ハロゲン化物消火設備には、部屋全体に一斉放射する全域放出方式や局所放出方式のほかに、人がホースを延ばして操作する移動式があります。
移動式は、これまで見てきた自動起動や遅延装置とは、条文の組み立てそのものが違います。
そして移動式には、全域放出方式や局所放出方式で使えるはずのHFC系の消火剤が使えないという、条文上の大きな制約もあります。
この記事では、移動式のハロゲン化物消火設備に使える消火剤とノズルの放射量、貯蔵容器の設置基準を、消防法施行規則の条文から解説します
うちの倉庫には、ホースが巻いてある赤い箱が壁に付いています。
天井にある設備とは別物なんでしょうか。
それは移動式のハロゲン化物消火設備ですね。
人がホースを延ばして操作する方式で、天井の自動設備とは条文の扱いが違います。
天井の設備と何が違うんですか。
使える消火剤の種類や、ノズルが放射する量の基準が別に定められています。
今日はその中身を見ていきましょう。
- 移動式のハロゲン化物消火設備は、貯蔵容器の容器弁又は放出弁をホースの設置場所で手動で開閉する方式で、全域放出方式にある自動起動や遅延装置の規定は準用されない
- 移動式に使用できる消火剤はハロン二四〇二・ハロン一二一一・ハロン一三〇一の三種類に限られ、全域放出方式で使えるHFC系やFK―五―一―一二は使えない
- ノズルは温度20度で一のノズルにつき毎分、消火剤の種類に応じて45キログラムから35キログラム以上を放射できるものでなければならない
- 貯蔵容器はホースを設置する場所ごとに設け、赤色の灯火と設備・消火剤の種類を表示した標識を設ける
- 貯蔵容器は煙が著しく充満するおそれのある場所以外に設置しなければならない
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目次
移動式のハロゲン化物消火設備は全域放出方式とどう違うのか

移動式の基準は、これまで見てきた自動起動の仕組みとは条文の組み立てが異なります。
全域放出方式にあった起動装置の自動化や遅延装置、音響警報装置といった規定は、移動式には準用されていません。
かわりに、ホースの設置場所ごとに容器弁を手で開閉できることや、貯蔵容器の置き場所そのものが条文の中心になります。
以前の記事で見た「起動から放出までの二十秒」という発想は、そもそも移動式には当てはまりません。
点検ではまず、設備が全域放出方式・局所放出方式・移動式のどれに該当するかを確認するところから始めます。
ホースの弁は誰でも開けられる位置にあるんですか。
はい。
ホースの設置場所で手動開閉できることが条文の条件です。
移動式に使える消火剤はなぜハロン三種類に限られるのか

ところが移動式になると、使える消火剤の種類そのものが絞られます。
全域放出方式・局所放出方式で使えるHFC―二三・HFC―二二七ea・FK―五―一―一二は、移動式には使用が認められていません。
準用元の条文を見比べると、配管や貯蔵容器等の基準でも「HFC―二三及びHFC―二二七eaに係る部分を除く」という除外がくり返し出てきます。
条文はその理由までは書かれていませんが、移動式で使える消火剤はハロン系に限られていることは条文上明らかです。
現地の設備がどの消火剤を使っているかは、貯蔵容器の表示か点検資格者への確認が確実です。
HFC系を使った移動式の設備は存在しないということですか。
条文上はハロン三種類しか認められていません。
設置基準そのものに含まれていないためです。
ノズルの放射量はなぜ消火剤の種類で違うのか

温度20度において、ハロン二四〇二は45キログラム、ハロン一二一一は40キログラム、ハロン一三〇一は35キログラム以上を毎分放射できるものでなければなりません。
数値が消火剤ごとに違う理由までは条文に書かれていませんが、種類によって下限が別々に定められている以上、点検票の数値も設備が使う消火剤に合ったものかを見る必要があります。
ホース・ノズル・ノズル開閉弁・ホースリールについても、消防庁長官が定める基準に適合するものであることが別途求められています。
点検では、ノズルの型式が設置されている消火剤の種類と対応しているかを確認します。
ノズルを別の消火剤用に付け替えることはできるんですか。
放射量の基準を満たすノズルを選び直す必要がありますので、まず点検資格者にご相談ください。
貯蔵容器の置き場所や表示はどこまで固定式と同じなのか

温度が40度以下で変化が少なく、直射日光や雨水のかかるおそれが少ない場所に置くという条件は、全域放出方式の貯蔵容器と同じです。
そのうえで移動式は、ホースを設置する場所ごとに貯蔵容器を設け、直近に赤色の灯火と、移動式である旨・消火剤の種類を表示した標識を設けます。
さらに、火災のとき煙が著しく充満するおそれのある場所には設置できません。
点検では、標識の文言が実際の消火剤の種類と一致しているか、灯火が点灯するかをあわせて確認します。
煙が充満する場所に置けないのはなぜですか。
理由までは条文に書かれていませんが、移動式ならではの設置条件として定められています。
点検のときになにを確認すればよいのか

移動式は人が操作する設備だからこそ、確認すべきポイントが固定式とは違います。
- 設備が全域放出方式・局所放出方式・移動式のどれに該当するかを、まず確認する
- 使用している消火剤がハロン二四〇二・ハロン一二一一・ハロン一三〇一のいずれかであるか
- ノズルの型式が、その消火剤の毎分の放射量の基準を満たしているか
- 貯蔵容器がホースの設置場所ごとに設けられ、容器弁又は放出弁を手動で開閉できるか
- 赤色の灯火と標識が設けられ、煙が充満するおそれのある場所を避けて設置されているか
移動式に遅延装置や音響警報装置を探してしまうと、そもそも準用されていない規定を探すことになります。
逆に、ホースやノズルの基準適合、貯蔵容器の設置場所と表示は、移動式ならではの確認項目です。
方式ごとに準用範囲が違うことを踏まえたうえで、点検結果を読み合わせることが大切です。
同じハロゲン化物消火設備でも、方式によって見るところが全然違うんですね。
はい。
方式ごとに準用する条文が違いますので、点検表もその設備に合ったものかを確認しています。
よくある質問
まとめ
移動式ならではの確認ポイントが分かりました!
ハロゲン化物消火設備の点検でご不明な点があれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第二十条第五項(移動式のハロゲン化物消火設備の技術上の基準)
- 消防法施行規則第十九条第五項第六号・第六項第二号から第五号まで(不活性ガス消火設備の技術上の基準。ハロゲン化物消火設備が準用する規定)
- 消防法施行令第十二条(消火設備に関する基準)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





