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危険物施設を人に譲ったら許可はどうなるのか|消防法第11条第6項が定める地位の承継と届出を解説

危険物施設を人に譲ったら許可はどうなるのかを解説する記事のアイキャッチ画像

危険物を扱う工場や倉庫を売買したり相続したりするとき、建物の名義だけを気にしていませんか。
実は製造所や貯蔵所には市町村長等の許可がひもづいていて、この許可にも引き継ぎのルールがあります。
知らずに手続きを怠ると、30万円以下の罰金の対象になることもあります。
今回は、危険物施設を譲り受けたときに何をすべきかを解説します

先代から工場を引き継ぐことになりました。
危険物を保管するタンクもあるのですが、名義変更のような手続きは必要でしょうか。

必要です。
危険物施設の許可は自動的に引き継がれますが、届出をしないと罰則の対象になります

許可自体は自動的に引き継がれるんですね。
それなら届出は形だけのものということでしょうか。

そうとは言い切れません。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 製造所、貯蔵所又は取扱所を譲り受けると、許可を受けた者の地位は自動的に承継されます
  • ただし承継した者には遅滞なく市町村長等へ届け出る義務があります
  • 判断の決め手は名義ではなく、施設を変更・廃止できる権限がどちらにあるかです
  • 会社の合併では、存続会社と吸収された会社とで届出の種類が異なります
  • 届出を怠ると30万円以下の罰金又は拘留の対象になります

製造所等の譲渡と引渡しの違いから届出までの4つの手順と罰金の関係を示した図解

危険物施設を人に譲ったら許可はどうなるのか

工場の建物と危険物タンクの前で鍵を手渡す新旧の管理者を示したイメージ
危険物を貯蔵し取り扱う製造所や貯蔵所には、それぞれ市町村長等の許可が必要です。
この許可は、建物の名義変更と一緒に自動的についてくるものではありません。
第十一条第6項 製造所、貯蔵所又は取扱所の譲渡又は引渡があつたときは、譲受人又は引渡を受けた者は、第一項の規定による許可を受けた者の地位を承継する
譲り受けた人は、手続きをしなくても法律上は許可を受けた者の地位を自動的に引き継ぎます
これは新しく許可を取り直さなくても、事業を止めずに引き継げるという意味です。
ただし「自動的に地位を引き継ぐ」ことと「何もしなくてよい」ことはイコールではありません。
条文には、地位を引き継いだ者が果たすべきもう一つの義務が続けて書かれています。
次に、その義務の対象になる譲り渡し方を具体的に見ていきます。

許可を取り直さなくていいのは助かりますが、それなら何もしなくていいということでしょうか。

いいえ、承継したこと自体を届け出る義務が別にあります。
次はその範囲を見ましょう。

どこまでの譲り渡し方が届出の対象になるのか

契約書にサインする人物と印鑑が押された書類の束を示したイメージ
届出の対象になるのは「譲渡」と「引渡し」の2つです。
どちらも、必ずしも所有権そのものの移転とは限りません。
  • 売買や贈与、相続など所有権が移る「譲渡」
  • 賃貸借や合併など、所有権は動かなくても施設を変更・廃止できる権限が移る「引渡し」
判断の決め手は名義ではなく、施設を変更したり廃止したりできる権限がどちらにあるかです
京都市消防局が公表している手引きでは、賃貸借契約や管理委託契約で運営だけを任せていても、施設の変更や廃止の権限が元の所有者に残っていれば「引渡し」に当たらないとしています。
逆に、所有権は個人に残したまま権限だけを法人に移すと、それだけで届出の対象になります。
個人商店を法人化するときや会社を合併するときも、この物差しで一つずつ確認する必要があります。
次は、届出の対象になったときに実際に何をするのかを見ていきます。

名義が動いていなくても届出が必要になることがあるんですね。

はい、権限がどちらにあるかで決まります。
次は実際の届出の中身を見ましょう。

届出には何を書いてどんな書類を添えるのか

赤い印のある証明書と記入済みの申請書を示したイメージ
届出の様式は全国共通で定められています。
記入する内容も、施設の許可情報を中心に決まった項目があります。
(製造所等の譲渡又は引渡の届出書)第7条 法第十一条第6項の規定による製造所等の譲渡又は引渡の届出は、別記様式第15の届出書によつて行わなければならない
届出書には、施設の設置許可年月日や完成検査番号、危険物の品名と数量まで記入します
京都市消防局が示す記入例では、譲渡又は引渡を受けた者と譲渡又は引渡をした者の双方の住所・氏名に加え、譲渡又は引渡があった理由も簡潔に記載するよう求めています。
添付書類には、登記事項証明書や売買契約書など、譲渡又は引渡があったことを証明する書類が必要です。
届出先は施設を管轄する市町村長等で、複数の行政区にまたがる場合は最初に提出する消防署でまとめて受け付けてもらえることがあります。
書類の不備で受理が遅れないよう、事前に管轄の消防署予防課へ相談しておくと安心です。

