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移送取扱所の配管はなぜ完成前に非破壊試験と耐圧試験を受けるのか|溶接部の合格基準と1.5倍圧力を解説

移送取扱所の配管が非破壊試験に合格してから運転を始める様子

移送取扱所の配管は、地下や河川の下をくぐりながら長い距離を危険物とともに走る設備です。
完成してから漏えいが見つかったのでは手遅れなので、使い始める前に溶接部そのものを検査する仕組みが用意されています。
検査に受かった後も、動かしている間ずっと配管の状態を見張り続ける装置が別に求められています。
この記事では、配管の非破壊試験と耐圧試験の基準、そのあとの運転監視までを条文に沿って解説します

移送取扱所の配管って、埋めてしまう前にどこかで検査するんですか。

はい、溶接部の非破壊試験と耐圧試験という2つの検査が条文で義務付けられています。
まずは根拠条文から確認していきましょう。

検査に受かったら、あとはもう見なくていいんでしょうか。

いいえ、運転を始めた後も見張り続ける装置が別に必要です。
検査の中身から見落としやすい点まで順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 移送取扱所の配管等の溶接部は放射線透過試験を中心とする非破壊試験に合格しなければ使えません
  • 配管等は最大常用圧力の1.5倍以上の圧力での耐圧試験にも合格する必要があります
  • 振動・衝撃・温度変化のおそれがある溶接部は、通常より試験の組み合わせが増えるという条文上の落とし穴があります
  • 試験の抜取り(20パーセント以上)が認められるのは移送基地構内の地上配管の溶接部だけです
  • 検査に合格した後も、ポンプや弁の運転状態を監視する装置と異常警報装置を備え続ける必要があります

配管の溶接部が非破壊試験と耐圧試験に合格してから運転を始める流れを示す図解

移送取扱所の配管はなぜ完成前に検査を受けなければならないのか

地下に埋設される配管の溶接部を検査担当者が機器で調べているイメージ
移送取扱所の配管は、いったん地中や河川の下に設置されると日常的に目視で確認できなくなります。
だからこそ、埋める前・使い始める前の検査が根拠条文で細かく定められています。
危険物の規制に関する政令第十八条の二(移送取扱所の基準)
移送取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準は、石油パイプライン事業法に規定する事業用施設に係る技術上の基準に準じて総務省令で定める
配管等の溶接部は、非破壊試験と耐圧試験という2つの検査に合格しなければ使えません
政令の委任を受けた規則第二十八条の二十七(非破壊試験)と第二十八条の二十八(耐圧試験)が、それぞれの合格基準を定めています。
溶接部は配管の中でもっとも欠陥が生じやすい箇所であり、いったん埋設・敷設してしまうと補修の手間が大きくなります。
次からは、この2つの検査で具体的に何を確認するのかを条文に沿って見ていきます。

埋めてしまってからでは直せないから、先に調べるんですね。

溶接部を重点的に調べるのはそのためです。
次は非破壊試験の中身を見てみましょう。

配管の溶接部はどんな試験に合格しなければならないのか

配管の溶接部に放射線透過試験の機器を当てて検査しているイメージ
溶接部の検査は、種類も検査の方法もひとつではありません。
条文が定める試験の組み合わせを確認します。
危険物の規制に関する規則第二十八条の二十七第一項(非破壊試験)
配管等の溶接部は、放射線透過試験(放射線透過試験を実施することが適当でない場合にあつては、告示で定める配管以外の配管については超音波探傷試験及び磁粉探傷試験又は浸透探傷試験を、告示で定める配管については磁粉探傷試験又は浸透探傷試験)を行い、これに合格するものでなければならない。この場合において、移送基地の構内の地上に設置される配管等の溶接部に限り、全溶接部の二十パーセント以上の溶接部の抜取り試験によることができる。
基本となるのは放射線透過試験で、これが実施しにくい場合に限って別の試験に切り替えられます
切り替え先は配管の種類で分かれており、告示で定める配管以外は超音波探傷試験と磁粉探傷試験(または浸透探傷試験)の組み合わせ告示で定める配管は磁粉探傷試験(または浸透探傷試験)だけで足ります。
つまり配管の区分によって、必要な試験の手厚さそのものが変わります。
唯一の例外として、移送基地の構内にある地上配管の溶接部だけは、全溶接部を調べず二十パーセント以上の抜取り試験で済ませられます。

配管の種類によって、受ける試験の組み合わせが違うんですね。

はい、配管の区分ごとに必要な試験が決まっています
次は圧力をかけて調べる試験を見ていきましょう。

耐圧試験はどのくらいの圧力で行うのか

配管に通常より高い圧力をかけて漏えいがないか確認しているイメージ
溶接部の非破壊試験に合格しても、それだけでは配管全体の耐圧性能までは確認できません。
そこで別に耐圧試験が定められています。
危険物の規制に関する規則第二十八条の二十八(耐圧試験)
配管等は、告示で定める方法により当該配管等に係る最大常用圧力の1.5倍以上の圧力で試験を行つたとき漏えいその他の異常がないものでなければならない。ただし、告示で定める場合は、当該配管等について前条第二項に掲げる試験を行い、これに合格することをもつて代えることができる
耐圧試験は、実際に使う圧力より高い負荷をかけて漏えいや異常が無いかを確かめる試験です
基準となるのは最大常用圧力の1.5倍以上という水準で、通常の運転で想定される圧力より大きな余裕を持たせて安全性を確認します。
条文はただし書きも用意しており、告示で定める場合に限り、前条第二項の試験(後述する振動・衝撃対応の非破壊試験)で耐圧試験を代替できます。
とはいえこれは告示が個別に認めた場合の話であり、原則は圧力をかけた実測での確認です。

