排煙設備の定期検査は、告示に並ぶ検査項目を上から順にこなすだけの作業ではありません。
検査の対象範囲は誰がどう決めるのか、一部の項目だけ数年おきの検査でよいのはなぜか、他の点検記録は使い回せるのか——実務では制度そのものへの疑問も少なくありません。
これらを知らずに検査に臨むと、対象範囲を取り違えたり、機器を傷めかねない順序で作業してしまったりすることがあります。
この記事では、検査対象の決まり方から抽出検査の仕組み、検査前の準備、実施順序まで排煙設備定期検査の制度と手順を整理して解説します。
うちのビル、排煙設備の検査で「認定を受けた製品だから検査方法が違う」と言われました。
普通の検査と何が違うんでしょうか。
認定を受けた排煙設備は、申請時に提出された図書に記載された方法で検査します。
検査対象そのものも、実は特定行政庁ごとに指定が分かれています。
毎回すべての項目を細かく測定しているわけではないとも聞きました。
本当なんでしょうか。
はい、一部の項目は1年から3年までの間隔での抽出検査が認められています。
対象の決まり方から検査の流れまで順番に見ていきましょう。
- 検査対象となる排煙設備は「特定行政庁が指定するもの」とされ、認定を受けた排煙設備は申請時に提出された図書の方法で検査する
- 排煙口の排煙風量や中央管理室での監視など一部の項目は1年から3年までの間隔で行う抽出検査が認められている
- 消防法・電気事業法にもとづく点検記録を活用できる項目があり、直近の記録ほど望ましいとされる
- 検査前には設計図書・前回の指摘事項・保守管理状況を確認し、維持保全計画書の策定を求める
- 排煙風道の検査は防火ダンパーの検査を終えたあとに行わないとダクトを損傷するおそれがある
▼

目次
排煙設備の検査対象と検査方法はどうやって決まるのか

まずは検査に入る前に押さえておきたい前提を確認します。
検査対象となる排煙設備の範囲は各特定行政庁の指定に委ねられているため、まずは所管の特定行政庁の担当課に確認する必要があります。
また型式や構造方法について国土交通大臣の認定を受けた排煙設備は、告示の検査方法ではなく認定申請時に提出した図書に記載の方法で検査します。
建築物又は階が避難安全性能を有することを階避難安全検証法等により確かめられた場合や大臣の認定を受けた場合は、非常用エレベーターの乗降ロビーを除き排煙設備に関する規定そのものが適用除外となるため、その検証法等に関連する設計図書の基準に適合しているかを検査し、修繕・改修等が避難安全性能に影響していないかも併せて確認します。
自分の建物がどの指定・認定・検証法に該当するかわからないときは、検査を依頼する建築設備等検査員にまず相談するのが確実です。
認定とか検証法とか、うちのビルがどれに当てはまるのか分かりません。
調べる方法はあるんでしょうか。
建築確認済証や完成図書に記載があるので、検査員が確認してくれます。
まずは保管している図書を用意しておきましょう。
抽出検査という方法はどんな仕組みなのか

どのような仕組みで検査の頻度が決まっているのか見ていきましょう。
施行規則第6条第1項は報告の時期をおおむね六月から一年までの間隔とするのが原則ですが、そのただし書きにより大臣が定める項目だけは1年から3年までの間隔でよいとされています。
排煙口の排煙風量測定や中央管理室での監視状況の確認は、対象となる排煙口の数が多い建築物ほど毎回全数を検査する負担が大きいため、抽出検査という選び方が用意されています。
抽出検査を選ぶ場合は、定期検査報告書(第36号の6様式)第一面4欄ニ(その他特記事項)、第二面20欄(備考)等に抽出検査を行った旨を明記し、実施内容を記載したリスト等の資料を添付しなければなりません。
毎年どの排煙口を検査したかを記録に残しておくと、次回の抽出計画も立てやすくなります。
抽出検査を選んだら、書類にはただ「抽出しました」と書けばいいんですか。
それとも詳しく書く必要があるんでしょうか。
いいえ、実施内容を記載したリストの添付まで必要です。
報告書の欄に明記することも忘れないようにしましょう。
他の法令の点検記録をそのまま活用できる項目はあるのか

