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有料老人ホームはなぜ木造平屋建てでも建てられるのか|厚生労働省の設置運営標準指導指針が定める特例と消防機関の関与を解説

木造平屋建ての有料老人ホームでも厚生労働省の設置運営標準指導指針が定める特例で耐火建築物にせず開設できることを解説する記事のアイキャッチ画像

有料老人ホームは建物を耐火建築物にするのが原則です。
ですが木造かつ平屋建てでも、条件を満たせば特例が認められます。
その条件は消防に詳しい専門家の意見を聴くことが前提になっています。
厚生労働省の設置運営標準指導指針と消防庁の周知通知から、この特例の中身と落とし穴を解説します。

木造の平屋建てだと、有料老人ホームにするには耐火建築物にしないと駄目なんでしょうか。

原則はそうですが、条件を満たせば木造平屋のままでも認められる特例があります。

それは知りませんでした。
どんな条件があるんですか。

厚生労働省の指導指針と消防機関の意見聴取が鍵になります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 有料老人ホームは原則として耐火建築物か準耐火建築物にする必要があります。
  • 木造かつ平屋建てでも、特例が使える場合があります。
  • 特例には都道府県知事が専門家の意見を聴く手続きが前提になります。
  • 代替措置はスプリンクラー・警報設備・避難のしやすさの3つです。
  • 経過措置の対象でも消防用の設備は十分に設ける必要があります。

木造平屋建ての有料老人ホームが原則の耐火建築から専門家への意見聴取を経て代替措置による特例を認められるまでの4ステップを示した図解

なぜ木造平屋建ての特例が新たに整理されたのか

木造平屋建ての住宅を活用した有料老人ホームと届出書類を持つ担当者のイラスト
高齢化が進むなか、既存の住宅や小規模な建物を活用して有料老人ホームを開設する動きが広がっています。
その一方で、建物の防火安全性をどう確保するかが課題になっていました。
有料老人ホームに係る厚生労働省の発出通知について(情報提供)〔抄〕(平成30年4月26日 事務連絡 消防庁予防課) 有料老人ホームにおける居住の質を確保するためには、指導指針への適合がひとつの目安となるところである。その一方で、指導指針への適合を画一的に求めることは、事業者による有料老人ホームの届出意欲を削ぎ、(略)都道府県等が把握できない有料老人ホームを増加させることにもつながりかねず、入居している高齢者に対する不適切な処遇や虐待などの発見が遅れる可能性も生じる。
届出を増やすことと安全を確保することは、両立させる必要があります。
そこで厚生労働省は「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」を平成30年に改正し、
既存建築物や小規模建築物を活用する場合の柔軟な運用を示しました。
消防庁予防課はこの内容を事務連絡として全国の消防機関に周知し、
消防の現場でも指導指針の中身を理解しておく必要が生まれています。

うちも木造の建物を使い回して有料老人ホームにしたいんですが、
そんな簡単に認められるものなんですか。

簡単ではありませんが、道はあります。
まずは対象になる施設を確認しましょう。

どの有料老人ホームがこの特例の対象になるのか

有料老人ホームの入居者と届出書類を提出する担当者のイラスト
特例の対象は、老人福祉法に基づいて届け出る有料老人ホーム全般です。
中でも重要になるのは、木造かつ平屋建てで開設しようとする施設です。
有料老人ホームの設置運営標準指導指針について〔抜粋〕 老人福祉法(昭和38年法律第133号)第29条第1項において、有料老人ホームとは、①老人を入居させ(以下「入居サービス」という。)、②当該老人に対して「入浴、排せつ又は食事の介護」、「食事の提供」、「洗濯、掃除等の家事」又は「健康管理」の少なくとも一つのサービス(以下「介護等サービス」という。)を供与する施設として定義されている。
入居サービスと介護等サービスのどちらか一つでもあれば、有料老人ホームに該当します。
「届出」の有無にかかわらず、この実態があれば有料老人ホームとして扱われ、
都道府県等が受理を拒否できる余地はありません
そのうえで、建物を木造かつ平屋建てにしたい施設だけが、次に説明する特例の入り口に立ちます。

うちの施設、届出をしていない部分もあるんですが、
それでも有料老人ホームになるんですか。

サービスの実態があれば該当します。
届出の有無では変わらないので注意してください。

木造平屋建てでも耐火建築物にしなくてよい条件とは何か

木造平屋建ての建物にスプリンクラーと警報設備を備えたイラスト
指導指針は、建物を耐火建築物又は準耐火建築物にすることを原則にしています。
ただし木造かつ平屋建ての施設には、次の特例が用意されています。
有料老人ホーム設置運営標準指導指針〔抜粋〕 都道府県知事が、火災予防、消火活動等に関し専門的知識を有する者の意見を聴いて、次の各号のいずれかの要件を満たす木造かつ平屋建ての有料老人ホームであって、火災に係る入居者の安全性が確保されていると認めたものについては、(略)耐火建築物又は準耐火建築物とすることを要しない。
特例を使うには、火災に係る入居者の安全性を確保する代わりの手立てが必要です。
指導指針が示す要件は3つあり、
スプリンクラー設備の設置や内装への難燃性材料の使用、
非常警報設備による早期発見と通報体制の整備、
避難口の増設や避難訓練の頻繁な実施が、それぞれ耐火構造の代わりになります。

