BLOG

倉庫の火災危険性はどこを見て把握するのか|消防計画への追加と従業員教育まで解説

倉庫の棚に段ボールが並ぶ通路の写真に倉庫の火災危険性はどこを見て把握するのかという記事タイトルを重ねたアイキャッチ画像

倉庫の中で火元になりそうな場所を挙げてくださいと言われて、すぐに指を差せるでしょうか。
大量の商品と、それを動かす機械と、あとから付け足された電気設備が同じ屋根の下に並んでいます。
そして倉庫には、従業員が何年も足を踏み入れていない空間が残っていることがあります。
この記事では倉庫の火災危険性を把握する通知の中身を解説します。

うちは倉庫なので消防計画は簡単でよいと言われてきました。
本当にそれで足りているのか気になっています。

倉庫を名指しにした消防庁の通知が出ています。
火元になり得る場所を書き出すところから始めてください。

火元になり得る場所というのは、火気を使う場所のことでしょうか。
うちの倉庫では火は一切使っていません。

火を使わなくてもフォークリフトや電気設備が火源になります。
通知はそこまで見なさいと言っています。

この記事の結論
  • 令和3年の消防庁の通知が倉庫の火災危険性を事前に把握するよう求めています。
  • 対象は令別表第1(14)項などの防火対象物で収容人員が50人以上のものです。
  • 見るのは多量の可燃物がある場所と火源になり得るものがある場所です。
  • あわせて初動対応が困難な場所も確かめることとされています。
  • 把握した内容は消防計画に書き足して教育訓練で従業員に伝えます。

倉庫の対象を確かめ可燃物と火源と普段入らない場所を見て把握した内容を消防計画に書き足すまでの四つの手順をまとめた図解

倉庫の火災危険性を把握せよという通知はなぜ出されたのか

横長の倉庫の建物と件数を表す三本の棒と報告書を並べて大きな倉庫火災が続いたことを示した図
通知は思いつきで出るものではなく、たいてい実際の火災が先にあります。
まず消防庁がなにを見てこの通知を出したのかを押さえてください。
倉庫における火災危険性の把握等について(通知)(令和3年3月26日 消防予第132号) 近年、平成29年2月に発生した埼玉県三芳町倉庫火災や令和2年4月に発生した宮城県岩沼市倉庫火災、同年7月に発生した静岡県吉田町倉庫火災等、大規模で社会的影響の大きい倉庫火災が相次いで発生しています。(略)そのためには、防火管理者が中心となって、自衛消防隊等も含めて出火危険がある場所や初期消火が困難な場所等を事前に把握し、必要な対策を講じることが重要です
大きな倉庫火災が相次いだことが引き金です。
通知に添えられた統計によると、平成21年から平成30年までの10年間に発生した倉庫火災は5,229件で、そのうち2,209件(42.2%)が全焼に至っています。
延べ面積が10,000平方メートル以上の倉庫にしぼると火災は118件と少ないのですが、1件当たりの焼損床面積は716平方メートルで、倉庫火災全体の120平方メートルの約6倍にふくらみます。
1件当たりの損害額も7,630万円で、けた違いに大きくなります。
つまり倉庫の火災は数が増えているのではなく、一度起きたときの被害の大きさが問題になっているということです。

大きな倉庫ほど燃えると止まらないということでしょうか。
設備は入れているつもりなのですが。

通知が求めているのは設備を増やすことではありません。
燃え出す前にどこが危ないかを知っておくことです。

どの倉庫がこの通知の対象になるのか

横長の倉庫の建物と三人の従業員と上下で色が分かれた複合用途の建物を並べて対象になる範囲を表した図
倉庫といっても、小さな資材置場から巨大な物流センターまで幅があります。
通知はその線をはっきり引いています。
同通知 記 1 対象とする防火対象物 消防法施行令(昭和36年政令第37号。以下「令」という。)別表第1(14)項に掲げる防火対象物又は令別表第1(16)項に掲げる防火対象物(同表(16)項に掲げる防火対象物においては、同表(14)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものに限る。以下同じ。)のうち、収容人員が50人以上のもの
消防法施行令(昭和36年政令第37号)第1条の2第3項 法第八条第一項の政令で定める防火対象物は、次に掲げる防火対象物とする。 第1号ハ 別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ及び(十七)項に掲げる防火対象物で、収容人員が五十人以上のもの
この50人という線には見覚えがあるはずです。
令第1条の2第3項第1号ハは、倉庫を含む非特定の用途について収容人員が50人以上なら防火管理者を定めなければならないと決めています。
つまり(14)項の倉庫についていえば、通知の対象はすでに防火管理者を選任して消防計画を届け出ている倉庫と重なります。
新しい義務が増えたのではなく、いま持っている消防計画の中身を厚くしなさいという話だと読めます。
なお通知は、収容人員が50人未満の倉庫であっても消防本部の判断で同様に指導してよいとしているので、規模が小さいから関係ないとは言い切れません。

