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旅館やホテルで表示マークの交付を受けるにはなにが必要か|銀と金の違いと有効期間を解説

旅館やホテルで表示マークの交付を受けるにはなにが必要か

ホテルや旅館の玄関に、紺色の地に金や銀の縁取りが入ったプレートが掲げてあるのを見たことはないでしょうか。
あれは消防機関が交付した表示マークで、その建物が防火の基準に適合していることを利用者に知らせるものです。
自分の旅館にも掲げたいけれど、どこから手を付ければよいのか分からないという声をよく聞きます。
この制度は関係者が申請しなければ何も始まらない仕組みになっています。

近所のホテルの入口に金色のプレートが掛かっていました。
うちの旅館でももらえるものなのでしょうか。

条件に当てはまれば申請できます。
消防長または消防署長へ交付申請を出すところから始まります。

金と銀の二種類があるのは何が違うのでしょうか。

続けてきた年数の差です。
銀が3年間続いてはじめて金の対象になります

この記事の結論
  • 表示マークは関係者からの申請にもとづいて消防長又は消防署長が交付するものです
  • 対象はホテル・旅館等のうち消防法第8条の適用があるもので、かつ地階を除く階数が3以上のものです
  • 有効期間は表示マーク(銀)が1年、表示マーク(金)が3年です
  • 銀が3年間継続して交付され表示基準にも適合していれば、金へ切り替えることができます
  • 防火対象物点検や定期調査報告の義務が無い規模でも、点検資格者や建築士等の調査結果を添えれば申請できます

表示マークの交付までの流れとして対象の確認と書類の準備と消防本部の審査と表示マークの交付の四つの段階を示した図

表示マークの制度はなぜ作り直されたのか

ホテルの建物の隣で二人が資料を広げて制度の見直しを検討している様子のイメージ
ホテルや旅館は、その土地に住んでいない人が泊まる就寝施設です。
建物の防火の状況を知らないまま泊まる人が多いことが、この制度の出発点になりました。
防火対象物に係る表示制度の実施について(平成25年10月31日 消防予第418号) 昨年5月に発生したホテル火災を受け、消防庁においては昨年度からホテル火災対策検討部会を開催し、ホテル・旅館等の火災被害拡大防止対策等に関する検討を進め、本年7月、検討部会報告書が取りまとめられたところである。(略)ついては、(略)平成15年9月30日に廃止した、「防火基準適合表示制度」の仕組みを再構築し、下記のとおり「防火対象物に係る表示制度」の運用を開始することとしたので、建築行政機関等との連携を図りながら、防火安全対策の徹底に努めるようお願いする。
一度やめた制度を作り直したものです
もとの防火基準適合表示制度は平成14年12月24日付けの通知によって平成15年9月30日に廃止され、その後は自主点検報告表示制度が動いていました。
今回の制度は建築構造等への適合まで見る点が特徴で、消防と建築の両方から建物を確かめます。
受付と審査は平成26年4月1日から始まり、表示マークを実際に掲げてよいのは平成26年8月1日からとされました。
この通知は消防組織法第37条にもとづく助言として出されたもので、表示マークを掲げること自体を義務づけるものではありません。

罰則が無いなら、掲げても掲げなくてもよいということでしょうか。

制度としてはそのとおりです。
ただし利用者に情報提供することが目的なので、選ばれる側としては効いてきます。

どの旅館やホテルが表示マークの対象になるのか

三階建てのホテルと二階建ての小さな宿を並べて対象になるものとならないものを示したイメージ
対象になるのは、消防法施行令別表第一(5)項イに当たるホテル・旅館等です。
ただし、その用途に当たれば全部が対象になるわけではありません。
防火基準適合表示要綱(平成25年10月31日 消防予第418号 別添) 防火・防災管理上の表示基準に適合している旨の表示(以下「表示」という。)をする対象物は、ホテル・旅館等(消防法施行令別表第一(5)項イ並びに同表(16)項イに掲げる防火対象物のうち同表(5)項イの用途に供する部分が存するもの。以下同じ。)で、次の(1)及び(2)に該当するものとする。(略)(1) 消防法第8条の適用があるもの (2) 防火対象物の地階を除く階数が3以上のもの
消防法施行令第1条の2第3項第1号ロ 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項イ、ハ及びニ、(九)項イ、(十六)項イ並びに(十六の二)項に掲げる防火対象物(略)で、収容人員が三十人以上のもの
階数と収容人員の二つで決まります
消防法第8条の適用があるものとは、(5)項イであれば収容人員が30人以上のものを指します。
これに地階を除く階数が3以上という条件が重なるので、平屋や二階建ての小さな宿は制度の対象から外れます。
ホテルが入った複合用途防火対象物、つまり(16)項イも対象になり、その範囲は原則として建物全体です。
自分の建物が当てはまるかどうかは、収容人員の算定書と階数の分かる図面を並べれば、その場で見当が付きます。

