防災管理維持台帳の第6号は、イからチまで8つの実施状況を記録するよう定めています。
このうちイからトまでの7つは、防災管理対象物であればどの建物にも共通して求められます。
ところが最後のチだけは、条文にかっこ書きで対象を絞る条件が付いています。
この条件を読み飛ばすと、必要のない記録まで探し続けることになります。
防災管理維持台帳の第6号を確認していたら、チだけ様子が違うことに気づきました。
ほかの号には無い言葉が付いています。
その言葉が強化地域という地域の限定で、チだけがすべての防災管理対象物に共通する記録ではありません。
まず条文の書き方から見ていきましょう。
うちの建物は防災管理対象物なので、当然チの記録も必要だと思っていました。
対象になるかどうかは、地域と施設の種類の両方で決まります。
ひとつずつ確認していきましょう。
- 防災管理維持台帳の第6号チは大規模な地震に係る防災訓練並びに教育及び広報の状況を記録する項目です
- 対象は消防法施行規則第51条の12第1項第6号チが定める強化地域に所在する建築物その他の工作物に限られます
- 施設の種類も大規模地震対策特別措置法施行令第4条の一部の号に該当するものに限られます
- 学校や社会福祉施設、従業員1,000人以上の工場等がその対象に含まれます
- 国や地方公共団体などの指定行政機関・指定公共機関が管理する施設はチの対象から除かれます
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目次
防災管理維持台帳のチとは何を指すのか

七つは共通の記録で、最後の一つだけ性質が違います。
イからトまでは避難施設の維持管理や地震の自主検査など、防災管理対象物であれば共通して求められる記録です。
これに対してチが記録を求めるのは防災訓練・教育・広報という三つの状況で、しかもその前に「強化地域に所在する」という地域の条件と、「大規模地震対策特別措置法施行令第4条の一部の号に規定する施設」という施設の条件が二重に付いています。
つまりチは、対象になる建物だけに乗る追加の記録であって、防災管理対象物なら誰にでも及ぶ号ではありません。
まずは自分の建物がこの二つの条件に当てはまるかどうかを、次の見出しで確かめてください。
イからトは全部の建物に共通で、チだけ別枠ということですね。
号がひとつ増えるだけかと思っていました。
号としては八つ目ですが、乗る建物は限られています。
次は地域と施設の条件を具体的に見ていきます。
どの建物のチが対象になるのか

その中からチが引いているのは、五つの号だけです。
十三 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校、同法第124条に規定する専修学校、同法第134条第1項に規定する各種学校その他これらに類する施設
十四 児童福祉法(昭和22年法律第164号)第7条第1項に規定する児童福祉施設、(略)老人福祉法(昭和38年法律第133号)第5条の3に規定する老人福祉施設(略)その他これらに類する社会福祉施設
二十三 前各号に掲げる施設又は事業に係る工場等以外の工場等で、当該工場等に勤務する者の数が1,000人以上のもの
第1号は不特定多数が出入りする防火対象物、第2号は複合用途防火対象物の一部が該当する場合で、旅館やホテルのような建物がここに当てはまります。
第13号は学校や専修学校、第14号は児童福祉施設や老人福祉施設などの社会福祉施設で、第23号は他の号に当たらない工場等のうち従業員が1,000人以上のものです。
学校や福祉施設のように、一見すると防災管理や消防計画と結び付きにくい用途が名指しされている点が、チを見落としやすくしています。
自分の建物がこの五つの号のどれかに当たるかどうかを、用途と規模で確認してください。
学校や福祉施設まで対象になるとは思いませんでした。
不特定多数の建物だけの話だと思い込んでいました。
号の並びは地震防災応急計画を作る施設の一覧と同じ考え方でできています。
次は具体的に何を記録するのかを見ていきます。
チに記録して保存するのは何なのか

