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建築設備が既存不適格と判定されたらどうなるのか|自主点検の活用から罰則まで解説

既存不適格や罰則など建築設備定期検査の周辺ルールを解説する記事のアイキャッチ

建築設備定期検査には、報告そのものだけでなく、周辺にいくつか知っておきたい運用ルールがあります。
他の点検記録を検査に使えるのか、古い設備が今の基準に合わなくなったときどう扱われるのか、報告を怠るとどうなるのか——所有者・管理者が疑問に思う場面は少なくありません。
これらを知らずに検査結果表を受け取ると、「既存不適格」の意味を誤解したり、罰則のリスクを見落としたりすることがあります。
この記事では、自主点検の記録活用から既存不適格の考え方、罰則、検査済証・腕章まで定期検査報告制度の周辺ルールを整理して解説します

先日、消防用設備の点検記録を建築設備の検査にも使えないかと相談されました。
そんなことができるんでしょうか。

一部の項目に限って、他の法令に基づく点検記録を活用できる仕組みがあります。
ただしどの項目でも使えるわけではありません。

うちのビル、古い建物なので今の基準に合っていない設備もあるかもしれません。
それって検査で違反として扱われるんでしょうか。

建築時の基準に適合していれば「既存不適格」として扱われ、直ちに違反にはなりません。
自主点検・既存不適格・罰則の3つを順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 換気設備等の一部項目は、一級建築士等が実施した自主点検や他法令にもとづく点検の記録を活用できる
  • 建築時の基準に適合していた設備が現行基準に不適合になった場合は「既存不適格」として扱われ、直ちに違反にはならない
  • ただし増築・改築・大規模の修繕や用途変更を行う場合は、原則として現行基準への適合が必要になる
  • 報告を怠ると100万円以下の罰金、検査員が不誠実な行為をすると資格者証の返納命令の対象になる
  • 検査済であることを示す定期検査報告済証や腕章は、(一財)日本建築設備・昇降機センターが制定している

自主点検の記録活用から既存不適格罰則検査済証までをまとめた図解

他の法令の点検記録は定期検査の代わりに使えるのか

他法令の点検記録を確認する女性検査員のイラスト
建築設備の定期検査は、毎回すべての項目をゼロから検査しなければならないわけではありません。
一定の条件を満たせば、他の点検で得られた記録をそのまま活用できる項目があります。
問1 建築設備の定期検査において、消防法や建築物における衛生的環境の確保に関する法律など、建築基準法令以外の法令に基づく点検の記録を、そのまま検査に活用することはできるか。
答1 一部の検査項目に限り、告示が定める検査方法と同等の方法で一級建築士等が実施した検査(自主点検)や、他法令の規定に基づき実施した点検等の記録を活用して検査を行うことができ、これらの検査項目は当該記録により確認・判定することで足りるとされている。
他の点検記録の活用が認められているのは、あくまで告示があらかじめ指定した項目に限られます
たとえば建築物衛生法にもとづく空気環境の測定記録や、消防法にもとづく消防用設備等の点検記録、電気事業法にもとづく保安規程上の点検記録などが対象になります。
換気設備の各居室の換気量のように、二酸化炭素含有率の測定記録を活用する場合は、測定時の在室者数など判定に必要な情報が記録から読み取れることが前提です。
情報が確認できない記録は活用できず、その場合は定期検査時にあらためて測定を行うことになります。
自分の建物でどの記録が使えそうかは、検査を依頼する建築設備等検査員に事前に相談しておくと検査の重複を減らせます。

