危険物の規制に関する政令は、屋内貯蔵所の位置や周囲に保有すべき空地の幅を定めています。
ただし高引火点危険物のみを貯蔵し、又は取り扱う屋内貯蔵所については、総務省令で基準の特例を定められると政令が規定しています。
この特例を使うと、位置の基準は製造所と同じ距離に切り替わり、空地の幅も本則より小さい表に置き換わります。
この記事では規則第16条の2の4が定める特例の中身を条文から整理します。
高引火点危険物だけを扱う倉庫なら、置く場所ももっと自由にできると聞いたんですが、ほんとうでしょうか。
はい、条件を満たせば製造所と同じ位置基準に切り替えられます。
まずは対象になる危険物の中身から確認していきましょう。
その高引火点危険物というのは、どんな危険物のことなんでしょうか。
引火点100度以上の第4類危険物を指します。
条文の定義から見ていきましょう。
- 高引火点危険物のみを貯蔵し、又は取り扱う屋内貯蔵所には、令第10条第5項に基づき総務省令で基準の特例を定めることができます。
- 高引火点危険物とは引火点が100度以上の第4類危険物を100度未満の温度で取り扱うものを指します。
- 平家建ての屋内貯蔵所で指定数量の倍数が20を超える場合は、製造所と同じ位置基準が適用されます。
- 空地の幅は、指定数量の倍数に応じて本則より小さい別の表に置き換わります。
- 床面積や壁・柱・床の耐火構造など、位置と空地以外の基準はこの特例でも外れません。
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目次
高引火点危険物とはどんな危険物を指すのか

まずはこの「高引火点危険物」という言葉の中身を確認します。
この定義は製造所の特例を定める条文(規則第13条の6第1項)に置かれていますが、屋内貯蔵所の特例を定める令第10条第5項も同じ言葉をそのまま使っています。
灯油や重油、潤滑油のように引火点が高い第4類危険物が主な対象になります。
温度管理を含めた「100度未満で扱う」という条件も忘れてはいけません。
次の項目で、この定義がどんな屋内貯蔵所に適用されるのかを確認します。
製造所の条文に定義があるとは知りませんでした。
屋内貯蔵所でも同じ定義がそのまま使われます。
次は対象になる屋内貯蔵所の範囲です。
どんな屋内貯蔵所がこの特例の対象になるのか

この委任を受けて、具体的な中身を定めているのが規則第16条の2の4です。
平家建て以外の屋内貯蔵所には規則第16条の2の5、特定屋内貯蔵所には規則第16条の2の6という別の条文がそれぞれ用意されています。
規則第16条の2の4第2項第一号は、指定数量の倍数が20を超える屋内貯蔵所に限り、位置の基準を製造所の特例と同じ内容に切り替えます。
倍数が20以下の屋内貯蔵所は、この号の対象外のまま令第10条第1項第一号の位置基準そのものが適用除外されます。
次の項目で、位置と空地の基準が具体的にどう変わるのかを見ていきます。
倍数によって扱いが変わるんですね。
はい、20を超えるかどうかが1つの分かれ目です。
次は位置と空地の中身を見ましょう。
位置と空地の基準はどこまで変わるのか

条文を確認します。
倍数が20以下の区分は、この号の対象外のまま位置の基準そのものが適用除外されます。
空地の幅も同時に変わり、20以下の区分は壁・柱・床が耐火構造なら空地を保有しなくてもよいと読めます。
20を超え50以下の区分でも特例の表は1メートル以上で足りますが、令第10条本則の同じ区分は3メートル以上を求めています。
200を超える区分でも特例の表は最大5メートル以上にとどまり、本則の10メートル以上・15メートル以上より大きく圧縮されています。
ただしこの縮小は、高引火点危険物のみを貯蔵するという前提とセットで初めて認められる点を忘れてはいけません。
本則よりこんなに変わるとは思いませんでした。
ただし高引火点危険物のみという前提が条件です。
次は特例でも変わらない基準を見ましょう。
特例を使っても変わらない基準はどこか

除外されない号は、特例のもとでもそのまま生きています。
床面積を1,000平方メートル以下とする第五号、壁・柱・床を耐火構造とする第六号は、この特例を使っても引き続き適用されます。
標識・掲示板を定めた第三号、独立した専用の建築物とする第三号の二、軒高6メートル未満の平家建てとする第四号も同様です。
「高引火点危険物だから基準が全体的に緩い」と考えると、壁や床の耐火構造という土台部分を見落とすことになります。
位置と空地、屋根や窓まわりが緩む一方で、建物そのものの燃えにくさは本則のまま求められる、という構造を押さえておきます。
空地さえ減らせば他は自由になると思い込むところでした。
除外されない号がどこかを条文で確認してください。
最後に確認の手順をまとめます。
明日からなにをすればよいのか

新設のときも、既存の屋内貯蔵所を見直すときも同じ視点で使えます。
- 貯蔵する危険物が引火点100度以上の第4類危険物で、100度未満の温度で扱うものかを確認する
- 屋内貯蔵所が平家建てかどうかを確認する(平家建て以外は規則第16条の2の5が対象)
- 指定数量の倍数が20を超えるかを計算し、位置の基準がどちらに当たるかを確かめる
- 指定数量の倍数を特例の空地の表に当てはめて、必要な空地の幅を確認する
- 床面積1,000平方メートル以下・壁柱床の耐火構造など、除外されない号を図面で確認する
指定数量の倍数と平家建てかどうかは、設計段階から関わるため着工前の確認が欠かせません。
除外されない号を見落とすと、完成後の検査で手戻りが生じます。
図面と条文を並べて確認しておくと、許可申請の際の手戻りも減らせます。
うちの倉庫で貯蔵している危険物の引火点を、まず確認してみます。
引火点と指定数量の倍数の確認から始めてみてください。
次のよくある質問もあわせてご覧ください。
よくある質問
まとめ
引火点の確認を、この機会にしてみます!
早めのご相談がおすすめです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第10条第1項・第5項(屋内貯蔵所の基準・高引火点危険物の特例の授権規定)
- 危険物の規制に関する規則第13条の6第1項(高引火点危険物の定義)
- 危険物の規制に関する規則第16条の2の4(高引火点危険物の平家建ての屋内貯蔵所の特例)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





