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特定屋外貯蔵タンクの側板はなぜ継手をずらして組むのか|主荷重の設計基準から溶接方法までを解説

特定屋外貯蔵タンクの側板の継手を検査する作業員のイメージ写真

屋外に設置する大きな貯蔵タンクは、風や地震だけでなく、貯めた危険物の重さそのものにも耐える設計が必要です。
この設計基準は政令の委任を受けて、規則の条文に構造と溶接方法まで細かく書き込まれています。
基準は主荷重・従荷重の設計から側板の溶接方法、すみ肉溶接のサイズまで一貫しています。
この記事では、特定屋外貯蔵タンクの本体がどんな基準で組み立てられているのかを条文から順番に整理します。

タンクの構造や溶接の基準まで、条文に決まっているんですか。

はい、荷重の設計から溶接方法まで条文にあります

溶接のやり方まで法律で決まっているんですね。

はい、条文の号ごとに一つずつ見ていきましょう。

この記事の結論
  • 特定屋外貯蔵タンクは、主荷重(自重・貯蔵する危険物の重量・内圧・温度変化)と従荷重(積雪・風・地震)の両方に対して安全な構造でなければなりません。
  • 側板の縦継手は段ごとに位置をずらし、間隔は厚い方の側板の厚さの五倍以上とします。
  • 側板とアニュラ板の溶接は部分溶込みグルーブ溶接、アニュラ板や底板どうしは突合せ溶接とし、底板厚さ九ミリメートル以下はすみ肉溶接も認められます。
  • すみ肉溶接のサイズは板厚から式で決まり、どんな場合でも4.5ミリメートルを下回ってはいけません。
  • これらの基準は完成検査で確認されるため、増設や補修を検討するときは事前に所轄消防署へ確認してください。

特定屋外貯蔵タンクの構造基準が主荷重と従荷重の設計から側板の縦継手溶接方法すみ肉溶接のサイズまで一貫していることを示す図解

タンク本体はどんな荷重に耐える設計か

特定屋外貯蔵タンクに雪の重さと風の力という主荷重と従荷重が同時にかかっている様子のイメージ
まずは設計の前提になる荷重の種類を確認します。
条文がどんな荷重を想定しているかを見ていきます。
危険物の規制に関する規則第二十条の四(特定屋外貯蔵タンクの構造)第一項 特定屋外貯蔵タンクは、当該特定屋外貯蔵タンク及びその附属設備の自重、貯蔵する危険物の重量、当該特定屋外貯蔵タンクに係る内圧、温度変化の影響等の主荷重及び積雪荷重、風荷重、地震の影響等の従荷重によつて生ずる応力及び変形に対して安全なものでなければならない。
荷重は主荷重と従荷重の二種類です。
規則第二十条の四第一項により、自重・貯蔵する危険物の重量・内圧・温度変化の影響が主荷重にあたります。
これに加えて積雪荷重・風荷重・地震の影響という従荷重も同時に考慮しなければなりません。
主荷重と従荷重を組み合わせたときに本体に生じる応力は、告示で定める許容応力以下であることも第二項第一号で求められています。
つまりタンクは、日常的にかかる重さと、季節や災害で変動する力の両方に耐える設計になっているということです。

雪や風の力まで設計に入っているんですね。

はい、主荷重と従荷重の両方が対象です。
次は側板の継手を見ましょう。

側板の継手はなぜずらして組むのか

段違いに配置された側板の縦継手と誤って一直線に並んだ縦継手を比較したイメージ
次に側板の溶接そのものの決まりを確認します。
継手の位置には理由があります。
危険物の規制に関する規則第二十条の四第三項第一号 側板の溶接は、次によること。イ 縦継手及び水平継手は、完全溶込み突合せ溶接とすること。ロ 側板の縦継手は、段を異にする側板のそれぞれの縦継手と同一線上に位置しないものであること。この場合において、当該縦継手と縦継手との間隔は、相接する側板のうち厚い方の側板の厚さの五倍以上とすること。
縦継手は段ごとにずらして配置します。
規則第二十条の四第三項第一号イにより、縦継手と水平継手は完全溶込み突合せ溶接とすることが原則です。
同号ロでは、上下の段の縦継手を同一線上に位置させないことが求められています。
間隔は、接する側板のうち厚い方の板厚の五倍以上を確保しなければなりません。
継手を一直線に並べると弱点が積み重なるため、あえてずらして応力を分散させる設計だと分かります。