消防用設備の点検記録がそのまま使えるなら、二度手間が省けそうですね。
どの項目が対象になるのか知りたいです。

対象項目は告示で決まっているので、依頼前に検査員に確認するのが確実です。
記録が使えない項目は通常どおり検査が必要です。

既存不適格とはどんな状態を指すのか

古い建物と現行基準を見比べる女性検査員のイラスト
建物は完成した時点の基準を満たしていても、その後の法改正で基準そのものが変わることがあります。
このとき検査ではどう判定すればよいのでしょうか。
問2 現行の法令の規定には適合しないが、建築時の法令には適合していたと判断される検査事項は、検査でどのように判定するのか。
答2 建築物は、この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する場合においては、これらの規定に適合しない部分を有していても当該規定は適用しない(法第3条第2項)。定期検査においては、このような箇所は「要是正」と併せて「既存不適格」と判定することとなる。
既存不適格は「違反」とは異なる扱いです
法改正のたびに既存の建物すべてを即座に改修させるのは現実的ではないため、規定の施行・適用時点で現に存在する建築物には新しい規定を適用しないという例外が設けられています。
ただし既存不適格だからといって放置してよいわけではなく、検査者は所有者や管理者に対して、安全確保の観点から現行の法令の規定に適合させるよう促すことが望ましいとされています。
検査結果表で「既存不適格」の判定を受けたら、違反ではなく建築時の基準のままという意味だと理解しておきましょう。
次の項目では、既存不適格のままではいられなくなる場面を見ていきます。

うちのビル、既存不適格の項目があると言われて不安になりました。
これって指摘されたということですよね。

既存不適格は違反ではありません
建築時の基準を満たしていた証拠でもあります。

既存不適格でも現行基準への適合を求められるのはどんなときか

増築工事の計画図を確認する検査員のイラスト
既存不適格は、建物をそのまま使い続ける限り認められる例外にすぎません。
建物に一定の変化があると、現行基準への適合を求められる場面があります。
問3 既存不適格建築物が増築や用途変更を行う場合、現行の法令の規定への適合はどこまで必要になるか。
答3 既存不適格建築物が増築、改築、移転、大規模の修繕又は大規模の模様替を行う場合には、原則として既存の部分を含めて建築物全体を現行の法令に適合させる必要がある(法第3条第3項第三号、第四号)。また、用途を変更する場合も一定の規定への適合が必要になる(法第87条第3項)。
既存不適格の適用除外は、建物をそのまま使い続ける限りで認められる例外です
工事の着手がその規定の施行や適用より後になる増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替を行うと、原則として建築物全体を現行基準に適合させなければなりません。
用途変更についても、特殊建築物への変更などの場面では一定の規定が準用され、変更後の用途にふさわしい基準への適合が求められます。
つまり「既存だから今後もずっと今のままでよい」とは限らないということです。
増築・改築・用途変更の計画があるときは、既存不適格の項目が現行基準への適合対象になるかどうかを早い段階で確認しておくことが実務上のポイントです。

今度、ビルの一部を増築する計画があります。
既存不適格の設備もまとめて直さないといけないんでしょうか。

増築の規模や既存不適格の内容によって変わるので、計画段階での確認をおすすめします。
後から工事をやり直すより費用を抑えられます。

検査を怠ったり不誠実な行為をするとどんな罰則があるのか

罰則の一覧を確認する女性検査員のイラスト
定期検査報告制度には、義務を果たさなかった場合の罰則も定められています。
所有者・管理者側と検査員側とで、問われる責任の中身が異なります。
問4 建築設備の所有者又は管理者が定期報告を怠った場合や、建築設備等検査員が不誠実な行為をした場合、どのような罰則があるのか。
答4 定期報告の義務を負う所有者又は管理者が報告をせず、又は虚偽の報告をした場合は100万円以下の罰金に処せられる(法第101条第1項第2号)。特定行政庁から報告を求められてもなお応じない場合等は、より重い1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金となる場合がある(法第99条第1項第5号)。また、建築設備等検査員が検査等に関して不誠実な行為をした場合等は、国土交通大臣から資格者証の返納を命じられることがある(法第12条の3第4項の規定により準用する法第12条の2第3項)。
罰則は「報告そのものを怠った場合」と「求められた対応に応じなかった場合」とで重さが分かれています
定期報告の義務そのものを怠ったり虚偽の報告をしたりした所有者・管理者は、100万円以下の罰金の対象です。
これに加えて、特定行政庁から関係書類の提出や報告を求められたのに応じなかったり虚偽の報告をしたりすると、より重い1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が科される場合があります。
検査員本人についても、検査等に関して不誠実な行為をしたり偽りの手段で資格者証の交付を受けたりすると、資格者証の返納を命じられます。
法人の従業員が業務に関してこれらの違反をした場合は、行為者だけでなく法人にも罰金刑が科される両罰規定(法第105条第2号)も定められています。
罰則を意識するよりも、まずは報告期限を守り、求められた資料には誠実に応じることが最も確実な備えです。

