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排煙設備の無窓居室と排煙口の位置基準は2025年の法改正でどう変わったのか|天井から80cm以内の固定ルールが見直された背景を解説

排煙口の位置を測定する女性検査員の写真

排煙設備の設置や排煙口の構造を定める建築基準法施行令が、令和7年(2025年)11月1日に改正されました。
これまで「天井から80cm以内」という一律の数値で決まっていた排煙口の設置範囲が、居室の天井の高さに応じて変わる仕組みに置き換わっています。
建築設備定期検査の判定基準を定める告示も、この改正にあわせて条文の引用のしかたが整理されました。
この記事では、2025年の法改正で排煙設備の基準がどう変わったのかを、改正前後の条文を比較しながら整理して解説します

うちのビルの排煙設備について、去年の秋ごろに基準が変わったと点検業者さんから聞いたんですが、今すぐ何か直さないといけないんでしょうか。

ご安心ください、2025年11月の改正は主に新築や増改築の際の設計基準の見直しで、既存の建物にすぐ改修を義務付けるものではありません。
ただ定期検査の判定基準の条文の書き方も整理されているので、内容を知っておくと安心です。

具体的にはどこがどう変わったんでしょうか。

一番のポイントは、排煙口を設置できる位置の基準が「天井から80cm以内」という一律の数値から、天井の高さに応じた基準に変わったことです。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 建築基準法施行令第116条の2・第126条の2・第126条の3は、令和7年(2025年)11月1日に改正された
  • あわせて告示第1436号・第1437号も改正され、新たに国土交通省告示第992号から第995号までが制定された
  • 排煙口の設置位置は「天井から80cm以内」という一律の数値から、居室の天井の高さに応じて国土交通大臣が定める部分に変わった
  • 無窓居室の判定でも、給気口・排気口を使う機械排煙型の開口部を割合に応じて算入できるようになった
  • 建築設備定期検査の判定基準を定める告示第285号の条文引用も、この改正にあわせて整理された

排煙設備の基準が2025年の法改正でどう変わったかを示す図解

なぜ2025年11月に排煙設備の基準が改正されたのか

排煙設備に関する改正前後の条文を見比べる女性検査員のイラスト
排煙設備に関する規定は、長らく天井から80cm以内という一律の数値で運用されてきました。
その前提が、2025年の秋に大きく見直されています。
問1 排煙設備の設置や排煙口の構造に関する建築基準法施行令の規定は、2025年にどのような改正が行われたか。
答1 令和7年10月30日及び同月31日の政令改正により、施行令第116条の2・第126条の2・第126条の3が改正され、同年11月1日に施行された。あわせて排煙関連の告示(平成12年建設省告示第1436号・第1437号)も改正され、新たに国土交通省告示第992号から第995号までが制定されている。
今回の改正の中心は、排煙設備の基準を「一律の数値」から「天井の高さに応じた基準」へ組み替えたことです
従来は居室の天井の高さにかかわらず、排煙に有効な開口部の範囲を天井から80cm以内などと一律に定めていました。
改正後は、床面から天井までの垂直距離に応じて国土交通大臣が別途定める部分を基準にする方式に変わっています。
あわせて、給気・排気を機械的に行う設備を使う場合の取扱いも新しく整理されました。
まずはこの「一律ルールから高さ基準へ」という全体の流れをおさえておきましょう。

