組みを解説します。

うちの近所にも、届出をしているのか分からない宿泊所があるんですが、消防はちゃんと把握しているんでしょうか。

いいえ、届出が無ければ消防だけでは見つけられないことがあるんです。

じゃあ、そういう施設はどうやって見つけて指導するんですか。

福祉部局からの情報提供が、見つける最初のきっかけになるんです。

この記事の結論
  • 平成30年1月31日深夜に札幌市で発生した火災を受け、消防庁・厚生労働省・国土交通省は「生計困難者等の住まいにおける防火安全対策の助言等について」(平成30年3月20日 消防予第86号)を連名で発出しました。
  • 対象は未届の無料低額宿泊所未届の有料老人ホーム、およびその可能性がある類似施設です。
  • 福祉部局・消防部局・建築部局の3部局が連絡会議を設け、未届施設の情報を共有する体制を整えることが求められました。
  • 消防部局や建築部局が訪問して基準不適合を確認した場合は、福祉部局へ情報提供し、事業者への指導につなげます。
  • 住環境が著しく劣悪だと確認された場合は、関係機関が連携してより適切な施設や住居への転居を促すこととされています。

消防予第86号による福祉・消防・建築3部局連携の4ステップと札幌市の火災を機にした対策を示した図解

生計困難者の住まいへの通知はなぜ出されたのか

簡易な宿泊施設の建物と消防車を並べたイラスト
無届のまま生活困窮者を住まわせる施設で、火災が起きたことがきっかけです。
まずは通知が出された経緯を確認します。
生計困難者等の住まいにおける防火安全対策の助言等について(平成30年3月20日 消防予第86号 消防庁予防課長、社援保発0320第1号厚生労働省社会・援護局保護課長、老高発0320第1号厚生労働省老健局高齢者支援課長、国住指第4678号国土交通省住宅局建築指導課長) 去る平成30年1月31日深夜に札幌市で発生した火災では、高齢の生活保護受給者の方を中心に多数の死傷者が出ることとなり、甚大な被害となったところです。(略)また、住宅確保が困難な生計困難者等が多数居住する施設等が、未届の無料低額宿泊所や未届の有料老人ホームに該当しているケースが指摘されているほか、そこに居住する生計困難者等の中には火災時の避難が困難な方がいることなどから、これらの生計困難者等が居住する施設の防火安全対策のための取組が必要です。
この通知は、無届のまま生活困窮者を住まわせる施設で火災が起きたことを受けて出されました。
消防庁だけでなく、厚生労働省・国土交通省も名を連ねる連名通知です。
背景には、直前に出た消防関係通知(消防法施行令別表第一(5)項ロ関連)・建築関係通知・厚生労働省の周知通知という3本の通知があります。
つまりこの通知は、その3本を踏まえてもなお残る無届施設という課題に、3つの省庁がまとめて向き合ったものです。

通知って消防庁だけが出すものじゃないんですか。

はい、今回は厚生労働省と国土交通省も名を連ねているんです。

対象になるのはどんな施設なのか

届出済みを示す施設と未届を示す施設を並べたイラスト
消防法令や社会福祉法上の届出をしないまま、生活困窮者を住まわせている施設があります。
通知が対象とする施設の範囲を確認します。
未届の無料低額宿泊所及び未届の有料老人ホーム(以下「未届施設」という。)並びにその可能性のある施設(以下「類似施設」という。)については、福祉部局において、(略)実態把握に努めていただいているところであるが、これらの未届施設及び類似施設(以下「未届施設等」という。)の実態把握に当たっては、福祉部局内の生活保護担当課、無料低額宿泊所担当課、有料老人ホーム担当課及び介護保険担当課並びに福祉事務所が連携及び情報共有を図ることはもとより、対象建築物が存する地域を管轄する消防部局及び建築部局とも連携を図り、一層の把握に努めること。
無料低額宿泊所(未届の無料低額宿泊所を含む。以下同じ。)における防火上の安全性の確保については、これまでも「社会福祉法第2条第3項に規定する生計困難者のために無料又は低額な料金で宿泊所を利用させる事業を行う施設の設備及び運営について」(平成15年7月31日社援発第0731008号厚生労働省社会・援護局長通知)の別紙「無料低額宿泊所の設備、運営等に関する指針」において、消火設備や避難設備を設ける等の消防法及び建築基準法の遵守を求めているところである。
対象は、届出をしていない「無料低額宿泊所」と「有料老人ホーム」です。
無料低額宿泊所は社会福祉法第2条第3項が定める生計困難者向けの宿泊施設で、本来は都道府県知事等への届出が必要です。
届出をしていない施設や、その疑いがある類似施設も、通知では実態把握の対象に含まれています。
つまり看板や外観だけでは、届出済みかどうかを見分けることはできません。

