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移送取扱所の配管はなぜ緊急しゃ断弁で止められるのか|設置間隔と自動で閉まる3つの条件を解説

配管の弁室のそばで作業員が計器を確認している屋外の配管現場のイメージ

移送取扱所の配管は長い距離にわたって危険物を移送するため、ひとたび漏えいや損傷が起きると被害が拡大しやすいという性質があります。
そこで配管の途中には、有事に流れを止めるための緊急しゃ断弁を設ける仕組みが用意されています。
どこに設置し、どんな条件で閉まらなければならないのかは、条文で細かく定められています。
この記事では、緊急しゃ断弁の設置基準と機能、運用上の注意点を条文に沿って解説します

移送取扱所の配管って、途中で止められる仕組みがあるんですか。

はい、緊急しゃ断弁という設備で止める仕組みが条文で定められています。
まずは根拠条文から確認していきましょう。

誰でも自由に閉められるものなんでしょうか。

いいえ、操作できる人が条文で限定されています
設置基準から機能、運用の注意点まで順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 緊急しゃ断弁は、移送取扱所の配管系を有事に止めるための安全制御装置の一部です
  • 市街地に相当する区域や主要な河川等を横断する区間では、おおむね約1キロメートル間隔での設置が規則第二十八条の三十三で義務付けられています
  • 遠隔操作・現地操作に加え、漏えい検知・地震動検知・制御不能時の自動閉止という複数の経路で閉まる機能が必要です
  • 地下設置は原則点検箱内への設置が必要ですが、道路以外の地下で点検可能な措置を講じれば省略できます
  • 管理を行う者及びその指定者以外は手動で開閉できない構造にすることも条文上の要件です

緊急しゃ断弁が配管を止める仕組みを示す図解

移送取扱所の配管はなぜ緊急しゃ断弁を備えるのか

地下に埋設された配管の途中に設けられた緊急しゃ断弁の弁室のイメージ
移送取扱所の配管は長距離にわたって危険物を移送するため、漏えいが起きたときに被害が広がりやすい設備です。
まずは緊急しゃ断弁がどの条文を根拠にしているかを確認します。
危険物の規制に関する政令第十八条の二(移送取扱所の基準)
移送取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準は、石油パイプライン事業法に規定する事業用施設に係る技術上の基準に準じて総務省令で定める
緊急しゃ断弁は、配管系全体を守る安全制御装置の一部として位置づけられています
政令の委任を受けた規則第二十八条の三十が定める安全制御装置は、漏えい検知装置・感震装置・緊急しゃ断弁などの制御回路が正常であることを確認したうえでポンプを動かす仕組みと、異常時にポンプや弁を自動または手動で連動して止める仕組みという2つの制御機能で構成されています。
つまり緊急しゃ断弁は単独で完結した設備ではなく、検知した異常を実際の停止動作につなげる出口にあたります。
次からは、この緊急しゃ断弁そのものに求められる設置場所と機能を条文に沿って確認していきます。

緊急しゃ断弁って、普通のバルブと何が違うんですか。

検知した異常を受けて自動で閉まる制御機能を持つ点が違います。
次は設置場所の基準を見てみましょう。

緊急しゃ断弁はどこに設置しなければならないのか

町の建物が並ぶ区域に近い配管の経路に一定間隔で緊急しゃ断弁を設けたイメージ
緊急しゃ断弁は配管のどこにでも自由に置けるわけではなく、設置場所と間隔が条文で決められています。
まずは条文そのものを確認します。
危険物の規制に関する規則第二十八条の三十三第一項(緊急しゃ断弁)
配管を第一条第五号ハに規定する地域に設置する場合にあつては約1キロメートルの間隔で、主要な河川等を横断して設置する場合その他の告示で定める場合にあつては告示で定めるところにより当該配管に緊急しゃ断弁を設けなければならない。
設置が義務付けられるのは、人口や建物が集中する区域と、主要な河川等を横断する区間です
条文がいう「第一条第五号ハに規定する地域」とは、都市計画法上の市街化区域や用途地域に指定されていなくても、人口密度などの基準で市街地に該当すると扱われる区域を指します。
この区域では約1キロメートルごとに緊急しゃ断弁を設け、住宅や施設が集まる場所で被害が広がらないようにしています。
河川を横断する区間やその他告示で定める場所は、告示が定める間隔・方法に従うことになります。
どこに緊急しゃ断弁があるかを事業所側で正確に把握しておくことが、次に説明する機能を生かす前提になります。

市街地に相当する区域を通る配管には、間隔を決めてまで設置するんですね。

人が多く住む区域ほど被害が広がりやすいためです。
次は緊急しゃ断弁そのものの機能を見ていきましょう。

緊急しゃ断弁にはどんな機能が求められるのか

感震装置と遠隔操作機からの信号を受けて閉じる緊急しゃ断弁のイメージ
設置場所が決まっていても、弁そのものが正しく動かなければ意味がありません。
条文は緊急しゃ断弁が持つべき機能を具体的に定めています。
危険物の規制に関する規則第二十八条の三十三第二項(緊急しゃ断弁)
緊急しゃ断弁は、次の各号に掲げる機能を有するものでなければならない。
一 遠隔操作及び現地操作によつて閉鎖する機能
二 前条に規定する自動的に危険物の漏えいを検知する装置によつて異常が検知された場合、感震装置又は強震計によつて告示で定める加速度以下に設定した加速度以上の地震動が検知された場合及び緊急しゃ断弁を閉鎖するための制御が不能となつた場合に自動的に、かつ、速やかに閉鎖する機能
緊急しゃ断弁には、人が操作する経路と自動で動く経路の両方が求められています
遠隔操作と現地操作という人による2通りの操作経路に加え、漏えい検知装置が異常を検知した場合・感震装置や強震計が一定以上の地震動を検知した場合・弁を閉じる制御そのものが利かなくなった場合という3つの事態で自動的に閉まる仕組みが必要です。
最後の「制御が不能となった場合」は、通信や電源が途絶えても閉じる側に動くという考え方で、いわゆるフェイルセーフの発想にあたります。
複数の経路を用意することで、どれか一つが働かなくても被害の拡大を止められるようにしています。

