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局所放出方式のハロゲン化物消火設備は薬剤の量がどう決まるのか|燃焼面が1面に限られるかどうかで変わる計算式を解説

局所放出方式のハロゲン化物消火設備を解説する記事のアイキャッチ画像

ハロゲン化物消火設備には、防護区画全体を薬剤で満たす全域放出方式のほかに、燃えている物に直接薬剤を浴びせる局所放出方式があります。
局所放出方式は、燃焼面の広がり方によって、消火剤の量を求める式が2つに分かれています。
どちらの式を使うかは、燃焼面が1面に限られるかどうかで決まります。
なぜ式が分かれているのか、条文の構造から確かめます。

うちの設備は局所放出方式と言われました。

全域放出方式とは薬剤の量の決め方が違います。
条文を一緒に見てみましょう。

何がどう違うのか分かりません。

薬剤の量を決めるが、燃焼面の形で分かれます。
順番に確認しましょう。

この記事の結論
  • 局所放出方式のハロゲン化物消火設備は、燃えている物に直接薬剤を浴びせる方式で、噴射ヘッドと薬剤量の基準が全域放出方式と別に定められています。
  • 噴射ヘッドは、防護対象物のすべての表面が有効射程内にあるように設けます。
  • 使用できる薬剤はハロン二四〇二・ハロン一二一一・ハロン一三〇一の3種類に限られます。
  • 薬剤の量は、燃焼面が1面に限られる場合は表面積の式、それ以外は壁の面積比率を使う式で計算します。
  • 算出した量には、薬剤の種類に応じて1.1倍または1.25倍の安全率を掛けます。

局所放出方式は直接浴びせる方式で燃える面が1つか壁の面積比かで式が分かれ安全率を掛けることを示す図解

局所放出方式のハロゲン化物消火設備とはどんな仕組みなのか

燃えている物に直接薬剤を浴びせる噴射ヘッドと防護区画全体を薬剤で満たす全域放出方式を対比するイメージ図
局所放出方式は、防護区画全体を薬剤で満たすのではなく、燃えている物に直接薬剤を浴びせる方式です。
条文は、局所放出方式の噴射ヘッドを、全域放出方式や不活性ガス消火設備の規定を組み合わせて定めています。
消防法施行規則第20条第2項 局所放出方式のハロゲン化物消火設備の噴射ヘッドは、第十九条第三項第一号及び第二号並びに前項第一号及び第二号イの規定の例によるほか、次の各号に定めるところにより設けなければならない。
一 次項第二号に定める消火剤の量を三十秒以内に放射できるものであること
二 消防庁長官が定める基準に適合するものであること。
局所放出方式は、全域放出方式と不活性ガス消火設備の規定を部分的に準用する形で条文が組まれています。
噴射ヘッドの向きや放射のしかたは、不活性ガス消火設備の局所放出方式(第19条第3項)の規定をそのまま使います。
霧状に放射する薬剤の指定や放射圧力の数値は、ハロゲン化物消火設備の全域放出方式(前項=第20条第1項)の規定を使います。
局所放出方式という独立した条文が別に存在するわけではなく、他の条文の部品を組み合わせて成り立っている点が特徴です。
自分の設備がどちらの方式かは、設計図書の系統図や消火剤の量の記載で確認できます。

