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屋外タンク貯蔵所はなぜ完成検査の前に何度も検査を受けるのか|基礎地盤検査から危険物保安技術協会への委託までを解説

屋外タンク貯蔵所の完成検査前検査と危険物保安技術協会への審査委託を解説する記事のアイキャッチ画像

液体の危険物を貯蔵するタンクを持つ施設は、完成後に受ける完成検査だけでは足りません。
工事の途中でしか確認できない基礎や地盤、溶接部を見るため、完成検査の前に別の検査を受ける必要があります。
しかもタンクの規模が大きくなるほど、実際に審査するのは市町村ではなく専門機関になることがあります。
この記事では消防法第11条の2・第11条の3が定める完成検査前検査の仕組みと、危険物保安技術協会への審査委託の基準を解説します。

うちのタンクも完成検査を受ければ、それで終わりだと思っていました。

実は完成検査の前にも検査があります。
順番に確認しましょう。

検査をするのは、いつも市町村なんですよね。

タンクの規模によっては違います。
そこも含めて見ていきましょう。

この記事の結論
  • 液体危険物タンクを持つ施設は完成検査の前に消防法第11条の2に基づく完成検査前検査を受けなければなりません
  • 検査は基礎・地盤検査、水張検査又は水圧検査、溶接部検査、岩盤タンク検査の4種類に分かれます(施行令第8条の2)
  • 500キロリットル以上の屋外タンク貯蔵所では、市町村長等がタンク本体と基礎地盤の審査を危険物保安技術協会に委託できます
  • 1,000キロリットル以上の特定屋外タンク貯蔵所では基礎地盤・溶接部・岩盤タンクの審査も協会委託の対象になります(消防法第11条の3)
  • 検査に合格しなければ次の工程や完成検査そのものに進めないため、工程ごとの申請時期を逆算しておく必要があります

屋外タンク貯蔵所の完成検査前検査における基礎地盤検査水張検査溶接部検査岩盤タンク検査の4段階から危険物保安技術協会への審査委託までの流れを示した図解

屋外タンク貯蔵所はなぜ完成検査の前に検査を受けるのか

足場に囲われた屋外タンクの脇に赤い公印付きの書類が置かれた様子
製造所・貯蔵所・取扱所は、設置や変更の許可を受けたあと、完成検査に合格しなければ使用できません。
ですが液体危険物タンクを持つ施設には、この完成検査より前に受けるべき検査が別に定められています。
政令で定める製造所、貯蔵所若しくは取扱所の設置又はその位置、構造若しくは設備の変更について前条第1項の規定による許可を受けた者は、当該許可に係る工事で政令で定めるものについては、同条第5項の完成検査を受ける前において、政令で定める工事の工程ごとに、当該製造所、貯蔵所又は取扱所に係る構造及び設備に関する事項で政令で定めるもの(以下この条及び次条において「特定事項」という。)が第10条第4項の技術上の基準に適合しているかどうかについて、市町村長等が行う検査を受けなければならない。(消防法第11条の2第1項)
この検査を完成検査前検査といいます。
基礎や地盤、溶接部は、いったんタンクが組み上がって配管がつながると外から確認できなくなる部分です。
だからこそ工事が進んでしまう前の、工程ごとの節目で検査を挟む仕組みになっています。
特定事項に適合していると認められなければ、その先の完成検査へ進むこともできません。
まずはどんな施設のどの工事が対象になるのかを見ていきましょう。

