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蓄電池と特定屋内貯蔵所を組み合わせるとなぜ屋内貯蔵所の位置基準まで不要になるのか|標識と独立専用の建物だけは残る理由を解説

蓄電池を貯蔵する屋内貯蔵所の前で点検員が確認している様子

屋内貯蔵所にリチウムイオン蓄電池だけを貯蔵すると、基準が緩和される特例があることを前回の記事で解説しました。
ですが、その蓄電池の特例に、指定数量の倍数が50以下の屋内貯蔵所(特定屋内貯蔵所)の条件まで重ねて満たすと、話はさらに変わります。
令第10条第6項が定める組み合わせの特例(規則第16条の2の10)を使うと、屋内貯蔵所の位置基準や空地の幅までもが適用除外になるのです。
その代わり、標識掲示板や独立した専用の建物といった基準は、組み合わせても外れずに残ります

蓄電池だけの特例なら前に聞きました。
あれでもまだ位置や空地の基準は必要なんですよね。

はい、蓄電池単体の特例では位置基準と空地の幅はまだ必要です。
ですが特定屋内貯蔵所の条件まで重ねると、そこも変わってきます。

条件を重ねるだけで、そんなに変わるものなんですか。

変わります。
今日は規則第16条の2の10が定める組み合わせの中身を、条文から確認していきましょう。

この記事の結論
  • リチウムイオン蓄電池だけを貯蔵する屋内貯蔵所は、蓄電池の特例(規則第16条の2の8)と特定屋内貯蔵所の特例(規則第16条の2の3)の条件を両方満たすと、規則第16条の2の10のさらに広い特例が使えます。
  • この組み合わせの特例を使うと、屋内貯蔵所の位置基準空地の幅まで適用除外になります。
  • 特定屋内貯蔵所側が求める床面積150平方メートル以下という条件は、この組み合わせでは求められません
  • その一方で、標識掲示板独立した専用の建物とする基準は、組み合わせても外れずに残ります。
  • 蓄電池を架台に載せて貯蔵する場合は、架台そのものの構造基準(規則第16条の2の2)も引き続き満たす必要があります

蓄電池と特定屋内貯蔵所を組み合わせるときの確認手順の図解。危険物の種類を確認、充電率と架台を確認、空地と構造を確認、標識と独立建物を確認の4段階を整理

リチウムイオン蓄電池を貯蔵する屋内貯蔵所に特定屋内貯蔵所の条件を重ねるとは何を指すのか

低い平家建ての貯蔵倉庫と、その右に置かれた蓄電池パックを載せた金属製の架台のイメージ
蓄電池だけを貯蔵する屋内貯蔵所の特例は、令第10条第6項という一つの授権規定から出発します。
この項は、実は一つではなく複数の特例を生み出す入口になっています。
危険物の規制に関する規則第16条の2の10(蓄電池により貯蔵される危険物の特定屋内貯蔵所の特例) 蓄電池により貯蔵される第16条の2の7に規定する危険物のみを貯蔵し、又は取り扱う屋内貯蔵所に係る令第10条第6項の規定による同条第4項に掲げる基準の特例は、この条の定めるところによる。
条文が二重に重なっています。
令第10条第6項は「蓄電池により貯蔵される危険物のみを貯蔵する屋内貯蔵所には、総務省令で特例を定められる」という授権規定です。
この規定を使って、規則は蓄電池単体の特例(規則第16条の2の8)とは別に、特定屋内貯蔵所の基準(令第10条第4項)に対する特例も用意しました。
それが規則第16条の2の10です。
つまりこの条文は、蓄電池の特例と特定屋内貯蔵所の特例を、まとめて上乗せする役割を持っています。

