危険物の規制に関する規則には、蓄電池の充放電だけを行う一般取扱所を、独立した建物ではなく工場や倉庫と同じ建物に置くための基準も別に用意されています。
独立棟に建てる場合とは異なり、表示や区画、他の用途との関係まで細かく条件が決められています。
どの条件をそろえれば同じ建物に置けるのか、条文を追って確認していきましょう。
この記事では、蓄電池の充放電だけを行う一般取扱所を工場や倉庫と同じ建物に置くとき、表示・区画・用途制限・管理権原・離隔距離のどこに注意すべきかを解説します。
うちは蓄電池の充放電だけをやっている施設ですが、独立した建物ではなく工場の中に置きたいと思っています。
やっぱり基準は厳しくなりますか。
はい、同じ建物に置く場合は専用の基準が別に用意されています。
表示や区画など、独立棟にはない条件が加わります。
具体的にはどんな条件が増えるんですか。
表示・区画・用途制限・管理権原・離隔距離です。
順番に見ていきましょう。
- 蓄電池の充放電だけを行うハ型一般取扱所は、決められた基準を満たせば工場や倉庫と同じ建物に設置できます
- 建物の見やすい箇所に、一般取扱所が存する旨を表示する義務があります
- 一般取扱所の部分は不燃材料の建物内に設け、開口部のない準耐火構造の壁・床で他の部分と区画しなければなりません
- 他の部分は工場や倉庫の用途に限られ、管理権原が別なら協議による文書が必要です
- 住宅などの保安対象用途があるときは原則十メートル以上の距離を保つ必要があります
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目次
工場や倉庫と同じ建物に置くハ型一般取扱所とはどんな施設か

このうち充放電だけを専ら行う施設を、独立した建物ではなく工場や倉庫と同じ建物に置く場合の基準が今回のテーマです。
本来は製造や組立てを行う施設向けの第三項・第五項の規定を、充放電だけを行うハ型施設にも例によって適用する仕組みです。
そのため、表示・区画・用途制限・離隔距離という、独立棟にはない条件が加わります。
一方で、充放電作業場所そのものの基準は、独立棟の第六項と同じ第二号の例によるため変わりません。
まずは、同じ建物に置くために新たに必要となる条件から確認します。
同じ建物に置く場合と独立棟の場合とでは、何がいちばん違うんですか。
表示や区画など、独立棟にはない条件が加わる点です。
一つずつ確認していきましょう。
建物のどこに何を表示する必要があるか

独立棟の場合と同じ発想ですが、対象になる建物が変わります。
内容は「蓄電池を製造・組立て・充放電する作業等のために危険物を取り扱う一般取扱所が存する旨」で、三つの区分を包括した文言があらかじめ定められています。
充放電だけを行う施設であっても、表示の文言を自施設の作業内容だけに書き換えることはできません。
条文がこの文言をそのまま指定しているためです。
まずは建物のどこに、どんな内容の表示を掲げるかを押さえておきましょう。
表示の内容は、うちの作業に合わせて短くしてもいいですか。
いいえ、条文が定めた文言のまま掲げる必要があります。
次は建物の構造を見ていきましょう。
一般取扱所の建物と区画はどう造ればよいか

壁の材料と、出入口に使う設備の種類がポイントです。
同条第五項第二号 建築物の一般取扱所の用に供する部分は、開口部を有しない準耐火構造の床又は出入口(特定防火設備を設けたものに限る。)以外の開口部を有しない準耐火構造の壁で当該建築物の他の部分と区画されたものであること。
参考・同条第三項第四号 イ 随時開けることができる自動閉鎖の特定防火設備 ロ 煙感知器の作動と連動して閉鎖する特定防火設備で、面積や区画に対する水平投影の長さ等について告示で定める基準に適合するもの
出入口には、開けたままにできない特定防火設備を設けます。
選び方は二通りで、常に閉まっている自動閉鎖のものにするか、煙感知器の作動と連動して閉まるものにするかを選べます。
煙感知器連動タイプは、面積や区画に対する水平投影の長さなど、細かな要件が別に定められています。
どちらを選ぶかで、日常の出入りのしやすさが変わります。
自動閉鎖式と煙感知器連動式、どちらのほうが扱いやすいんですか。
常時閉鎖でよければ自動閉鎖式、開け閉めが多いなら煙感知器連動式が向いています。
次は他の部分の用途を見ていきましょう。
同じ建物の他の部分はどんな用途に使えて誰が管理するのか

用途の制限と、管理する人の関係にも条件があります。
住居や店舗など、それ以外の用途には使えません。
そのうえで、他の部分の管理権原者が一般取扱所の部分の管理権原者と同一であるか、別であれば両者の協議で防火管理上必要な業務を定めた文書を作成しておく必要があります。
自社で建物全体を管理している場合はイで足りますが、他社が管理する建物の中に置く場合はロの協議文書が欠かせません。
管理の実態に応じて、どちらに当てはまるかを最初に整理しておきましょう。
うちは建物を借りていて管理会社が別なんですが、それでも設置できますか。
はい、管理権原者どうしの協議による文書を作成すれば設置できます。
最後に距離の条件を確認しましょう。
住宅などの用途が同じ建物にあるときはどうするか

工場や倉庫だけの建物より、条件が一段厳しくなります。
学校や病院、劇場など多数の人を収容する施設として総務省令で定めるものが対象になるときは、距離は三十メートル以上に伸びます。
ただし、指定数量の倍数が三十未満で、一般取扱所の部分を耐火構造の壁と床で区画していれば、この距離を保たなくてもよいという例外があります。
距離の有無にかかわらず、避難経路は一般取扱所の部分を経由せずに地上へ出られるように確保しておく必要があります。
住宅などが同じ建物にある案件では、この距離と避難経路の両方を早い段階で確認しておくことが欠かせません。
同じ建物に社員寮があるんですが、これも保安対象用途になりますか。
はい、住居用途にあたる場合は保安対象用途として距離の対象になります。
耐火区画にすれば距離を保たなくてよい場合もあります。
よくある質問
まとめ
工場の中でも、条件さえ満たせば設置できるとわかって安心しました!
はい、表示や区画、管理権原の整理から始めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第十一条第一項・第五項
- 危険物の規制に関する政令第九条第一項第一号・第十九条第一項・第二項第五号の二
- 危険物の規制に関する規則第二十八条の五十四第五号の二ハ・第二十八条の五十九の二第三項第二号・第三号・第五号・第六号・第五項第二号・第七項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