その記録をそのまま活用できる項目があるのかを確認しましょう。
排煙機・排煙口・給気送風機・防火ダンパー・可動防煙壁・自家用発電装置のうち、外観や作動状況にかかわる複数の項目で消防法にもとづく点検記録を活用できます。
自家用発電装置については、消防法に加えて電気事業法にもとづく点検記録も活用でき、発電機の状況や絶縁抵抗などが対象です。
記録にあっては、他の法令による検査記録は3か月以内、自主点検の記録は1か月以内に実施されたものが望ましいとされています。
検査を依頼する前に、直近の消防用設備点検や電気設備点検の記録が手元にあるかを確認しておくと、当日の検査がスムーズになります。
消防用設備の点検はいつも受けているので、その記録が使えるなら助かります。
古い記録でも大丈夫でしょうか。
直近3か月以内の記録が望ましいとされています。
古い記録しかない項目は、あらためて検査することになります。
検査に入る前にどんな準備をしておくべきか

事前にどこまで準備しておくべきかを確認します。
建築確認済証や排煙設備完成図書を閲覧し、排煙方式・排煙系統と排煙風道の経路・防火区画・機器の位置をあらかじめ頭に入れておくことで、現地での確認がスムーズになります。
前回の定期検査報告書の指摘事項が改善されているか、又は再検査が完了しているかも忘れずに確認します。
保守管理の状態は、所有者等からの聴取に加えて保守日誌等の資料を閲覧して把握し、総合的な維持保全計画書が策定されていなければ、建物の規模・用途等を勘案して策定するよう求めます。
排煙設備は火災という非常時に働く設備であるからこそ、これに即応できる保守管理体制が確立されているかどうかが検査前の準備で問われます。
維持保全計画書というものを作った覚えがありません。
作っていないと検査に通らないんでしょうか。
検査項目そのものではなく、策定を促す対象という位置づけです。
この機会に建物の規模に応じて整えておきましょう。
検査の実施順序を間違えるとどうなるのか

順序を誤ると機器を傷めることがあるので確認しておきましょう。
排煙風道の防火ダンパーが閉じたまま排煙機を運転すると風の逃げ場がなくなりダクトを損傷するため、排煙風量の測定は必ず防火ダンパーの検査を終えたあとに行います。
系統ごとに検査を進めることで、別の系統の排煙口を誤って開放するような取り違えを防げます。
排煙風道の隠蔽部分は原則として検査対象外ですが、点検口等から目視できる範囲は検査し、前回の記録と風量が大きく異なる場合は漏えいの可能性を疑って確認します。
検査終了後は、開放した排煙口や作動させた機器をすべて元の正常状態に戻したことを確認し、その旨を所有者等の責任者に報告して初めて一連の検査が完了します。
防火ダンパーを先に検査しないとダクトが壊れるなんて知りませんでした。
業者にお任せで大丈夫でしょうか。
資格を持つ建築設備等検査員が正しい順序で行いますのでご安心ください。
検査終了後の原状復帰まで含めてお任せいただけます。
よくある質問
まとめ
検査の順番まで気にしないといけないとは知りませんでした!
次の検査までに維持保全計画書も確認しておきます!
それが確実な備えです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第12条第3項・第68条の25・第68条の26
- 建築基準法施行令第129条
- 建築基準法施行規則第6条
- 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)
- 電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)
- 平成20年国土交通省告示第285号 別表第二 排煙設備
※本記事は建築基準法及び関係告示の現行規定にもとづき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。個別の建物における検査対象の指定や検査方法の適用については、所管の特定行政庁又は検査を担当する建築設備等検査員に必ずご確認ください。




