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移送取扱所はなぜ市町村長とあらかじめ協議しておく必要があるのか|配管の延長と圧力で決まる対象の基準を解説

移送取扱所の配管の延長と圧力が市町村長との事前協議の対象になる基準を解説する記事のアイキャッチ画像

危険物を移送する配管施設の多くは、消防法第11条の許可を受けて移送取扱所として設置されます。
ただし配管が長い、または圧力が高い移送取扱所には、設置の許可とは別にもう一つの手続きが用意されています。
それは事故が起きてから済ませるものではなく、あらかじめ済ませておかなければならない手続きです。
本記事では、消防法が定める市町村長との事前協議の対象となる移送取扱所の基準と、協議すべき中身を条文に沿って整理します。

移送取扱所の許可は取っているので、それで十分だと思っていました。

配管が長い、または圧力が高い移送取扱所は、市町村長との事前協議もセットです。

うちの配管も対象になるのか、基準が気になります。

配管の延長と圧力、両方の基準で決まります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防法第12条の5は、政令で定める移送取扱所の所有者等に、事故発生時の応急の措置についてあらかじめ関係市町村長と協議しておく義務を課しています
  • 協議の対象となる移送取扱所は、危険物の規制に関する政令第8条の3が配管の延長と圧力で定めています
  • 配管の延長が15キロメートルを超える移送取扱所は、それだけで対象になります
  • 延長が15キロメートル以下でも、圧力が0.95メガパスカル以上かつ延長が7キロメートル以上15キロメートル以下なら対象になります
  • 協議は事故が起きてからではなく、あらかじめ済ませておく必要があります

配管の延長と圧力を確認して市町村長へあらかじめ協議し流出時の措置を明確にする流れを示した図解

移送取扱所はなぜ市町村長とあらかじめ協議しておく必要があるのか

施設管理者と市町村の職員が配管の前で書類を交わすイメージ
移送取扱所は、配管を使って危険物を移送する施設として消防法第11条の許可を受けて設置されます。
ただし一部の移送取扱所には、設置の許可とは別にもう一つの手続きが用意されています。
政令で定める移送取扱所の所有者、管理者又は占有者は、当該取扱所について危険物の流出その他の事故が発生し、危険な状態となつた場合において講ずべき応急の措置について、あらかじめ、関係市町村長と協議しておかなければならない。(消防法第12条の5)
あらかじめ協議しておくのは、事故が起きたときにどう対応するかです
第12条の5が定めるのは許可そのものではなく、危険物が流出するなどの事故発生時に講ずべき応急の措置について、事前に取り決めておく義務です。
協議の相手は関係市町村長で、配管が複数の市町村をまたぐときは、その全部が相手になります。
条文の対象は「政令で定める移送取扱所」に限られており、すべての移送取扱所が協議を義務づけられているわけではありません。
では、どの移送取扱所が対象になるのでしょうか。

うちの配管も市町村長との協議が必要なんでしょうか。

対象になるかどうかは、配管の長さと圧力で決まります。

どんな移送取扱所が協議の対象になるのか

長い配管とルーラー、圧力計のイメージ
協議の対象になる移送取扱所は、危険物の規制に関する政令が具体的な数値で定めています。
基準は配管の長さと圧力の2つの切り口から決まります。
法第12条の5の政令で定める移送取扱所は、危険物を移送するための配管の延長(略)が15キロメートルを超える移送取扱所及び危険物を移送するための配管に係る最大常用圧力が0.95メガパスカル以上であつて、かつ、危険物を移送するための配管の延長が7キロメートル以上15キロメートル以下の移送取扱所とする。(危険物の規制に関する政令第8条の3)
対象になる条件は、配管の長さか圧力のどちらかを満たせば足ります
一つ目は配管の延長が15キロメートルを超える移送取扱所で、これだけで対象になります。
二つ目は最大常用圧力が0.95メガパスカル以上で、かつ配管の延長が7キロメートル以上15キロメートル以下の移送取扱所です。
起点や終点が複数ある配管では、任意の区間のうち最長のものを延長として数えます。
自社の配管がどちらの基準にも当てはまらないかを、まず数値で確認することが出発点になります。