完成検査の前に、また別の検査があるということですね。

はい、工程ごとに受ける検査です。
対象になる施設を確認しましょう。

どんな施設のどの工事が対象になるのか

取扱施設の脇に高い台座の上に立つ屋外タンクが並ぶ様子
完成検査前検査は、危険物を扱うすべての施設が対象というわけではありません。
対象になる施設と工事の範囲は、政令が具体的に定めています。
法第11条の2第1項の政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所は、液体の危険物を貯蔵し、又は取り扱うタンク(以下「液体危険物タンク」という。)を有する製造所等(容量が指定数量以上の液体危険物タンクを有しない製造所及び一般取扱所を除く。)とする。(危険物の規制に関する政令第8条の2第1項)
対象になるのは指定数量以上の液体危険物タンクを持つ施設です。
気体や固体の危険物を扱うだけの施設や、小さなタンクしかない施設は対象になりません。
対象になる工事も、液体危険物タンクの設置又は変更の工事に限られます(施行令第8条の2第2項)。
配管の追加だけといった、タンク本体に関わらない軽微な工事まではこの検査を要しません。
では実際にどんな検査を、どの工程で受けることになるのでしょうか。

うちのタンクが対象かどうか、どう見分ければいいんでしょう。

タンクの容量が指定数量以上かどうかがまず基準です。
検査の中身を見ていきましょう。

検査の種類ごとになにを確認するのか

層状の基礎の上に立つ屋外タンクの脇に水準器が置かれた様子
完成検査前検査は、ひとつの検査ではありません。
工事の工程に応じて、確認する内容が4種類に分かれています。
液体危険物タンクの基礎及び地盤に関する事項についての完成検査前検査を基礎・地盤検査と、液体危険物タンクの漏れ及び変形に関する事項(略)についての完成検査前検査のうち、(略)水張試験又は水圧試験(略)に係るものをそれぞれ水張検査又は水圧検査と、液体危険物タンクの溶接部に関する事項についての完成検査前検査を溶接部検査と、岩盤タンクのタンク構造に関する事項についての完成検査前検査を岩盤タンク検査という。(危険物の規制に関する政令第8条の2第5項)
確認するのは基礎・地盤検査、水張検査又は水圧検査、溶接部検査、岩盤タンク検査の4種類です。
基礎・地盤検査は容量1,000キロリットル以上の屋外タンクが対象で、タンクを据える前の地盤の段階で行います(施行令第8条の2第3項第1号)。
水張検査又は水圧検査は配管などを取り付ける前のタンク本体そのものを確認し、漏れや変形がないかを見ます。
溶接部検査は溶接した部分の健全性を、岩盤タンク検査は岩盤内につくるタンク特有の構造安定性をそれぞれ確認します。
ここまでは検査の中身の話ですが、実際に検査するのは誰なのかが次の論点です。

検査の種類がこんなに分かれているとは知りませんでした。

工程ごとに見る場所が違うからです。
次は検査する側の話をします。

大きなタンクほど誰が検査するのか

小さな屋外タンクと市町村庁舎の隣に認証機関の建物と大きな屋外タンクが並ぶ様子
完成検査前検査は、市町村長等が自ら行うのが原則です。
ですがタンクの規模が大きくなると、この原則に例外が出てきます。
法第11条の3第1号の政令で定める屋外タンク貯蔵所は、屋外タンク貯蔵所で、その貯蔵し、又は取り扱う液体の危険物の最大数量が500キロリットル以上のものとする。(危険物の規制に関する政令第8条の2の3第1項) 法第11条の3第2号の政令で定める屋外タンク貯蔵所は、屋外タンク貯蔵所で、その貯蔵し、又は取り扱う液体の危険物の最大数量が1,000キロリットル以上のもの(以下「特定屋外タンク貯蔵所」という。)とする。(同条第3項)
市町村長等は、一定規模以上の屋外タンク貯蔵所については審査を危険物保安技術協会に委託できます。
委託できるのは、貯蔵し又は取り扱う液体危険物の最大数量が500キロリットル以上の屋外タンク貯蔵所で、対象はタンク本体と基礎地盤の審査です(消防法第11条の3第1号、施行令第8条の2の3第2項)。
さらに1,000キロリットル以上の特定屋外タンク貯蔵所では、基礎地盤・溶接部・岩盤タンクの審査もあわせて委託の対象になります(消防法第11条の3第2号、施行令第8条の2の3第4項)。
つまり通知そのものは市町村長等の名前で届いても、実際に現場で技術的な審査を行っているのは協会の担当者ということがあります。
規模の大きい工事を計画するときは、この違いを踏まえて準備を進めましょう。

