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危険物施設に太陽光発電を乗せるとなぜ変更許可が必要になるのか|消防庁ガイドラインの安全対策と感電防止表示を解説

屋根に太陽光パネルを設置した工場と危険物施設の太陽光発電に関する記事タイトル

危険物を扱う工場や給油取扱所の屋根に、太陽光パネルを乗せたいという相談が増えています。
ところが、配線の通し方によっては市町村長の変更許可が必要になることをご存知でしょうか。
消防庁は検討会を設けて事故のリスクを調べ、具体的な安全対策をガイドラインにまとめました。
屋根の強度から配線ルートまで、あとから直すのが難しい部分にこそ注意が必要です。

うちの製造所、屋根が余ってるので太陽光パネルを置きたいんですが、普通の屋根置きと同じでいいですよね。

危険物施設は少し違います。
消防庁のガイドラインに沿って安全対策を確認する必要があります。

パネルを置くだけなのに、消防署への届出とか要るんですか。

配線の通し方次第では変更許可が必要になります。
まずは要件を一緒に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 危険物施設の屋根やキャノピーに太陽光パネルを置く場合、地震・積雪風圧・爆発・延焼の4つのリスクへの対策が必要
  • パネルの重量を加えた構造計算で、建築基準法の中程度・最大級の荷重に耐えることを確認する
  • 放爆性能を落とさないよう、架台の重量は屋根ふき材でなく梁で受けるのが望ましい
  • 配線が可燃性蒸気の滞留範囲を通ると、原則として市町村長の変更許可が必要になる
  • 火災時に消防隊員が感電しないよう、パネルからパワーコンディショナーまでの機器・配線に感電防止表示を行う

屋根の太陽光発電に消防庁が求める4つの安全対策を示す図解

危険物施設の屋根になぜ太陽光発電のガイドラインが必要になったのか

太陽光パネルを屋根に取り付ける様子と、書類を調べる担当者
再生可能エネルギーの導入が加速するなか、危険物施設への太陽光発電設備の設置要望も増えていました。
消防庁は検討会を設け、実態調査と事故の発生状況を踏まえてガイドラインを取りまとめました。
危険物施設に太陽光発電設備を設置する場合の安全対策等に関するガイドラインについて(平成27年6月8日 消防危第135号 消防庁危険物保安室長) 太陽光発電は、エネルギー基本計画(平成26年4月11日閣議決定)において、「エネルギー安全保障にも寄与できる有望かつ多様で、重要な国産エネルギー源」である再生可能エネルギーと位置づけられ、導入が加速化されています。このような状況の中で、危険物施設への太陽光発電設備の設置要望が増えていることを踏まえ、「危険物施設の多様な使用形態に対応した技術基準のあり方検討会」を開催し、危険物施設における太陽光発電設備の設置状況等に関する実態調査を行うとともに、(略)危険物施設に太陽光発電設備を設置する場合のリスク及びその対策について検討が行われた。(略)本通知は消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条の規定に基づく助言として発出するものである
このガイドラインは、太陽光発電を設置すると危険物施設の事故リスクが増えるという前提から出発しています。
発出元は消防庁危険物保安室長で、宛先は都道府県の消防防災主管部局と東京消防庁・指定都市消防長です。
注目したいのは、この通知が消防組織法第37条の助言として出されている点で、強制の基準ではなく、市町村長等が個別に判断する際のよりどころという位置づけです。
検討会には大学の研究者も加わり、実際の設置状況調査と事故事例を踏まえて対策がまとめられました。

