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アセトアルデヒドを扱う製造所はなぜ銅や水銀の設備を使えないのか|不活性ガス封入とタンクの保冷装置も解説

アセトアルデヒドを扱う製造所は銅や水銀の設備を使ってはいけないのかを解説する記事のアイキャッチ画像

アセトアルデヒドや酸化プロピレンなど、特殊引火物には通常の危険物より重い規制がかかることがあります。
危険物の規制に関する政令は、こうした物質を扱う製造所について総務省令で基準を超える特例を定められると規定しています。
この特例は取り扱う設備の材質規制から不活性ガスの封入、タンクの冷却装置まで幅広く定められています。
この記事では規則第13条の9が定める特例の中身を条文から整理します

うちの工場でアセトアルデヒドを扱う設備を新設する予定なんですが、配管の材質は何でもいいんでしょうか。

アセトアルデヒド等には専用の特例基準があります。
まずは対象になる設備から確認していきましょう。

材質まで指定されるんですか。
うちは銅の配管を使う予定でした。

まずは禁止されている金属から見ていきます。
該当するかどうか一緒に確認しましょう。

この記事の結論
  • アセトアルデヒド等を取り扱う製造所には、令第9条第3項に基づき通常の基準を超える特例が課されます。
  • 対象になるのは、規則第13条の7が定める「アセトアルデヒド又は酸化プロピレン等」の特殊引火物を取り扱う製造所です。
  • 取り扱う設備は、銅・マグネシウム・銀・水銀又はこれらを成分とする合金で造ってはいけません。
  • 設備には不活性の気体又は水蒸気を封入する装置を設ける必要があります。
  • 屋外タンクや一定容量以上の屋内タンクには、冷却装置又は保冷装置の設置も義務付けられます。

アセトアルデヒド等を取り扱う製造所の特例を示す図解。材質を確認、ガスを封入、タンクを冷却、地下タンクは例外の4段階を整理

アセトアルデヒド等を取り扱う製造所にはなぜ専用の基準があるのか

特殊引火物の入った貯蔵容器と、そのそばに立てられた警戒標識のイメージ
危険物の規制に関する政令は、製造所の技術上の基準を第9条第1項にまとめています。
ただしアセトアルデヒドや酸化プロピレンのように性質が特殊な危険物には、この基準を超える特例が別途用意されています。
危険物の規制に関する規則第13条の7 令第九条第三項の総務省令で定める危険物は、アルキルアルミニウム等、第四類の危険物のうち特殊引火物のアセトアルデヒド若しくは酸化プロピレン又はこれらのいずれかを含有するもの(以下「アセトアルデヒド等」という。)(略)とする。
この規定が指す「アセトアルデヒド等」とは、アセトアルデヒド又は酸化プロピレンそのもの、あるいはこれらを含む物品を指します
アルキルアルミニウム等、ヒドロキシルアミン等と並んで、アセトアルデヒド等もこの条文が定める対象の一つです。
これらの物質は性質に応じてそれぞれ別の条文で特例が定められており、アセトアルデヒド等の特例をまとめているのが規則第13条の9です。
次の項目で、この特例が具体的にどんな設備に適用されるのかを確認します。

アセトアルデヒドと酸化プロピレンは同じ枠で規制されているんですね。

はい、特殊引火物としての性質に着目した特例です。
次で対象範囲を見ていきましょう。

この特例はどんな設備に適用されるのか

金属製のパイプと、そのそばで使用を禁じられた銅色の配管部品のイメージ
規則第13条の9は、アセトアルデヒド等を取り扱う製造所の基準として、まず設備そのものの材質を制限しています。
配管やタンクを選ぶ段階から関わる基準です。
危険物の規制に関する規則第13条の9第1項 アセトアルデヒド等を取り扱う製造所に係る令第九条第三項の規定による同条第一項に掲げる基準を超える特例は、次のとおりとする。一 アセトアルデヒド等を取り扱う設備は、銅、マグネシウム、銀若しくは水銀又はこれらを成分とする合金で造らないこと。
アセトアルデヒド等を取り扱う設備は、銅・マグネシウム・銀・水銀又はこれらを成分とする合金で造ってはいけません
理由までは条文に書かれていませんが、これらの金属や合金は避けるべきものとして明示的に列挙されています。
配管・バルブ・タンクの本体だけでなく、設備を構成する部材全般がこの対象になり得ます。
新設のときはもちろん、既存設備を改修・部品交換するときも材質を確認する必要があります。
条文に列挙された銅・マグネシウム・銀・水銀とこれらを成分とする合金のいずれにも当たらないことを、図面や仕様書の段階で確かめておきます。

うちは配管の一部に銅を使う設計でした。
見直しが必要そうです。

はい、該当する金属かどうかを必ず確認してください。
次に爆発を防ぐ設備を見ていきましょう。

不活性ガスや水蒸気の封入はどう定められているのか

圧力容器とそれにつながる不活性ガスボンベのイメージ
材質の制限だけでなく、燃焼性混合気体そのものを生じさせない設備も義務付けられています。
規則はこの装置についても具体的に定めています。
危険物の規制に関する規則第13条の9第1項第二号 アセトアルデヒド等を取り扱う設備には、燃焼性混合気体の生成による爆発を防止するための不活性の気体又は水蒸気を封入する装置を設けること。
設備の中に燃焼性の混合気体ができないよう、不活性の気体か水蒸気を封入する装置を設ける必要があります
アセトアルデヒド等は空気と混ざると燃焼性の混合気体を生じやすいため、空気そのものを設備内に入れないという発想の措置です。
不活性の気体・水蒸気のどちらを選ぶかは事業者の判断に委ねられています。
封入する装置は常時機能している必要があり、設置しただけで終わりにはできません。
次の項目では、タンクに限って追加される基準を確認します。

