泡消火設備の点検票には、加圧送水装置の欄に高架水槽の落差や圧力水槽の圧力、ポンプの全揚程といった数字が並びます。
この三つは同じ「送り出す力」を表していますが、計算式に立つ項の数はそろっていません。
消防法施行規則第18条第4項第九号は、高架水槽・圧力水槽・ポンプのそれぞれに専用の式を定めており、移動式の泡消火設備を併設していると項がもう一つ増えます。
項が増える理由が分かれば、点検票の数字を自分の建物の設備構成と照らし合わせて読めるようになります。
高架水槽と圧力水槽とポンプで、計算式の項の数が違うと聞きました。
同じ送水なのに、なぜそろっていないのですか。
高架水槽は自分の高さがそのまま落差になるからです。
圧力水槽とポンプは、その落差の分を式の中に別の項として足す必要があります。
うちは移動式のホースも併設しているのですが、それも計算に関係しますか。
移動式のホースを使う設備は、摩擦損失の項がもう一つ加わります。
順番に見ていきましょう。
- 泡消火設備の加圧送水装置は高架水槽・圧力水槽・ポンプの三方式があり、それぞれ専用の計算式を持ちます。根拠は消防法施行規則第18条第4項第九号です。
- 高架水槽の落差はH=h1+h2+h3の三項で求めます。水槽自体の高さがそのまま落差になるため、別に落差の項を足す必要がありません。
- 圧力水槽とポンプは自分の位置エネルギーを持たないため、落差そのもの又はその圧力換算分を独立した項として式に足します。
- 移動式の泡消火設備を併設していると、消防用ホースの摩擦損失の項がどの方式の式にも一つ加わります。
- 加圧送水装置には、泡放出口やノズルの性能範囲の上限値を超えないための措置も求められます。
▼

目次
泡消火設備の加圧送水装置にはどんな方式があるのか

泡消火設備でもこの三方式が使われ、どれを選ぶかで点検票に書かれる数字の意味が変わります。
消防法施行規則第十二条第一項第七号が定めるスプリンクラー設備等と共通の一般基準を土台にしたうえで、第十八条第四項第九号がイ・ロ・ハの三つの号で高架水槽・圧力水槽・ポンプそれぞれの専用の計算式を追加しています。
どの方式を選ぶかは建物の構造や設置スペースで決まりますが、計算式は方式ごとに違うため、点検票の数字を見るときはまずどの方式の設備かを確認する必要があります。
以下では高架水槽・圧力水槽・ポンプの順に、それぞれの式がなにを求めているのかを見ていきます。
うちのビルは屋上に水槽があるので高架水槽だと思うのですが、見分け方はありますか。
屋上や高い階に水槽があれば高架水槽方式です。
次の項目でその落差の求め方を見ていきましょう。
高架水槽を使うときの落差はどう計算するのか

条文はこの位置エネルギーを「落差」と呼び、必要な値を式で定めています。
H=h1+h2+h3 Hは、必要な落差(単位 メートル) h1は、固定式の泡放出口の設計圧力換算水頭若しくは移動式の泡消火設備のノズル放射圧力換算水頭(単位 メートル) h2は、配管の摩擦損失水頭(単位 メートル) h3は、移動式の泡消火設備の消防用ホースの摩擦損失水頭(単位 メートル)
式が求めるHはh1(泡放出口やノズルの設計圧力を高さに換算した値)とh2(配管の摩擦損失)とh3(移動式のホースの摩擦損失)を足した値で、これがそのまま水槽の設置高さの下限になります。
固定式の泡放出口だけの設備であればh3は生じないため、実質は二つの項で足ります。
高架水槽は落差自体が答えなので、後で見る圧力水槽やポンプのように位置エネルギーの項を別に足す必要がありません。
固定式だけならh3が要らないというのは、移動式のホースを足すと項が増えるということですね。
そのとおりです。
圧力水槽とポンプではこの落差の扱いがもう少し変わります。
圧力水槽を使うときの圧力はどう計算するのか

条文は圧力そのものを式で求めるようにしています。
P=p1+p2+p3+p4 Pは、必要な圧力(単位 メガパスカル) p1は、固定式の泡放出口の設計圧力又は移動式の泡消火設備のノズル放射圧力(単位 メガパスカル) p2は、配管の摩擦損失水頭圧(単位 メガパスカル) p3は、落差の換算水頭圧(単位 メガパスカル) p4は、移動式の泡消火設備の消防用ホースの摩擦損失水頭圧(単位 メガパスカル)
p3の落差の換算水頭圧がそれで、圧力水槽そのものは高架水槽のように高さで送り出す力を持たないため、設置場所と泡放出口の高低差を圧力に置き換えて別に足す必要があります。
ここでもp4(移動式のホースの摩擦損失水頭圧)は、移動式の泡消火設備を併設しているときだけ生じる項です。
高架水槽の三項に対して圧力水槽が四項になるのは、この落差の項が増えるためだと分かります。
高架水槽より項が一つ多いのは、高さの分を自分で持っていないからなのですね。
そのとおりです。
次はポンプでも同じ理由で項が増えるところを見ていきましょう。
ポンプを使うときの全揚程はどう計算するのか

ただし単位は圧力ではなく高さ(メートル)で表します。
H=h1+h2+h3+h4 Hは、ポンプの全揚程(単位 メートル) h1は、固定式の泡放出口の設計圧力換算水頭又は移動式の泡消火設備のノズルの先端の放射圧力換算水頭(単位 メートル) h2は、配管の摩擦損失水頭(単位 メートル) h3は、落差(単位 メートル) h4は、移動式の泡消火設備の消防用ホースの摩擦損失水頭(単位 メートル)
圧力水槽のp3が圧力に換算した値だったのに対し、ポンプのh3はメートル単位の落差そのままです。単位が違うだけで、位置エネルギーを別の項として足す考え方は同じです。
h4(移動式のホースの摩擦損失水頭)も、固定式の泡放出口だけの設備には生じません。
点検票の全揚程を確認するときは、その建物に移動式の泡消火設備(ホースとノズル)が併設されているかどうかで、四つの項すべてが使われているのか三つで足りているのかが変わることを見ておくと実務で迷いません。
固定式と移動式の両方がある建物では、いつもh4まで含めて計算されているということですか。
はい。
移動式のホースがある設備は、点検のたびにその項が入っているかを確かめておくと安心です。
泡放出口やノズルの性能を超えないためにどんな措置が必要か

条文は逆方向、つまり圧力が上がりすぎないための措置も定めています。
泡放出口やノズルには性能範囲の上限値があり、加圧送水装置がその上限を超える圧力をかけてしまうと、かえって泡の発生や放射のかたちが崩れます。
高架水槽・圧力水槽・ポンプのどの方式でも、必要な値を満たすことと上限値を超えないことの両方が求められます。
明日からは、点検票の落差・圧力・全揚程の数字と合わせて、泡放出口やノズルの性能範囲の表示も一緒に確認してください。
大は小を兼ねるだろうと思っていましたが、上限もあるのですね。
そうなんです。
上限値を超えていないかも、点検の確認項目に加えてください。
よくある質問
まとめ
次の点検までに、点検票の数字がどの方式のどの項からできているか整理しておきます。
移動式を後から増設したときは再計算が必要になることもあります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第15条第五号
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項第七号
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第18条第4項第九号
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





