建築設備定期検査は、消防用設備等の点検とは別に、建築基準法第12条にもとづいて実施が義務付けられている制度です。
対象になるかどうかや検査の間隔は、実は法令が全国一律に決めているわけではなく、所管の特定行政庁の判断に委ねられている部分が多くあります。
「うちのビルはどの設備が対象なのか」「誰に検査を頼めばよいのか」と迷う所有者・管理者の方も少なくありません。
この記事では、対象の決まり方から検査を行える資格、検査対象になる設備の区分まで、建築設備定期検査の全体像を整理して解説します。
うちのビルにも換気扇や受水槽があるんですが、これって全部が検査の対象になるんでしょうか。
消防設備の点検とは別に必要だと聞いて混乱しています。
消防用設備等点検は消防法、建築設備定期検査は建築基準法が根拠なので、目的も対象も別の制度です。
すべての設備が対象になるとは限らず、対象の決め方にも建築設備ならではのルールがあります。
誰が検査してくれるのかも気になります。
資格を持っていれば誰でもいいわけではないですよね。
その通りです、法律が定める資格を持つ人にしか検査は任せられません。
対象・間隔・資格の3つを順番に整理していきましょう。
- 建築設備(昇降機を除く)の定期報告対象は、政令ではなく特定行政庁の指定によって決まる
- 報告の間隔は原則としておおむね6か月から1年だが、対象箇所が多い項目は1年から3年まで延ばせる
- 検査を行えるのは一級建築士・二級建築士、または建築設備等検査員資格者証の交付を受けた者に限られる
- 資格者証は大判の書面で携帯に不向きなため、現場では別途発行される携帯用の名簿登載証が使われることが多い
- 検査対象の設備は告示により換気設備・排煙設備・非常用の照明装置・給水設備及び排水設備の4区分に整理されている
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目次
建築設備の定期検査はなぜ義務付けられているのか

その変化に所有者や管理者自身が気づくのは簡単ではありません。
所有者や管理者の多くは設備の専門知識を持っていないため、一級建築士・二級建築士や建築設備等検査員といった専門技術者に検査を委ねる仕組みになっています。
検査で不具合が見つかった場合、検査を行った専門家には所有者等へ是正の必要性を報告する責務もあります。
つまり定期検査は「壊れていないか」を確認するだけでなく、維持保全のサイクルを回す起点としての役割を持っています。
まずは自分の建物がこの報告義務の対象になっているかどうかを確認するところから始めましょう。
設備は最初にきちんと設置すれば、あとは検査しなくても大丈夫だと思っていました。
使っているうちに性能が落ちるとは知りませんでした。
経年劣化はどんな設備にも起こります。
だからこそ第三者による定期検査が義務付けられているんです。
定期報告の対象になる建築設備はどうやって決まるのか

実はその決め方の仕組みそのものに、建築設備ならではの特徴があります。
政令が対象を指定してくれる特定建築物の調査とは異なり、建築設備の場合は特定行政庁が地域の実情に応じて用途や規模の基準を個別に定めています。
そのため同じ規模・用途の建物でも、所在する自治体によって対象になったりならなかったりすることがあります。
自分の建物が対象かどうかを確かめるには、所管の特定行政庁や定期検査報告書の受付事務を担う関係団体への確認が欠かせません。
思い込みで「うちは対象外」と判断せず、まずは一本の問い合わせから始めるのが確実です。
自治体によって対象が違うなんて知りませんでした。
同じような建物でも扱いが変わるんですね。
はい、だからこそ最初の一歩は特定行政庁への確認です。
㈱防災屋でも所管窓口の確認からお手伝いできます。
検査の報告間隔はなぜ設備によって幅があるのか

ところが実際の間隔は、検査する項目によって幅があります。
点検箇所の数が多く短期間での実施が難しい項目については、最大3年まで間隔を延ばすことが認められています。
たとえば排煙設備の風量測定や中央管理室での監視状況の確認など、告示が個別に列挙する項目がこれにあたります。
逆にいえば、それ以外の大半の項目は原則どおり1年以内の間隔で報告する必要があるということです。
自分の建物のどの検査項目が何年間隔なのかは、報告書の様式や過去の検査記録で確認しておくと安心です。
うちは毎年全部の設備を検査してもらっていますが、それでも問題ないですよね。
間隔を延ばせる項目があるとは知りませんでした。
毎年の実施は問題ありません、むしろ丁寧な対応です。
ただし項目ごとの正しい間隔を知っておくと計画が立てやすくなります。
検査を行えるのはどんな資格を持つ人か

法律が検査を任せられる相手を明確に限定しています。
なおこの資格の名称は、令和8年5月の建築基準法改正で「建築設備検査員」から「建築設備等検査員」へと変わっており、この記事も現行の名称で統一しています。
資格者証は大判の書面のため、現場で身分証として携帯するには不向きです。
このため(一財)日本建築設備・昇降機センターが、有資格者であることを簡易的に証明できる携帯用の名簿登載証を発行しています。
検査を依頼する際は、この名簿登載証や資格者証の提示を求めて確認するとよいでしょう。
資格の名前が最近変わったなんて知りませんでした。
現場で名刺やカードを見せてもらえば安心できそうですね。
そのとおりです、提示を求めるのは失礼ではありません。
むしろ所有者としての当然の確認です。
建築設備の定期検査はどんな設備を対象にしているのか

建築設備の定期検査には、決まった4つの区分があります。
換気設備は各居室の換気量や中央管理方式の空気調和設備の性能、排煙設備は排煙口や給気送風機の作動、非常用の照明装置は照度や予備電源、給水設備及び排水設備は受水槽や配管の状態というように、区分ごとに検査事項が細かく定められています。
自分の建物にどの区分の設備があるかを把握しておけば、報告書の様式や検査にかかるおおよその時間も見通しやすくなります。
それぞれの区分の具体的なチェックポイントは、当サイトの関連記事でも個別に取り上げています。
まずは自分の建物にどの区分の設備が備わっているかを、設備台帳や過去の報告書で確認してみましょう。
換気と排煙と照明と給排水、4つでひとまとまりなんですね。
うちのビルにどれがあるか、一度台帳を見直してみます。
それが確認の一番の近道です。
区分ごとの詳しいチェックポイントは、それぞれの記事でまとめています。
よくある質問
まとめ
対象の決め方から検査員の資格まで、ずっと曖昧だったところがすっきりしました!
まずは自治体への確認から始めてみます!
それが確実な第一歩です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第8条・第12条・第12条の3・第99条・第101条
- 建築基準法施行令第16条
- 建築基準法施行規則第6条
- 平成20年国土交通省告示第285号
※本記事は建築基準法・同施行令・同施行規則及び関係告示の現行規定にもとづき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。個別の建物における定期報告の対象・間隔・様式については、所管の特定行政庁又は定期検査報告書の受付事務を担う関係団体に必ずご確認ください。