証明書類まで用意しないといけないんですね。

そうです。
書類が揃っていないと受理されないので、早めの準備が要ります。

会社の合併では届出の要不要がどう分かれるのか

2つの会社の建物が1つに合体する様子と単独の建物を示したイメージ
会社同士が合併するときは、施設ごとに扱いが分かれます。
存続する会社の施設と、吸収された会社の施設とでは届出の種類が違います。
第四十四条 次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金又は拘留に処する。(略)第十一条第6項(略)の規定による届出を怠つた者
存続会社の施設は名称変更、吸収された会社の施設は譲渡として届出が必要です
京都市消防局の手引きは、A社を存続会社としてB社を吸収しC社にする場合、A社の施設は「名称変更」の届出、B社の施設は「譲渡」の届出になるとしています。
反対に、AとBがともに解散して新しいC社を作る場合は、両社の施設ともに「譲渡」として届出が必要になります。
この区別を誤って届出を怠ると、消防法第44条第8号により30万円以下の罰金又は拘留の対象になります。
合併の形が少し違うだけで扱いが変わるため、危険物施設を持つ会社同士の合併では、事前に消防署へ確認しておくことが欠かせません。

合併の仕方によって届出の種類まで変わるとは思いませんでした。

はい、そこを見落として届出を怠ると罰則の対象になります。
最後に確認の手順をまとめましょう。

施設を引き継ぐ前後になにを確認すればよいのか

カレンダーの日付と窓口で書類を提出する場面を示したイメージ
施設を引き継ぐ前後で確認することは、大きく分けて3つです。
順番に押さえておきましょう。
  • 譲渡なのか引渡しなのか、施設の変更・廃止の権限がどちらに残るかを確認する
  • 登記事項証明書や契約書など、証明できる書類を準備する
  • 遅滞なく管轄の消防署予防課へ届出書を提出する
引き継ぎが決まった時点で、早めに管轄の消防署予防課へ相談することが一番の近道です
条文は届出の期限を「遅滞なく」としか定めておらず、具体的な日数の基準はありません。
だからこそ、契約や相続の手続きと並行して消防署への相談を進めておくと、書類の不備や提出遅れを防げます。
特に合併や事業承継のように施設が複数の行政区にまたがる場合は、早めの相談が受付をスムーズにします。
危険物施設を引き継ぐときは、建物の名義変更と同じ感覚で、許可の届出も忘れずに行ってください。

契約の手続きと一緒に、消防署への相談も進めておきます。

それが確実です。
最後に今回のポイントを振り返りましょう。

よくある質問

Q相続で危険物施設を引き継いだ場合も届出は必要ですか?
A必要です。相続は「譲渡」に当たり、相続人が許可を受けた者の地位を承継したうえで、遅滞なく市町村長等へ届け出る必要があります。
Q賃貸借契約で施設の運営だけを任せる場合も届出は必要ですか?
A施設を変更・廃止できる権限が誰にあるかで判断します。運営を任せても変更・廃止の権限が元の所有者に残っていれば、引渡しには当たりません。
Q届出を出す前に施設を使い始めてもよいですか?
A承継した地位そのものは自動的に得られますが、遅滞なく届け出る義務があるため、後回しにすると罰則の対象になります。
Q届出先はどこになりますか?
A施設を管轄する市町村長等です。複数の行政区にまたがる施設は、最初に提出する消防署でまとめて受け付けてもらえることがあります。

まとめ

危険物施設の許可は、譲渡又は引渡があると譲受人・引渡を受けた者に自動的に承継されます
承継した者は遅滞なく市町村長等へ届け出なければなりません
「譲渡」は所有権の移転、「引渡し」は変更・廃止の権限の移転で判断します
運営だけを任せても権限が元の所有者に残っていれば引渡しに当たらないことがあります
届出書は全国共通の様式で、証明書類の添付が必要です
合併では存続会社と吸収された会社とで届出の種類が分かれます
届出を怠ると消防法第44条第8号により罰則の対象になります

許可が自動的に引き継がれると聞いて安心していましたが、届出まで忘れないようにします

権限の確認と書類の準備、この2つを抜けなく行えば十分です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第11条第6項・第44条第8号
  • 危険物の規制に関する規則第7条
  • 京都市消防局「譲渡又は引渡しの届出」
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令および消防局等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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