電気自動車や蓄電システムの普及で、リチウムイオン蓄電池をまとめて保管する倉庫が増えています。
実はこの保管場所も、条件によっては消防法上の屋内貯蔵所として扱われることがあります。
通常の屋内貯蔵所は平家建て・軒高6メートル未満が原則で、蓄電池の保管にはそのままでは向きません。
この記事では規則第16条の2の8が定める特例の中身を条文から整理します。
最近、リチウムイオン蓄電池をまとめて保管する倉庫の相談が増えているんです。
これも危険物の屋内貯蔵所として扱われるのでしょうか。
はい、対象になります。
蓄電池が貯蔵する危険物の種類によっては専用の特例基準が使えます。
普通の屋内貯蔵所とは基準が違うということですね。
具体的にどう違うのか知りたいです。
この記事で、特例が適用される条件と数値の要件を順番に見ていきましょう。
- リチウムイオン蓄電池だけを貯蔵する屋内貯蔵所には、通常より緩和された基準(規則第16条の2の8)が用意されています。
- 通常は平家建て・軒高6メートル未満が原則ですが、この特例では階高12メートル未満の多層構造も認められます。
- 適用の絶対条件は、蓄電池の充電率を60パーセント以下に保つことです。
- 貯蔵方法は架台・パレット複数段・パレット単段の3パターンがあり、高さや容量の上限が異なります。
- 消火設備は、規則第35条の2第3項という蓄電池専用の基準に従って設置します。
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目次
リチウムイオン蓄電池はなぜ屋内貯蔵所の危険物として扱われるのか

まずはこの前提を確認します。
リチウムイオン蓄電池の内部には、可燃性の電解液や活物質が使われています。
このうち第2類又は第4類の危険物に該当する電池をまとめて保管すると、その保管場所は消防法上の屋内貯蔵所になります。
台数が多いほど指定数量を超えやすく、通常の物流倉庫の感覚では基準を満たせません。
だからこそ、蓄電池専用の特例基準が用意されています。
うちの蓄電池も、大きい容量の危険物として扱われているということなんですね。
正直、電池が危険物という感覚がありませんでした。
無理もありません。
蓄電池の内部の電解液が第2類又は第4類の危険物に該当するためです。
どんな屋内貯蔵所なら基準の特例が使えるのか

第2項では、対象となる建物の位置と構造の要件を号ごとに定めています。
通常の屋内貯蔵所は、軒高6メートル未満の平家建てで、床面積は1,000平方メートル以下が原則です。
ところがこの特例では、床から上階の床下面までの高さを12メートル未満に抑えれば、多層構造の建物でも設置できます。
かわりに、壁・柱・床・はりを耐火構造にし、階段は不燃材料で造る必要があります。
2階以上の階の床には、階段室を除いて開口部を設けられません。
うちの倉庫は2階建てなんですが、それでも屋内貯蔵所にできるんでしょうか。
条件を満たせば可能です。
通常は平家建てが原則ですが、この特例では階高12メートル未満まで多層化できます。
蓄電池の充電率と置き方はどう決まっているのか

充電率と貯蔵方法の2つが軸になります。
この特例を使うには、蓄電池の充電率を60パーセント以下に保つことが前提です。
そのうえで貯蔵方法を選びますが、代表的な一つが不燃材料の架台に並べる方法です。
架台は水平の仕切り板や天板を設けず、段数3以下・高さ4.5メートル以下という制限があります。
容量ではなく、まず置き方の形式そのものが問われる点が特徴です。
充電率まで基準に入っているとは思いませんでした。
普段の運用でどこまで気をつければいいんでしょうか。
常に60パーセント以下を保つことが前提です。
そのうえで、置き方も条文どおりの方法を選ぶ必要があります。
架台とパレットの数値はどこで見落としやすいのか

段数によって基準が入れ替わる点に注意が必要です。
架台のほかに、パレットに載せて貯蔵する方法も認められています。
パレットを2段以上重ねる場合は架台と同じ段数3以下・高さ4.5メートル以下ですが、1段だけで使う場合は容量50キロワット時以下・区画20平方メートルごとに間隔2.4メートル以上という全く別の基準に切り替わります。
段数を減らせば基準まで軽くなる、と思い込むと数値を取り違えます。
消火設備も規則第35条の2第3項という蓄電池専用の基準が別途必要です。
架台とパレットで数値が違うのがちょっとややこしいですね。
間違えて別の基準を当てはめてしまいそうです。
そこが一番の落とし穴です。
パレットを1段だけで使う場合だけ、容量や間隔の基準が別枠になります。
屋内貯蔵所を作る前に何を確認すればよいのか

基準を満たしても、手続き自体は省略できません。
ここまでの基準を満たしても、屋内貯蔵所を設置・変更する前に市町村長等の許可を受けなければ使用できません。
まずは蓄電池の充電率を管理できる体制を整え、次に架台かパレットかを倉庫の形状に合わせて選びます。
最後に、消火設備が規則第35条の2第3項の基準を満たしているかを確認してください。
迷ったときは、設計段階で所轄の消防署に相談するのが近道です。
最後は許可が必要なんですね。
設計の前に確認しておくべきことが分かりました。
はい。
設置や変更の前に、必ず所轄の消防署に相談してください。
よくある質問
まとめ
特例の中身がよく分かりました。
充電率と貯蔵方法をきちんと守ります。
ぜひそうしてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第10条第6項(屋内貯蔵所の基準の特例の授権規定)
- 危険物の規制に関する規則第16条の2の7(屋内貯蔵所の特例を定めることができる危険物)
- 危険物の規制に関する規則第16条の2の8(蓄電池により貯蔵される危険物の屋内貯蔵所の特例)
- 消防法第11条第1項(製造所、貯蔵所又は取扱所の設置・変更の許可)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





