消防法は、火災現場で消火や延焼の防止に協力してけがをした人を、市町村が補償する仕組みを持っています。
ただしマンションや雑居ビルのように部屋が分かれた建物では、補償を受けられる人の範囲が法令で線引きされています。
その線引きは「部屋の関係者かどうか」だけでなく「火災の原因を作ったかどうか」でも決まります。
本記事では、消防法施行規則が定める補償の対象外となる人の範囲を、条文に沿って整理します。
テナントの人が消火を手伝ってけがをしたら、消防法で補償されますよね。
手伝った人がどこの誰かによって、対象から外れることがあります。
外れるのは、火元の部屋の人だけじゃないんですか。
火元と関係が無くても、原因を作った人は対象から外れます。
順番に見ていきましょう。
- 消防法第36条の3第2項は、専有部分がある建物での消火協力者への補償に独自の線引きを設けています
- 補償の対象から外れる人は、消防法施行規則第52条第1項が三つに分けて定めています
- 火元の専有部分の所有者・管理者・占有者・居住者・勤務者は対象から外れます
- 火災を発生させた者と火災の発生に直接関係がある者も、部屋との関係の有無を問わず対象から外れます
- 専有部分が無い建物では、この線引き自体が適用されません
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目次
専有部分のある建物で消火を手伝ってもなぜ補償されない人がいるのか

ただしマンションや雑居ビルのように専有部分がある建物では、この補償に独自の線引きがあります。
第1項は消防対象物全体を単位に補償を定めていますが、第2項は専有部分という区画を単位にして、消火に従事した人の一部を対象から外す仕組みを重ねています。
「次に掲げる者以外の者」という言い回しがポイントで、条文が列挙する人だけが対象外になり、それ以外の協力者は補償を受けられます。
では条文が列挙する対象外の人とは、具体的にどんな立場の人なのでしょうか。
専有部分というと、うちのテナントビルも当てはまりますか。
区画ごとに使われている建物なら、多くの場合当てはまります。
補償の対象から外れるのはどんな人か

このうち二つは部屋との関係で決まり、残る一つは火災の原因との関係で決まります。
第1号はその部屋の所有者・管理者・占有者・居住者・勤務者という、部屋との関係で決まる人を挙げています。
これに対して第2号と第3号は、部屋の関係者かどうかを問わず、火災の原因そのものとの関わりだけで対象外にする規定です。
つまり除外の理由は「その部屋の人だから」と「火元を作った本人だから」の二本立てになっています。
第1号だけ見ていたら、火元の部屋の人しか対象外にならないと思っていました。
第2号と第3号は部屋の外の人にも及ぶので、そこが見落としやすい点です。
火災を発生させた者や直接関係がある者とはどこまでの範囲を指すのか

第3号の「火災の発生に直接関係がある者」は、本人でなくても出火の原因に直接関わった人を指します。
第2号は、出火の直接の原因を作った本人を指すので、その部屋の関係者であってもなくても当てはまります。
第3号は、本人が原因を作ったとまでは言えなくても、出火の原因に直接関わった人を含む、第2号よりやや広い規定です。
条文はこれ以上の具体的な線引きを示していないため、個々の事情ごとに出火原因との関わりの深さで判断されることになります。
直接関係がある者、というのはあいまいに聞こえます。
条文自体が細かい線引きを示していないので、そこは個別の事情で判断されます。
専有部分の関係者でなくても除外されることがあるのか

このことは、消火への協力義務そのものが誰に課されているかを見ると分かりやすくなります。
「火災の現場附近に在る者」には、居住や勤務の有無、賃貸借の関係が一切問われません。
このため、来訪者や配達員など専有部分の権利関係を持たない人でも、出火の原因を作っていれば第2号・第3号で対象外になります。
逆に言えば、部屋の名義や契約と無関係な人ほど「自分は対象外にならない」と誤解しやすい落とし穴になります。
テナントの契約が無い人まで対象外になるとは思いませんでした。
原因を作ったかどうかで判断されるので、契約の有無は関係ありません。
明日からなにを確認すればよいか

補償に頼らない備えを、契約や保険の面から確認しておくことが実務では重要になります。 火元との関係だけでなく、原因との関係も確認しておく必要があります。
消防用設備等の点検や訓練の記録に加えて、工事や整備を依頼する業者との契約に、出火時の責任分担を明記しているかを確認します。
専有部分が無い一棟丸ごとの建物では、そもそも第2項の線引き自体が適用されないため、施設賠償責任保険など民間の備えもあわせて検討します。
来訪者や外部の業者が協力してけがをした場合の扱いも、あらかじめ管理権原者どうしで共有しておくと安心です。
うちも一度、業者との契約を見直してみます。
条文の線引きを知っておくだけでも、備えの精度は上がります。
よくある質問
まとめ
専有部分や原因を作った人という視点で、うちの建物も一度見直してみます。
契約や保険の備えもあわせて確認すると安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第25条・第36条の3
- 消防法施行規則第52条
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