イからトまでとは、書類の中身の性質も少し違います。
ホ 建築物その他の工作物についての地震による被害の軽減のための自主検査の状況
ヘ 地震による被害の軽減のために必要な設備及び資機材の点検並びに整備の状況
チ 大規模な地震に係る防災訓練並びに教育及び広報の状況(略)
ホとヘが自主検査や設備・資機材の点検整備という、建物や設備を確かめる記録なのに対し、チは訓練の実施状況、教育の実施状況、広報の実施状況という、人の動きを記録するものです。
イからニまでの避難施設や教育、訓練の記録とも重なって見えますが、チは通常の防災管理上の訓練や教育とは別に、大規模な地震を名指しして行った訓練・教育・広報だけを対象にしています。
同じ「訓練」という言葉が条文の中に何度も出てくるので、どの号の記録として綴じたものかを見出しで区別しておくと、あとから探しやすくなります。
チに当たる建物では、通常の訓練記録とは別に、大規模地震を想定した回のぶんだけを抜き出して残してください。
ニの避難訓練の記録と、チの防災訓練の記録を同じファイルに入れていました。
分けて綴じ直したほうがよさそうですね。
同じ棚でも見出しの紙を挟んで号ごとに分けておけば、点検のときに迷いません。
次は対象から外れる建物の話です。
実務で見落としやすいのはどこか

除かれる理由は、別の法律ですでに計画を作っているからです。
一 地震防災応急対策に係る措置に関する事項
同法第7条第1項 強化地域内において次に掲げる施設又は事業で政令で定めるものを管理し、又は運営することとなる者(前条第一項に規定する者を除く。)は、あらかじめ、当該施設又は事業ごとに、地震防災応急計画を作成しなければならない。
第7条第1項のかっこ書きが除いているのは、第6条第1項の指定行政機関の長と指定公共機関で、これらはすでに防災業務計画のなかで地震防災応急対策を定める義務を負っています。
チのかっこ書きが同じ範囲を除外しているのは、この二重の義務付けを避けるためです。
一方で、強化地域の対象施設に当たっていても、指定公共機関が管理する施設に該当しなければ除外は働かず、チの記録義務はそのまま残ります。
「国の機関が絡む建物だから対象外だろう」という思い込みで判断せず、自分の建物の管理者が指定行政機関や指定公共機関そのものに当たるかどうかを確認してください。
指定行政機関という言葉だけ見て、うちには関係ないと決めつけていました。
民間の建物なら関係ないということですね。
民間の建物であれば、まず除外には当たらないと考えて確認を進めてください。
次は明日から確かめる手順です。
明日からなにを確認すればよいのか

どちらも、防災管理対象物であるかどうかとは別に確かめる必要があります。
大規模地震対策特別措置法第3条第1項 内閣総理大臣は、(略)地域を地震防災対策強化地域として指定するものとする。
まず自分の建物の所在地が、大規模地震対策特別措置法第3条第1項に基づく強化地域の指定を受けているかどうかを所轄消防署か市町村に確認します。
指定を受けていれば、次に施設の用途と規模が大規模地震対策特別措置法施行令第4条の第1号・第2号・第13号・第14号・第23号のいずれかに当たるかを確認します。
両方に当てはまる建物だけが対象なので、片方だけで判断して記録を作り始めたり、逆に不要と決めつけたりしないよう注意してください。
対象に当たると分かったら、防災管理維持台帳にチの仕切りを新しく立て、大規模地震を想定した訓練・教育・広報の記録だけをそこに綴じ直してください。
地域と施設の両方を確認してから台帳に仕切りを作ればよいのですね。
まずは所轄消防署に地域の指定を確認してみます。
それが確実です。
対象外だと分かった建物は、無理にチの記録を探さなくてかまいません。
よくある質問
まとめ
チが全部の建物に必要なわけではないと分かって、少し安心しました。
まずは強化地域の指定から確かめてみます。
地域と施設の両方を確認すれば、対象かどうかがはっきりします。
台帳の整え方で迷ったら、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第36条第1項
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第45条・第46条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第51条の12第1項第6号
- 大規模地震対策特別措置法(昭和53年法律第73号)第3条第1項・第6条第1項・第7条第1項
- 大規模地震対策特別措置法施行令(昭和53年政令第385号)第4条
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