見た目が普通のアパートやマンションでも、無届の施設ということがあるんですか。

はい、外観だけでは判別できないため、福祉部局からの情報が頼りになるんです。

3部局の連携はどんな仕組みになっているのか

福祉・消防・建築の担当者が1つの書類を囲んで話し合っているイラスト
無届施設を消防や建築の部局だけで見つけるのは簡単ではありません。
通知は、福祉部局を中心にした連絡体制の作り方を具体的に示しています。
(2) 福祉部局・福祉事務所、消防部局及び建築部局による連絡体制の整備等 ア 福祉部局、消防部局及び建築部局は、円滑に連携を図ることができるよう、福祉部局が中心となり、担当者による連絡会議を設置するなど連絡体制を整備すること。(略)(3) 福祉部局、消防部局及び建築部局による未届施設等に関する情報の共有 ア 未届施設に関する情報の共有 福祉部局は、(略)未届施設と判断した施設に関する施設名、事業者名(設置・経営主体)、所在地・住所、主な入居対象者、定員、入居者数(生活保護受給者数)、入居者の要介護度の情報、障害者加算の認定状況等のうち把握している情報を、速やかに対象建築物が存する地域を管轄する消防部局及び建築部局に対して提供すること。
仕組みの中心は、福祉部局が事務局役になって開く連絡会議です。
連絡会議には福祉部局のほか消防部局・建築部局が加わり、必要に応じて福祉事務所も出席します。
福祉部局が訪問調査などで把握した施設名や入居者の要介護度といった情報は、消防部局・建築部局へ速やかに提供されます。
情報を受け取った消防部局は、他の消防本部とも共有し、地域ぐるみで把握を進めます。

消防や建築の部局だけで、無届の施設を見つけるのは難しそうですね。

そうですね、だからこそ福祉部局からの情報提供が仕組みの入り口になっているんです。

基準に適合していない施設が見つかったらどうなるのか

建物内で消火器を確認する担当者とスーツケースを置いた入口のイラスト
連携して訪問した結果、基準を満たしていない施設が見つかることもあります。
そのときの対応と、見落としやすい点を確認します。
(5) 基準不適合の建物への対応等 消防部局及び建築部局は、(4)イによる未届施設等に対する訪問の結果、基準不適合として指導を行った場合は、福祉部局に指導状況等を情報提供すること。福祉部局は、提供された情報を受けて、未届施設等の事業者が適切に運営しているか確認するとともに、必要な指導を行うこと。(略)福祉部局及び福祉事務所は、(略)生活保護受給者の住環境が著しく劣悪な状態であることが確認された場合については、生活実態に配慮しつつ、関係機関と連携の上、より適切な他の施設や住居への転居を促すこと。
見落としやすいのは、指導だけで終わらせず住まいそのものを見直す仕組みになっている点です。
消防部局や建築部局が基準不適合を確認したときは、指導するだけでなく福祉部局へ情報を戻すことになっています。
福祉部局側は、住環境が著しく劣悪だと分かった場合、是正を待つだけでなく転居を促すことも選択肢に入れます。
つまりこの通知は、建物を直すことだけでなく、住んでいる人の安全を優先する視点で作られています。