自動で閉まる条件に地震まで含まれているとは思いませんでした。

配管が損傷する前に止めるという発想です。
次は運用で見落としやすい点を確認しましょう。

緊急しゃ断弁の運用で見落としやすいのはどこか

身分証を付けた担当者だけが緊急しゃ断弁を操作できることを示すイメージ
緊急しゃ断弁は設置して終わりではなく、日々の管理の仕方にも条文の縛りがあります。
特に見落としやすい点を確認します。
危険物の規制に関する規則第二十八条の三十三第四項・第五項(緊急しゃ断弁)
四 緊急しゃ断弁を地下に設ける場合は、当該緊急しゃ断弁を点検箱内に設置しなければならない。ただし、緊急しゃ断弁を道路以外の地下に設ける場合であつて、当該緊急しゃ断弁の点検を可能とする措置を講ずる場合は、この限りでない
五 緊急しゃ断弁は、当該緊急しゃ断弁の管理を行う者及び当該管理を行う者が指定した者以外の者が手動によつて開閉することができないものでなければならない。
地下設置なら必ず点検箱が要る、と思い込むと条文を読み違えます
原則は点検箱内への設置ですが、道路以外の地下で点検を可能にする措置を別に講じていれば点検箱は不要という例外があります。逆にいえば、道路の下に設置する場合はこの例外を使えません。
もう一つの落とし穴は操作できる人の範囲です。管理を行う者とその者が指定した者以外は手動で開閉できない構造にする必要があり、誰でも触れる状態のまま放置すると条文違反になります。
第三項が求める「開閉状態を容易に確認できる」構造とあわせて、日常点検では設置環境と操作できる人の範囲の両方を必ず確認します。

点検箱が要らない場合があるなんて、知りませんでした。

道路以外の地下で点検できる措置があれば省略できます。
最後に日々の確認手順をまとめます。

明日から緊急しゃ断弁の何を確認すればよいのか

ヘルメット姿の担当者が緊急しゃ断弁の表示を確認しているイメージ
ここまでの基準を、実際の点検でどう確認すればよいか整理します。
順番に見ていきましょう。 まず自社の配管のどこに緊急しゃ断弁があるかを、設置図面で確認してください
市街地に相当する区域や河川横断部分に設置されている弁は、遠隔操作・現地操作の両方が実際に動作するかを定期的に試験します。
自動閉止の経路については、漏えい検知装置と感震装置の信号がきちんと弁まで届いているかを保守記録で確認します。
地下設置の弁は点検箱の有無と点検の可否を、操作の可否は関係者以外が触れられない状態になっているかをあわせて確認してください。
これらは日常点検と保安検査のどちらでも重なる項目なので、記録を一本化しておくと運用がぶれません。

うちの弁がどの区分に当たるか、まず図面で確認してみます。

操作できる人の範囲も忘れずに確認してください。
これで確認の流れが一通り整いました。

よくある質問

Q緊急しゃ断弁はどんな配管にも必要ですか?
A移送取扱所のすべての配管に一律に必要というわけではありません。危険物の規制に関する規則第二十八条の三十三第一項が定めるとおり、市街地に相当する区域や主要な河川等を横断する区間、その他告示で定める場所に設置義務があります。
Q緊急しゃ断弁はどうやって閉じるのですか?
A遠隔操作と現地操作という人による2通りの操作経路に加え、漏えい検知装置・感震装置や強震計・制御不能時の検知という条件で自動的に閉じる仕組みを備えています。
Q緊急しゃ断弁は必ず点検箱に入れなければなりませんか?
A地下に設ける場合は原則点検箱内への設置が必要ですが、道路以外の地下で点検を可能にする措置を講じている場合は点検箱を省略できます。道路の下に設置する場合はこの例外を使えません。
Q緊急しゃ断弁は誰でも操作してよいのですか?
Aいいえ。危険物の規制に関する規則第二十八条の三十三第五項により、当該緊急しゃ断弁の管理を行う者及びその者が指定した者以外は手動で開閉できない構造にすることが求められています。

まとめ

緊急しゃ断弁は、移送取扱所の配管を有事に止める安全制御装置の一部です
設置場所は市街地に相当する区域と、主要な河川等の横断部分が中心です
市街地に相当する区域では約1キロメートル間隔での設置が原則です
遠隔操作・現地操作という人による経路を必ず備えます
漏えい検知・地震動検知・制御不能時には自動的かつ速やかに閉じる機能が必要です
地下設置は原則点検箱が必要ですが、道路以外なら点検可能な措置で省略できる例外があります
管理を行う者及び指定者以外は手動で開閉できない構造にしなければなりません

分かりました、設置図面と操作できる人の範囲を次の点検で確認してみます!

緊急しゃ断弁の運用は複雑なので、迷ったら早めにご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第十八条の二
  • 危険物の規制に関する規則第二十八条の三十三
  • 危険物の規制に関する規則第二十八条の三十(安全制御装置)
  • 危険物の規制に関する規則第一条第五号(市街地の定義)
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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