消防設備士免状を取れば、それで仕事の話は終わりだと思われがちです。
実際には、免状を取った後も誠実に業務を行い質の向上に努める義務が消防法第17条の12で課されています。
携帯義務や講習受講義務とあわせて、免状取得後の消防設備士には複数の義務が並走しています。
免状はゴールではなく出発点だという線引きを解説します。
委託している業者さんが、ちゃんと消防設備士の資格を持っているかは確認しました。
免状さえ持っていれば、あとは何も気にしなくていいですよね。
実はそこで終わりではありません。
免状を持つ消防設備士には、誠実に業務を行い質を高め続ける義務も課されています。
誠実にというのは、努力目標のようなものですか。
努力義務ではありますが、携帯義務や講習受講義務と組み合わさって効いてきます。
順に見ていきましょう。
- 消防設備士は、免状の交付を受けたあとも業務を誠実に行い工事整備対象設備等の質の向上に努める義務を消防法第17条の12で課されています
- 業務に従事するときは消防設備士免状の携帯が義務付けられ、都道府県知事等が行う講習の受講も義務付けられています(第17条の13・第17条の10)
- 誠実業務・携帯・講習の各義務そのものは第42条・第44条の罰則対象として名指しされていません
- 一方で無資格者による工事や整備(第17条の5)は第42条第1項第10号により6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です
- 着工届の懈怠(第17条の14)も第44条第1項第8号により罰則の対象になります
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目次
消防設備士は免状を持っていればそれで足りるのか

しかし免状の種類が決まったあとにも、消防設備士本人に課される義務が別に存在します。
甲種消防設備士は工事と整備の両方、乙種消防設備士は整備だけを行うことができ、その範囲は免状の種類ごとに総務省令で細かく決まっています。
ここで確定するのはできる作業の種類であって、どう仕事をするかまでは決めていません。
免状を取ったあとにどう働くかは、別の条文が定めています。
発注する側が見るべきなのは、免状の種類が作業内容に合っているかだけでなく、そのあとの話まで含まれるという点です。
甲種と乙種で範囲が違うのは知っていましたが、そのあとにも話があるんですね。
はい、免状の種類が決まった後の話がここからの本題です。
次の項で見ていきましょう。
誠実業務と質の向上はなにを求めているのか

免状の種類とは関係なく、すべての消防設備士に共通してかかります。
条文が向けているのは工事整備対象設備等、つまり消防設備士が工事や整備をする消防用設備等・特殊消防用設備等です。
「努めなければならない」という言い回しは、結果を数値で測る義務ではなく努力義務であることを示しています。
努力義務だからといって軽い話ではありません。免状を持つ全員に、業務のたびに問われ続ける前提として置かれています。
発注する側としては、この条文の存在を知っておくだけで、施工品質について業者に質問する根拠になります。
誠実に、質を高める、というのは具体的にどう確かめればいいんでしょうか。
それだけでは確かめにくいので、携帯義務や講習受講義務という具体的な仕組みが別に用意されています。
次で見ていきましょう。
携帯義務と講習義務は誠実業務とどう役割分担するのか

それを具体的な行動として支えているのが、携帯義務と講習受講義務の2つです。
業務に従事するその場で免状を携帯していなければならないと定められており、現場で資格の確認を求められたら応じられる状態を保つ趣旨です。
もう1つ、第17条の10は都道府県知事等が行う講習を受けなければならないと定めており、工事や整備に関する知識を古いままにしないための仕組みになっています。
携帯義務は「その場で証明できること」、講習義務は「中身を更新し続けること」を担い、誠実業務の努力目標を具体的な行動に落とし込んでいます。
発注する側は、見積りの段階で携帯している免状の種類と、直近の講習受講状況をあわせて確認しておくと安心です。
努力目標と実際の行動がセットになっているんですね。
そのとおりです。
次は、この3つの義務を守らなかったときにどうなるかを見ていきます。
誠実義務に罰則が無いことはどう見ればよいのか

だからといって守らなくてよいわけではなく、別の場所で効いてきます。
無資格者が消防用設備等の工事や整備を行うこと(第17条の5違反)は、第42条第1項第10号により6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります。
甲種消防設備士が着工届を怠ること(第17条の14違反)は、第44条第1項第8号により30万円以下の罰金または拘留の対象になります。
一方、誠実業務・携帯・講習の3つはこの2つの条文のどちらにも列挙されておらず、直接の刑事罰は用意されていません。
とはいえ講習を受けず免状の返納を命じられ、その命令にも従わなければ第44条第1項第9号の対象になるため、無関係というわけではありません。
罰則が無いなら、誠実業務は守らなくても平気ということですか。
いいえ。
罰則が無い義務ほど発注する側の目でしか確かめられません。
明日から消防設備士に何を確認してもらえばよいか

条文の話を、チェックする項目に変えます。
- 依頼する工事・整備の種類が、業者の甲種・乙種の別に含まれているか見積書で確認する
- 現場で消防設備士免状の提示を求め、種類と有効性を確認する
- 直近の講習受講状況を業者に尋ね、更新が滞っていないか確認する
- 甲種消防設備士が行う工事は、着工届が10日前までに提出されているか確認する
- 無資格者が紛れていないか、当日の作業者名と免状の名義が一致しているか確認する
1つずつは小さな確認ですが、積み重ねれば無資格工事や届出漏れといった罰則につながる違反を未然に防げます。
消防計画の点検記録や工事記録に、この確認をしたことを一言残しておくと、あとから振り返るときにも役立ちます。
4つとも、次の点検のときにすぐ確認できそうです。
その場で聞くだけで防げる違反がほとんどです。
次はよくある質問でも整理します。
よくある質問
まとめ
免状はスタートラインだと分かりました。
次の点検から確認リストを使います。
免状の種類・携帯・講習受講・着工届の4点を見積りの段階で確認すれば大きく外しません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第17条の5・第17条の6・第17条の10・第17条の12・第17条の13・第17条の14
- 消防法第42条第1項第10号
- 消防法第44条第1項第8号・第9号
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