うちは指定数量ぎりぎりの小さな製造所なんですが、それでも対象になりますか。

施設の規模にかかわらず、屋根に太陽電池モジュールを設置する時点で対象になります。

どんな危険物施設のどんな設置が対象になるのか

屋根に太陽電池モジュールが乗った工場と、キャノピーに太陽電池モジュールが乗った給油取扱所
対象になるのは、製造所や一般取扱所の屋根、給油取扱所のキャノピーなど、危険物施設の建築物に太陽電池モジュールを設置するケースです。
設置場所によって、確認すべきリスクの中身が変わります。
(同ガイドライン第2) 太陽電池モジュールを危険物施設の屋根の上に設置する場合、(1)及び(2)の安全対策を講じる必要がある。なお、消防機関において、太陽電池モジュールを設置する建築物及び架台が地震力等に対して必要十分な安全性を有していることを確認することは困難であることから、危険物施設の所有者等が自らの責任の下で、建築基準法等で定める基準等に適合していることを確認し、当該基準等に適合している旨を消防機関に示すことが必要である
ここで重要なのは、安全性を確認する責任が消防機関ではなく施設の所有者等にあるという点です。
消防機関は、屋根や架台が地震に耐えられるかどうかを個別に確認することができません
そのため、建築基準法等の基準に適合していることを所有者等が自ら確認し、消防機関に示す必要があります。
給油取扱所のキャノピー上部など、危険物施設と直接関連しない部分に設置する場合でも、電気設備としての規制は及びます。

事務所の屋根に置く分には、危険物施設とは関係ないですよね。

そうとも限りません。
配線が可燃性蒸気の滞留範囲を通るかで扱いが変わります。

ガイドラインは屋根の太陽光発電に何を求めているのか

屋根の断面に梁で支えられた太陽電池モジュールと放爆用の矢印を示す図
求められる安全対策は、大きく分けて地震・積雪風圧・爆発・延焼という4つのリスクへの備えです。
それぞれに、具体的な数値や規格が示されています。
(同ガイドライン第2) 1自然災害に関するリスクへの対策 (1)地震災害に関するリスクへの対策 ア太陽電池モジュールの重量を建築物の屋根に加えた上で構造計算を行い、建築基準法で定められる中程度(稀に発生する)の地震力に対して損傷が生じないこと及び最大級(極めて稀に発生する)の地震力に対して倒壊・崩壊しないこと。(略)2爆発に関するリスクへの対策 (略)架台を屋根上に設置する場合は、その重量が大きいことから、屋根ふき材に直接設置するのではなく、はりに直接荷重がかかるような設置が望ましいこと。3火災(爆発以外)に関するリスクへの対策 (略)太陽電池モジュールの可燃物使用量が1平方メートルあたり概ね2,000グラム以下のものとすること。
地震と積雪・強風は同じ考え方で、パネルの重量を加えた構造計算で中程度と最大級の両方を確認します。
爆発のリスクは、屋根が火災の際に早期に爆風圧を抜く「放爆性能」を落とさないことが焦点で、架台の重い荷重を屋根ふき材ではなく梁で受けるのが望ましいとされています。
延焼のリスクでは、太陽電池モジュール自体の可燃物の量に上限が定められており、JIS規格の火災試験に適合するものを使う必要があります。
どれも設置後に直すのが難しい部分なので、設計の段階から確認しておくことが欠かせません。

放爆性能って何のためにあるんですか。

火災で爆発的な燃焼が起きたとき、爆風圧を早く屋根から逃がすための性能です。

太陽光発電を乗せるとき見落としやすいのはどこか

可燃性蒸気の滞留範囲を避けた配線ルートに付いた青いチェックマークと、範囲の中を通る配線ルートに付いた赤い禁止マーク
設置そのものより、配線のルート次第で許可の要否が変わる点が見落とされがちです。
火災発生時の対応と、設置後の点検義務も忘れてはいけません。
(同ガイドライン第4) 危険物施設に太陽光発電設備を設置する変更工事を行う場合、原則として市町村長の変更許可を受ける必要がある。本ガイドラインで示した安全対策が講じられており、太陽光発電設備に係る電気設備や配線等が可燃性蒸気の滞留する範囲にない場合は、変更許可を要しないものもあると考えられる。<変更許可を要する場合の例>給油取扱所において、太陽電池モジュールをキャノピーの上に設け、配線はキャノピーの柱に沿って可燃性蒸気滞留範囲内に敷設し、さらに給油空地に埋設して事務所内に引き込む場合。<変更許可を要しない場合の例>給油取扱所において、太陽電池モジュールを事務所の屋根の上(可燃性蒸気が滞留しない範囲)に設け、配線は防火塀の外側など給油取扱所の敷地外に敷設し、事務所内に設けるパワーコンディショナーに引き込む場合。
同じキャノピー設置でも、配線をどこに通すかだけで変更許可の要否が分かれます。
火災等の事故が発生した場合には、太陽光発電設備からの電力供給を確実に遮断できる措置を講じておく必要があります。
消火活動中の消防隊員が誤って感電しないよう、太陽電池モジュールからパワーコンディショナーまでの機器・配線には感電防止のための表示を設けます。
さらに、太陽光発電設備は危険物施設に関連する電気設備として、1年に1回以上の定期点検が必要になります。