窒素などの不活性ガスを常に流し込んでおくイメージでしょうか。

常時封入された状態を保つ装置が求められます。
次はタンクの基準を見ましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

冷却装置の付いた屋外タンクと、地中に埋められたタンクのイメージ
不活性ガスの封入に加えて、タンクにはさらに専用の設備が求められることがあります。
ただし全てのタンクが対象になるわけではありません。
危険物の規制に関する規則第13条の9第1項第三号 前号の規定にかかわらず、アセトアルデヒド等を取り扱うタンク(屋外にあるタンク又は屋内にあるタンクであつて、その容量が指定数量の五分の一未満のものを除く。)には、冷却装置又は低温を保持するための装置(以下「保冷装置」という。)及び燃焼性混合気体の生成による爆発を防止するための不活性の気体を封入する装置を設けること。ただし、地下にあるタンクがアセトアルデヒド等の温度を適温に保つことができる構造である場合には、冷却装置及び保冷装置を設けないことができる。
屋外タンクと、容量が指定数量の5分の1以上の屋内タンクには、不活性ガスの封入装置に加えて冷却装置か保冷装置も必要です
つまり屋内タンクで容量が指定数量の5分の1未満のものは、この号の対象から外れます。
さらに地下にあるタンクは、温度を適温に保てる構造であれば冷却装置・保冷装置のどちらも設けずに済むというただし書きがあります。
地下は地上より温度変化が小さいため、条文自体がその条件を織り込んでいると読めます。
「タンクだから一律に冷却装置が要る」と思い込むと、対象外のタンクにまで過剰な設備投資をしてしまうことになります。

屋内の小さいタンクにも冷却装置が要ると思っていました。

容量と設置場所によって扱いが変わります。
最後に確認の手順をまとめます。

明日からなにをすればよいのか

製造所の設備の前でクリップボードを手に確認している点検員のイメージ
最後に、実務としてどう確認していけばよいかを整理します。
新設のときも、既存設備を点検するときも同じ視点で使えます。
  • 自社が扱う物品がアセトアルデヒド又は酸化プロピレン等の特殊引火物に該当するかをまず確認する
  • 配管・バルブ・タンク等の材質が銅・マグネシウム・銀・水銀又はこれらを成分とする合金に当たらないかを図面で確認する
  • 設備に不活性の気体又は水蒸気を封入する装置が常時機能しているか確認する
  • 屋外タンク及び指定数量の5分の1以上の屋内タンクに冷却装置又は保冷装置があるかを確認する
  • 地下タンクで装置を省略している場合は、温度を適温に保てる構造かどうかを記録として残しておく
判断に迷う部分は、早めに所轄消防署へ相談しておくことが結局いちばんの近道です
材質や装置の要否は取扱量や設置場所によって変わるため、自己判断で済ませないことが大切です。
新設だけでなく、設備の改修や部品交換のときにも同じ確認が必要になります。
記録を整理しておくと、点検や更新の際の確認もスムーズになります。

うちの設備がどの区分に当たるか、まず図面で確認してみます。

図面と仕様書の確認から始めてみてください。
次のよくある質問もあわせてご覧ください。

よくある質問

Qアセトアルデヒドを扱えば必ずこの特例の対象になりますか?
A規則第13条の7が定める「アセトアルデヒド又は酸化プロピレン等」の特殊引火物を取り扱う製造所が対象です。アルキルアルミニウム等・ヒドロキシルアミン等は、それぞれ別の条文(規則第13条の8・第13条の10)で扱われます。
Q材質の制限はどの設備に及びますか?
A規則第13条の9第1号は「アセトアルデヒド等を取り扱う設備」とだけ定めており、配管・バルブ・タンク本体など、アセトアルデヒド等に触れる部材全般が対象になり得ます。銅・マグネシウム・銀・水銀又はこれらを成分とする合金は使用できません。
Q不活性ガスと水蒸気はどちらを選んでもよいのですか?
A条文は「不活性の気体又は水蒸気」と定めており、どちらを選ぶかは事業者の判断に委ねられています。ただし燃焼性混合気体の生成による爆発を防止できる状態を常時保つ必要があります。
Q屋内タンクなら冷却装置は不要ですか?
Aいいえ。屋内タンクでも容量が指定数量の5分の1以上であれば、屋外タンクと同じく冷却装置又は保冷装置が必要です。対象から外れるのは容量が指定数量の5分の1未満の屋内タンクだけです。

まとめ

アセトアルデヒド等を取り扱う製造所には、令第9条第3項に基づく特例が課されます。
対象は規則第13条の7が定める「アセトアルデヒド又は酸化プロピレン等」の特殊引火物を取り扱う製造所です。
取り扱う設備は銅・マグネシウム・銀・水銀又はこれらを成分とする合金で造ってはいけません。
設備には不活性の気体又は水蒸気を封入する装置を常時機能させる必要があります。
屋外タンクと指定数量の5分の1以上の屋内タンクには、冷却装置又は保冷装置も必要です。
地下タンクは温度を適温に保てる構造なら冷却装置・保冷装置を省略できるというただし書きがあります。
対象・材質・装置の要否は取扱量や設置場所によって変わるため、自己判断で済ませないことが大切です。

設備の材質確認を、この機会にしてみます。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第9条第3項(製造所の基準の特例)
  • 危険物の規制に関する規則第13条の7(製造所の特例を定めることができる危険物)
  • 危険物の規制に関する規則第13条の9(アセトアルデヒド等の製造所の特例)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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