危険物を扱う工場や給油取扱所の屋根に、太陽光パネルを乗せたいという相談が増えています。
ところが、配線の通し方によっては市町村長の変更許可が必要になることをご存知でしょうか。
消防庁は検討会を設けて事故のリスクを調べ、具体的な安全対策をガイドラインにまとめました。
屋根の強度から配線ルートまで、あとから直すのが難しい部分にこそ注意が必要です。
うちの製造所、屋根が余ってるので太陽光パネルを置きたいんですが、普通の屋根置きと同じでいいですよね。
危険物施設は少し違います。
消防庁のガイドラインに沿って安全対策を確認する必要があります。
パネルを置くだけなのに、消防署への届出とか要るんですか。
配線の通し方次第では変更許可が必要になります。
まずは要件を一緒に見ていきましょう。
- 危険物施設の屋根やキャノピーに太陽光パネルを置く場合、地震・積雪風圧・爆発・延焼の4つのリスクへの対策が必要
- パネルの重量を加えた構造計算で、建築基準法の中程度・最大級の荷重に耐えることを確認する
- 放爆性能を落とさないよう、架台の重量は屋根ふき材でなく梁で受けるのが望ましい
- 配線が可燃性蒸気の滞留範囲を通ると、原則として市町村長の変更許可が必要になる
- 火災時に消防隊員が感電しないよう、パネルからパワーコンディショナーまでの機器・配線に感電防止表示を行う
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目次
危険物施設の屋根になぜ太陽光発電のガイドラインが必要になったのか

消防庁は検討会を設け、実態調査と事故の発生状況を踏まえてガイドラインを取りまとめました。
発出元は消防庁危険物保安室長で、宛先は都道府県の消防防災主管部局と東京消防庁・指定都市消防長です。
注目したいのは、この通知が消防組織法第37条の助言として出されている点で、強制の基準ではなく、市町村長等が個別に判断する際のよりどころという位置づけです。
検討会には大学の研究者も加わり、実際の設置状況調査と事故事例を踏まえて対策がまとめられました。
うちは指定数量ぎりぎりの小さな製造所なんですが、それでも対象になりますか。
施設の規模にかかわらず、屋根に太陽電池モジュールを設置する時点で対象になります。
どんな危険物施設のどんな設置が対象になるのか

設置場所によって、確認すべきリスクの中身が変わります。
消防機関は、屋根や架台が地震に耐えられるかどうかを個別に確認することができません。
そのため、建築基準法等の基準に適合していることを所有者等が自ら確認し、消防機関に示す必要があります。
給油取扱所のキャノピー上部など、危険物施設と直接関連しない部分に設置する場合でも、電気設備としての規制は及びます。
事務所の屋根に置く分には、危険物施設とは関係ないですよね。
そうとも限りません。
配線が可燃性蒸気の滞留範囲を通るかで扱いが変わります。
ガイドラインは屋根の太陽光発電に何を求めているのか

それぞれに、具体的な数値や規格が示されています。
爆発のリスクは、屋根が火災の際に早期に爆風圧を抜く「放爆性能」を落とさないことが焦点で、架台の重い荷重を屋根ふき材ではなく梁で受けるのが望ましいとされています。
延焼のリスクでは、太陽電池モジュール自体の可燃物の量に上限が定められており、JIS規格の火災試験に適合するものを使う必要があります。
どれも設置後に直すのが難しい部分なので、設計の段階から確認しておくことが欠かせません。
放爆性能って何のためにあるんですか。
火災で爆発的な燃焼が起きたとき、爆風圧を早く屋根から逃がすための性能です。
太陽光発電を乗せるとき見落としやすいのはどこか

火災発生時の対応と、設置後の点検義務も忘れてはいけません。
火災等の事故が発生した場合には、太陽光発電設備からの電力供給を確実に遮断できる措置を講じておく必要があります。
消火活動中の消防隊員が誤って感電しないよう、太陽電池モジュールからパワーコンディショナーまでの機器・配線には感電防止のための表示を設けます。
さらに、太陽光発電設備は危険物施設に関連する電気設備として、1年に1回以上の定期点検が必要になります。
感電防止の表示って、パネルだけに貼ればいいんですか。
いいえ、パワーコンディショナーまでの配線全体が対象です。
確実に遮断できる箇所まで表示します。
明日から何を確認しておけばよいのか

どれも設置後に直すのが難しい項目です。
次に、配線ルートが可燃性蒸気の滞留範囲にかかっていないかを図面で確認し、変更許可の要否を所轄消防署に相談します。
火災時に電力を確実に遮断できる体制と、感電防止の表示が設けられているかも見ておきます。
最後に、太陽光発電設備を含めた年1回以上の定期点検の計画に組み込みます。
すでに設置してしまっているパネルは、どうしたらいいでしょうか。
まずは配線ルートと表示の有無を点検してみましょう。
足りない対策は今からでも追加できます。
よくある質問
まとめ
配線のルートと表示、点検の頻度まで、まとめて確認してみます。
それがいちばんの近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物施設に太陽光発電設備を設置する場合の安全対策等に関するガイドラインについて(平成27年6月8日 消防危第135号 消防庁危険物保安室長)
- 根拠条文 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第9条第1項第6号・第17号、消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
- 製造所等の定期点検に関する行動指針の整備について(平成3年5月29日付け消防危第48号)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