うちの設備は局所放出方式と全域放出方式、どちらか分かりません。

設計図書の系統図を見れば分かります。
次は噴射ヘッドの基準を見てみましょう。

噴射ヘッドはどんな基準で設けるのか

燃えている対象物のすべての面が噴射ヘッドの有効射程に収まるように配置されたイメージ図
局所放出方式の噴射ヘッドには、位置と性能の両面で条文上の条件があります。
不活性ガス消火設備の局所放出方式と共通する部分も少なくありません。
消防法施行規則第19条第3項 局所放出方式の不活性ガス消火設備の噴射ヘッドは、前項第二号イの規定の例によるほか、次の各号に定めるところにより設けなければならない。
一 防護対象物のすべての表面がいずれかの噴射ヘッドの有効射程内にあるように設けること
二 消火剤の放射によつて可燃物が飛び散らない箇所に設けること。
噴射ヘッドは、燃えている物のどの面からも届く位置に配置しなければなりません。
これは局所放出方式が防護区画全体ではなく、対象物そのものを狙って薬剤を浴びせる方式だからです。
薬剤の勢いで可燃物が周囲に飛び散る場所にヘッドを設けることも認められていません。
ハロン二四〇二を放射するヘッドは霧状に放射するものであることも求められます。
放射時間は消火剤の量を30秒以内に放射できる能力が必要です。

ヘッドの位置まで細かく決まっているんですね。

燃えている物の全周から狙える配置が基本です。
設計図書で射程を確認できます。

消火剤の量はどちらの式で計算するのか

上面を開放した容器の表面積で量を求める式と壁の面積比率で量を求める式を対比するイメージ図
局所放出方式の消火剤の量は、燃焼面の広がり方によって2つの式のどちらかで求めます。
条文は、燃焼面が1面に限られる場合とそれ以外の場合とで計算方法を分けています。
消防法施行規則第20条第3項第二号 局所放出方式のハロゲン化物消火設備にあつては、次のイ又はロに定めるところにより算出された量にハロン二四〇二又はハロン一二一一にあつては1.1、ハロン一三〇一にあつては、1.25をそれぞれ乗じた量以上の量とすること。
イ 可燃性固体類又は可燃性液体類を上面を開放した容器に貯蔵する場合その他火災のときの燃焼面が一面に限定され、かつ、可燃物が飛散するおそれがない場合にあつては、消火剤の種別に応じ、防護対象物の表面積一平方メートル当りの消火剤の量の割合で計算した量。
ロ イに掲げる場合以外の場合にあつては、次の式(Q=X-Y(a/A))によつて求められた量に防護空間の体積を乗じた量
燃焼面が1面に限られるかどうかで、量の求め方がまったく違う式になります。
イの式は、タンクの上面を開放して貯蔵するような、燃える面が最初から1つに決まっている場合の式で、表面積に薬剤の量の割合を掛けるだけの単純な計算です。
ロの式は、燃焼面が複数の方向に広がりうる一般的な場合の式で、防護対象物の周囲に実際にどれだけ壁があるか(a)と、壁があると仮定した場合の面積(A)の比率によって、単位体積あたりの薬剤の量を調整します。
壁で囲まれている割合が高いほど薬剤が逃げにくいため、必要な量は少なくなる仕組みです。
自分の設備がどちらの式で設計されているかは、消火剤の量の根拠となる計算書で確認できます。

なぜ式によってこんなに考え方が違うんですか。

壁の量で薬剤の逃げやすさが変わるからです。
次は安全率の話をしましょう。

なぜ薬剤や場面によって割増しの数字が変わるのか

2つ並んだ防護区画のそれぞれで計算した量のうち大きいほうを採用するイメージ図
局所放出方式には、計算した量にそのまま倍率をかける決まりがあります。
使う薬剤の種類と、防護区画が複数ある場合の扱いに注意が必要です。
消防法施行規則第20条第3項第三号 全域放出方式又は局所放出方式のハロゲン化物消火設備において、同一の防火対象物又はその部分に防護区画又は防護対象物が二以上存する場合には、それぞれの防護区画又は防護対象物について前二号の規定の例により計算した量のうち最大の量以上の量とすること
同条第4項第二号の三 局所放出方式のハロゲン化物消火設備に使用する消火剤は、ハロン二四〇二、ハロン一二一一又はハロン一三〇一とすること
局所放出方式で使える薬剤は、ハロン系の3種類だけに限られています。
全域放出方式ではHFC系・FK系も使えますが、局所放出方式にはこの2系統の指定がありません。
算出した量には、ハロン一三〇一だけ他の2種類より高い1.25倍の安全率がかかり、ハロン二四〇二とハロン一二一一は1.1倍です。
同じ建物の中に防護区画や防護対象物が2つ以上あるときは、それぞれで計算した量のうち最大の量を貯蔵容器の基準にします。合計するわけではありません。
複数の設備をまとめて1つの貯蔵容器で賄っている建物では、この最大値の考え方を見落としやすいので注意が必要です。

