文化財の建物で夜中に火が出たとき、その場にいるのは何人でしょうか。
昼間は職員も参拝者もいますが、夜は無人という文化財の建物は珍しくありません。
消防庁は、その少ない人数でも初期消火まで届くように訓練の作り方をまとめました。
この記事では文化財の建物に向けた防火訓練マニュアルの中身を解説します。
うちの本堂は文化財に指定されています。
訓練は毎年やっていますが昼間に消火器を出すだけです。
消防庁が文化財の建物だけを見た防火訓練マニュアルを出しています。
そこでは夜間を想定した訓練が柱になっています。
夜は誰もいないので訓練のしようがない気がします。
それでも想定しておく意味はあるのでしょうか。
むしろ人が少ないときこそ焼失リスクが高いという整理です。
限られた人数で何ができるかを見極めるのが狙いです。
- 令和2年の消防庁の通知が文化財の建物に向けた防火訓練マニュアルを示しました。
- 対象は国宝や重要文化財の建造物とそれらを保管する博物館等です。
- 訓練は日中だけでなく夜間など人が少ない状況を想定して組みます。
- 重点は火災の早期発見と迅速な通報と初期消火の三つに置かれています。
- 訓練のあとは事後検証まで行って課題に手を打つところまでが一組です。
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目次
文化財の建物に防火訓練のマニュアルが作られたのはなぜか

この通知の場合は、名前を聞けば誰でも思い当たる火災が二つ並んでいます。
背景には、文化庁が消防庁および国土交通省と連携して策定した「世界遺産・国宝等における防火対策5か年計画」と、その中で公表された防火対策ガイドラインがあります。
ガイドラインには、夜間等の対応者が少ない状況においても確実に初期消火が実施できるように訓練を実施するという取組事項が書かれていました。
そこで消防庁が、その訓練を実際にどう組み立てるのかを具体化したのがこの防火訓練マニュアルです。
マニュアル自身も、文化財等は火災等によりいったん滅失毀損すれば再び回復することができない国民共有の財産であることを目的の冒頭に置いています。
設備を増やしなさいという通知ではないのですね。
自動火災報知設備なら入っています。
入っている設備を鳴ったときに使い切れるかという話です。
そこを訓練で確かめる筋道が示されています。
どの建物がこのマニュアルの対象になるのか

マニュアルはその範囲をはっきり書いています。
一方で、消防法上の訓練の義務があるかどうかは別に決まります。文化財の建造物は令別表第一(17)項、寺社は(11)項、博物館は(8)項で、いずれも令第1条の2第3項第1号ハの収容人員が50人以上という線で防火管理者の選任義務がかかります。
(17)項の収容人員は消防法施行規則第1条の3により床面積を5平方メートルで除して算定するので、床面積が250平方メートルあれば50人に達する計算です。
つまり、それなりの大きさの本堂や天守なら義務の側に入りますが、小さな社殿や土蔵は義務がかからないことがあります。
それでもマニュアルは、義務がない文化財等であっても訓練を実施して防火体制の充実・強化を図ることが望ましいとしていて、義務の有無で線を引いていません。
市の条例で指定された文化財も見てよいのですね。
うちの蔵は市の指定です。
条例で指定された文化財も参考にすることが望ましいと書かれています。
迷ったら所轄消防署に相談してください。
マニュアルは訓練の前になにを求めているのか

順番が決まっているので、そこを外さないでください。
出火危険がある場所としてマニュアルが挙げるのは、電灯や電気配線などの電気設備、線香やろうそくといった裸火、ストーブなどの火気設備がある場所と、ごみ箱や外履きを入れるビニル袋を大量に保管している木箱のような可燃物の集積場所です。
初期消火が難しい場所としては、火災確認を行う者の待機場所からの移動距離が最大となる場所や入口から離れている場所、灯油や塗料を保管する場所が挙げられています。
そのうえで訓練想定を決め、火災発生時の初動対応を具体化し、訓練シナリオを作り、消防機関や防火の専門家に確認を依頼して助言を得るという流れです。
シナリオは日中と夜間と催し物開催時の三つのパターンが例示されているので、自分の建物に近いものを選んで書き換えれば形になります。
ろうそくや線香が危ないというのは腑に落ちます。
ごみ箱まで見る発想はありませんでした。
放火が最も多い出火原因という統計が添えられています。
外に置いた可燃物こそ先に片付けてください。
実務で見落としやすいのはどこか

そこに実際の失敗が名指しで並んでいて、ここが読者にとっていちばん重い部分です。
マニュアルは、自動火災報知設備で感知したときと現場を確認した後の二回に分けて通報する二段通報を勧めていて、人員が少ない場合は第一段の通報を短時間で済ませて現場確認や初期消火に注力するようにと書いています。
もうひとつの落とし穴が、自動消火設備があるから任せておけばよいという思い込みです。マニュアルはスプリンクラー設備が設置されている場合であっても消火が確認できるまでは消火器や屋内消火栓設備等による初期消火を行うとしています。
そのうえで、水損被害を軽減するために消火確認後に制御弁を閉める等の対応方法を確認しておくこととされています。
なお令和元年版消防白書によると、平成30年中に消防隊が放水した建物火災10,684件のうち、覚知から放水開始までに10分を超えたものが50%以上を占めています。それまでは関係者が主体的に動くしかないということです。
消してから電話でよいと思っていました。
順番が逆だったということですか。
ただしパトロール中に直接見つけて消せそうなときは初期消火が先です。
その分かれ目までシナリオに書いておいてください。
明日からなにを確認すればよいのか

いま持っている消防計画と訓練の予定に足していくだけで形になります。
マニュアルは、関係者が少人数だったり夜間は無人となる小規模な文化財等については、夜間に火災が発生した想定のシナリオ例を参考にして、限られた人員で何ができるのかを見極める必要があるとしています。
次に、屋内消火栓設備が一人で操作できる型なのか二人必要な型なのかを確かめます。マニュアルは操作・取扱い方法について初動対応を行う職員全員が習熟しておくことを求めています。
そのうえで、消防用設備等の設置事業者や保守事業者による操作方法等の説明の機会を定期的に設け、訓練では実際に水等を放出してみます。
最後に対応事項チェックリストに記録を残し、事後検証で出た課題に対して時機を失することなく必要な措置を講じるところまでが一組です。
平面図とシナリオと振り返りが一本につながりました。
次の訓練は夜の想定でやってみます。
その順番で問題ありません。
消防機関に助言を依頼するところまで入れておいてください。
よくある質問
まとめ
今夜さっそく夜間の動線を歩いて確かめてきます!
そのとき受話器までの距離も測っておいてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
参考・出典
- 「国宝・重要文化財(建造物)等に対応した防火訓練マニュアル」について(通知)(令和2年3月24日 消防予第67号)
- 国宝・重要文化財(建造物)等に対応した防火訓練マニュアル(令和2年3月 消防庁)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第1条の2第3項・別表第一
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第1条の3・第3条第1項・第3条第10項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