倉庫が入っている複合用途のビルも対象になるのですね。
階の一部が倉庫という建物を管理しています。

倉庫として使われている部分があれば対象に入ります。
建物全体の収容人員で判定してください。

倉庫のどこを確認して火災危険性を把握するのか

段ボールを積んだ棚とフォークリフトと電気設備の盤と細い通路を並べて倉庫の中で確認する場所を表した図
通知の中心はここです。
見る場所が二種類に分けて書かれています。
同通知 記 2 火災危険性の把握等 (1)消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項第1号ロに規定する自主検査や、同号チに規定する訓練等の際に、火災発生の可能性のある場所(商品、可燃性の断熱材、パレット等の多量の可燃物が存在する場所やフォークリフト、電気設備、ヒーター等の火源となり得るものが存在する場所等)や初期消火等の初動対応が困難な場所(従業員が普段立ち入ることのない認識されていない空間等)等を確認し、当該防火対象物の火災危険性を把握しておくこと。 (2)(1)による結果を踏まえて、必要に応じて火災発生の可能性のある場所等の管理や初動対応について消防計画に具体的な内容を追加すること。 (3)(2)により、必要な初動対応等について消防計画に具体的な内容を追加する場合、防火管理者はその内容について従業員等への注意喚起や安全管理も含めた教育訓練等を実施すること。
消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項第1号 ロ 防火対象物についての火災予防上の自主検査に関すること。 チ 消火、通報及び避難の訓練その他防火管理上必要な訓練の定期的な実施に関すること
新しい行事をやれとは書かれていません。
通知が指定しているのは、消防計画にもともと定めてある自主検査と訓練の場です。
そこで見るものが二種類で、ひとつは火災発生の可能性のある場所、もうひとつは初期消火などの初動対応が困難な場所です。
前者は商品や可燃性の断熱材やパレットのように可燃物が積み上がっている場所と、フォークリフトや電気設備やヒーターのように火源になり得るものが置かれている場所を指します。
後者は従業員が普段立ち入ることのない、そもそも空間として認識されていない場所を指していて、ここを言葉にしてある通知はほとんどありません。

つまり自主検査の見る項目を増やせばよいのですね。
そこなら消防計画にもう書いてあります。

そのとおりです。
検査表に見る場所の欄を足すところから始めてください。

実務で見落としやすいのはどこか

点検用の細い通路の下の発熱体と上の断熱材と電話を取らずに荷物を運ぶ人を並べて見落としやすい場面を表した図
通知には別添が付いていて、実際の火災でなにが起きたのかが書かれています。
ここが読者にとっていちばん重い部分です。
同通知【別添】岩沼市倉庫火災の概要 今回の火災の課題 (略)防火対象物の使用開始後に設置した電気設備(電熱線ヒータや送風ファン)の設置や施工において、方法の検討が不十分であった可能性があること(略) 黒煙を発見した従業員は、自社管理の商品の移動や初期消火を行っていたため、通報は行っていない。通報は、自動火災報知設備の鳴動を聞いて駆けつけた防火管理者の指示により警備員が行ったが、黒煙発見から18分後、自動火災報知設備の鳴動から14分後であったこと。(略)黒煙を発見した従業員、自動火災報知設備の鳴動を聞いた防火管理者、自衛消防隊(各入居事業者が地区隊を構成)間で連携がなく、有効な初期消火等がなされなかったこと。
火元は建てたあとに付け足したものでした。
通知によると、冷凍庫の点検用通路内に結露防止対策として敷設されていた電熱線ヒーターが出火箇所として推定されています。
その上部には難燃性でないウレタンフォームが剥き出しで吹き付けられていて、これが延焼経路となり、隣接する冷凍庫のサンドイッチパネルに燃え移ったことが延焼拡大の要因の一つである可能性が考えられるとされました。
点検用通路は、まさに通知が言う従業員が普段立ち入ることのない空間です。
そしてもうひとつの落とし穴が通報で、黒煙を見つけた従業員は商品の移動と初期消火を優先したため、通報までに黒煙発見から18分がかかっています。

