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広い木造の建物はなぜ屋根裏に壁を作らなければならないのか|建築基準法施行令が定める小屋裏の隔壁と強化天井の基準を解説

木造建築物の小屋裏の隔壁基準を解説する記事のアイキャッチ画像

大きな木造の建物ほど、屋根裏(小屋裏)は一続きの広い空間になりがちです。
天井を支える骨組みだけの空間なので、火が回っても外からは気づきにくい場所です。
建築基準法施行令は、面積の大きな木造建築物にこの小屋裏を区切る壁を求めています。
この記事では対象になる建物の条件から、明日の点検で確かめる場所までを整理します。

集会所の天井を見上げたら、屋根裏がひとつながりの空間になっていました。
これって普通のことですか?

建物の規模と骨組みの材料によっては、その空間を壁で区切ることが法令で求められています。
まずは基準を確認しましょう。

うちの建物は木造で天井も広いのですが、対象になるかどうやって分かりますか?

建築面積の大きさと屋根の骨組みの材料で対象になるかが決まります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 建築面積が300平方メートルを超える木造小屋組の建築物は、小屋裏に区画が必要です。
  • 天井全部を強化天井にするか、桁行12メートル以内ごとに隔壁を設けるかのどちらかを満たします。
  • 延べ面積200平方メートルを超える建築物どうしを結ぶ木造の渡り廊下にも、別の基準があります。
  • 大臣が定める基準に適合する建築物など、4つの例外に該当すれば適用が除外されます。
  • 確認は図面と小屋裏の点検口の両方で行うことが大切です。

建築面積300平方メートル超の木造建築物に求められる強化天井か隔壁の設置と点検口での確認手順をまとめた図解

木造の建物になぜ屋根裏に壁を作らなければならないのか

木造の大きな建物で屋根裏がひとつながりになっている様子
天井の上に広がる小屋裏は、ふだん人の目に触れない空間です。
そこが仕切られていなければ、火は壁を越えて建物全体に回り込みます。
建築基準法施行令第114条第3項 建築面積が三百平方メートルを超える建築物の小屋組が木造である場合においては、小屋裏の直下の天井の全部を強化天井とするか、又は桁行間隔十二メートル以内ごとに小屋裏(略)に準耐火構造の隔壁を設けなければならない。
屋根の骨組みが木造で面積の大きな建物は、小屋裏を壁で区切ることが義務です。
体育館や集会所、寺社の本堂のように、天井が高く一室が広い木造の建物で特に問題になります。
天井の板は仕切りになっていても、その上の小屋裏は棟から軒まで空間がつながっていることが珍しくありません。
そこに火が入り込むと、天井裏を伝って離れた部屋まで一気に燃え広がる経路になります。
建築基準法施行令第114条第3項は、この経路を建築面積300平方メートルという基準で区切り、規模の大きな木造建築物に限って対策を求めています。
自分の建物がこの規模に当たるかどうかは、まず確認申請の図面で建築面積を確かめることから始まります。

うちの体育館も屋根裏がつながっているように見えます。
面積が大きいと対象になるんですね。

はい、木造の骨組みで面積が大きい建物ほど注意が必要です。
次は具体的な対象条件を見ていきましょう。

小屋裏に壁が必要になるのはどんな建物か

建築面積の大きな木造建築物と別棟をつなぐ木造の渡り廊下
対象になるのは2つのパターンです。
建物そのものが大きい場合と、別の建物どうしをつなぐ渡り廊下の場合です。
建築基準法施行令第114条第4項 延べ面積がそれぞれ二百平方メートルを超える建築物で耐火建築物以外のもの相互を連絡する渡り廊下で、その小屋組が木造であり、かつ、けた行が四メートルを超えるものは、小屋裏に準耐火構造の隔壁を設けなければならない。
対象は建築面積の大きな建物本体と、非耐火の建物どうしをつなぐ木造の渡り廊下です。
第3項の対象は建築面積300平方メートルを超え、かつ小屋組が木造の建築物です。
第4項の対象は延べ面積200平方メートルを超える非耐火建築物どうしを結ぶ渡り廊下で、小屋組が木造かつ桁行が4メートルを超えるものです。
渡り廊下は普段の点検で見落とされがちですが、条文は本体の建物と同じ扱いを求めています。
どちらも小屋組の材質と規模の両方がそろって初めて対象になるので、片方だけで判断しないでください。
自分の建物に渡り廊下があれば、その小屋組が木造かどうかをまず確認しましょう。

渡り廊下も対象になるとは思っていませんでした。
木造かどうかがポイントなんですね。

そのとおりです。
本体の建物だけでなく、渡り廊下の小屋組も確認してください。

小屋裏には何を満たせばよいのか

小屋裏の天井全体を強化天井にする方法と12メートルごとに隔壁を設ける方法の比較
求められる対策は1つに決まっているわけではありません。
天井そのものを強くする方法と、空間を区切る方法のどちらかを選べます。
建築基準法施行令第112条第4項第一号(抜粋) 天井の全部が強化天井(天井のうち、その下方からの通常の火災時の加熱に対してその上方への延焼を有効に防止することができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。次号及び第百十四条第三項において同じ。)である階
選べるのは天井全部を強化天井にする方法か、桁行12メートル以内ごとに隔壁を設ける方法です。
強化天井は、下から火に炙られても上へ延焼させない性能を持つ天井として大臣が定めた構造か認定を受けたものに限られます。
隔壁は準耐火構造の壁で、小屋裏を桁行方向に12メートル以内ごとに区切ります。
どちらか一方を満たせばよく、両方をそろえる必要はありません。
天井の仕上げだけを見て判断せず、隔壁で対応している建物なら小屋裏に実際に壁があるかを確かめる必要があります。
図面上は強化天井のはずが、増改築で天井を張り替えて仕様が変わっている例もあるので注意してください。

天井を見ただけでは強化天井かどうか分かりません。
どうやって確認すればいいですか?

