自家源泉を持つ温泉旅館や日帰り入浴施設では、建物の用途にかかわらずガス漏れ火災警報設備が必要になることがあります。
対象になるかどうかは、宿泊定員や延べ面積の大きさではなく、温泉を汲み上げる設備があるかどうかで決まります。
実は消防法施行令には、温泉水に溶け込んだ天然ガスを想定した、他の建物とは別枠の基準が定められています。
本記事では、対象になる条件と検知器の設置基準を解説します。
うちの旅館は自家源泉を持っていて、大浴場のお湯を自分で汲み上げています。
でも部屋数の少ない小さな旅館なので、消防設備は最低限で足りると思っていました。
実は温泉を汲み上げる設備があると、建物の規模に関わらずガス漏れ火災警報設備が必要になることがあります。
温泉水には天然ガスが溶け込んでいることがあるためです。
うちみたいに部屋数の少ない旅館でも、対象になるということですか。
はい。
収容人員1人からでも対象になる、他の基準とは違う数え方をします。
- 建物の中に温泉の採取のための設備がある場合は、用途区分や延べ面積にかかわらずガス漏れ火災警報設備の設置対象になります
- 対象になる収容人員の基準は1人で、他の号にある延べ面積の要件はありません
- 対象になる設備は温泉井戸・ガス分離設備・ガス排出口とこれらをつなぐ配管です
- 検知器は温泉採取設備の周囲の長さ10メートルにつき1個以上を設ける必要があります
- ガスの濃度を指示する装置は防災センター等に設置しなければなりません
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目次
なぜ温泉を汲み上げるだけで対象になるのか

建物の中に何があるかだけで、対象になるかどうかが決まります。
温泉水には天然ガスが溶け込んでいることがあります。
汲み上げの過程でこのガスが分離し、建物内に滞留すると火災や酸欠のおそれがあります。
そのため建物の用途や規模と関係なく、温泉採取設備そのものを危険源とみなして基準が設けられています。
次の章では、具体的にどんな設備が何人から対象になるのかを確認します。
温泉のガスって、そんなに危険なものなんですか。
建物内に滞留すると危険なので、法令でも別枠の基準にしているんです。
どんな設備が何人から対象になるのか

大規模なホテルに限った話ではありません。
延べ面積千平方メートル以上を条件にする他の号と比べると、規模の小さい施設ほど見落としやすい基準といえます。
対象になる設備は温泉井戸・ガス分離設備・ガス排出口と、それらをつなぐ配管です。
可燃性天然ガスが滞留するおそれのない場所の配管は除かれるため、設備の配置まで含めて確認する必要があります。
次の章では、検知器と表示装置を具体的にどこへ設置するのかを見ていきます。
収容人員1人からなんて、うちも他人事じゃないですね。
はい。
規模の小さい施設ほど、見落とさないようにしたい基準です。
検知器と表示装置はどこに置くのか

実は普通の検知器とは違う数え方をします。
温泉井戸やガス分離設備、配管を取り囲むように検知器を配置し、どの位置から漏れても検知できるようにする考え方です。
検知器だけでなく、ガスの濃度を指示する装置を防災センター等に設ける点も見落としやすいポイントです。
表示装置があることで、現地の検知器が鳴る前の段階から濃度の推移を把握できます。
次の章では、普通の厨房用ガス漏れ警報の基準とどう違うのかを比べてみます。
周囲の長さで検知器を数えるなんて、初めて知りました。
表示装置を防災センター等に置くことも忘れないでくださいね。
普通の厨房用の基準とどう違うのか

混同すると設置数を見誤ることがあります。
厨房用は燃焼器や配管の貫通部を起点に水平距離で位置を決めますが、温泉採取設備は周囲の長さで個数を決めます。
また、契約しているガス販売事業者から届く液化石油ガスだけを使う建物は、この基準の対象から外れることがあります。
しかし温泉水に溶け込んだ天然ガスは購入するガスではないため、同じ除外は使えません。
増改築で自家源泉を新しく引いた施設は、この違いを見落としがちなので注意が必要です。
次の章では、明日から確認すべき点を整理します。
厨房のガス警報だけ確認していたら見落とすところでした。
増改築で源泉を引いた施設ほど、確認が漏れやすいところです。
明日からなにを確認すればよいのか

条文の基準を、実際の確認作業に落とし込みましょう。
温泉井戸からガス分離設備、ガス排出口までの配管を洗い出し、周囲の長さから必要な検知器の個数を数え直しましょう。
ガスの濃度を指示する装置が防災センター等に設置されているかも確認します。
検知器や表示装置がそろっていても、非常電源が付いていなければ基準を満たしません。
判断に迷う点があれば、早めに所轄消防署や㈱防災屋にご相談ください。
今度の点検で、うちの源泉設備をあらためて洗い出してみます。
それがいちばん確実な方法です。
気になる点があれば、いつでもご相談ください。
よくある質問
まとめ
温泉を汲み上げているだけで対象になる理由が分かりました!
今度の点検で確認してみます。
自家源泉ならではの注意点でしたね。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第21条の2第1項第3号、第2項第4号
- 消防法施行規則第24条の2の2第1項、第2項、第3項
- 消防法施行規則第24条の2の3第1号イ
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