基準に合わない施設だと分かったら、すぐに退去させられてしまうんですか。

いいえ、まずは是正の指導が基本で、住環境が著しく劣悪なときに転居を促す仕組みです。

明日からなにを確認すればよいのか

宿泊施設の前でスタッフが高齢の入居者にリーフレットを手渡しているイラスト
最後に、施設の運営者や近隣の方が確認できることを整理します。
無料低額宿泊所と有料老人ホームでは、確認先が少し異なります。
3 無料低額宿泊所における防火上の安全性の確保について (略)福祉部局は、消防部局と連携を図り、別紙3のリーフレット「福祉事務所・消防署からのお知らせ」(以下「リーフレット」という。)を管内の無料低額宿泊所の事業者に対して送付し、入居者に対する注意喚起を要請すること。 4 有料老人ホームにおける防火上の安全性の確保について (略)福祉部局は、有料老人ホームの防火上の安全性の確保のため、消防部局及び建築部局と連携し、引き続き管内の有料老人ホームの消防法及び建築基準法の遵守について指導を徹底すること。
まず自分の施設が無料低額宿泊所や有料老人ホームに当てはまるなら、届出をしているかを確認しましょう。
届出の要否が分からない場合は、所轄の消防署や福祉事務所に問い合わせるのが確実です。
入居者や家族の立場であれば、施設からリーフレットなどで防火上の注意喚起があるかを確認してください。
近隣で無届の疑いがある施設に気づいたときは、まず福祉事務所へ情報を伝えることが、3部局連携の入り口になります。

近所の宿泊所が届出をしているか気になったら、どこに聞けばいいんでしょう。

まずは福祉事務所や所轄の消防署に相談してみてください。

よくある質問

Q無料低額宿泊所は必ず届出が必要なのか?
Aはい、無料低額宿泊所は社会福祉法第2条第3項に基づく事業で、都道府県知事等への届出が求められています。
Q未届の施設は消防の立入検査を受けないのか?
A届出が無いために消防だけでは把握しにくいという課題があり、福祉部局からの情報提供が把握のきっかけになります。
Q基準不適合が見つかった施設はすぐに閉鎖されるのか?
A通知が示すのは是正の指導が基本で、住環境が著しく劣悪なときに関係機関が連携して転居を促す仕組みです。
Qこの通知の対象は無料低額宿泊所と有料老人ホームだけなのか?
A主にこの2つですが、未届である可能性がある類似施設も実態把握の対象に含まれています。

まとめ

平成30年1月31日深夜に札幌市で発生した火災を受け、消防庁・厚生労働省・国土交通省は「生計困難者等の住まいにおける防火安全対策の助言等について」(平成30年3月20日 消防予第86号)を連名で発出しました
対象は未届の無料低額宿泊所未届の有料老人ホーム、およびその可能性がある類似施設です。
無料低額宿泊所は社会福祉法第2条第3項が定める生計困難者向けの施設で、本来は届出が必要です
仕組みの中心は福祉部局が事務局役となって開く連絡会議です。
福祉部局が把握した施設名や入居者の要介護度等の情報は、速やかに消防部局・建築部局へ提供されます
基準不適合が見つかった場合は福祉部局への情報提供を経て、事業者への指導につなげます。
住環境が著しく劣悪だと確認された場合は、関係機関が連携してより適切な施設や住居への転居を促すこととされています

3部局連携の仕組みまで分かって安心しました。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 生計困難者等の住まいにおける防火安全対策の助言等について(平成30年3月20日 消防予第86号 消防庁予防課長、社援保発0320第1号厚生労働省社会・援護局保護課長、老高発0320第1号厚生労働省老健局高齢者支援課長、国住指第4678号国土交通省住宅局建築指導課長)
  • 社会福祉法第2条第3項第八号
  • 消防法施行令別表第一(5)項ロ
  • 建築基準法第2条第1項第三十五号

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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