特例の中に、また別の特例が用意されているということなんですね。
条文だけ見ていると気づきにくいです。

そうなんです。
令第10条第6項は、蓄電池がらみの特例をまとめて生み出す入口になっています。

この組み合わせの特例を使える屋内貯蔵所はどう見分けるのか

厚い壁で覆われ窓のない平家建ての貯蔵倉庫。正面に一つだけの出入口があるイメージ
規則第16条の2の10を使うには、貯蔵倉庫がもう一つの条文の条件も満たしている必要があります。
その条文が、以前の記事で扱った特定屋内貯蔵所の特例です。
危険物の規制に関する規則第16条の2の3第2項 (略)その貯蔵倉庫が次の各号に掲げる基準に適合するものについては、令第10条第1項第1号、第2号及び第5号から第8号までの規定は、適用しない。一 (略)区分に応じそれぞれ同表に定める幅の空地を保有すること。(略)三 貯蔵倉庫は、壁、柱、床、はり及び屋根を耐火構造とすること。四 貯蔵倉庫の出入口には、随時開けることができる自動閉鎖の特定防火設備を設けること。五 貯蔵倉庫には、窓を設けないこと。
求められる条件は限られています。
規則第16条の2の10が引用しているのは、特定屋内貯蔵所の条件のうち空地の幅の表・耐火構造・自動閉鎖の特定防火設備・窓なしの4つだけです。
特定屋内貯蔵所を単体で使うときに必須だった床面積150平方メートル以下という条件(第2号)は、あえて引用から外れています。
これに加えて、蓄電池側の条件(充電率60パーセント以下や架台の段数など)も同時に満たさなければなりません。
どちらか一方だけでは、この組み合わせの特例は使えません。

床面積の条件だけ外れているのが気になります。
うっかり150平方メートル以下だと思い込みそうです。

そこは条文どおり読む必要があります。
第2号だけが意図的に外されている理由は、次の項目で説明します。

組み合わせるとどこまで基準が免除されるのか

広い空地を確保した貯蔵倉庫と、その右にある敷地境界の近くまで寄せて建てた貯蔵倉庫のイメージ
前の項目の条件をすべて満たしたときに、実際にどこまで基準が免除されるのかを見ていきます。
ここが規則第16条の2の10の一番の中身です。
危険物の規制に関する規則第16条の2の10第2項 前項の屋内貯蔵所のうち、第16条の2の3第2項第1号及び第3号から第5号まで並びに第16条の2の8第2項各号に掲げる基準に適合するものについては、令第10条第1項第1号、第2号、第4号から第8号まで、第11号及び第12号から第15号までの規定は、適用しない。
免除の範囲がかなり広くなります。
蓄電池だけの特例では手つかずだった位置基準(第1号)と空地の幅(第2号)まで、この組み合わせでは適用除外に入ります。
床面積1,000平方メートル以下という原則(第5号)も除外されるため、特定屋内貯蔵所側の150平方メートル以下という条件がそもそも要らなくなるわけです。
軒高・耐火構造・屋根・窓出入口の防火設備(第4号から第8号まで)や、採光照明換気・電気設備・避雷設備(第12号から第15号まで)も、まとめて対象に入っています。
一つの条文だけでは届かなかった範囲に、組み合わせて初めて手が届く形です。

位置基準まで外れるなら、敷地の境界ぎりぎりに建てても構わないんですか。

条文上はそうなります。
ただし、すべての基準が外れるわけではありません。次の項目で確認しましょう。

特例を使っても外れない基準はどこか

独立して建つ貯蔵倉庫と、その右にある大きな建物の一角に取り付けられた貯蔵倉庫のイメージ
免除の範囲が広いからといって、すべての基準が消えるわけではありません。
条文の除外リストに載っていない号を、一つずつ確認します。
危険物の規制に関する政令第10条第1項 三 屋内貯蔵所には、総務省令で定めるところにより、見やすい箇所に屋内貯蔵所である旨を表示した標識及び防火に関し必要な事項を掲示した掲示板を設けること。三の二 貯蔵倉庫は、独立した専用の建築物とすること。
除外リストをよく見ると、抜けている号があります。
規則第16条の2の10が適用除外にするのは「第1号、第2号、第4号から第8号まで、第11号及び第12号から第15号まで」であり、第3号(標識掲示板)と第3号の2(独立した専用の建物)は名指しで含まれていません。
つまり、位置基準まで不要になる倉庫であっても、屋内貯蔵所である旨の標識と掲示板は必ず設け、建物自体も他の用途と兼用しない独立した専用棟にする必要があります。
さらに、蓄電池を架台に載せて貯蔵する場合、架台の構造を定めた規則第16条の2の2(第11号の2が根拠)も除外リストの外にあり、引き続き満たす必要があります
「組み合わせれば全部緩くなる」と思い込むと、この3つを見落とします。