荷物を守ろうとして通報が遅れたということですか。
従業員を責められない気がします。

だからこそ手順として決めておく話になります。
迷わせない書き方を消防計画に置いてください。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックシートを載せた机と受話器を耳に当てる人と向かい合って訓練する二人を並べて明日からの手順を表した図
やることは多くありません。
いま持っている書類に足していくだけで形になります。
同通知 記 3 その他 (2)大規模倉庫における消防訓練については、引き続き、「大規模倉庫における効果的な訓練の実施推進について」(平成30年1月24日付け消防予第20号)に留意の上、効果的な訓練の実施を推進していただきたいこと
まず自主検査表に欄を足してください。
足す欄は、可燃物が積み上がっている場所と、火源になり得るものが置かれている場所と、普段立ち入らない空間の3つです。
次に建物を使い始めたあとで増設した電気設備を洗い出します。後付けのヒーターや送風ファンやその配線は、竣工図にも消防計画にも載っていないことがあるからです。
そのうえで、火や煙を見つけた人がその場で通報するという順番を消防計画に書き、訓練でそこだけを繰り返します。通報を先にという一行があるかどうかで、結果が十数分変わります。
テナントが複数入っている倉庫では地区隊がばらばらに動きがちなので、合同での訓練まで計画に落としておくと通知の趣旨にかないます。

検査表と消防計画と訓練が一本につながりました。
今週の自主検査から欄を足してみます。

その順番で問題ありません。
消防計画を直したら届出も忘れないでください。

よくある質問

Q収容人員が50人未満の倉庫は何もしなくてよいのですか?
A通知は、収容人員が50人未満のものであっても消防本部の判断により同様の火災危険性から指導が必要と考えられる場合には対象とされたいとしています。自分の倉庫が指導の対象になるかは所轄消防署にご確認ください。
Q火災危険性の把握は年に何回やればよいのですか?
A通知は回数を定めていません。定めているのは自主検査や訓練等の際に確認するということだけなので、実際の周期は消防計画で自ら定めた自主検査の周期に従うことになります。
Q消防計画に書き足したら届出は必要ですか?
A必要です。消防法施行規則第3条第1項は消防計画を変更するときも同様とすると定めていて、所轄消防長または消防署長への届出が求められます。
Q倉庫を借りている側ですが誰が把握するのですか?
A通知は防火管理者が中心となって自衛消防隊等も含めて把握することが重要としています。管理について権原が分かれている倉庫では、その権原の範囲を消防計画に定めたうえで、それぞれの防火管理者が自分の範囲を見ることになります。

まとめ

令和3年の通知は倉庫の火災危険性を事前に把握することを求めています
対象は令別表第1(14)項などの防火対象物で収容人員が50人以上のものです。
把握の機会は消防計画に定めた自主検査や訓練の場です
見るのは多量の可燃物がある場所と火源になり得るものがある場所です。
従業員が普段立ち入らない空間も初動が届かない場所として確かめます
把握した内容は消防計画に書き足して届け出ます。
最後に従業員への注意喚起と教育訓練までを一組で行います

まずは冷凍庫の点検用通路から見に行ってきます!

見つけた人がその場で通報する順番まで書き足してください
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 倉庫における火災危険性の把握等について(通知)(令和3年3月26日 消防予第132号)
  • 大規模倉庫における効果的な訓練の実施推進について(平成30年1月24日 消防予第20号)
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第1条の2第3項・別表第一
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
倉庫の棚に段ボールが並ぶ通路の写真に倉庫の火災危険性はどこを見て把握するのかという記事タイトルを重ねたアイキャッチ画像
倉庫の中で火元になりそうな場所を挙げてくださいと言われて、すぐに指を差せるでしょうか。 大量の商品と、それを動かす機械と、あとから付け足された電気設備が同じ屋根の下に並んでいます。 そして倉庫には、従業員が何年も足を踏み...