BLOG

階段の誘導灯は非常用照明装置があれば省略できるのか|消防法施行規則が定める設置免除の要件を解説

非常用照明だけが灯る階段室の写真

立入検査で階段室を見上げたとき、緑の誘導灯が見当たらないことがあります。
それだけで違反だと決めつけてよいのでしょうか。
実は消防法施行規則には、階段や傾斜路の誘導灯を省略できる場合が定められています。
この記事では、誘導灯を省略できる条件と、その条件を満たしていないときに何が起きるのかを整理します。

うちの雑居ビルの階段には、誘導灯が付いていません。

非常用の照明装置が設けられていれば、それで足りることがあります。

誘導灯が無くても指摘されないんですか。

条件を満たしていれば大丈夫です。
順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 誘導灯には避難口誘導灯・通路誘導灯・客席誘導灯・誘導標識の四種類があります。(消防法施行令第26条第1項)
  • 通路誘導灯は階段にも設けますが、階段のものは避難の方向を示すことまでは求められません。(同条第2項第二号ただし書)
  • 階段又は傾斜路に設ける通路誘導灯は、踏面や踊り場の中心線で一ルクス以上の照度を確保します。(消防法施行規則第28条の3第4項第三号)
  • 建築基準法施行令が定める非常用の照明装置が設けられていれば、階段の通路誘導灯は設置しなくてよいとされています。(消防法施行規則第28条の2第2項第五号)
  • 地階の乗降場に通ずる階段などでは、その非常用の照明装置が六十分間作動できる容量のものでなければ省略が認められません。(同号かっこ書)

階段の誘導灯は非常用照明装置で省略できることをまとめた図解

誘導灯にはどんな種類があるのか

出入口の上の避難口誘導灯と廊下の通路誘導灯と客席誘導灯を並べた図
避難口誘導灯や通路誘導灯という言葉は聞いたことがあっても、区別まではあいまいという方が多いです。
まずは条文が定める種類を確認します。
消防法施行令(昭和36年政令第37号)第26条第2項第二号 通路誘導灯は、避難の方向を明示した緑色の灯火とし、防火対象物又はその部分の廊下、階段、通路その他避難上の設備がある場所に、避難上有効なものとなるように設けること。ただし、階段に設けるものにあつては、避難の方向を明示したものとすることを要しない。
誘導灯は避難口誘導灯・通路誘導灯・客席誘導灯・誘導標識の四種類です。
出入口の上に付く緑の灯火が避難口誘導灯、廊下や階段に付く矢印つきの灯火が通路誘導灯です。
劇場や映画館の客席には床面を照らす客席誘導灯が別に定められています。
条文の但し書きに注目してください。
通路誘導灯は階段にも設けますが、階段に設けるものだけは避難の方向を示す矢印を付けなくてよいことになっています。

階段の誘導灯って、廊下のものと同じ形じゃないんですか。

階段のものは矢印が無い形でも構いません。
ここが最初の分かれ目です。

階段に設ける誘導灯にはどんな基準があるのか

階段の側壁の誘導灯が踏面と踊り場を照らしている図
階段に誘導灯を設けるときも、明るさが自由というわけではありません。
数値で決められた基準があります。
消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第28条の3第4項第三号 階段又は傾斜路に設ける通路誘導灯にあつては、踏面又は表面及び踊場の中心線の照度が一ルクス以上となるように設けること。
階段の誘導灯は踏面と踊り場の明るさで測ります。
表示面の縦寸法や光度で区分を決める廊下の通路誘導灯とは、基準の測り方そのものが違います
踏面と踊り場の中心線で一ルクス以上の照度が要求されます。
足元の明るさが基準に届いているかどうかが、階段だけに設けられた判定基準です。
点検のときは表示面の等級ではなく、実際に足元がどれだけ照らされているかを確認してください。

階段だけ明るさの測り方が違うんですね。

廊下の等級表とは別の基準です。
踏面と踊り場の照度で見てください。

非常用照明装置があれば階段の誘導灯を省けるのはなぜか

誘導灯の付いた階段と非常用照明装置だけの階段を比べた図
ここが今回の記事の核心です。
階段の誘導灯には、設置そのものを要しないとする規定があります。
消防法施行令(昭和36年政令第37号)第26条第1項 誘導灯及び誘導標識は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める防火対象物又はその部分に設置するものとする。ただし、避難が容易であると認められるもので総務省令で定めるものについては、この限りでない。
消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第28条の2第2項 令第26条第一項ただし書の総務省令で定めるものは、通路誘導灯については、次の各号に定める部分とする。(略) 五 令別表第一(一)項から(十六の三)項までに掲げる防火対象物の階段又は傾斜路のうち、建築基準法施行令第126条の4第1項に規定する非常用の照明装置(略)が設けられているもの
非常用照明装置があれば、階段の誘導灯は設置しなくてよいとされています。
消防法施行令第26条第1項の本文はすべての防火対象物に誘導灯の設置を求めていますが、ただし書が総務省令に例外を委ねています。
その委任を受けた消防法施行規則第28条の2第2項第五号が、階段又は傾斜路について建築基準法施行令第126条の4の非常用の照明装置を条件にした省略を認めています。
非常用の照明装置は建築基準法の設備で誘導灯は消防法の設備という別の系統ですが、階段・傾斜路に限ってこの例外が働きます。
まず自分の建物の階段の天井に、緑の灯火ではなく丸い非常用照明のランプが付いているかどうかを確かめてください。