配管の長さだけ見ていれば十分だと思っていました。

圧力の基準もあるので、両方確認する必要があります。

あらかじめなにを協議しておくのか

フェンスで囲まれた移送基地と流出防止の堤のイメージ
協議で取り決めるのは、事故が起きたときの応急の措置の内容です。
移送取扱所の基準を定める規則には、平常時から講じておくべき保安上の措置も定められています。
移送基地には、構内に公衆がみだりに入らないようにさく、へい等を設けなければならない。(略) 移送基地には、告示で定めるところにより当該移送基地の構外への危険物の流出を防止するための措置を講じなければならない。(略)(危険物の規制に関する規則第28条の51)
協議の中身は、危険物が構外へ流出しないようにする備えです
移送基地には、部外者がみだりに立ち入らないようさくやへいを設ける必要があります。
あわせて、構外への危険物の流出を防止するための措置を講じておくことも求められます。
これらの平常時の措置を土台にして、実際に事故が起きた場合の応急の措置の内容を関係市町村長とすり合わせておきます。
協議の記録は、消防計画や緊急時対応マニュアルにも反映しておくと実務で扱いやすくなります。

流出を防ぐ設備があれば、協議はしなくてもよいのでしょうか。

設備があっても、協議そのものは別に必要です。

実務で見落としやすいのはどこか

分岐する標識とルーラー付きの配管、圧力計付きの配管のイメージ
基準は配管の長さと圧力の2つの切り口を持つため、片方だけ確認して安心してしまいがちです。
どちらか一方の基準を満たすだけで、協議の対象になります
  • 配管の延長が15キロメートル以下でも、圧力が0.95メガパスカル以上で延長が7キロメートル以上あれば対象になります
  • 延長だけを確認して「うちは短いから対象外」と判断すると、圧力の基準を見落とします
  • 配管が複数の市町村をまたぐときは、関係するすべての市町村長が協議の相手になります
  • 協議は「あらかじめ」行うものであり、事故が起きたあとに済ませればよいものではありません

延長さえ短ければ大丈夫だと思い込んでいました。

圧力の基準も忘れずに確認してください。

明日からなにを確認すればよいか

地図を持つ施設管理者と市役所のイメージ
協議の対象になるかどうかは、自社の配管の数値を確認しないと分かりません。
対象になる場合は、協議の内容を記録として残しておくことも重要です。 まず確認するのは、自社の配管の延長と圧力の実測値です
配管が通る市町村を洗い出し、関係市町村長がどこになるかを整理します。
対象になる場合は、事故発生時に講ずべき応急の措置の内容を文書にまとめ、協議の記録を残します。
協議した内容は、消防計画や緊急時対応マニュアルにも反映しておきます。

うちの配管、一度延長と圧力を図面で確認してみます。

確認した記録を残しておくと、あとで協議内容を追いやすくなります。

よくある質問

Q移送取扱所であれば必ず市町村長との事前協議が必要ですか?
Aいいえ。対象になるのは配管の延長が15キロメートルを超える移送取扱所、または最大常用圧力が0.95メガパスカル以上かつ延長が7キロメートル以上15キロメートル以下の移送取扱所に限られます。
Q配管が複数の市町村をまたぐ場合、協議の相手はどこになりますか?
A配管が通る関係するすべての市町村長が協議の相手になります。一つの市町村だけで足りるとは限りません。
Q協議はいつ行えばよいですか?
Aあらかじめ、つまり事故が発生する前に済ませておく必要があります。事故発生後にあらためて行うものではありません。
Q協議の内容はどのようなものですか?
A危険物の流出などの事故が発生し、危険な状態となった場合に講ずべき応急の措置の内容を取り決めます。

まとめ

消防法第12条の5は、政令で定める移送取扱所の所有者等に事故発生時の応急の措置についてあらかじめ関係市町村長と協議しておく義務を課しています
協議の対象となる移送取扱所は、危険物の規制に関する政令第8条の3が配管の延長と圧力で定めています
配管の延長が15キロメートルを超える移送取扱所は、それだけで対象になります
延長が15キロメートル以下でも、圧力が0.95メガパスカル以上かつ延長が7キロメートル以上15キロメートル以下なら対象になります
移送基地には、部外者の立入りを防ぐさく・へい等と、構外への流出を防止する措置が求められます
配管が複数の市町村をまたぐときは、関係するすべての市町村長が協議の相手になります
明日からは、自社の配管の延長と圧力を確認し、対象になる場合は協議の記録を残します

配管の延長と圧力、両方を確認して早めに協議しておきます。

協議の記録づくりまで含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第12条の5
  • 危険物の規制に関する政令第8条の3
  • 危険物の規制に関する規則第28条の51

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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