工場の炉や厨房設備を、法律どおり不燃区画室に収めているのに火災が広がった、そんな報告が消防庁に相次いで届きました。
壁と天井さえ囲えば安心だと考えていた現場は、実は窓や配管の貫通部を見落としていたのです。
消防庁は各地の消防本部から施工状況を集め、どこを見れば延焼を防げるかを事例として整理しました。
不燃区画室は壁を作っただけでは完成しません。
うちの工場も炉を不燃材料の壁で囲ってあるので、それでもう対策は終わりだと思っていました。
実は壁で囲われた不燃区画室からの延焼火災が複数報告されているんです。
窓や配管の貫通部が見落とされていました。
窓や配管まで見るとなると、何を基準に確認すればいいのかわかりません。
消防庁がまとめた施工事例に沿って見ていけば大丈夫です。
適用除外の3条件まで含めて解説します。
- 350キロワット以上の対象火気設備等を屋内に設けるときは不燃区画室に収める
- 不燃区画室に置いても隣接区画へ延焼する火災が複数発生している
- 窓や出入口は防火設備とし、ガラリには自動閉鎖装置を付ける
- 屋外に面する窓や出入口の防火設備を省ける条件は3つだけ
- 配管の貫通部は不燃材料で隙間なく埋め戻すことを施工前中後で確認する
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目次
不燃区画室に設置されているのになぜ延焼する火災が起きたのか

消防庁はこの実態を重く見て、消防本部への調査に乗り出しました。
発出したのは消防庁予防課長で、宛先は都道府県の消防防災主管部長・東京消防庁・指定都市の消防長です。
本調査の回答と最近の火災事例から、他の消防本部の参考になる有効な事例を別紙1・別紙2としてまとめています。
不燃区画室という「箱」を作ることそのものではなく、箱の作り方の細部に焦点を当てている点が特徴です。
消防組織法第37条に基づく助言として出されているため、罰則を伴う義務ではなく、実務の参考として位置づけられています。
法律どおりに壁と天井を不燃材料で囲っていれば、それだけで十分だと思っていました。
壁や天井だけを見て安心してしまう現場が実際に多かったんです。
窓や配管の貫通部まで見ていきましょう。
どんな設備を持つ施設が対象になるのか

消費熱量という数値が、不燃区画室が必要かどうかの境目になります。
炉やボイラー、大型の厨房設備などが350キロワット以上になると、この規定の対象に入ってきます。
条文そのものは総務省令に基準の中身を委ねる作りで、具体的な部屋の構造は火災予防条例(例)のほうに書かれています。
今回の通知は、この条例(例)を実際にどう施工すればよいかという、一段階具体的な事例を示すものです。
自分の施設の設備がこの熱量に該当するかどうかは、まず設備の仕様書を確認することから始まります。
うちの厨房設備が350キロワットを超えているかどうか、今まで気にしたことがなかったです。
入力の合算値が書かれた仕様書やカタログで確認できます。
超えていれば今回の事例が関係してきます。
窓や出入口はどんな防火設備にすればよいのか

だからこそ、扉や窓そのものの仕様が問われます。
使用の都合で常時閉鎖が難しい場合でも、火災時には随時閉鎖又は作動できる仕組みが必要です。
換気のためにガラリを設けるときは、開けっ放しにできない自動閉鎖装置付きのものを選びます。
壁面のガラリや換気扇には、あわせて防火ダンパーを設けることが望ましいとされています。
扉が両開きの場合は、片方が先に閉まって隙間が残らないよう、順位調整機能を持たせておくと安心です。
換気用のガラリなら、開けっ放しでも問題ないと思っていました。
そこがまさに事例で指摘された点です。
自動閉鎖装置付きのガラリに交換してください。
防火設備を省いてよい場合はあるのか

ただし、延焼の危険が小さいと判断できる場合に限り、例外が認められています。
まず1階で延焼のおそれのある部分以外の窓や出入口。
次に平屋建てや最上階にあり、上階への延焼拡大の危険がない部分。
そして直上3.6メートル以内に開口部がない部分で、この3つのどれかに当てはまる窓や出入口だけが対象外になります。
条件を満たさない部分は、たとえ設計上省きたくても、防火設備を付けなければなりません。
うちの不燃区画室は平屋の一番奥にあるんですが、それなら窓は防火設備でなくてもいいんですか。
平屋であることに加えて、延焼のおそれのある部分に当たらないかも確認が必要です。
敷地境界からの距離を図面で見てみましょう。
明日から何を確認すればよいのか

特に配管まわりは、目に見えにくい分だけ見落とされがちです。
壁と天井の取り合い部分は、耐火パテやモルタルなどの不燃材料で隙間なく埋め戻されている必要があります。
軽量なALCパネルや乾式工法で区画を作った場合は、天井との取り合いに隙間ができやすいので、特に念入りに見ます。
給排水管や電気配管、給排気ダクトが壁を貫通している部分も、同じように不燃材料で埋め戻されているかを確認します。
感知器と連動して閉まる防火設備がある場合は、実際に動作確認までしておくと安心です。
配管の貫通部までは、今まで意識して見たことがありませんでした。
今回の事例集がまさにそこを指摘しています。
まずは目視できる貫通部から確認していきましょう。
よくある質問
まとめ
窓と配管の貫通部、それに適用除外の3条件まで、確認する場所がはっきりしました!
それがいちばん確実な備えです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 対象火気設備等を屋内に設ける場合の外部への延焼防止措置が講じられた室に係る事例について(通知)(令和5年3月6日 消防予第152号 消防庁予防課長)
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第5条第1項第4号(対象火気設備等の位置、構造及び管理に関する条例の基準)
- 火災予防条例(例)(昭和36年自消甲予発73号)第3条第3項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