数字が一律に決まっているほうが分かりやすいと思っていました。
なぜわざわざ複雑にしたんでしょうか。

天井が高い建物ほど、煙がたまるまでに余裕があります。
その実態に合わせて設計の自由度を広げる見直しと考えられます。

無窓居室かどうかの判定基準はどう変わったのか

窓のない居室の換気口を確認する女性検査員のイラスト
排煙設備は、すべての居室に必要なわけではありません。
まずは「窓その他の開口部を有しない居室」にあたるかどうかの判定から見ていきます。
問2 排煙設備の設置が必要になる「窓その他の開口部を有しない居室」は、施行令第116条の2でどのように判定するのか。
答2 居室の床面積の20分の1以上の採光に有効な開口部があるか、天井又は壁の一定の部分にある開放できる部分の面積の合計が居室の床面積の50分の1以上あれば、無窓居室にはあたらない。改正後は、この50分の1の基準について、火災時に生ずる煙を有効に排出できる構造方法を用いる給気口及び排気口を有する場合、給気口の開口面積等に応じて算出した割合で足りることとされた。
改正前は、自然に開放できる窓の面積だけが判定の対象でした
天井付近に開けられる窓や欄間がなければ、機械的に換気していても無窓居室として扱われ、排煙設備の設置義務が生じることが少なくありませんでした。
改正後は、火災時に煙を有効に排出できる構造の給気口・排気口を備えていれば、その分を面積の計算に加えられるようになっています。
天井付近に窓を設けにくい大空間の店舗や倉庫でも、設計の選択肢が広がったといえます。
自分の建物がどちらの方法で判定されているかは、確認申請時の設計図書で確認できます。

窓がなくても換気扇があれば大丈夫だと思っていました。
そこまで厳密に区別されているとは知りませんでした。

普通の換気扇と、この基準でいう排気口とは構造方法の要件が別です。
設計段階でどちらを選んだかが重要になります。

防煙壁の作り方の選択肢はどう広がったのか

天井から下がる防煙壁の奥行きを確認する男性検査員のイラスト
排煙設備は、建築物を防煙壁で区画することが前提になっています。
この防煙壁の作り方にも、改正で新しい選択肢が加わりました。
問3 排煙設備を設置する際に居室を区画する防煙壁は、どのような材料でつくればよいのか。
答3 従来は不燃材料で造るか、不燃材料で覆われたものに限られていた。改正後は、下端から床面までの垂直距離が居室の床面積に応じて国土交通大臣が定める距離以上であることを条件に、準耐火構造で造られた防煙壁も認められることとなった。
防煙壁の材料に、準耐火構造という選択肢が加わったことがポイントです
これまでは不燃材料でつくるか、不燃材料で覆う方法しか認められていませんでした。
改正後は、天井からの垂れ壁の奥行きを一定以上確保することを条件に、準耐火構造の壁でも防煙壁として扱えるようになっています。
奥行きの基準は居室の床面積に応じて変わるため、一律の数値では判断できません。
既存の建物を増改築する際は、この奥行きの条件を満たしているかを設計者に確認しておくと安心です。

防煙壁は不燃材料でなければいけないと思い込んでいました。
材料の選択肢が増えるのは設計者にとって助かりますね。

そのとおりです、ただし奥行きの条件を満たさなければ認められません。
増改築の際は必ず確認してください。

排煙口を設置できる位置の基準はどう変わったのか

天井の高い部屋で排煙口の高さを測定する女性検査員のイラスト
排煙口をどこに設けるかという基準は、今回の改正でもっとも大きく変わった部分です。
建築設備定期検査でも実際に確認する項目なので、詳しく見ておきましょう。
問4 排煙口を天井や壁のどこに設置すればよいかを定める施行令第126条の3第1項第三号は、どのように改正されたのか。
答4 改正前は、天井又は天井から下方80cm以内(防煙壁のたけがこれより浅い場合はその値)の部分に設けることとされていた。改正後は、この固定値に代えて、床面から天井までの垂直距離に応じて、排煙口を設けた場合に火災時に生ずる煙を有効に排出できるものとして国土交通大臣が定める部分に設けることとされた。
「天井から80cm以内」という数値そのものが、条文から姿を消したことになります
天井の高さが低い部屋では従来どおりの位置に近い運用になりますが、天井が高い部屋ではより低い位置まで排煙口を設けられる余地が生まれます。
この変更にあわせて、建築設備定期検査の判定基準を定める平成20年国土交通省告示第285号の記載も整理されました。
改正前は「平成12年建設省告示第1436号第三号又は施行令第126条の3第1項第三号の規定に適合しないこと」という2つの条文の並記でしたが、改正後は施行令第126条の3第1項第三号の規定のみが判定基準として引用されています。
検査員が判定基準を確認する際に見る条文そのものが変わっている点は、覚えておきたいポイントです。

