前回は、蓄電池の特例を建築物に併設する屋内貯蔵所(令第10条第3項)と組み合わせる場合を解説しました。
実はもう一つ、蓄電池の特例を重ねられる相手があります。高引火点危険物のみを貯蔵する屋内貯蔵所です。
規則第16条の2の11を使うと、単体の特例では外れない位置基準や網入りガラスの号まで、まとめて適用除外になります。
その代わり、標識掲示板と独立した専用の建築物という号だけは、組み合わせても外れずに残ります。
蓄電池と高引火点危険物、両方の特例をあわせて使うということですか。
そんなことができるんですね。
はい、できます。
ただし両方の条件を同時に満たす必要があります。
片方だけでは、この広さの免除は受けられないんですね。
そのとおりです。
今日は規則第16条の2の11が定める組み合わせの中身を、条文から確認していきましょう。
- リチウムイオン蓄電池により貯蔵される高引火点危険物のみを貯蔵する屋内貯蔵所は、高引火点危険物の特例(規則第16条の2の4第2項)と蓄電池の特例(規則第16条の2の8第2項)の両方を満たすと、規則第16条の2の11のさらに広い特例が使えます。
- 組み合わせると、令第10条第1項のうち第1号、第2号、第4号から第9号まで、第11号及び第12号から第15号までの規定が適用除外になります。
- 単体の高引火点危険物特例だけでは軒高・床面積・壁柱床の耐火構造は外れず、単体の蓄電池特例だけでは位置・空地・網入りガラスは外れません。
- 前回の特定屋内貯蔵所との組み合わせ(規則第16条の2の10)と異なり、この組み合わせでは第9号(網入りガラス)まで適用除外になります。
- それでも標識掲示板・独立した専用の建築物・禁水性物品等の床の防水措置(第3号・第3号の2・第10号)は、適用除外リストに含まれていません。
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目次
蓄電池で高引火点危険物のみを貯蔵する屋内貯蔵所とはどんな組み合わせなのか

令第10条第6項は、蓄電池だけを貯蔵する屋内貯蔵所について、総務省令で複数の特例を定められる授権規定です。
入口はどれも同じ令第10条第6項ですが、上乗せする相手の項が違います。
高引火点危険物とは、引火点が100度以上の第4類危険物を100度未満で取り扱うもので、燃えにくさそのものが基準を緩める根拠になっています。
蓄電池側の相手が、併設型や特定屋内貯蔵所だけじゃなく高引火点危険物にも広がるんですね。
組み合わせのパターンが多くて混乱しそうです。
そうなんです。
重ねる相手の項が第3項か第4項か第5項かで、条文も内容も変わります。
この組み合わせを使うにはどんな条件を満たす必要があるのか

条件は高引火点側と蓄電池側の両方から積み上がります。
蓄電池側の条件は、階高12メートル未満・耐火構造の壁柱床・充電率60パーセント以下という数値基準が中心です。
どちらか一方だけでは、規則第16条の2の11の広い免除は使えません。
高引火点側の空地や位置、蓄電池側の充電率や架台と、確認する項目が二重にあるんですね。
はい、そのとおりです。
両方を満たして初めて、次に説明する免除が使えます。
組み合わせるとどこまで基準が免除されるのか

ここが規則第16条の2の11の一番の中身です。
前回扱った特定屋内貯蔵所との組み合わせ(規則第16条の2の10)は第9号を除外リストに含んでいませんでしたが、この組み合わせでは網入りガラスの第9号まで適用除外になります。
避雷設備(第14号)も条件を満たせば不要になり、免除の範囲は蓄電池関連の組み合わせの中でも最も広い部類に入ります。
網入りガラスまで不要になるなら、普通のガラス窓でよいということですか。
この号だけを見ればそうです。
ただし単体の特例では届かない範囲もあるので、次の項目で確認しましょう。
単体の特例だけでは外れない基準はどこか

単体の特例と比べると、届く範囲がはっきり違います。
危険物の規制に関する規則第16条の2の8第2項(柱書) (略)令第10条第1項第4号から第6号まで、第11号及び第12号から第15号までの規定は、適用しない。
蓄電池の特例(規則第16条の2の8)だけでは、第4号から第6号まで・第11号から第15号までしか外れず、位置や空地、網入りガラス(第1号・第2号・第9号)は残ります。
規則第16条の2の11は、この二つの除外リストを足し合わせた形になっています。
それでも標識掲示板(第3号)・独立した専用の建築物(第3号の2)・禁水性物品等の床の防水措置(第10号)は、どちらのリストにも入っておらず引き続き必要です。
片方だけの特例だと、届かない号がこんなにあるんですね。
足し算になっていると分かって整理しやすくなりました。
はい、そのとおりです。
残る3つの号だけは覚えておいてください。
明日からなにを確認すればよいのか

条件が二重になる分、抜け漏れが起きやすい組み合わせです。
- 貯蔵する危険物が高引火点危険物かつ規則第16条の2の7の対象(リチウムイオン蓄電池で貯蔵される第2類又は第4類の危険物)に限られているかを確認する。
- 高引火点側の条件(指定数量の倍数に応じた位置・空地の幅)を満たしているかを確認する。
- 蓄電池側の条件(階高12メートル未満・充電率60パーセント以下・架台や貯蔵方法)を満たしているかを確認する。
- 標識掲示板・独立した専用の建築物・禁水性物品等の床の防水措置は組み合わせても省略できないことを設計段階で確認する。
基準をすべて満たしても、消防法第11条に基づく市町村長等の許可を受けなければ使用できません。
高引火点側と蓄電池側、どちらの号が残りどちらが外れるかを号単位で照合する必要があります。
迷ったときは、設計段階で所轄の消防署に相談するのが近道です。
二つの特例をまたぐ分、確認する号が多いと分かりました。
設計の前に整理しておきます。
はい。
設置や変更の前に、必ず所轄の消防署に相談してください。
よくある質問
まとめ
組み合わせで初めて届く範囲がここまで広いとは思いませんでした。
残る号と外れる号を分けて確認します。
ぜひそうしてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第10条第1項・第5項・第6項(屋内貯蔵所の基準・高引火点危険物の特例の授権規定・蓄電池の特例の授権規定)
- 危険物の規制に関する規則第13条の6第1項(高引火点危険物の定義)
- 危険物の規制に関する規則第16条の2の4第2項(高引火点危険物の平家建ての屋内貯蔵所の特例)
- 危険物の規制に関する規則第16条の2の7(屋内貯蔵所の特例を定めることができる危険物)
- 危険物の規制に関する規則第16条の2の8第2項(蓄電池により貯蔵される危険物の屋内貯蔵所の特例)
- 危険物の規制に関する規則第16条の2の11(蓄電池により貯蔵される高引火点危険物の屋内貯蔵所の特例)
- 消防法第11条第1項(製造所、貯蔵所又は取扱所の設置・変更の許可)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