感電防止の表示って、パネルだけに貼ればいいんですか。

いいえ、パワーコンディショナーまでの配線全体が対象です。
確実に遮断できる箇所まで表示します。

明日から何を確認しておけばよいのか

警告表示の付いた分電盤を確認する作業員とチェックリスト
危険物施設に太陽光発電を計画している、あるいはすでに設置している場合は、次の点を確認してください。
どれも設置後に直すのが難しい項目です。
危険物施設に太陽光発電設備を設置する場合の安全対策等に関するガイドラインについて(平成27年6月8日 消防危第135号) つきましては、貴管内の市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む。)に対してもこの旨周知され、下記の事項に留意し、危険物施設に太陽光発電設備が設置される場合の指導に御活用して頂くようお願いします
まず、パネルの重量を加えた構造計算の結果を建築士等に確認してもらいます。
次に、配線ルートが可燃性蒸気の滞留範囲にかかっていないかを図面で確認し、変更許可の要否を所轄消防署に相談します。
火災時に電力を確実に遮断できる体制と、感電防止の表示が設けられているかも見ておきます。
最後に、太陽光発電設備を含めた年1回以上の定期点検の計画に組み込みます。

すでに設置してしまっているパネルは、どうしたらいいでしょうか。

まずは配線ルートと表示の有無を点検してみましょう。
足りない対策は今からでも追加できます。

よくある質問

Q危険物施設の屋根に太陽光パネルを置くと必ず変更許可が必要になりますか?
Aいいえ。配線が可燃性蒸気の滞留する範囲を通らない設置であれば、変更許可が不要になる例もあります。個別の配置図で判断されます。
Q屋根の強度はどうやって確認すればよいですか?
Aパネルの重量を加えた構造計算を行い、建築基準法の中程度・最大級の地震力や積雪風圧に耐えることを確認します。
Q火災が起きたとき、なぜ感電防止の表示が必要なんですか?
A消防隊員が消火活動中に太陽光発電設備の配線に触れて感電するおそれがあるためです。パネルからパワーコンディショナーまでの機器・配線に表示します。
Q太陽光パネルの点検はどのくらいの頻度で必要ですか?
A危険物施設に関連する電気設備に該当するため、1年に1回以上の定期点検が必要です。

まとめ

危険物施設の屋根やキャノピーに太陽光パネルを置く場合、地震・積雪風圧・爆発・延焼の4つのリスクへの対策が必要。
パネルの重量を加えた構造計算で建築基準法の基準に耐えることを、施設の所有者自身が確認する。
架台の重量は屋根ふき材でなく梁で受けるようにし、放爆性能を落とさない。
太陽電池モジュールの可燃物使用量は1平方メートルあたり概ね2,000グラム以下とする。
配線が可燃性蒸気の滞留範囲を通ると、原則として市町村長の変更許可が必要になる。
火災時の感電防止のため、パネルからパワーコンディショナーまでの機器・配線に表示を行う。
危険物施設に関連する電気設備として、1年に1回以上の定期点検が必要になる。

配線のルートと表示、点検の頻度まで、まとめて確認してみます。

それがいちばんの近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物施設に太陽光発電設備を設置する場合の安全対策等に関するガイドラインについて(平成27年6月8日 消防危第135号 消防庁危険物保安室長)
  • 根拠条文 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第9条第1項第6号・第17号、消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
  • 製造所等の定期点検に関する行動指針の整備について(平成3年5月29日付け消防危第48号)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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