標識と独立した建物、それに架台の基準ですね。
号の数字を一つずつ照合しないと見落としそうです。

おっしゃるとおりです。
除外リストに載っていない号だけを拾い出すのが確実な確認方法です。

明日からなにを確認すればよいのか

点検員がクリップボードを手に蓄電池パックを載せた架台を確認しているイメージ
ここまでの内容を、実務で確認する順番に並べ直します。
基準を満たしても、手続き自体は省略できません。
  • 貯蔵する危険物が規則第16条の2の7の対象(リチウムイオン蓄電池で貯蔵される第2類又は第4類の危険物)に限られているかを確認する。
  • 蓄電池側の条件(充電率60パーセント以下・架台やパレットの段数と高さ)を満たしているかを確認する。
  • 特定屋内貯蔵所側の条件(空地の幅・耐火構造・自動閉鎖の特定防火設備・窓なし)を満たしているかを確認する。
  • 標識掲示板・独立した専用の建物・架台の構造基準は組み合わせても省略できないことを設計段階で確認する。
屋内貯蔵所の設置・変更には許可も必要です。
基準をすべて満たしても、消防法第11条に基づく市町村長等の許可を受けなければ使用できません
条文の号を一つずつ突き合わせる作業は手間がかかりますが、除外リストに載っていない号を先に洗い出しておくと、設計変更の手戻りを防げます。
迷ったときは、設計段階で所轄の消防署に相談するのが近道です。

号の番号を一つずつ照合していく作業なんですね。
設計の前に確認しておくべきことが分かりました。

はい。
設置や変更の前に、必ず所轄の消防署に相談してください。

よくある質問

Q蓄電池だけの特例(規則第16条の2の8)でも、位置基準や空地の幅は不要になりますか?
Aいいえ。蓄電池だけの特例では位置基準や空地の幅(令第10条第1項第1号・第2号)は適用除外になりません。特定屋内貯蔵所の条件(規則第16条の2の3)まで重ねて満たして初めて、この組み合わせの特例が使えます。
Q特定屋内貯蔵所側の床面積150平方メートル以下という条件は、この組み合わせでも必要ですか?
A必要ありません。規則第16条の2の10は規則第16条の2の3第2項のうち床面積の号(第2号)だけを組み合わせの条件から外しています。令第10条第1項第5号(床面積1,000平方メートル以下の原則)自体が適用除外になるためです。
Q標識掲示板や独立した専用の建物という基準も、組み合わせれば不要になりますか?
A不要になりません。令第10条第1項の第3号(標識・掲示板)と第3号の2(独立した専用の建築物)は、この組み合わせの適用除外リストに含まれておらず、引き続き満たす必要があります。
Q架台に蓄電池を載せて貯蔵する場合、架台自体の基準は考えなくてよいですか?
A考える必要があります。架台の構造を定める規則第16条の2の2(第11号の2が根拠)は、この組み合わせの適用除外リストに含まれていません。段数や高さの数値基準とは別に、架台そのものの構造基準も満たしてください。

まとめ

リチウムイオン蓄電池だけを貯蔵する屋内貯蔵所が、蓄電池の特例(規則第16条の2の8)と特定屋内貯蔵所の特例(規則第16条の2の3)の条件を両方満たすと、規則第16条の2の10のさらに広い特例が使えます。
この組み合わせの特例では、位置基準空地の幅(令第10条第1項第1号・第2号)まで適用除外になります。
軒高・床面積・壁柱床の耐火構造・屋根・窓出入口の防火設備(令第10条第1項第4号から第8号まで)も、あわせて適用除外です。
特定屋内貯蔵所側が求める床面積150平方メートル以下という条件は、この組み合わせでは求められません
一方で標識掲示板独立した専用の建物(令第10条第1項第3号・第3号の2)は、組み合わせても外れずに残ります。
架台の構造基準(規則第16条の2の2)も適用除外リストに含まれておらず、架台を使う場合は引き続き満たす必要があります。
屋内貯蔵所を設置・変更するときは、消防法第11条に基づく市町村長等の許可が必要です。

組み合わせでどこまで緩むのか、よく分かりました。
除外リストに載らない号を先に確認します。

ぜひそうしてください。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第10条第1項・第4項・第6項(屋内貯蔵所の基準・特定屋内貯蔵所の特例の授権規定・蓄電池の特例の授権規定)
  • 危険物の規制に関する規則第16条の2の2(屋内貯蔵所の架台の基準)
  • 危険物の規制に関する規則第16条の2の3第2項(特定屋内貯蔵所の特例)
  • 危険物の規制に関する規則第16条の2の7(屋内貯蔵所の特例を定めることができる危険物)
  • 危険物の規制に関する規則第16条の2の8第2項(蓄電池により貯蔵される危険物の屋内貯蔵所の特例)
  • 危険物の規制に関する規則第16条の2の10(蓄電池により貯蔵される危険物の特定屋内貯蔵所の特例)
  • 消防法第11条第1項(製造所、貯蔵所又は取扱所の設置・変更の許可)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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