避難階以外の階に大勢の人がいる建物では、階段が一本しかないと火災や煙で階段が使えなくなったときに逃げ場を失います。
建築基準法施行令第121条は、劇場や店舗、病院、ホテルなど特定の用途や床面積の階について、避難階または地上へ通じる二以上の直通階段の設置を義務付けています。
どの階が対象になるかは、用途ごとに床面積の基準が細かく分かれており、建物の構造によって数値が変わる場合もあります。
この記事では第121条第1項が定める六つの号の基準と、見落としやすい緩和規定を実務の視点から解説します。
うちのビルは階段が一つしかないんですが、これって法律上問題ないんでしょうか。
用途と床面積によっては二以上の直通階段が義務付けられる場合があります。
うちは何階建てで、どんな用途だと対象になるんでしょうか。
建築基準法施行令第121条を一緒に確認していきましょう。
- 建築基準法施行令第121条第1項の六つの号のどれかに当てはまる階は、二以上の直通階段が必要です
- 劇場や集会場は客席があれば面積を問わず対象になります
- 病院や児童福祉施設等は50平方メートル、ホテルや共同住宅は100平方メートルを超えると対象になります
- 物品販売店舗は1,500平方メートル超、それ以外の階は六階以上かどうかで判定します
- 準耐火構造や不燃材料の建築物は、基準となる床面積が二倍に緩和されます
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目次
二以上の直通階段はなぜ必要になるのか

建築基準法施行令は、そうした事態を避けるために特定の階へ二以上の直通階段の設置を義務付けています。
直通階段とは、避難階または地上まで階段室が屋内で連続してつながっている階段のことで、避難階以外の階にいる人が必ず通ることになります。
対象になるのは全ての階ではなく、次の号でみる用途や床面積の条件に当てはまる階だけです。
逆に言えば、条件に当てはまらない階は直通階段が一つでも建築基準法上は違反になりません。
まずはどんな用途の階が対象になるのかを号ごとに見ていきます。
うちのビルは全部の階に二つ階段があるわけじゃないんですけど、それっておかしいんでしょうか。
対象になる階は用途や床面積で決まるので、まず該当するかを確認しましょう。
客席や宿泊室のある階はどんな基準で決まるのか

号ごとに対象になる用途と面積のラインが違うので、自分の建物がどの号に当たるかをまず確認します。
第一号の劇場や集会場は客席や集会室があれば面積にかかわらず対象になり、これは避難に時間がかかる不特定多数の集まりを想定しているためです。
第四号の病院・診療所・児童福祉施設等は病室や主たる用途の居室の合計が50平方メートルを超えると対象になり、自力避難が難しい人がいる用途として基準が厳しめです。
第五号のホテル・旅館・下宿・共同住宅・寄宿舎は宿泊室や居室、寝室の合計が100平方メートルを超えると対象になります。
なお第三号にはキャバレーなど特定の風俗営業に関する規定もありますが、避難上有効なバルコニー等がある小規模な階は除かれるなど条件が細かいため、該当しそうな場合は個別に確認が必要です。
うちは診療所なんですが、病室が全部で40平方メートルくらいなんです。
50平方メートル以下なら第四号の対象外ですが、増築や用途変更で面積が増えたときは測り直してください。
店舗や高層階はどんな基準で決まるのか

どちらも床面積の合計と階数で機械的に判定できます。
第二号の物品販売店舗は、建物全体ではなくその階の売場を含む床面積の合計が1,500平方メートルを超える場合に対象になります。
第六号は前各号に当てはまらない一般の階を受け皿にする規定で、六階以上の階に居室があれば面積を問わず対象になります。
五階以下の階は、避難階の直上階なら200平方メートル、それ以外の階なら100平方メートルを超える居室があると対象になり、避難階から遠いほど基準が厳しくなる作りです。
事務所や共同住宅の一般階でも、この第六号だけで対象になることがあるので見落とさないようにします。
うちは七階建ての事務所ビルなんですが、七階に居室があれば自動的に対象なんですか。
はい、第六号イに当たるので居室があれば面積を問わず二以上の直通階段が必要です。
準耐火構造や小規模な建物では基準がどう変わるのか

逆に、小規模な建築物では一部の号が適用されないケースもあり、両方とも見落としやすいポイントです。
主要構造部が準耐火構造または不燃材料で造られている建築物は、第四号の50平方メートルが100平方メートルに、第五号の100平方メートルが200平方メートルに、第六号ロの200平方メートルが400平方メートルに、それぞれ読み替えられます。
つまり同じ床面積でも、構造や耐火性能によって対象になるかどうかが変わるということです。
一方で第四項には別の緩和があり、階数が三以下で延べ面積が200平方メートル未満の建築物のうち、階段の部分とそれ以外の部分が防火設備等で区画されているものは、第四号や第五号の一部が適用されません。
これは住宅を兼ねた小さな診療所や下宿など、規模の小さい建築物を想定した除外規定です。
うちは木造じゃなくて鉄筋コンクリートなんですが、これも準耐火構造に入りますか。
構造の区分は建築士や特定行政庁への確認が確実なので、判断に迷ったら相談してください。
二方向避難を確保するために明日から何を確認すればよいのか

明日からできる確認のポイントを整理します。
- 自分の建物の各階が、用途と床面積で第一号から第六号のどれかに当てはまるかを一覧にする
- 主要構造部が準耐火構造や不燃材料かどうかを確認し、当てはまる号の基準値を二倍で読み替える
- 該当する階に実際に二本の直通階段が届いているか、増築や用途変更で床面積が変わっていないかを見る
- 階段の出入口や扉の前に物が置かれて塞がれていないかを日常点検で確認する
一覧化した対象階は、増築や用途変更で床面積や用途区分が変わるたびに見直す必要があります。
建築確認の段階で対象外だった階も、内装の変更や間仕切りの追加で対象に切り替わることがあります。
点検で気づいた不備は、所轄の消防署や特定行政庁に相談しながら是正していくのが確実です。
二以上の直通階段は設計だけでなく、日々の維持管理があってはじめて機能します。
設計のときに確認して終わりだと思ってました。
用途変更や増築のたびに見直すのがポイントです。
よくある質問
まとめ
これで二以上の直通階段が必要な階かどうか、自分で確認できそうです!
該当する階の判定に迷ったときは早めに確認しておくのが安全です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第35条
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第121条
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