判定基準に書いてある条文自体が変わるなんて知りませんでした。
次の検査で戸惑わないか少し心配です。

検査で確認する位置や作動そのものは変わりません。
引用される条文の書き方が整理されただけなので、過度に心配しなくて大丈夫です。

既存の建物や定期検査への影響はどう考えればよいのか

検査記録と設計図書を確認する女性検査員のイラスト
最後に、この改正が実際の建物にどう関わってくるのかを整理します。
所有者や防火管理者として押さえておきたい実務のポイントです。
問5 2025年11月の改正は、すでに建っている建物の排煙設備にもすぐに影響するのか。
答5 施行令の改正は、新築や増改築等の際に適用される設計基準の見直しであり、既存の建物にただちに改修を義務付けるものではない。もっとも、定期検査の判定基準を定める告示の条文引用が整理されているため、今後の検査では最新の条文に沿った確認が行われることになる。
既存の建物をすぐに改修する必要はありませんが、記録の確認は早めにしておきましょう
自分の建物の排煙設備が、改正前の基準と改正後の基準のどちらにもとづいて設計されているかは、確認申請時の設計図書や過去の定期検査報告書で確認できます。
増改築や大規模の修繕を計画している場合は、その時点の基準への適合が必要になることがあるため、早めに設計者や建築設備等検査員へ相談しておくと安心です。
判断に迷う場合は、所管の特定行政庁に確認するのが確実です。
次回の定期検査を受ける前に、担当の検査員へ今回の改正内容を一度確認しておくとよいでしょう。

すぐに改修が必要ではないと分かって安心しました。
今度の検査のときに設計図書を用意しておきます。

それが一番確実な準備です。
増改築の予定があるときは、その段階で必ず最新の基準を確認しましょう。

よくある質問

Qこの改正はいつから適用されているのか?
A建築基準法施行令の改正は令和7年(2025年)10月30日及び同月31日に公布され、同年11月1日から施行されています。関連する国土交通省告示第992号から第995号までも同じ日に施行されました。
Q既存の建物の排煙設備をこの改正にあわせて改修する必要があるのか?
A施行令の改正そのものは新築・増改築時に適用される設計基準の見直しであり、既存の建物に遡って改修を義務付けるものではありません。個別の取扱いは所管の特定行政庁に確認するのが確実です。
Q新しく制定された告示第992号から第995号までは何を定めているのか?
Aそれぞれ、無窓居室の判定に使う壁の部分の範囲、火災時の煙を有効に排出できる給気口・排気口の構造方法、防煙壁の下端から床面までの垂直距離、排煙口を設置できる壁の部分を定める告示です。
Qこの改正は東京都など一部の自治体だけの話なのか?
A建築基準法施行令と国土交通省告示による全国共通の基準であり、東京都に限らずすべての特定行政庁の区域で適用されます。

まとめ

建築基準法施行令第116条の2・第126条の2・第126条の3は、令和7年(2025年)11月1日に改正された
あわせて告示第1436号・第1437号も改正され、新たに国土交通省告示第992号から第995号までが制定された
排煙口の設置位置は「天井から80cm以内」という一律の数値から、天井の高さに応じた基準に変わった
無窓居室の判定でも、給気口・排気口を使う機械排煙型の開口部を算入できるようになった
防煙壁は不燃材料に加え、一定の奥行きを満たす準耐火構造も選べるようになった
建築設備定期検査の判定基準を定める告示第285号の条文引用も、この改正にあわせて整理された
施行令の改正そのものは、既存の建物への遡及改修を義務付けるものではない

80cmの固定ルールがなくなったなんて驚きました!
次の検査のときに、うちの建物がどちらの基準で作られているか聞いてみます!

設計図書や検査記録を事前に確認しておけば、次回の定期検査もスムーズに進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法施行令第116条の2・第126条の2・第126条の3(令和7年10月30日・同月31日改正、同年11月1日施行)
  • 平成20年国土交通省告示第285号(最終改正:令和7年10月31日国土交通省告示第998号)
  • 平成12年建設省告示第1436号・第1437号(令和7年10月30日改正)
  • 令和7年国土交通省告示第992号・第993号・第994号・第995号

※本記事は建築基準法施行令及び関係告示の改正内容にもとづき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。個別の建物における設計基準の適用や定期検査の判定については、所管の特定行政庁又は建築設備等検査員に必ずご確認ください。

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