市から来ていると思っていたら、実は協会の人だったということもあるんですね。

規模が大きいタンクほどよくあることです。
最後に、確認しておくことを整理します。

明日からなにを確認すればよいのか

施設管理者が屋外タンクの前で検査済証を確認し電話を手にする様子
ここまでの内容を、実際の工事計画に落とし込みます。
完成検査前検査は、段取りを誤ると工程全体が止まりかねません。
完成検査前検査を受けようとする者は、総務省令で定めるところにより、市町村長等に申請しなければならない。(危険物の規制に関する政令第8条の2第6項) 市町村長等は、完成検査前検査を行つた結果、(略)技術上の基準に適合すると認めたときは、当該完成検査前検査の申請をした者に通知(水張検査又は水圧検査にあつては、タンク検査済証の交付)をするものとする。(同条第7項)
まずは自社のタンクの容量を確認し、対象になる検査区分を把握しましょう。
工事を発注する前に、基礎・地盤検査から水張検査、溶接部検査までどの工程でどの検査を受けるかを工程表に落とし込んでおくと手戻りを防げます。
容量が500キロリットル以上のタンクを計画しているなら、審査が協会委託になるかどうかも所轄消防署に確認しておきましょう。
検査に合格するとタンク検査済証が交付されるので、次の工程や完成検査の際にすぐ提示できるよう保管しておくことが大切です。

工程表に検査のタイミングを書き込んでおきます。

早めの段取りが手戻りを防ぎます。
不明な点は早めに相談してください。

よくある質問

Qすべての屋外タンク貯蔵所が完成検査前検査の対象になるのか?
Aいいえ。対象は液体の危険物を貯蔵し又は取り扱う指定数量以上の液体危険物タンクを持つ施設で、気体や固体の危険物のみを扱う施設や指定数量未満のタンクは対象外です(施行令第8条の2第1項)。
Q完成検査前検査に合格しないとどうなるのか?
A特定事項が技術上の基準に適合していると認められなければ、完成検査を受けることができません(消防法第11条の2第2項)。工程を先に進めるためには、この検査への合格が前提になります。
Q危険物保安技術協会への審査委託はどの規模から可能か?
A液体危険物の最大数量が500キロリットル以上の屋外タンク貯蔵所からタンク本体・基礎地盤の審査委託が可能で、1,000キロリットル以上の特定屋外タンク貯蔵所では溶接部・岩盤タンクの審査も委託の対象になります(危険物の規制に関する政令第8条の2の3)。
Q完成検査前検査に合格すると何が交付されるのか?
A水張検査又は水圧検査に合格するとタンク検査済証が交付されます(危険物の規制に関する政令第8条の2第7項)。基礎・地盤検査など他の検査では通知が行われます。

まとめ

液体危険物タンクを持つ施設は完成検査の前に完成検査前検査を受けなければならない
対象は指定数量以上の液体危険物タンクを持つ施設で、タンクの設置又は変更の工事が対象になる
検査は基礎・地盤検査、水張検査又は水圧検査、溶接部検査、岩盤タンク検査の4種類に分かれる
基礎・地盤検査の対象は容量1,000キロリットル以上の屋外タンクの基礎及び地盤に関する事項
500キロリットル以上の屋外タンク貯蔵所は、市町村長等がタンク本体・基礎地盤の審査を危険物保安技術協会に委託できる
1,000キロリットル以上の特定屋外タンク貯蔵所では溶接部・岩盤タンクの審査も協会委託の対象になる
検査に合格すると通知またはタンク検査済証が交付され、次の工程や完成検査に進める

工程表に組み込んで手戻りなく進めます!

ぜひそうしてください。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第10条、第11条、第11条の2、第11条の3 e-Gov法令検索
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第8条の2、第8条の2の2、第8条の2の3 e-Gov法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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