非常用照明があれば、誘導灯は要らないんですね。

階段と傾斜路に限った例外です。
廊下の誘導灯までは省略できません。

非常用照明装置ならなんでもよいわけではないのはなぜか

地下の乗降場に通ずる階段と普通の階段の非常用照明装置を比べた図
非常用照明装置さえ付いていれば安心、というわけではありません。
容量まで条件になっている場所があります。
消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第28条の2第2項第五号(かっこ書) (消防庁長官が定める要件に該当する防火対象物の乗降場(地階にあるものに限る。)に通ずる階段及び傾斜路並びに直通階段に設けるもの(消防庁長官が定めるところにより蓄光式誘導標識が設けられている防火対象物又はその部分に設けられているものを除く。)にあつては、六十分間作動できる容量以上のものに限る。)
特定の階段では非常用照明装置の容量まで問われます。
地階にある乗降場に通ずる階段や傾斜路、直通階段のうち消防庁長官が定める要件に該当するものは、非常用照明装置が六十分間作動できる容量以上でなければ省略の条件を満たしません。
通常の非常用照明装置は建築基準法の基準を満たしていれば足りますが、この場所だけは容量の底上げが求められています。
ただし蓄光式誘導標識が別に設けられている場所は、この六十分間の要件から除かれます。
図面や仕様書で蓄電池の容量まで確認しないと、この条件を見落とします。

非常用照明さえ付いていれば、どこでも省略できると思っていました。

地下の乗降場に通ずる階段などは容量まで見ます。
仕様書で六十分間を確認してください。

明日からなにを確認すればよいのか

クリップボードを持って階段の天井を確認する人と図面を広げた机の図
ここまでの条文を、現場で確認する手順に落とし込みます。
図面と現場を順番に見ていけば判断できます。
  • 階段や傾斜路の天井を見て、緑の誘導灯か丸い非常用照明のランプかを確認する
  • 非常用照明のランプなら、建築確認の図面でその設置根拠が建築基準法施行令第126条の4によるものかを確かめる
  • 地階の乗降場に通ずる階段など消防庁長官が定める要件に該当する場所は、非常電源の容量が六十分間分あるかを仕様書で確認する
  • 蓄光式誘導標識が設けられているかどうかで、六十分間の要件が除かれるかが変わる点も見ておく
  • 誘導灯を設置している階段は、踏面と踊り場の照度が一ルクス以上あるかを実測する
チェックの起点は天井の灯具の形です。
緑の灯火か、丸い非常用照明のランプかを見分けるところから始めます。
非常用照明のランプなら、次に建築確認の図面でその設置根拠を確認します。
地階の乗降場に通ずる階段などは、非常電源の容量が六十分間分あるかまで仕様書で追ってください。
最後に、誘導灯を設けている階段は踏面と踊り場の照度を実測して基準を満たしているかを見ます。

まずは天井の灯具の形を見ればいいんですね。

そこが入り口です。
図面と仕様書まで確認して判断してください。

よくある質問

Q誘導灯には何種類ありますか?
A避難口誘導灯・通路誘導灯・客席誘導灯・誘導標識の四種類です(消防法施行令第26条第1項)。それぞれ設置する場所と目的が異なります。
Q階段の誘導灯は必ず設置しなければなりませんか?
A原則は必要ですが、建築基準法施行令第126条の4に規定する非常用の照明装置が設けられていれば、消防法施行規則第28条の2第2項第五号により設置を要しないとされています。
Q非常用照明装置があれば誘導灯は全部省略できますか?
Aいいえ。この省略は階段又は傾斜路の通路誘導灯に限られます。廊下の通路誘導灯や避難口誘導灯まで省略できるわけではありません。
Q六十分間という容量の条件はどんな場所に付きますか?
A地階にある乗降場に通ずる階段や傾斜路、直通階段のうち消防庁長官が定める要件に該当する場所です。蓄光式誘導標識が設けられている場合はこの条件から除かれます

まとめ

誘導灯は避難口誘導灯・通路誘導灯・客席誘導灯・誘導標識の四種類です。
通路誘導灯は階段にも設けますが、避難の方向を示すことまでは求められません。
階段又は傾斜路の誘導灯は踏面と踊り場の中心線で一ルクス以上の照度を確保します。
建築基準法施行令が定める非常用の照明装置があれば、階段の通路誘導灯は設置しなくてよいとされています。
この省略が働くのは階段又は傾斜路に限られ、廊下や避難口までは及びません。
地階の乗降場に通ずる階段などは、非常用照明装置が六十分間作動できる容量でなければなりません。
蓄光式誘導標識があれば六十分間の要件は除かれます。図面と仕様書で確認してください。

誘導灯だけでなく非常用照明装置まで確認すればいいんですね。

図面と現場を突き合わせて判断してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第26条
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第28条の2・第28条の3
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第126条の4
  • e-Gov法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
非常用照明だけが灯る階段室の写真
立入検査で階段室を見上げたとき、緑の誘導灯が見当たらないことがあります。 それだけで違反だと決めつけてよいのでしょうか。 実は消防法施行規則には、階段や傾斜路の誘導灯を省略できる場合が定められています。 この記事では、誘...