前回は、蓄電池の特例を専用の建物である特定屋内貯蔵所(指定数量50以下)と組み合わせる場合を解説しました。
実はもう一つ、蓄電池の特例を重ねられる屋内貯蔵所があります。専用の建物ではなく、他の用途をもつ建築物の中に設ける併設型です。
規則第16条の2の9を使うと、この併設型でも床面積75平方メートル以下という上限まで適用除外になります。
その代わり、耐火構造による区画や窓なしという基準は、組み合わせても外れずに残ります。
併設型の屋内貯蔵所は、床面積75平方メートルまでという制限が厳しいと聞きました。
蓄電池ならその上限も動くんですか。
はい、動きます。
ただし動く号と動かない号があります。
全部一律に緩くなるわけではないんですね。
そうなんです。
今日は規則第16条の2の9が定める組み合わせの中身を、条文から確認していきましょう。
- リチウムイオン蓄電池だけを貯蔵する屋内貯蔵所を、他の用途をもつ建築物に併設する場合(令第10条第3項)も、蓄電池の特例(規則第16条の2の8)の条件を満たすと、規則第16条の2の9のさらに広い特例が使えます。
- この組み合わせでは、建築物内の設置階・階高・床面積75平方メートル以下という条件までまとめて適用除外になります。
- 一方で、耐火構造による区画・自動閉鎖の防火設備・窓なしという基準は、組み合わせても外れずに残ります。
- 標識掲示板と禁水性物品等の床の防水措置(令第10条第1項第3号・第10号)も、適用除外リストに含まれていません。
- 蓄電池を架台に載せて貯蔵する場合は、架台そのものの構造基準(規則第16条の2の2)も別に満たす必要があります。
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目次
併設型の屋内貯蔵所に蓄電池の特例を重ねるとは何を指すのか

令第10条第6項は、蓄電池だけを貯蔵する屋内貯蔵所について、総務省令で複数の特例を定められる授権規定です。
どちらも入口は同じ令第10条第6項ですが、上乗せする相手の条文が違います。
併設型は専用の建物を持たない分、もともとの基準が細かく定められているのが特徴です。
同じ蓄電池の特例でも、重ねる相手によって別の条文になるんですね。
条文番号だけ見ていると混乱しそうです。
そうなんです。
重ねる相手の項が第3項か第4項かで、条文も内容も変わります。
この組み合わせの特例を使える屋内貯蔵所はどう見分けるのか

令第10条第3項が定める併設型は、専用棟とは別の細かい基準を持っています。
充電率60パーセント以下、架台の段数3以下、床面から蓄電池上端までの高さ4.5メートル以下といった数値基準です。
どちらか一方だけでは、この組み合わせの特例は使えません。
建物の階と床面積、それに蓄電池側の数値と、確認すべき条件が二重にあるんですね。
はい、そのとおりです。
両方を満たして初めて、次に説明する免除が使えます。
組み合わせるとどこまで基準が免除されるのか

ここが規則第16条の2の9の一番の中身です。
つまり、専用棟なら不要になる床面積の上限が、併設型でも同じように外れます。
指定数量20以下の小規模な倉庫であれば、他の用途をもつ建築物の中でも面積を気にせず設計できることになります。
床面積の上限が外れるなら、建物のどの部分にでも自由に置けるということですか。
いいえ、そうはなりません。
外れない基準が別にあります。次の項目で確認しましょう。
特例を使っても外れない基準はどこか

併設型がもともと持つ独自の号を確認します。
さらに、令第10条第1項第3号(標識掲示板)と第10号(禁水性物品等の床の防水措置)も、併設型が借りてきている号のうち適用除外の対象外です。
架台を使う場合は、規則第16条の2の2が定める架台の構造基準も別に満たす必要があります。
「面積が外れるなら防火性能も緩む」という思い込みは禁物です。
床面積は外れるのに、耐火区画と窓なしは残るんですね。
号ごとに整理しないと分からないです。
そのとおりです。
除外リストに載っていない号を拾い出すのが確実です。
明日からなにを確認すればよいのか

基準を満たしても、手続き自体は省略できません。
- 貯蔵する危険物が規則第16条の2の7の対象(リチウムイオン蓄電池で貯蔵される第2類又は第4類の危険物)に限られているかを確認する。
- 屋内貯蔵所が指定数量の倍数20以下の併設型(令第10条第3項)に当たるかを確認する。
- 蓄電池側の条件(充電率60パーセント以下・架台の段数と高さ)を満たしているかを確認する。
- 耐火区画・自動閉鎖の防火設備・窓なし・標識掲示板は組み合わせても省略できないことを設計段階で確認する。
基準をすべて満たしても、消防法第11条に基づく市町村長等の許可を受けなければ使用できません。
併設型は専用棟と条文の構造が違うため、どちらの号が残りどちらが外れるかを号単位で照合する必要があります。
迷ったときは、設計段階で所轄の消防署に相談するのが近道です。
号の番号を一つずつ照合していく作業なんですね。
設計の前に確認しておくべきことが分かりました。
はい。
設置や変更の前に、必ず所轄の消防署に相談してください。
よくある質問
まとめ
専用棟と併設型で号がこんなに違うとは思いませんでした。
残る号と外れる号を分けて確認します。
ぜひそうしてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第10条第1項・第3項・第6項(屋内貯蔵所の基準・建築物に併設する屋内貯蔵所の基準・蓄電池の特例の授権規定)
- 危険物の規制に関する規則第16条の2の2(屋内貯蔵所の架台の基準)
- 危険物の規制に関する規則第16条の2の7(屋内貯蔵所の特例を定めることができる危険物)
- 危険物の規制に関する規則第16条の2の8第2項(蓄電池により貯蔵される危険物の屋内貯蔵所の特例)
- 危険物の規制に関する規則第16条の2の9(蓄電池により貯蔵される危険物の指定数量の倍数が20以下の屋内貯蔵所の特例)
- 消防法第11条第1項(製造所、貯蔵所又は取扱所の設置・変更の許可)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