報告を忘れていたら、いきなり刑罰の対象になるんですか。
正直かなり不安です。

まず問われるのは100万円以下の罰金です。
特定行政庁からの求めに応じないなど悪質なケースがより重く扱われます。

検査済証や腕章はなぜ必要なのか

検査済証を建物の入口で確認する女性検査員のイラスト
検査を実施したことは、建物の利用者にもわかるように示す仕組みがあります。
罰則とは逆に、こちらは制度の信頼性を支えるための工夫です。
問5 建築設備の定期検査を実施したことを、建築物の利用者に示す方法はあるのか。
答5 (一財)日本建築設備・昇降機センターは、定期検査報告を実施したことを建築物の利用者に明示し安心・安全を提供することを目的として、全国統一の標準様式である定期検査報告済証を制定しており、建築物の出入口等の見やすい場所に掲示することとしている。あわせて、検査を行っていることをその場で示すための腕章も制作している。
検査済証や腕章は、法令上の義務ではなく業界団体による自主的な取り組みです
定期検査報告済証には報告年月日・検査者・検査対象の建築設備・報告先の特定行政庁などが記載され、建築物の出入口等の見やすい場所に掲示することとされています。
腕章は検査当日、検査員が建物内を巡回する際に所有者や利用者へその場で身分を示すためのものです。
どちらも建築設備検査員等名簿登載証と同じく、検査の実施と資格を目に見える形で証明する仕組みだといえます。
検査を依頼する際は、報告済証の掲示や腕章の着用まで含めて検査業者に確認しておくと、利用者への説明もスムーズになります。

入口に貼ってある証明書、あれは業界団体が作っているものだったんですね。
今度よく見てみます。

はい、法律の義務ではなく信頼性を高めるための取り組みです。
腕章も同じ目的で使われています。

よくある質問

Q自主点検の記録を活用できる項目は、どうやって確認すればよいのか?
A平成20年国土交通省告示第285号が検査事項ごとに検査方法を定めており、その中で自主点検等の記録の活用が認められている項目が指定されています。対象項目かどうかは、検査を依頼する建築設備等検査員に確認するのが確実です。
Q既存不適格と判定された設備は、いつか必ず直さなければならないのか?
A増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替や用途変更を行わない限り、直ちに現行基準への適合を義務付けられるわけではありません。ただし安全確保の観点から、所有者・管理者には現行基準への適合が望ましいとされています。
Q報告を怠った場合、罰則を科されるのは誰なのか?
A原則として定期報告の義務を負う所有者又は管理者が対象です。あわせて検査を行った建築設備等検査員が不誠実な行為をした場合は、検査員自身が資格者証の返納を命じられることがあります。
Q定期検査報告済証や腕章は、必ず掲示・着用しなければならないのか?
Aいずれも法令上の義務ではなく、(一財)日本建築設備・昇降機センターが制定した業界団体の自主的な仕組みです。ただし建築物の利用者に安心感を与える取り組みとして、多くの現場で活用されています。

まとめ

換気設備等の一部項目は、告示が定める検査方法と同等の自主点検や他法令に基づく点検記録を活用できる
記録を活用する場合、判定に必要な情報が記録から確認できることが前提になる
建築時の基準に適合していた設備が現行基準に不適合になった場合は「既存不適格」として扱われる
既存不適格は違反ではないが、放置せず現行基準への適合を促すことが望ましいとされる
増築・改築・大規模の修繕や用途変更を行う場合は、原則として現行基準への適合が必要になる
報告を怠ると100万円以下の罰金、検査員の不誠実な行為には資格者証の返納命令の対象になる
定期検査報告済証や腕章は、検査の実施を利用者に示す業界団体の自主的な取り組みである

既存不適格や罰則のことまで、疑問がすっきりしました!
まずは自主点検の記録が使えるか確認してみます!

それが確実な第一歩です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第3条・第12条・第12条の2・第12条の3・第87条・第99条・第101条・第105条
  • 平成20年国土交通省告示第285号

※本記事は建築基準法及び関係告示の現行規定にもとづき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。個別の建物における既存不適格の判定や罰則の適用については、所管の特定行政庁又は専門家に必ずご確認ください

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