うちは三階建てで収容人員も30人を超えています。
それなら対象になりますね。

その二つが揃えば対象です。
市町村の判断でそれ以外の建物を対象に加えることもできます。

表示マークの交付ではなにが審査されるのか

点検表を持つ人の隣に四つの書類の山を並べて審査の対象を示したイメージ
審査はゼロから調べ直すものではありません。
すでに提出している報告書を突き合わせて、表示基準に適合しているかを判定します。
防火基準適合表示要綱(同通知 別添 3) 表示基準の審査においては、消防法に定める防火対象物(防災管理)定期点検報告、消防用設備等点検報告、製造所等定期点検記録表、建築基準法に定める定期調査報告等の現行の制度を活用するものとする。(略)表示基準の審査は、必要に応じて現地確認を実施するものとする。
見られるのは次の四つの区分で、あわせて20の点検項目が並びます。
区分点検項目
防火管理等防火対象物の点検及び報告/防火管理者等の届出/自衛消防組織の届出/防火管理に係る消防計画/統括防火管理者等の届出/防火・避難施設等/防炎対象物品の使用/圧縮アセチレンガス等の貯蔵等の届出/火気使用設備・器具/少量危険物・指定可燃物
防災管理防災管理対象物の点検及び報告/防災管理者等の届出/防災管理に係る消防計画/統括防災管理者等の届出
消防用設備等消防用設備等及び特殊消防用設備等の設置及び維持等/消防用設備等の点検報告/危険物施設等
建築構造等定期調査報告/建築構造等(建築構造・防火区画・階段)/避難施設等
既存の報告書がそのまま材料になります
表示基準に適合していると認められると、まず表示マーク(銀)が交付されます。
その銀が3年間継続して交付されていて、なお表示基準に適合していると認められる場合に表示マーク(金)へ進みます。
有効期間は交付日から銀が1年、金が3年で、金は交付日から3年が経過する前に更新の申請をすれば継続できます。
つまり毎年の点検報告を欠かさず出しておくことが、そのまま表示マークを維持する近道になります。

点検報告をきちんと出していれば、審査の材料はもう手元にあるということですね。

そのとおりです。
消防本部へ報告済みのものは添付を省略できる扱いになっています。

点検の義務が無い旅館は申請できないのか

小さな宿の建物の隣で書類を広げた人と大きな虫眼鏡を並べて自主的な点検を示したイメージ
ここが実務でいちばん引っかかるところです。
表示制度の対象になる建物と、防火対象物点検の義務がある建物は範囲が違います。
消防法施行令第4条の2の2 法第八条の二の二第一項の政令で定める防火対象物は、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物であつて、次に掲げるものとする。 一 収容人員が三百人以上のもの 二 (略)
防火対象物に係る表示制度の実施細目等について(平成25年10月31日 消防予第419号) 本制度の対象となるホテル・旅館等のうち、(略)第8条の2の2に基づく防火対象物定期点検報告の対象とならない防火対象物については、法令に基づく義務の対象外であるが、消防法施行規則(略)第4条の2の4に定める防火対象物点検資格者による点検を行い、その結果を申請書に添付するものとする。また、建築基準法(略)第12条に基づく定期報告の対象とならない防火対象物についても、法令に基づく義務の対象外であるが、建築士等有資格者により、表示基準に関わる部分(建築構造等・避難施設等)の調査(略)を行い、その結果を申請書に添付するものとする
義務が無くても自分で点検を受ければ申請できます
防火対象物点検の義務は収容人員が300人以上の場合などに生じるので、収容人員30人台の旅館は義務の対象外です。
それでも表示マークがほしければ、防火対象物点検資格者の点検と建築士等による調査を自分で手配して、その結果を申請書に添えます。
もうひとつ見落としやすいのが返還の場面で、表示基準に適合しないことが明らかになった場合や、火災が起きて調査の結果が不適合だった場合には表示マークを返します。
返還したあとに再び申請して適合が認められても、戻ってくるのは種別に関係なく表示マーク(銀)です。

