危険物の規制に関する規則には、蓄電池を「充電し、又は放電する作業」だけを専ら行う一般取扱所という区分があります。
製造や組立てを行わないぶん、この区分には専用の基準が別に用意されています。
しかもその基準は一つに決まっているわけではなく、施設側で選べる複数のルートが用意されています。
この記事では、充放電だけを専ら行う一般取扱所で、キュービクル化・数量制限・充電率六十パーセント制御という三つの選び方がどう違うのかを解説します。
うちは蓄電池の充電と放電だけをやっている施設なんですが、製造や組立てをする施設と同じ基準になるんでしょうか。
いいえ、充放電だけを専ら行う施設には専用の基準が別に用意されています。
しかも一つではなく複数の選び方があります。
選び方によって、設備の負担や数量の制限が変わるということですか。
そのとおりです。
順番に条文を見ていきましょう。
- 充放電だけを専ら行う一般取扱所には専用の基準があり、キュービクル化・数量制限・充電率六十パーセント制御の三つから選べます
- キュービクル式の充放電設備を使えば、数量や遮蔽板といった他の要件を気にせず設置できます
- 数量を抑える方法では、床面積二十平方メートル以下・高さ一・八メートル以下・遮蔽板に加え、水没または密閉の消火措置が必要です
- 充電率を六十パーセント以下に制御する方法を選ぶ場合は、集積場所と同じ空地・床面積・高さの基準の例によります
- いずれの方法でも、可燃物を置かないことと専用の消火設備の設置は共通して必要です
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目次
蓄電池の充放電だけを行う一般取扱所とはどんな施設か

このうち充放電だけを専ら行う施設が、今回取り上げる区分です。
条文上は「イ又はロの作業に付随するものを除く」とされており、製造・組立てに伴う充放電は対象外です。
対象になるのは、蓄電池の品質の検査等に伴って充電・放電だけを行う施設に限られます。
この区分に当てはまるかどうかは、施設で実際にどんな作業をしているかで判断します。
区分を取り違えると、この後に見る専用の基準そのものが適用できません。
うちは検査のために充電・放電だけをしているんですが、それでもこの区分に入るんですか。
はい、品質の検査等に伴う充放電だけなら対象です。
次に共通の要件を見ていきましょう。
充放電作業場所はどんな要件を満たさなければならないのか

ここには全施設共通のルールがあります。
蓄電池そのものと、水が浸透する素材の包装材・こん包材以外は置けません。
そのうえで、施設側はイ・ロ・ハの三つの基準のうち、どれか一つに適合させる必要があります。
三つは並列の選択肢であり、複数を組み合わせる必要はありません。
自社の設備や敷地の条件に合わせて、どれか一つを選んで満たせば足ります。
可燃物を置かないのは分かりましたが、三つの基準はどう違うんですか。
設備の造りと数量制限のどちらを重視するかで変わります。
まず二つを比べてみましょう。
キュービクル化と数量制限、どちらを選べば設計の負担が軽くなるのか

もう一つは、数量を抑えて設備側で対応する方法です。
同号ロ 一の充放電作業場所で同時に充放電作業を行う蓄電池に用いられる危険物の数量の総和を指定数量未満とし、(略)一の充放電作業場所の床面積は、二十平方メートル以下とすること。床面から蓄電池の上端までの高さは、一・八メートル以下とすること。充放電作業場所の周囲に告示で定めるところにより遮蔽板を設けること。(略)次のいずれかの措置を講ずること。(略)充放電設備内の蓄電池を水没させる措置、又は耐火性能を有する材料で造られた箱(蓄電池から発生した可燃性の蒸気を箱の外部へ安全に放出できる構造を有するものに限る。)の中に充放電設備内の蓄電池を収納して密閉する措置(略)
キュービクル式の充放電設備は、それ自体が区画された構造を備えているため、他の要件は上乗せされません。
一方、キュービクル式にしない場合は、同時に充放電作業を行う蓄電池の危険物の数量の総和を指定数量未満に抑えたうえで、床面積二十平方メートル以下・高さ一・八メートル以下・告示適合の遮蔽板という三つの条件をそろえる必要があります。
さらに、火災や温度上昇が起きたときに蓄電池を水没させるか、耐火性能を持つ箱に収めて密閉するか、同等の効果を持つ措置のいずれかもあわせて講じなければなりません。
設備投資と敷地の広さ、どちらを優先するかで選ぶ方法が変わります。
キュービクル式にすれば、それだけで済むということですか。
はい、その代わり数量を抑える方法よりも設備の費用はかかります。
もう一つの選び方も見てみましょう。
充電率を六十パーセントに抑える方法ではどこに注意が必要か

ただし、ここには見落としやすい前提があります。
参考・同項第六号 蓄電池の充電率は、蓄電池を充電し、又は放電する作業(略)を行う場合を除き、六十パーセント以下とすること。
蓄電池の集積場所では、充放電作業を行っている間は充電率六十パーセントの制限が適用されないという例外があります。
しかし、ハの方法を選んだ充放電作業場所では、この作業中の例外を使わず、常に六十パーセント以下に制御したうえで、集積場所と同じ区分に応じた空地・床面積・高さの要件の例によることになります。
「充放電中だから多少超えても構わない」という思い込みのままこの方法を選ぶと、要件を満たせなくなります。
キュービクル化や数量制限と同様、選んだ方法に応じた前提を正しく理解しておく必要があります。
充放電中は例外があるって前に聞きましたが、この方法では違うんですね。
はい、ハを選ぶ場合はその例外を使いません。
最後に共通で必要な設備を確認しましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

条文を確認します。
まず、自社の施設が製造・組立てを含まない「充放電だけを専ら行う」区分に当てはまるかを確認します。
次に、キュービクル化・数量総和を指定数量未満に抑える方法・充電率六十パーセント制御の三つから、敷地と設備投資のバランスを見て一つを選びます。
最後に、選んだ方法にかかわらず、可燃物を置かないことと第三十五条の三第五項の消火設備の設置を確認します。
三つの選び方はどれも独立した基準なので、途中で条件を混ぜないことが重要です。
三つも選び方があるとは思いませんでした!
はい、施設の規模と設備投資のバランスで選んでください。
迷ったら早めに相談してください。
よくある質問
まとめ
三つの選び方があって、自社に合う方法を選べそうです!
施設の規模と設備投資のバランスで選んでください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第十一条第一項・第五項
- 危険物の規制に関する政令第十九条第一項・第二項第五号の二
- 危険物の規制に関する規則第二十八条の五十四第五号の二ハ・第二十八条の五十九の二第二項第六号・第八号・第六項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