スプリンクラーを付ければ、それだけで平屋でもいいってことですか。

それだけでは足りません
警報設備と避難のしやすさも合わせて満たす必要があります。

特例を使うときに見落としやすい点はどこか

都道府県職員と消防の専門家が意見交換しているイラスト
特例は、事業者が独自に判断して使えるものではありません。
都道府県知事が専門家の意見を聴くという手続きが前提になっています。
有料老人ホーム設置運営標準指導指針〔抜粋〕 高齢者の居住の安定確保に関する法律等の一部を改正する法律(平成23年法律第74号。以下「改正法」という。)の施行(平成23年10月20日)の際現に改正法による改正前の高齢者の居住の安定確保に関する法律第4条に規定する高齢者円滑入居賃貸住宅の登録を受けている高齢者専用賃貸住宅であった有料老人ホームについては、(略)構造設備に関する一部の基準を適用しない。ただし、建築基準法、消防法等に定める避難設備、消火設備、警報設備その他地震、火災、ガスもれ等の防止や事故、災害に対応するための設備を十分に設けるとともに、緊急通報装置を設置する等により、入居者の急病等緊急時の対応を図ること。
専門家の意見を聴かずに、事業者だけの判断で耐火構造をやめることはできません。
既存の制度から移行してきた施設については、別の経過措置もあります。
ただしその場合も、避難設備や消火設備、警報設備は十分に設けることが条件です。
「特例だから設備は要らない」という誤解をしないよう注意してください。

うちは古い制度から移行してきた施設なんですが、
それなら設備はそのままで大丈夫ですか。

経過措置があっても、避難設備や警報設備は必要です。
設備を減らせるという意味ではありません。

特例を使いたいとき明日から何をすればよいのか

事業者が消防機関の窓口へ相談しているイラスト
特例を使うかどうかは、施設の担当者だけで決められることではありません。
早い段階で都道府県と消防機関の両方に相談することが近道です。
有料老人ホームに係る厚生労働省の発出通知について(情報提供)〔抄〕 各都道府県消防防災主管課におかれましては、貴都道府県内の市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む。)に対しても、この旨周知していただきますようお願いします。
この通知は、消防庁予防課から各都道府県の消防防災主管課、さらに市町村の消防機関にまで周知されています。
つまり、身近な消防署の窓口でも指導指針の内容を把握している可能性が高いということです。
木造平屋建てで特例を使いたい場合は、設計の早い段階で消防機関に相談し、
専門家の意見を聴く手続きをどう進めるか確認しておきましょう。

それなら、まず最寄りの消防署に相談すればいいんですね。

そのとおりです。
都道府県の窓口と合わせて、早めに相談しておきましょう。

よくある質問

Q木造平屋建てなら、届出さえすれば必ず特例が使えますか?
Aいいえ。都道府県知事が専門家の意見を聴いて安全性を認めた場合に限られ、届出だけで自動的に認められるものではありません。
Qスプリンクラーさえ設置すれば特例の要件を満たしますか?
A満たしません。指導指針が示す3つの要件(消火・通報・避難)をあわせて満たす必要があります。
Q経過措置の対象施設は、消防用の設備を用意しなくてよいのですか?
Aいいえ。経過措置の対象でも、避難設備・消火設備・警報設備は十分に設けることが条件になっています。
Qこの指導指針はどの都道府県でも同じ内容が適用されますか?
A都道府県等が独自の指導指針を定めている場合は、そちらが優先して適用されます。本通知の指導指針はあくまで参考です。

まとめ

有料老人ホームは建物を耐火建築物又は準耐火建築物にすることが原則です。
ただし木造かつ平屋建てでも、特例を使える場合があります。
特例には都道府県知事が専門家の意見を聴くという手続きが前提になります。
代替措置はスプリンクラー設備・非常警報設備・避難のしやすさの3つです。
経過措置の対象施設でも、避難設備や消火設備は十分に設けることが条件です。
有料老人ホームは届出の有無にかかわらず実態で判定されます。
特例を検討するときは、早い段階で消防機関と都道府県へ相談することが近道です。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 有料老人ホームに係る厚生労働省の発出通知について(情報提供)〔抄〕(平成30年4月26日 事務連絡 消防庁予防課)
  • 有料老人ホームの設置運営標準指導指針について(平成30年4月2日 老発0402第1号 厚生労働省老健局長)
  • 老人福祉法(昭和38年法律第133号)第29条第1項

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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