確認申請の図面に使用構造が記載されています。
建築士に確認してもらうのが確実です。

小屋裏の壁が要らなくなるのはどんな場合か

隔壁が免除される建築物のパターンと火熱遮断壁で区画された建物
第3項には、この規定を適用しない建築物が挙げられています。
自分の建物がこの中に当てはまるかどうかは、慎重に確認する必要があります。
建築基準法施行令第114条第3項ただし書 ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物については、この限りでない。 一 法第二条第九号の二イに掲げる基準に適合する建築物 二 第百十五条の二第一項第七号に掲げる基準に適合する建築物 三 その各室及び各通路(略)の仕上げ、排煙設備の設置の状況及び構造その他の事項に関し避難上及び防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する建築物 四 その周辺地域が農業上の利用に供され(略)畜舎、堆肥舎並びに水産物の増殖場及び養殖場の上家
除外の4つの号は、いずれも代わりの安全対策がすでに備わっている建物です。
一号は耐火建築物そのものにあたる建物、二号は延焼防止上の基準に適合する木造2階建て以下の建物です。
三号は内装の仕上げや排煙設備で避難上・防火上の安全が確保されている建物、四号は畜舎や堆肥舎など人の滞在が少ない建物です。
自分の建物がこれらに当たるかどうかは、確認申請時にどの条文で審査を受けたかを調べれば分かります。
建築基準法施行令第114条第6項は、建物が火熱遮断壁で区画されている場合、区画された部分ごとに別の建築物とみなすとも定めています。
古い部分と増築部分で構造が違う建物は、その履歴を建物全体でたどることが欠かせません。

うちは古い部分と新しい増築部分で構造が違います。
両方確認したほうがいいですか?

はい、火熱遮断壁で区画されていれば別の建物として扱われます。
増築の履歴も合わせて確認しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

小屋裏の点検口から隔壁と強化天井を確認する場面
条文を満たしているかどうかは、天井の上を見なければ分かりません。
図面と現地の両方を突き合わせて確認します。
建築基準法第12条第1項(抜粋) (略)特定行政庁が指定するもの(略)の所有者(略)は、これらの建築物の敷地、構造及び建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けている者にその状況の調査をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。
小屋裏の点検口から、隔壁の位置と強化天井の仕上げを確かめることが第一歩です。
確認申請の図面で建築面積と渡り廊下の桁行を拾い出し、対象になるかどうかをまず判定してください。
対象であれば、天井の全部が強化天井になっているか、桁行12メートル以内ごとに隔壁があるかのどちらかを現地で確認します。
点検口が小さく奥まで入れない場合は、業者に依頼して写真を残してもらいましょう。
増築や改修の履歴があれば、そのときの図面と現在の小屋裏の状態がずれていないかも建築士に確認してもらってください。
定期報告の対象になっている建物なら、その調査の機会に合わせて見てもらうのが現実的です。

点検口から写真を撮って残しておけばいいんですね。
次の調査の参考にします。

はい、日付を入れて保管しておくと確認がスムーズです。
気になる点があればいつでもご相談ください。

よくある質問

Q鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物でも小屋裏の隔壁は必要ですか?
A建築基準法施行令第114条第3項は小屋組が木造である場合に限って適用されます。鉄骨造や鉄筋コンクリート造で小屋組が木造でなければ、この規定の対象にはなりません。
Q渡り廊下の面積はどう数えますか?
A条文は渡り廊下そのものではなく、渡り廊下で結ばれる建築物それぞれの延べ面積が200平方メートルを超えるかどうかを見ています。渡り廊下自体の面積は基準になりません。
Q隔壁と防火区画の壁は同じものですか?
A別の規定です。第114条の隔壁は木造の小屋裏の延焼経路を区切るためのもので、第112条の防火区画とは適用される条件も範囲も異なります。両方が同じ建物にかかることもあります。
Q増築で渡り廊下を新しく設ける場合、桁行はどこで測りますか?
A桁行は渡り廊下の棟の方向の長さで判断します。4メートルを超えるかどうかは、設計段階で確認申請の図面に記載されます。

まとめ

建築面積300平方メートルを超える木造小屋組の建築物は、小屋裏の区画が必要です。
天井全部を強化天井にするか、桁行12メートル以内ごとに隔壁を設けるかのどちらかです。
延べ面積200平方メートルを超える非耐火建築物を結ぶ木造の渡り廊下も対象です。
渡り廊下の対象は、小屋組が木造かつ桁行4メートルを超えるものです。
適用が除外されるのは4つの建築物のパターンに限られます。
火熱遮断壁で区画された部分は、それぞれ別の建築物とみなされます
確認は図面と小屋裏の点検口の両方で行うことが大切です。

今度の点検で点検口から小屋裏を見てもらうよう手配します。
図面もあわせて用意しておきます。

それが確実です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第9号の2・第12条第1項
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第4項・第114条第3項・第4項・第6項・第115条の2第1項

※本記事は公表されている法令および国土交通省・消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または建築士にご確認ください。

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