蓄電池の集積場所や充放電作業場所は、一つ一つが基準を満たしていれば、それで終わりではありません。
複数の場所を同じ建物の中に並べていくと、床面積の合計はどんどん増えていきます。
消防法令は、この「合計の広がり」そのものを対象にした基準を別に用意しています。
この記事では、集積場所と充放電作業場所の床面積の合計が一定を超えたとき、どのように防火区画で分ければよいのかを解説します。
集積場所をいくつも並べているんですが、面積が広がっても基準は変わらないんでしょうか。
いいえ、合計の面積が一定を超えると別の基準がかかります。
防火区画で分ける義務が生じます。
面積が増えるだけで、区画まで必要になるんですか。
そのとおりです。
順番に条文を見ていきましょう。
- 集積場所と充放電作業場所の床面積の合計が千五百平方メートルを超えると、千五百平方メートル以内ごとに準耐火構造の壁で区画する義務が生じます
- 区画に使う特定防火設備は、随時開けることができる自動閉鎖のものと煙感知器の作動と連動して閉鎖するものの2種類から選べます
- 自動閉鎖の特定防火設備を選ぶ場合は、その周囲に幅三メートル以上の空地を保有しなければなりません
- 煙感知器連動の特定防火設備を選ぶ場合は、空地の代わりに設備の大きさの制限と連動して閉鎖する措置が必要です
- 区画の各部分から消防活動の拠点となる出入口までの水平距離は五十メートル以下にしなければなりません
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目次
蓄電池の集積場所はなぜ面積で防火区画が変わるのか

条文を確認します。
一つの集積場所が第八号の要件を、一つの充放電作業場所が第九号の要件を満たしていても、それだけでは終わりません。
同じ建物の中で複数の集積場所や充放電作業場所を並べていくと、危険物を用いた蓄電池を取り扱う面積そのものが広がっていきます。
そこで消防法令は、床面積の合計が一定を超えた段階で、別途準耐火構造の壁による区画を求める仕組みを設けました。
面積が積み上がるほど、火災が広がったときの被害の規模も大きくなるためです。
集積場所と充放電作業場所は別々に数えるんですか。
いいえ、両方をあわせた合計で数えます。
次に数え方を見ていきましょう。
床面積の合計はどこまで区画なしで積み増せるのか

条文を確認します。
第八号イ(1)で確保する周囲の空地や、充放電作業場所で同様に確保する空地も、この合計に加算される対象です。
一方で、第二種のスプリンクラー設備を設けた部分は、床面積の二分の一に相当する分を合計から除いて計算できます。
つまり、スプリンクラー設備の追加は単体の消火性能を高めるだけでなく、区画義務の発生を遅らせる効果も持ちます。
合計が千五百平方メートル以下にとどまっている限り、この区画の義務そのものは生じません。
スプリンクラーを設けると、その分だけ計算上の面積が減るということですね。
そのとおりです。
それでも超えてしまう場合の話を次にします。
千五百平方メートルを超えたらどう区画すればよいか

条文を確認します。
壁に設ける出入口には特定防火設備を用い、それ以外の開口部は設けられません。
この特定防火設備に「随時開けることができる自動閉鎖のもの」を選んだ場合は、その周囲に幅三メートル以上の空地を保有することが条件になります。
空地を確保できる敷地の余裕がある建物では、この選択肢がもっとも扱いやすい方法です。
出入口の設備を選ぶ段階から、敷地の広さと相談しておく必要があります。
三メートルの空地がどうしても取れない場所だとどうすればいいんですか。
もう一つの選択肢があります。
次に見ていきましょう。
特定防火設備の選び方でなにが変わるのか

条文を確認します。
その代わり、その特定防火設備の部分の水平投影の長さを、区画全体の水平投影の長さの二分の一未満に収めなければなりません。
さらに、一つの煙感知器が作動したときに、その区画にあるすべての特定防火設備が連動して閉鎖されるよう措置する必要があります。
「煙感知器を付けておけばよい」という思い込みで、水平投影の長さの上限や連動閉鎖の仕組みを確認しないまま設計を進めると、あとから設備の入れ替えが必要になります。
空地を取れない敷地では、この連動閉鎖の仕様を早い段階で決めておくことが欠かせません。
煙感知器を一つ付けるだけでは足りないんですね。
はい、連動して閉鎖する仕組みまで含めての要件です。
設備の選定段階で確認してください。
明日からなにを確認すればよいのか

条文を確認します。
まず、集積場所と充放電作業場所の床面積の合計(空地部分を含み、第二種スプリンクラー設備の設置分は二分の一を除く)を算出し、千五百平方メートルを超えないか確認します。
超える場合は、千五百平方メートル以内ごとに準耐火構造の壁で区画し、出入口に用いる特定防火設備を「自動閉鎖+空地三メートル」か「煙感知器連動+水平投影の長さ制限」のどちらにするか、敷地の余裕を見ながら決めます。
最後に、区画した各部分から消防隊が進入できる出入口や直通階段の出入口までの水平距離が五十メートル以下になっているかを確認します。
この距離は区画を分けたあとの配置全体にかかわるため、平面計画の初期段階で押さえておく必要があります。
区画を分けるだけじゃなくて、避難や消火の動線まで見ておく必要があるんですね!
はい、区画と動線はセットで計画する事項です。
迷ったら早めに相談してください。
よくある質問
まとめ
面積の合計まで見ておかないといけないとは思いませんでした!
個々の場所と合計の両方を見る必要がある点が見落としやすいところです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第十一条第一項・第五項
- 危険物の規制に関する政令第十九条第一項・第二項第五号の二
- 危険物の規制に関する規則第二十八条の五十四第五号の二イ・第二十八条の五十九の二第二項第八号・第九号・第十号
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