1.5倍もの圧力をかけて、配管が壊れたりしないんでしょうか。

壊れないことを確かめるために行う試験なので、これが本来の目的です。
次は試験の中でも見落としやすい点を確認しましょう。

検査で見落としやすいのはどこか

振動が伝わる配管の溶接部だけ検査項目が増えていることを示すイメージ
配管の区分によって試験を簡略化できる場面があると説明しましたが、逆に厳しくなる場面もあります。
条文の後段を確認します。
危険物の規制に関する規則第二十八条の二十七第二項(非破壊試験)
配管等の溶接部のうち振動、衝撃、温度変化等によつて損傷の生じるおそれのあるものは、告示で定める配管以外の配管については放射線透過試験、超音波探傷試験及び磁粉探傷試験又は浸透探傷試験を、告示で定める配管については放射線透過試験及び磁粉探傷試験又は浸透探傷試験を行い、これに合格するものでなければならない
告示で定める配管だからといって、試験が常に軽くなるとは限りません
振動・衝撃・温度変化のおそれがある溶接部は、告示で定める配管であっても放射線透過試験が必ず加わり、第一項の「磁粉探傷試験だけで足りる」という扱いは使えなくなります。
もうひとつの見落としやすい点は、二十パーセント以上の抜取り試験が認められるのは移送基地構内の地上配管の溶接部だけという限定です。同じ地上配管でも構内の外にあれば全数検査が原則に戻ります。
配管の設置場所と受ける振動・温度変化の有無を先に確認しないと、試験の組み合わせを取り違えてしまいます。

楽になる配管があれば、逆に厳しくなる配管もあるんですね。

はい、振動や温度変化がある場所ほど試験は増えます
最後に検査後の運転監視を見ていきましょう。

検査に合格した配管はそのあとどう見張るのか

制御室でポンプや弁の運転状態を監視装置で確認している担当者のイメージ
非破壊試験と耐圧試験は、配管を使い始める前の一度きりの検査です。
運転を始めた後は、別の条文が見張りの仕組みを定めています。
危険物の規制に関する規則第二十八条の二十九(運転状態の監視装置)
配管系(配管並びにその配管と一体となつて危険物の移送の用に供されるポンプ、弁及びこれらの附属設備の総合体をいう。以下同じ。)には、ポンプ及び弁の作動状況等当該配管系の運転状態を監視する装置を設けなければならない。
2 配管系には、告示で定めるところにより圧力又は流量の異常な変動等の異常な事態が発生した場合にその旨を警報する装置を設けなければならない。
完成検査で終わりではなく、動かしている間も監視を続ける義務があります
必要な装置は2つで、ポンプや弁の作動状況そのものを常時監視する装置と、圧力や流量が異常に変動したときに知らせる警報装置です。
非破壊試験・耐圧試験が「作るときの一回きりの合格基準」だとすれば、この監視装置は「動かしている間ずっと働く仕組み」にあたります。
防火管理者としては、まず竣工時の試験記録が保管されているかを確認し、そのうえで監視装置の警報履歴が定期的にチェックされているかを次の点検項目に加えてください。

検査の記録と、日々の監視装置の両方を確認すればいいんですね。

試験記録と監視装置の警報履歴、この2つを押さえてください。
これで確認の流れが一通り整いました。

よくある質問

Q配管のすべての溶接部を放射線透過試験にかけなければならないのですか?
A原則は放射線透過試験ですが、実施が適当でない場合は配管の区分に応じて超音波探傷試験・磁粉探傷試験・浸透探傷試験に切り替えられます。移送基地構内の地上配管の溶接部に限り、二十パーセント以上の抜取り試験も認められています。
Q耐圧試験の1.5倍という圧力に根拠はあるのですか?
Aはい。危険物の規制に関する規則第二十八条の二十八が最大常用圧力の1.5倍以上の圧力で試験を行うことを明文で定めています。告示で定める場合に限り、非破壊試験の一部(第二十八条の二十七第二項の試験)で代えることもできます。
Q振動や温度変化がある場所の配管は何が違うのですか?
A告示で定める配管であっても、振動・衝撃・温度変化によって損傷のおそれがある溶接部は放射線透過試験が必ず加わります。配管の区分による簡略化は使えなくなります。
Q検査に合格した後は何も確認しなくてよいのですか?
Aいいえ。危険物の規制に関する規則第二十八条の二十九により、ポンプや弁の運転状態を監視する装置と、圧力・流量の異常を警報する装置を運転中も備え続ける必要があります。

まとめ

移送取扱所の配管等の溶接部は非破壊試験に合格しなければ使用できません
基本は放射線透過試験で、配管の区分により別の試験へ切り替えられます
移送基地構内の地上配管に限り二十パーセント以上の抜取り試験が認められます
耐圧試験は最大常用圧力の1.5倍以上の圧力で漏えいや異常が無いことを確かめます
振動・衝撃・温度変化のおそれがある溶接部は試験が加重されます
運転開始後はポンプ・弁の運転状態を監視する装置を備え続ける必要があります
圧力・流量の異常な変動を知らせる警報装置も併せて必要です

分かりました、試験記録の保管と監視装置の警報履歴を確認してみます!

配管の検査記録の確認は分かりにくいので、迷ったら早めにご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第十八条の二
  • 危険物の規制に関する規則第二十八条の二十七(非破壊試験)
  • 危険物の規制に関する規則第二十八条の二十八(耐圧試験)
  • 危険物の規制に関する規則第二十八条の二十九(運転状態の監視装置)
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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