建築設備の定期検査報告書を提出するとき、実はもう一枚「概要書」という書類もあわせて作成することになります。
報告書と何が違うのか、なぜ別の書類が必要なのかは、初めて担当する検査者ほど戸惑いやすいところです。
概要書は建築基準法第93条の2にもとづき公衆の閲覧に供されるため、記入できる情報の範囲そのものが報告書と異なります。
この記事では、概要書の位置づけから、第一面・第二面それぞれの記入で見落としやすいポイントまで解説します。
報告書を出したら、もう一枚「概要書」も要ると言われました。
これは何のための書類なんでしょうか。
概要書は建築基準法第93条の2にもとづいて、だれでも閲覧できるように用意する書類です。
報告書とは目的が違うので、書ける項目の範囲も変わってきます。
閲覧されるなら、うちの電話番号なども載ってしまうんですか。
それは少し心配です。
ご安心ください、概要書の様式には電話番号の欄自体がありません。
第一面から第二面まで、記入のポイントを順番に見ていきましょう。
- 概要書は報告書と同じ内容を、公衆の閲覧向けに作り直す書類である
- 所有者欄・管理者欄には電話番号の欄がないなど、報告書より記入項目が少なくなっている
- 第一面の「検査による指摘の概要」と「不具合の発生状況」は、設備ごとに分けずまとめて記入する
- 第二面は要是正の指摘があった設備についてだけ作成すればよいもので、指摘なしの設備は無記入でよい
- 検査者欄・設備概要欄は換気・排煙・非常用照明・給排水の設備ごとに、同じ構成が繰り返される
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目次
定期検査報告概要書とはどんな書類なのか

なぜ別に用意しなければならないのか、その理由を押さえておきましょう。
建築基準法第12条第3項にもとづく検査結果は、まず報告書として特定行政庁に提出します。
特定行政庁はこの報告に関する書類のうち一定のものを台帳として整備し、法第93条の2にもとづき閲覧の請求があれば見せなければなりません。
そのために報告書とは別の様式で、公開してよい範囲の情報だけをまとめ直したものが概要書です。
つまり概要書は単なる要約ではなく、閲覧を前提に作り直された正式な様式だと理解しておくと迷いません。
報告書を書いたのに、また同じ内容を別の紙に書き写すんですか。
二度手間な気がします。
書き写しではなく、公開してよい情報だけをまとめ直す正式な書類なんです。
そう考えると、なぜ別の様式が必要なのか納得しやすいですよ。
所有者欄と管理者欄はなぜ報告書より記入する項目が少ないのか

報告書の同じ欄と見比べると、実は一つだけ足りない項目があります。
建築基準法第93条の2は、閲覧させる書類を第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがないものに限ると定めています。
氏名や住所は建築物の所有関係を示す情報として公開の対象になりますが、電話番号まで公開すると迷惑な連絡につながりかねません。
そのため概要書の様式そのものから電話番号欄が外されており、記入する側が意識して省く必要はありません。
区分所有の共同住宅では、所有者欄に区分所有者一同、管理者欄に管理組合の理事長を記入するのが実務上の一つの型です。
電話番号を書かなくていいのは助かります。
でも住所や氏名は載ってしまうんですね。
はい、そこは所有関係を示すために必要な情報として公開されます。
載る範囲と載らない範囲を、様式の段階で分けてくれているんです。
検査による指摘の概要と不具合の発生状況はどう記入するのか

どちらも設備ごとに分けず、まとめて記入する点が特徴です。
「検査による指摘の概要」欄には、要是正の指摘の有無・既存不適格の該当有無・改善予定の有無をチェックし、指摘の概要を文章で書き添えます。
「不具合の発生状況」欄も同様で、不具合の有無・記録の有無・改善の状況を、対象設備全体について一括で記入します。
不具合の概要は、報告書の該当欄に書いた内容をすべて漏らさず書き写す必要がある点に注意してください。
改善予定がない場合はその具体的な理由まで書く欄があるので、「予定なし」で終わらせないことが実務上のポイントです。
うちは換気設備と照明の両方で指摘がありました。
欄が一つしかないと書ききれないか心配です。
欄が足りなければ、枠を広げたり行を追加したりして構いません。
大事なのは設備ごとに分けず、まとめて漏れなく書くことです。
第二面はどんなときに作成が必要になるのか

第二面が必要になるかどうかは、検査結果によって変わります。
第二面は、報告書の第二面で要是正または既存不適格の指摘があった建築設備についてだけ作成する書類です。
逆に言えば、指摘のなかった設備分の第二面を作る必要はなく、全設備が指摘なしなら第一面だけで概要書は完成します。
念のため全部つけておこうと余分な第二面を添付してしまうと、かえって行政側の確認の手間を増やすことになりかねません。
まず報告書の第二面を見て、要是正・既存不適格の印が付いた設備だけを洗い出すのが最初の一手です。
うちは全部の設備が指摘なしでした。
それでも第二面をつけたほうが丁寧でしょうか。
指摘がなければ第二面は不要ですよ。
むしろ第一面だけで簡潔にまとめるのが正しい書き方です。
検査者欄と設備概要欄は各設備ごとにどう記入するのか

四種類の設備すべてに同じ構成が繰り返されるので、パターンさえ覚えれば迷いません。
第二面には換気設備・排煙設備・非常用の照明装置・給水設備及び排水設備の順に、検査者欄と設備概要欄の組が用意されています。
指摘があった設備については、代表となる検査者の資格・氏名・勤務先などを記入したうえで、その設備固有の概要(系統数や室数、無窓居室の有無など)を書きます。
指摘のなかった設備の組は空欄のままでよく、無理に埋めようとする必要はありません。
四種類とも要是正の指摘があるビルはそれほど多くありませんので、実務では一つか二つの組だけを埋めるケースがほとんどです。
うちは排煙設備だけ指摘がありました。
換気設備の欄は空けたままでいいんですか。
はい、指摘のなかった設備の欄は空欄のままで問題ありません。
排煙設備の検査者欄と概要欄だけ、丁寧に埋めていただければ十分です。
よくある質問
まとめ
概要書と報告書の違いがやっと整理できました!
まずは前回の書類を見直してみます!
それが一番確実な進め方です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第12条第3項・第12条第8項・第93条の2
- 建築基準法施行規則第6条・第6条の3・第11条の3
- 建築基準法施行規則別記第三十六号の六様式・別記第三十六号の七様式
- 東京都建築設備定期検査報告実務マニュアル2025年版「第5章 建築設備定期検査報告 検査と報告書作成の要点」定期検査報告概要書の記入例と記入方法の解説
※本記事は建築基準法・同施行規則の現行規定及び東京都が公表する実務マニュアルにもとづき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。概要書の様式や運用の細部は特定行政庁によって異なる場合がありますので、実際の記入・提出にあたっては所管の特定行政庁またはセンターに必ずご確認ください。