金まで育てても、一度返すと銀からやり直しになるのですね。

そうなります。
だからこそ日々の維持管理のほうが申請の手続より大事です。

明日からなにを準備すればよいのか

受付カウンターの上に申請書を広げて担当者がプレートを手渡している様子のイメージ
申請そのものは難しいものではありません。
そろえる書類が決まっているので、手元にあるかどうかを先に確かめます。
(同通知 記2) ホテル・旅館等の関係者(以下「関係者」という。)からの表示マークの交付申請は、別記様式第1に定める表示マーク交付申請書(以下「申請書」という。)に(3)に掲げる報告書等のうち、該当となるものを添付して行うものとする。ただし、当該報告書等のうち、一定期間内に既に消防本部及び消防署(略)に報告済みである場合等においては、添付を省略することができるものとする
先に書類の在りかを確かめます
銀の申請なら、申請日から過去1年以内に実施した防火対象物点検の報告書と消防用設備等点検結果報告書、それに直近の定期調査報告書が要ります。
危険物の施設があるときは製造所等定期点検記録表も加わるので、担当が分かれている場合は先に声をかけておきます。
複合用途のビルなら、統括防火管理者の選任届や建物全体の消防計画といった建物全体に係る書類まで求められます。
二階以下や収容人員30人未満で対象から外れる宿でも、表示基準に適合していることを確かめたうえで表示制度対象外施設である旨の通知を受けられるので、まず所轄の消防署に相談してください。

まず点検の報告書と定期調査報告書がそろっているか、書庫を見てきます。

それが第一歩です。
足りない書類が見つかったら、補正を求められる前に手当てしておくと早く進みます。

よくある質問

Q表示マークを掲げることは義務ですか?
A義務ではありません。表示マークは関係者からの申請によって交付されるもので、制度そのものも消防組織法第37条にもとづく助言として運用されています。掲げないこと自体を理由に処分を受けるものではありませんが、防火管理者の選任や点検報告といった消防法上の義務は表示マークとは無関係に生じます。
Q銀から金に変わると交付年月日は書き換わりますか?
A書き換わりません。有効期間は最初に交付を行った日を基準日とするため、銀から金へ変更する場合でも表示マークに記載する交付年月日は最初に銀を交付した日のままです。継続する場合の有効期間も、継続前の有効期間が終わったところを起点とします。
Qテナントが入る複合用途のビルでは建物全体が対象になりますか?
A原則として建物全体が対象です。ただしホテル・旅館等以外の部分について、建物全体の防火管理や消防用設備等、危険物施設等、建築構造等に違反が無い場合は、ホテル・旅館等の用途に供する部分と避難経路に係る部分だけを対象とすることができます。
Q交付を受けていないのに表示マークを掲げるとどうなりますか?
A表示マークは消防庁長官を商標権者として商標登録されています。交付を受けていない事業所や返還した事業所が表示マークを偽って使った場合には、不正競争防止法の誤認惹起行為に当たるおそれがあると消防庁が示しています。ホームページでの使用も同じ扱いです。

まとめ

表示マークは関係者の申請にもとづいて消防長又は消防署長が交付するものです
対象はホテル・旅館等で消防法第8条の適用があり、かつ地階を除く階数が3以上のものです
審査は防火管理等と防災管理と消防用設備等と建築構造等の四つの区分で行われます
既に提出している点検報告書や定期調査報告書がそのまま審査の材料になります
有効期間は交付日から銀が1年、金が3年です
点検や定期調査の義務が無い規模でも、自分で点検と調査を受ければ申請できます
返還したあとに再交付されるのは種別に関係なくからです

まずは書類をそろえるところからだと分かりました
さっそく点検の報告書を確かめます。

そろった書類を持って所轄の消防署へ相談してください
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 防火対象物に係る表示制度の実施について(通知)(平成25年10月31日 消防予第418号 消防庁次長)
  • 防火対象物に係る表示制度の実施細目等について(通知)(平成25年10月31日 消防予第419号 消防庁予防課長)
  • 表示マークの掲出及び使用開始日等について(通知)(平成26年2月12日 消防予第39号 消防庁予防課長)
  • 表示マークの商標権の設定及び虚偽又は類似の表示マークへの対応について(平成26年5月23日 消防予第226号 消防庁予防課長)
  • 消防法第8条第1項
  • 消防法第8条の2の2第1項
  • 消防法第17条の3の3
  • 消防法施行令第1条の2第3項第1号
  • 消防法施行令第4条の2の2
  • 消防法施行規則第4条の2の4
  • 建築基準法第12条第1項
  • 消防組織法第37条
  • 不正競争防止法第2条第1項第20号

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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