段違いにするのは、そういう理由なんですね。

はい、弱点を一箇所に集めないためです。
次は溶接の種類の違いを見ましょう。

側板とアニュラ板ではなぜ溶接方法が違うのか

側板とアニュラ板底板が接する部分でそれぞれ異なる形の溶接ビードが示されているイメージ
溶接そのものの方法も、接する部材によって変わります。
三つの組み合わせを条文で確認します。
危険物の規制に関する規則第二十条の四第三項第二号 側板とアニュラ板(アニュラ板を設けないものにあつては、底板)との溶接は、部分溶込みグルーブ溶接又はこれと同等以上の溶接強度を有する溶接方法による溶接とすること。この場合において、溶接ビードは、滑らかな形状を有するものでなければならない。第三号 アニュラ板とアニュラ板、アニュラ板と底板及び底板と底板との溶接は、裏当て材を用いた突合せ溶接又はこれと同等以上の溶接強度を有する溶接方法による溶接とすること。ただし、底板の厚さが九ミリメートル以下であるものについては、アニュラ板と底板及び底板と底板との溶接をすみ肉溶接とすることができる。
接する部材の組み合わせで溶接方法が変わります。
規則第二十条の四第三項第二号により、側板とアニュラ板の溶接は部分溶込みグルーブ溶接(またはこれと同等以上の方法)とします。
同項第三号では、アニュラ板どうしや底板どうしの溶接を裏当て材を用いた突合せ溶接とすることが原則です。
ただし底板の厚さが九ミリメートル以下であれば、アニュラ板と底板・底板どうしの溶接をすみ肉溶接にすることも認められています。
同じ「底の溶接」でも、接する部材と板厚によって求められる方法が変わるということです。

底の溶接なら全部同じかと思っていました。

いいえ、部材の組み合わせと板厚で変わります。
次はすみ肉溶接のサイズを見ましょう。

すみ肉溶接のサイズはどう決まるのか

厚さの異なる二組の鋼板がそれぞれ異なる大きさのすみ肉溶接で接合されているイメージ
すみ肉溶接が使える場合、その大きさにも基準があります。
板の厚さとの関係を確認します。
危険物の規制に関する規則第二十条の四第三項第四号 すみ肉溶接のサイズ(不等サイズとなる場合にあつては、小さい方のサイズをいう。)の大きさは、次の式により求めた値とすること。(略)t1は、薄い方の鋼板の厚さ(単位 ミリメートル)、t2は、厚い方の鋼板の厚さ(単位 ミリメートル)、Sは、サイズ(単位 ミリメートル)とする。
サイズは板の厚さから計算式で決まります。
規則第二十条の四第三項第四号は、すみ肉溶接のサイズを薄い方の鋼板の厚さを上限、厚い方の鋼板の厚さから求めた値を下限とする式で定めています。
不等サイズになる場合は、小さい方のサイズで判定します。
この式によって求めた値であっても、サイズは4.5ミリメートルを下回ってはいけません。
板が薄いからといって溶接を小さくしすぎない、という下限が設けられているわけです。

薄い板でも小さくしすぎたらだめなんですね。

はい、4.5ミリメートルが下限です。
最後に確認の手順をまとめます。

明日から何を確認すればよいのか

作業員がタンクのそばで完成検査の記録を手にチェックしているイメージ
ここまでの基準を、現場で確認する手順に落とし込みます。
完成検査の書類を見ながら進めてください。 新設や変更工事の完成検査前に、主荷重と従荷重を組み合わせた構造計算書が残っているかを確認してください。
竣工図で側板の縦継手が段ごとにずれているか、間隔が確保されているかもあわせて確認してください。
溶接方法が側板とアニュラ板、アニュラ板と底板のどちらの組み合わせかによって正しく使い分けられているかも記録で追ってください。
記録が見当たらない場合や工事内容が分からない場合は、施工業者や所轄消防署に確認することをお勧めします。
タンクの補修や増設を検討するときも、事前に所轄消防署へ相談してください。

まずは自分のタンクの構造計算書と竣工図を確認してみます。

それが一番確実です。
よくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q主荷重と従荷重を両方満たせばそれで十分ですか?
Aいいえ。規則第二十条の四第二項第一号により、主荷重と従荷重の組み合わせで生じる応力が告示で定める許容応力以下であることも必要です。荷重の種類を満たすだけでは足りません。
Q縦継手をずらす間隔はどんな場合も同じ数値ですか?
Aいいえ。間隔は相接する側板のうち厚い方の側板の厚さの五倍以上と定められているため、板厚によって必要な間隔は変わります。
Q底板が薄ければどこでもすみ肉溶接にできますか?
Aいいえ。すみ肉溶接が認められるのは底板の厚さが九ミリメートル以下の場合のアニュラ板と底板・底板どうしの溶接に限られ、側板とアニュラ板の溶接には適用されません。
Qすみ肉溶接のサイズに上限はありますか?
Aあります。式で求めた値であっても薄い方の鋼板の厚さを超えることはできず、逆にどんな場合でも4.5ミリメートルを下回ることもできません。

まとめ

特定屋外貯蔵タンクは主荷重と従荷重の両方に対して安全な構造でなければなりません
主荷重と従荷重の組み合わせで生じる応力は告示で定める許容応力以下でなければなりません
側板の縦継手は段ごとに位置をずらし、間隔は厚い方の側板の厚さの五倍以上とします
側板とアニュラ板の溶接は部分溶込みグルーブ溶接とします
アニュラ板どうしや底板どうしの溶接は突合せ溶接が原則で、底板厚さ九ミリメートル以下はすみ肉溶接も認められます
すみ肉溶接のサイズは板厚から計算し、4.5ミリメートルを下回ってはいけません
これらは完成検査で確認される基準なので、増設や補修の前に確認してください

タンクの構造基準がこんなに細かいこと、よく分かりました。
助かります

まずは構造計算書と竣工図の確認から始めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第十一条第一項第四号
  • 危険物の規制に関する規則第二十条の四(特定屋外貯蔵タンクの構造)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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