うちは防護区画が2つあります。
量は足し算ですか。

足し算ではなく最大の量で足ります。
計算書で確認しておきましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

点検員が計算書と貯蔵容器を照合しているイメージ図
ここまでの内容を、点検や確認の場面に落とし込みます。
3つのポイントに整理します。 確認は3つのポイントに整理できます。
まず、自分の設備が全域放出方式か局所放出方式かを、設計図書の系統図で確認します。
次に、局所放出方式であれば、燃焼面が1面に限られる式(イ)と壁の面積比率の式(ロ)のどちらで計算されているかを確認します。
最後に、防護区画や防護対象物が複数ある場合は、量が最大値で設計されているかを計算書で確認します。
薬剤の種類と量は、点検のたびに容器の質量で確かめてもらうと安心です。

次の点検で計算書も一緒に見てもらいます。

系統図・計算書・容器の質量の3点セットで見ましょう。
点検業者と一緒に確認すると確実です。

よくある質問

Q局所放出方式はどんな設備に採用されますか?
A条文上、駐車の用に供される部分や通信機器室、指定可燃物を扱う部分などには全域放出方式を設けることが義務付けられているため、局所放出方式はそれ以外の限定的な燃焼面を持つ設備に採用される方式です。
Q表面積の式とQ=X-Y(a/A)の式はどちらが厳しい量になりますか?
Aどちらの量が多くなるかは個々の建物の壁の配置によって変わるため、一概には言えません。設計段階で計算書を確認する必要があります。
Q安全率の1.1倍と1.25倍はどこで確認できますか?
A消火剤の量の設計計算書に、薬剤の種類ごとの倍率を掛けた最終的な貯蔵量が記載されています。
Q局所放出方式にHFC系やFK系の薬剤を使うことはできますか?
A条文は局所放出方式に使用する消火剤をハロン二四〇二・ハロン一二一一・ハロン一三〇一の3種類に限定しており、HFC系・FK系は指定されていません。

まとめ

局所放出方式のハロゲン化物消火設備は、燃えている物に直接薬剤を浴びせる方式で、全域放出方式や不活性ガス消火設備の規定を部分的に準用して条文が組まれています。
噴射ヘッドは、防護対象物のすべての表面が有効射程内にあるように設けます。
消火剤の量は、燃焼面が1面に限られる場合は表面積の式、それ以外は壁の面積比率を使う式で計算します。
燃焼面が広がりうる一般的な場合は、周囲の壁の面積比率(a/A)で薬剤の量を調整します。
算出した量には、ハロン二四〇二・ハロン一二一一で1.1倍、ハロン一三〇一で1.25倍の安全率を掛けます。
防護区画や防護対象物が複数あるときは、合計ではなく最大の量を採用します。
使用できる薬剤はハロン系の3種類に限られ、HFC系・FK系は使えません。

式が分かれる理由がよく分かりました!

計算書の確認や点検計画の見直しはまとめてお手伝いできます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法施行規則第20条第2項(局所放出方式のハロゲン化物消火設備の噴射ヘッド)
  • 消防法施行規則第20条第3項第二号(局所放出方式の消火剤の量の計算・安全率)
  • 消防法施行規則第20条第3項第三号・第4項第二号の三(防護区画が複数ある場合の量・使用できる薬剤の種類)
  • 消防法施行規則第19条第3項(不活性ガス消火設備の局所放出方式の噴射ヘッドの位置基準)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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