蓄電池は一台ずつ置くよりも、まとめて並べたほうが限られた床面積で多くの電力を蓄えられます。
ところが危険物を用いた蓄電池が近くに集まると、単独で置いていたときには無かった追加の基準がかかります。
消防法令は、この「集積」という状態そのものを対象にした基準を別に用意しています。
この記事では、蓄電池を集積した場所の高さの上限が、充電率の違いでどう変わるのかを解説します。
蓄電池を何台もまとめて並べたいんですが、一台ずつ置くのと同じ基準でいいんでしょうか。
いいえ、まとめて置くと別の基準がかかります。
充電率によって条件が変わります。
充電率で高さの上限まで変わるんですか。
そのとおりです。
順番に条文を見ていきましょう。
- 蓄電池どうしの水平距離が三メートル未満で、危険物の数量の総和が指定数量以上になると「集積場所」として規制の対象になります
- 充電率が三十パーセントを超え六十パーセント以下なら、空地三メートル・床面積二十平方メートル以下・高さ一・八メートル以下の四要件を満たせば足ります
- 充電率を三十パーセント以下に抑えれば、遮蔽板などの追加措置により高さを六メートルまで積み増せます
- 蓄電池を充電・放電する作業を行っている間だけは、充電率が六十パーセントを超えても構いません
- 集積場所の床面積の合計が千五百平方メートルを超えると、防火区画で分割する義務が別途生じます
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目次
蓄電池を集積するとはどの状態を指すのか

条文を確認します。
まず、蓄電池どうしの水平距離が三メートル未満であること。
次に、そこに用いられる危険物の数量の総和が指定数量以上であること。
どちらか一方だけでは集積場所にあたりません。
この定義は、危険物を用いた蓄電池を製造する作業を専ら行う一般取扱所(規則第二十八条の五十四第五号の二イ)に置かれる蓄電池を対象にしています。
三メートル未満なら、数量が少なくても集積場所になるんですか。
いいえ、数量が指定数量以上でなければ対象外です。
両方そろって初めて規制がかかります。
集積場所の基準は充電率でどう分かれるのか

条文を確認します。
周囲に幅三メートル以上の空地を保有すること、一の集積場所の床面積を二十平方メートル以下にすること、床面から蓄電池の上端までの高さを一・八メートル以下にすること、そして蓄電池や包装材以外の可燃物を置かないことの4点です。
高さがおよそ人の背丈程度に抑えられているのは、この充電率の帯ではまだ余裕を見込まなければならないためです。
ここが集積場所の基本形になります。
一・八メートルまでしか積めないと、置ける台数がかなり限られませんか。
そこで充電率をもう一段階抑える選択肢が出てきます。
次に見ていきましょう。
充電率を三十パーセント以下に抑えるとなぜ高さを稼げるのか

条文を確認します。
別ルートでは、空地と可燃物の条件(イの(1)(4))は共通で守ったうえで、集積単位どうしの間に遮蔽板を設けます。
その代わり、蓄電池の上端までの高さは六メートル以下まで積み増せます。
ただし天井やはりとの間には二メートル以上の余裕を残さなければなりません。
充電率を落とすほど発火時の危険度が下がるので、その分を高さの緩和に振り向けている構造だと読めます。
高さを稼げる代わりに、遮蔽板の設置が必須になるということですね。
はい、遮蔽板は告示の基準に適合するものに限られます。
設計段階で製品を選定しておく必要があります。
実務で見落としやすいのはどこか

条文を確認します。
同項第九号 充放電作業を行う場所(略)を設ける場合は、蓄電池又は蓄電池の包装材若しくはこん包材以外の可燃物を置かないこととするとともに、(略)の例によること。
品質の検査などに伴って蓄電池を充放電作業させている間は、一時的に充電率が上がっても差し支えありません。
ただし、その作業を行う場所(充放電作業場所)は集積場所とは別枠で扱われ、専用の要件が課されます。
「常時六十パーセント以下に保てば安全」と思い込んで作業中の数値を見落とすと、逆に規制の外にいることに気づけません。
集積場所と充放電作業場所は別の区画として整理しておくことが実務上のポイントです。
充電作業のときだけ数値が上がるのは、うっかり見落としそうです。
そうなんです。
集積場所とは別の場所として管理するのが確実です。
明日からなにを確認すればよいのか

実務のチェック項目を整理します。 設計段階で確認すべき項目は主に4つです。
まず、蓄電池どうしの水平距離と危険物の数量の総和を数え、集積場所にあたるかどうかを判定します。
次に、想定する充電率の区分(三十パーセントを超え六十パーセント以下、または三十パーセント以下)を決め、必要な空地・床面積・高さを設計に落とし込みます。
三十パーセント以下で高さを稼ぐ場合は、告示適合の遮蔽板をあらかじめ選定しておきます。
最後に、集積場所や充放電作業場所の床面積の合計が千五百平方メートルを超えないか確認し、超える場合は準耐火構造の壁などによる区画を計画に含めます。
充電率をどう管理するかで、そもそもの設計が変わってくるんですね!
はい、設計の入り口で決めておく事項です。
迷ったら早めに相談してください。
よくある質問
まとめ
充電率を抑えるだけで高さまで変わるとは思いませんでした!
数量と高さがセットで決まる点が見落としやすいところです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第十一条第一項・第五項
- 危険物の規制に関する政令第十九条第一項・第二項第五号の二
- 危険物の規制に関する規則第二十八条の五十四第五号の二イ・第二十八条の五十九の二第二項第六号・第八号・第九号
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





